レイ君(これからは彼の事をレイ君と呼ぶことにした)が珊瑚の孔雀団に入団してから早数日が経過しようとしていた。
いつも寝ている私が言うのも何だけど、彼も結構なお寝坊さんで大抵朝御飯を十時に食べ始める。
でも、今日は彼に任務があるから私の部屋に彼を呼び出している。
「団長、そろそろ新人が来ますが・・・。団長?団長!寝ないで下さい!新人が来ますよ!」
団員の一人が話しかけてきても眠気には勝てずに寝ていると扉がコンコンとなる。
「レイでーす」
「入っていいよー!」
「あれ!?団長さっきまで寝てませんでした!?」
ガチャっと扉が開くと珊瑚の孔雀団のピンク色のローブを着て片手にバナナを持ちながら口をモチャモチャと鳴らしている零君が現れる。
入ってきたのを確認すると私は椅子に座りながらレイ君を見つめる。
「今日はレイ君に始めての任務をやって貰いまーす!」
「はぁ・・・・」
「キテンって街は知ってる?」
「いや、全然、これっぽっちも」
レイ君が掌を左右に振りながら片手に持っていたバナナを一齧りしてまたモチャモチャと口を鳴らす。
隣に立っている団員も何か言いたそうだけど彼が私を倒したと言う事実がある上に本人も何を考えているかもわかんないため何も言えずにいる。
「キテンはね、クローバー王国とダイヤモンド王国の国境近くにある重要な場所なんだけど、最近そこに魔獣が出始めてるんだって」
「そんな重要な場所なら魔法騎士も駐屯してんじゃないの?」
「どうやら彼らじゃ手におえないみたいでね~。本当ならウィリアム君の団に回る筈だったんだけど人員が足りなくてこっちに来ちゃった!」
レイ君がツカツカと近付いてきてバン!と両手で机を叩く。
「来ちゃった!じゃねぇよ!」
「でめ君ならなんとかなるでしょ?」
「勿論です!」
「じゃ、決まり!」
「嵌められた!?」
頭を抱えながら膝を崩して泣き崩れるレイ君を見ながら私は隣の団員に空間魔法を使う団員を呼ぶように指示する。
「・・・・・・で、本当のところ君の魔法って何なのかな?」
「・・・・・・さぁ?」
誤魔化しているとかそう言うのではなくて、レイ君は本当に分かっていないようで自分の2ページしかないグリモワールをペラペラと眺めている。
「分かってんでしょ?俺は異邦人で、字が読めなきゃ書けもしないんですよ」
「読み書き教えてあげようか?」
「あ、めんどくさいんでいいです」
この俺、風切零の初任務は魔獣駆除となった。
この国に来て早一ヶ月。
読み書きが出来ないなりに何とか食いぶちを探して入団したは良いもののやってることは結局故郷と変わりがない。
「これに入ればキテンだからね」
「どうも・・・・」
空間魔道師のおっさんと団長のドロシー、後さっきからドロシーの隣に立ってるおっさんに見送られて俺は空間魔法の扉を通った。
通った先には街が見えた。
結構栄えている城壁都市のような感じで魔獣に困っているようには思えない。
「魔獣って何処にいるんだ?」
とりあえず街が平和と言うことは街にはいないのは明らかな筈だ。
ならば外、と言うことで街の外には出てきたが辺り一面何見えない平原だ。
「そこのお前!」
「あ?」
声がしたので立ち止まって声がした方を振り向く。
見えたのは箒に乗って飛んできた一つの影。
「そのローブ、珊瑚の孔雀の団員か?こんなところで何をしている?」
「魔獣駆除だよ。魔獣駆除」
「魔獣駆除だと?私は金色の夜明けから人員が来ると聞いたが・・・・」
「手が回らないらしいぜ。退っ引きならない理由でもあんじゃね?」
「ふむ。金色の夜明けは魔法戦士団最強の団。よほど重要な任務があるのだろう」
さっきから知らないおっさんが話しかけてきて普通に話してはいるが、不信感は拭えない。
が、別に襲ってきても返り討ちに出来ると思うので話を聞く。
「で、魔獣はどっから出てくるわけ?」
「魔獣は向こうの山からよく現れる。一体一体が強魔地帯にいる奴と同等の魔力を持っていて副団長クラスでないと手も足も出ない状態だ」
「ほーん」
俺はおっさんが指差した方向にある山を見る。
なるほど、と心で呟きながら俺は山に向かって歩き出す。
「お、おい!一人じゃ危険だ!」
「だーいじょうびだって。あの山に居るのは魔力だけじゃあどうにもならない妖怪ってやつだ」
「妖怪・・・・・・?」
おっさんの疑問に答えることはなく、俺はひたすら歩いていった。
それから数時間経ち、俺は山に居た妖怪達を基本的には退治しながら奥へと進んでいた。
しかし、クローバー王国にも妖怪が居るとは驚きだった。
てっきり妖怪は日ノ国のしかも俺の故郷にしかいないものかと思っていたが、魔力を使う魔法が発達している分、ここの妖怪は独自の進化を遂げている。にしてもだ。
今の今までそれが姿を現さなかったのは気になる。
妖怪とは基本的に畏れと噂により容を成す存在だ。
