私が彼に出会ったのは私が珊瑚の孔雀団団長になって始めての魔法騎士団入団試験の時だった。
偶然その時に起きていた私は彼の書類を見て先ず思ったのは読めない時の名前だった。
黒の暴牛団団長のヤミ君は読めるみたいで彼の名前はカザキリ・レイとのことだった。
ヤミ君の故郷の字ってことは彼もまた異邦人なのだろう。
受験者の登録が出来たと言うことはこの国のグリモワールを持っていると言うことだ。
だから私は彼に接触してみた。
「ねぇねぇ!君がレイ君?」
「あ?誰アンタ?」
「私は珊瑚の孔雀団団長のドロシー・アンズワース!」
「へぇ・・・」
周りからは驚いたりボソボソ話したりする声が聞こえるけど、当の彼は興味がなさそうに欠伸をしながら私を見る。
何だか彼の目が普段のヤミ君みたいで少し不安だけどそれでも私ではなく何かを見据えている。
「団長ってアンタみたいなちび助でもなれるわけ?」
「こう見えても二十越えてるんですけど!?」
「あ、そうなの」
自分だって一般男性からしたらちびに分類される身長なのに彼は自分を棚にあげて私の身長に言及する。
「・・・・・って、話したいことはそういうのじゃなくて!」
「早くしてくんない?レイさん試験受けなきゃだし」
「君のグリモワールについてなんだけど・・・・」
次の瞬間辺りのマナが震えだした。
これ程まで来るともはや騎士団長クラスだけれど、それでも私も騎士団長。
焦らずに彼の質問に返答する。
「・・・・・俺のグリモワールが何か?」
「何処で貰ったのかな~って」
とても薄いグリモワール。
ページはどう見ても1ページか2ページしかなく、筋肉もヤミ君どころか私くらいしか無さそうだ。
「あ~・・・・。とある屋敷の地下の大図書館である魔法使いに」
「名前、教えて貰える?」
「・・・・・・パ」
彼が名前を言いかけたところで魔力が無いものに群がる習性があるアンチドリが彼の頭に群がっていく。
彼も鬱陶しそうにはしてるけど振り払う様子はなく周りの他の受験者は酷く彼を蔑み笑っていた。
「・・・・・もう良いっスか?そろそろ試験始まるし」
「う、うん!ありがとう」
彼が欠伸をしながら歩いていく背中を見送りつつ、私は団長が集まる上の席へと戻った。
席に戻ってきてそうそうヤミ君が話しかけてくる。
「おい、三角帽子女。お前何試験前の受験生にちょっかいかけてんだ」
「ごめんね~。ちょっと気になることがあってね」
「それは・・・・彼が持っているグリモワールのことかい?」
ヤミ君の後ろから金色の夜明け団団長のウィリアム君がヤミ君の後ろから現れて席に座る。
「彼のグリモワール・・・・。一見何の変哲も無さそうだけど、マナが溢れているね」
「そうそう!それにあのマナ、何処かで感じたことがあるんだよね~」
アンチドリに頭をつつかれながらあちこちを走り回っている彼はまるで試験直前の緊張感がない。
自信があるのか、はたまた受かっても落ちてもどっちでもいいのか・・・・。
しばらくすると試験が始まった。
一次試験はウィリアム君が用意した箒を使って魔力をどれだけコントロールできるかを見る試験。
でも彼は・・・・・・。
「おぉ・・・・。皆箒で飛んでんじゃん。跨げばいいの?」
と言いながら跨いでるけどいっこも飛ばないし動かない。
・・・・・・ううん。少し、ほんの一ミリ位浮いている。
「え?あれマジでやってんの?」
「ライバルが一人減ったぜラッキー」
周りから口々にそう言う声が聞こえてくる。
一次試験が終わって二次試験。
魔力を飛ばして岩壁を壊す試験。
でも彼は・・・・・・。
「え?魔法を飛ばさないとだめ?・・・・・・自分、強化魔法なんで」
ヤミ君が持ってる武器と同じ形の木の棒(ヤミ君が言うには木刀らしい)を投げて岩壁を砕いていた。
見た目の割に考えはヤミ君みたいにムキムキらしい。
三次試験は魔法で創造する試験。
繊細な魔力コントロールを求められる。
でも彼は・・・・・・。
「創作意欲がわかねぇ・・・・」
皆が魔法で何かを作るなか、彼は地面に絵を書き始めた。
