1946年 3月末
ハワイ島に停泊していたアメリカ軍の太平洋艦隊は、海軍第一航空団の富嶽による原子爆弾投下により壊滅、残存した守備部隊も沖縄防衛戦の終結でハワイに急行した戦艦長門、榛名、伊勢、日向の艦砲射撃により全滅。
後に帝国海軍の陸戦隊がハワイに上陸、ハワイを完全に占領した。この戦闘による死者数は日本軍は海軍第一航空団の搭乗員74名、陸戦隊102名であった。一方アメリカは一般人も含め、死者数は3万人規模に登った。
アメリカ軍による硫黄島原爆投下作戦が失敗してから、旭日弾が使用されたハワイ決戦が世界で初めての原子爆弾投下となった。
1946年 4月上旬
グアム島 基地
兵舎の中で、宴会が開かれている。
西澤広義 「今回はみんなよくやってくれた。ありがとう。みんなのおかげでハワイ作戦が成功した。これは日本の勝利への大きな原動力だ。今日はみんな飲んでくれ。乾杯!!」
全員 「乾杯〜!!!」
宴会が始まった。全員が色々と飲み合ったり、笑い合ったりしている。よほど作戦の成功が嬉しかったのだろう。坂井も岩本も赤松も、そして西澤もみんな笑っている。
しかし、伊藤だけは笑っていなかった。
伊藤龍生 「…………」
ずっと兵舎の入り口に座り込み押し黙っている。
岩本徹三 「おい、あいつどうしたんだ?」
伊藤の様子に気づいた岩本が赤松に話しかける。
赤松貞明 「さあな。もしかしたらだけど罪悪感でもあるんじゃないか?」
確かに今回の作戦では敵国といえど旭日弾を投下したことにより、少なからず民間人も犠牲となっている。
岩本徹三 「ちょっと行ってくるぜ。」
坂井三郎 「一人にしといたほうがいいんじゃないか?」
岩本徹三 「安心しろ。心配ない。」
岩本徹三が外で座っている伊藤に近づいていく。
岩本徹三 「隣いいか?」
伊藤龍生 「い、岩本さん!?え、ええ、どうぞ。」
岩本が伊藤の横に座る。空を見上げると満点の星空が輝いていた。
伊藤龍生 「岩本さん。私達がしたことは正しかったんでしょうか?」
岩本徹三 「ん?」
伊藤が岩本にそう話しかける。
岩本徹三 「やっぱり、気にしてるんだな…」
伊藤龍生 「…はい。…戦争ってくだらないですね…。」
岩本徹三 「えっ?」
思いもよらぬ言葉に岩本は一瞬固まる。
伊藤龍生 「あっ、今のは気にしなくていいです。…ただ、いつも思うんです。人はどうして争うのか。ともに生きていけないのか。」
岩本徹三 「…そうだな。」
伊藤龍生 「えっ?」
岩本徹三 「俺もそう思ったことがある。ラバウルにいた頃だ。ガダルカナルのときも何人も死んだ。戦局が不利になってからも何人も死んだ。寂しかったな…。」
伊藤龍生 「そうですね…」
岩本徹三 「だけどな、誰かを生かすためには誰かを殺さないといけない。それが戦争だ。」
伊藤龍生 「…はい。」
伊藤が返事をする。
岩本徹三 「でもなあ、やっぱり俺もお前の言う通り、戦争はくだらねえと思うぜ。」
伊藤龍生 「そうですか…?」
岩本の思うもよらぬ返信に伊藤は驚く。岩本は続けた。
岩本徹三 「早く終わさねえとな。こんな戦争。」
岩本のつぶやきに伊藤は笑って返事をした。
伊藤龍生 「そうでうね。早く平和な国にしましょう。」
岩本徹三 「ははは、そうだな。」
その様子を坂井たちは、部屋から温かい目で見守っていた。
赤松貞明 「おい西澤。確かもうすでに次の作戦が計画されたんだよな?」
西澤広義 「はい。作戦のためにハワイに海軍第一航空団が移動する必要があるらしいです。」
赤松貞明 「その前に一度本土でひよっこたちの訓練をしないとな。」
西澤広義 「そうですね。」
赤松貞明 「それで俺たちはハワイまでなにで移動するんだ?空を飛ぶのはもう疲れたぜ。」
坂井三郎 「俺達は輸送船で、零戦は空母で運ばれるらしいぞ。」
赤松貞明 「今度はちゃんと護衛艦をつけてもらいたいな。」
西澤広義 「ははは、そうですね。」
1946年 5月上旬
大日本帝国の快進撃は止まらなかった。”皇国の大反攻作戦”が開始されてからドイツは秘密裏に日本に資材などの援助を行ったため、大東亜戦争はますます長期化した。まもなく終戦だろうと油断していたアメリカは日本軍の大反撃をまともに受け、日本の勢力回復を許してしまった。
5月上旬には日本軍によりスエズ運河を封鎖されてしまったため、アメリカは喜望峰経路からしか太平洋戦線に移動ができなくなった。
さらに前線基地であるハワイも日本軍に占領されたため、アメリカ軍は戦争初期の日本軍によるアメリカ本土上陸作戦が近いうちに実行されると考え、本土の防衛力を増設していた。
日本 松山基地
海軍第一航空団の本拠地。史実では第三四三海軍航空隊の本拠地である。(この世界線では三四三海軍航空隊は海軍第一航空団に吸収されているため存在しない)
零戦七八型が二機空を舞っている。伊藤と練習生の演習だ。地上では多くの練習生や団員たちが見物している。
練習生 「よし、あともうちょっと…」
練習生が伊藤を射線に捉えようと必死に後方につく。対する伊藤は軽々と練習生の零戦七八型を振り切る。
練習生 「あ〜、あと少しだったのに…」
演習が終わり飛行場に二機の零戦七八型が着陸する。伊藤と練習生の二人が降りてくる。
練習生 「参りました。伊藤少尉は凄い腕前ですね。」
伊藤龍生 「そんなことありませんよ。坂井中尉や西澤少尉には全然敵いませんよ。」
練習生 「そうなんですか。」
伊藤龍生 「そうなんですよ。私も練習生時代よく模擬空戦をしてもらいましたが、一度も勝てませんでしたからね。」
練習生 「凄い人たちなんですね。」
伊藤龍生 「ええ、それもそうですけど…」
伊藤が振り返り、自身の倉庫へ運ばれていく零戦七八型を見つめながら言った。
伊藤龍生 「大切な人への思いが、人を強くするんですよ。」
伊藤の零戦七八型の操縦席の計器に小国から託された懐中時計が下げられている。銀色の懐中時計は青い零戦とともに夕日を浴びて光輝いていた。
第二章 完
これにて第二章終了です!ここまで読んでくださりありがとうございます!最終章もどうかご期待ください!