暗闇が怖いと言う畏れが集まりに集まって産まれたのが常闇の妖怪だし、山の上には神通力を使い、強力な風を起こす団扇を持っていると言う噂が集まりに集まって産まれたのが天狗だ。
と言うことは、今現在畏れや噂を作り、妖怪(しかも危険度の高い)を意図的に産んでいる輩がいる。
「・・・・・・・誰だかは知らねぇが嘗めた真似しやがって」
悪態をつきながら歩いて妖力と魔力が密集している地帯に向かう。
ようやくその中心とおぼしき開けた場所にたどり着き、グリモワールを開いた状態で木刀を握る。
ゆっくり、ゆっくりと中心に向かって歩いていく。
特に何も起きることがなく、中心にたどり着くと俺は一度ぐるっと辺りを見渡して、敵が居ないことを確認する。
ようやく緊張を解いて一息ついたその瞬間、足元に魔法陣が浮かび出し、それに呼応して他の場所からも魔法陣が浮かんでくる。
「な、何だこれ!?」
驚いて再び戦闘態勢に入って辺りに現れた魔法陣を見る。
尋常じゃ無い数で、こんなに描けると言うことはとてつもない魔力の持ち主であることは間違いない。
そして、ようやく気が付いた。
最近現れるようになった妖怪はここから現れていたのだ。
しかも、本来なら卵から孵化するようにゆっくりと現れる筈が俺が来たことによって一気に孵化する魔法を発動させてしまったのだ。
「このままじゃ、こいつら全部があの街に・・・・」
嫌な汗が流れる。
流石の俺でもこの数全部を相手に街を護るのは不可能に近い。
ドロシーのように魔法で閉じ込められるのなら不可能でもないのだろうが、そんな魔法を使えないどころか使えたとして山一つここら一体を囲む魔力もない。
「クソッ!どうすりゃいい!」
次々に妖怪が魔法陣から現れ始めて、俺はがむしゃらに木刀を振りまくり妖怪達を切り伏せる。
しかし、切り伏せるよりも現れる速度が上回っていて、しかも同じ魔法陣から何匹も出てくるためどんどん増えていく。
「・・・・・・ッ!そうだ、グリモワール!」
俺は木刀を腰に収めて横で浮いているグリモワールを手に取る。
「確かアイツは言ってた!これは俺にぴったしのグリモワールだって!2ページだけで何とかなるかはわかんねぇけど、これしかねぇ!」
あ、でも俺使い方わかんねぇ!等と思いながら今までの経験からどうにかならないか頭を巡らせてみる。
試験の時、他の奴らは何と言っていた?
何とか創成魔法とか何とか魔法とかだ。
次に俺にぴったしと言う意味を考えよう。
俺の能力はなんだ?何故それを使わない?
俺の能力は矛盾を司る程度の能力で、使わない理由は何者かに能力を奪われたから。
今やりたいことは?
魔力を使って周りの妖怪を閉じ込める。
「・・・・・・分かった!これだ!」
俺はグリモワールに手をかざしてこう叫ぶ。
「矛盾創成魔法『天邪鬼の戯言』!」
グリモワールが光だして俺の中にある妖力がどんどん減っていく変わりに魔力がどんどん増えていくのが分かる。
次のページを捲って更に叫ぶ。
「矛盾魔法『
グリモワールから透明の玉が出て来て、次の瞬間には山一つ囲むほどの大きなドームが出来上がる。
「団長の魔法みたいにはならなかったが上出来だ。これでコイツらは出れねぇ。後は・・・・」
一呼吸を置いて、木刀を抜き、力強く前に右足を踏み出す。
「全員まとめてブッた斬るッ!」
地面を蹴って一気に距離を詰める。
蜘蛛の身体をした牛を、落武者ならぬ落騎士の骸骨を、口がものすごい大きい狼を、返り血を浴びながら切り伏せる。
妖怪が俺を殺そうと走ってくるが、全く見当違いな方向に走り自滅する。
だが、俺も容赦はせずに次々と妖怪を斬る。
それが夕方まで続き、ようやく魔法陣から妖怪が現れなくなり、魔法陣が自然消滅していく。
「ハァハァ・・・・・。終わった、か・・・」
木刀を腰に戻して山を降りようとした時だった。
俺の後ろから先ほどまでの妖怪とは桁違いな魔力をした妖怪が現れる。
見た目からしてがしゃどくろだろうか?
所々骨だけではあるものの魔力を肉としているのか明らかに受肉していっている。
「これは・・・・・。ちと厳しいな」
故郷では山の四天王代理などと呼ばれ天狗や河童から畏れられもとい慕われては居たが、力を失った今俺なんてフッハその2になるしかない。
残る手段は失った力の残り香を絞り出して戦うことだが、これは力を取り戻すときに取っておきたい。
「かと言って、温存する余裕もなさそうだな・・・・」
仕方なく残り香を絞り出そうとして目の前に居たがしゃどくろが一瞬にして消える。
何が起こったのか分からなかったが、きれいに球の形に抉られた地面を見てようやく誰がやったのか理解できた。
「ドロシー団長・・・・」
俺は抉られた地面の中心にいる三角帽子の魔女っこを見てそう呟いた。
「よく頑張ったねレイ君!オネーサンが来たからもう大丈夫だよ!」
魔法説明のコーナー
【天邪鬼の戯言】
レイ君の魔力と妖力の総量を入れ替える魔法!簡単に言うとパワートリックだよ!
【
中にいる人物の感覚を逆にしちゃう魔法!簡単に言うと逆撫と