でもしばらくするとまるで何かを閃いたかのように木刀で地面を割り出して出てきた岩を叩きだし、翼を携えた全裸のグラサンのおじさんを作ったけどさすがに下半身まで忠実に再現したのが悪かったのか銀翼の大鷲団団長のノゼル君が石像に向かって攻撃をした。
「ギャァァァァァ!!!俺の作品!タイトル飛翔がぁ!?」
「異邦人が・・・。そのような低俗なものを私の前に出すな」
ノゼル君はそう言ってるけど当の彼は気にせずに倒れた石像に目を丸める。
彼の作った石像がお隣にあった女の子の像に寄りかかっていた。
「・・・・・・ねぇねぇ、お嬢ちゃん。おじさんと遊ぼにタイトル変更だなこりゃ」
真剣に悩んでいたのが作品のタイトルだと分かってヤミ君は笑ってるし、ノゼル君は無視されたのが気に入らなかったのか更に不機嫌に、ウィリアム君も苦笑いを浮かべている。
他の団長達もそれぞれの反応を見せていて今回の試験では彼が悪目立ちしている。
他にも試験は色々あったけど、全部で彼は問題行動を起こしてもはや試験はサーカス状態に陥りながらも、ようやく最終試験になった。
「さて、今回はあの小僧は何をやらかしてくれるのかね」
「カカ。裂きごたえがありそうなガキだぜ」
「フン。魔力がほとんど無い以上、採用はされんがな」
ノゼル君の言葉にヤミ君と翠緑の蟷螂団団長のジャック君がめんどくさそうな顔を向ける。
「私は十分彼が皆のドラフト一位だと思ったんだけどな~」
「あり得ん・・・・・」
ノゼル君が再び受験者の試合を眺め始める。
彼の試合は何時だろうか?そんな、考えを巡らせながら私も再び試合を見る。
そしてようやく最後の、彼の試合。
心配の始めの合図と共に彼の相手が私達の方に飛んでくる。
ウィリアム君がその子を魔法で受け止めて床に置くと今度は彼を見つめる。
「これは一体どういう事かな?」
「コイツ相手に俺の力量を測れると思ってんじゃあねぇぜ!アンタらの中の一人が降りて俺と戦え」
彼が叫ぶと周りがどよめき立ち、ジャック君が笑い出した。
「カカ。面白ェ、俺が行く。切り裂きたくてウズウズしてんだ」
「私が行こう。あの異邦人に礼儀のなんたるかを教えてやる」
ジャック君とノゼル君が立ち上がって慌てて私も立ち上がる。
「君も行きたいのかいドロシー。君にしては随分珍しいね」
「だってジャック君とノゼル君じゃここは狭いでしょ?」
「この私があの異邦人相手に苦戦すると?」
「そうじゃないけどさ、私の魔法なら被害はでないでしょ?」
「・・・・・そうだね。じゃあドロシー、行ってくれるかい?」
「オッケー!」
席から飛び降りて私は彼の前に立ちはだかる。
「さっきぶりだね!オネーサンのこと覚えてる?」
「・・・・・ドロシー・アンズワースだっけ?」
「そうそう!覚えててくれて嬉しいよ!」
そう言って私は
三十分後。
そこには白っとした顔の彼と耳まで顔を真っ赤にさせた私が居た。
「降参する?」
「う、うん///////」
私は負けた。
しかも魔法にではなく口に・・・・。
「おいおい、どうなってんの?あの三角帽子女顔真っ赤だぞ?」
「カカ。面白ェじゃねぇか。今度は俺が行く」
「いや、もう十分だよジャック。彼は自分の強さを示した」
ウィリアム君の言葉にジャック君が舌打ちをして席に座る。
私もゆっくりと立ち上がって彼の顔を見ないように席に戻る。
団長のドラフトは一番から順番に行っていく。
番号が呼ばれればその番号の子を団長が手を挙げて複数人いれば受験者が入りたい団を選ぶ。
「一番!・・・・・挙手なし。二番!・・・・・挙手なし」
ドラフトがどんどん進んでいき遂に彼の番になる。
「百四十六番!」
番号が呼ばれて彼が前に出ると私とヤミ君、ジャック君と紅蓮の獅子王団団長のフエゴレオン君が手を挙げる。
彼はそれを見て何を思ったのか木刀を上に投げた。
木刀が地面に突き刺さって私の方を向いている。
「んじゃあ、そこのちび助の団で」
これが後に珊瑚の孔雀に巣くう鬼と呼ばれたカザキリ・レイ君と私、ドロシー・アンズワースの出会いだった。