無職転生二次小説「鬼の目にも……?」   作:(店`ω´)@てんちょっぷ

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(店`ω´)はい、どうも。てんちょっぷです。

これはweb原作完結直後の2015年5月に書いた二次小説です。

「ナナホシのグルメ」以前の、ペルギウスとルーデウスの日常グルメバトルです。
うん、アホですね。

この頃から、ペルギウスをコメディのネタにするのが楽しくて、彼は自分の中で本当に美味しい登場人物として意識してます。

それでは、どうぞ。




第一話『憤激のルーデウス』

 

俺はTKGが好きだ。

俺はTKGが好きだ。

俺は、TKGが大好きだ。

 

 

殲滅TKGが好きだ。

電撃TKGが好きだ。

打撃TKGが好きだ。

防衛TKGが好きだ。

包囲TKGが好きだ。

突破TKGが好きだ。

退却TKGが好きだ。

掃討TKGが好きだ。

撤退TKGが好きだ。

 

 

――とにかく、それくらいTKG、つまり卵かけご飯が大好きなのだ。

 

 

米の飯が、炊きたての甘い飯が、なにより好きなだけに。

生卵の、ホカホカの飯に流し込んだあの香ばしさ。

醤油の風味。白身のとろっとした口当たり。そして喉ごし。

あの旨さ、充足感は、この世界に転生してから、とんと味わえなかった。

何しろ、肝心かなめの醤油がないのだ。塩ではダメなのだ。

 

 

米は見つけた。なによりも大事な種もみだ。

そしてそれはアイシャが丹精込めて作っている。

しかし、醤油が無い。皆無なのだ。絶無なのだ。

あぁ、食いたい。貪りたい。あぁ、我が遥かなるTKG。

 

 

ところがだ。

ひょうたんからコマというか。

ギースとの最終戦の時に、見つけてしまったのだ。

何って、醤油だよ!

 

 

ビヘイリル地方の特産品で、あちらでは「鬼水」と呼ばれている代物だ。

どうも、鬼族とよばれる巨漢の魔族が好んで飲用しているらしい。

醤油を飲む?なんということを!

人間が飲んだら、即日肝臓を壊して明日の朝日も拝めないであろう代物だ。

実際、北神流のドーガがガブリと飲んで、ひっくり返ったからな。

 

 

俺はそれを入手した後、スペルド村に持ち込んだ。

目的はただひとつ。TKGを食べる為だった。

それから、思い出した約束がひとつ。

世話になったルイジェルドに、俺の至宝のメニューをご馳走するためだ。

 

 

飯は炊けた。味見も兼ねて、まず俺が一杯目を食す。

結論は――夢にまでみた、卵かけご飯だった。

まぁ、醤油の風味が若干違うとか、卵も味わいが違うとかは、あるにせよ。

俺の飢えは満たされた。

あとは、積年の想いを、解き放つだけだ。

俺と家族の命の恩人、白皙の美丈夫――ルイジェルドに。

 

 

彼には、底知れぬ恩義があった。

危険な魔大陸を、三年も一緒に旅をして、俺とエリスを護り続けてくれた。

それだけでなく、ノルンとアイシャの二人の妹も、護衛して送り届けてくれた。

ギースと闘神との戦いでは、瀕死の重傷を負っても、最後まで戦い続けてくれた。

それなのに、涼しい顔をして「なに、大したことではない」とか言っちゃうのよ、あの人。

どんだけ俺の乙女な部分を刺激するというのか!あぁもうルイージェさんたら!!

 

 

俺は手馴れた作業で、TKG一人前を作る。そして、そっと彼に差し出した。

まるで千利休が、織田信長に茶を出すが如く。

彼が食べている間に、ノルンも来ていたので彼女にも差し出す。

ノルンは俺の家でも米を何度も食べているが、それほどお気に召してはいなかった。

しかし、このTKG醤油風味は口に合ったようだった。

何しろ、ルイジェルドより早く食べ終わったのだから。

まぁその後、病み上がりの人間に解毒が必要なモノを食わすなと叱られたけど。

 

 

俺の意気はいやが上にも有頂天だ。

ノルンとルイジェルドからも、旨いとお墨付きを貰ったし。

今度は、お世話になった人たちにも、食べさせてやろう。

食通どもの舌を、俺のTKGで唸らせてやるぜ!

 

 

「――そう思って、こちらに赴いたのです」

 

 

俺は得意満面に頷いた。

 

場所は、遥か上空、雲の上。天空の城ラ○ュタ。じゃない、空中城塞。

目の前には、尊大な態度で玉座にふんぞっている、甲龍王ペルギウス。

相変わらずキンキラキンだな。シルヴァリルが横でヒソヒソ耳打ちしている。

 

 

「ふむ。何やら、面白いモノを我に食べさせようというのか、ルーデウスよ」

人の心を圧倒させるような、迫力のある声が広間に響き渡る。

 

 

「はい!これは、私が長い間探し求めていた、至宝の一品。我が魂の食物です」

 

 

俺は仰け反るようにして、天井を仰いだ。美しいシャンデリアが目に入る。

 

 

「ほう!ソウル・フードと申すか!それ程の美食、まだこの世界にあったとはな」

 

 

大仰に驚く振りをするペルギウス。フッその顔を、本当に驚かせてやんよ。

 

 

「それでは、調理室をお借り致します。食事時は、今からそう━━━二時間後に」

 

 

俺はアスラ貴族式の儀礼に則って、頭を下げる。

 

 

「なにぃ?二時間だと?」

 

 

しかし甲龍王は色めき立った。

 

 

「我をそれだけ待たせる価値のあるモノなのか?お前の魂の食物とやらは!」

 

 

よっぽど腹減ってんのかな。食いしん坊な王様め。空腹は最高の調味料って知らんのか。

 

 

「我が満足せぬ場合、貴様の首を捻り切るやもしれんぞ!」

 

 

妙にキツイお言葉だなぁ。食に関して、こだわりがある王様ではあるけども。

ペルギウスは王座より立ち上がり、バサリと白いマントを翻した。

 

 

「どうだ、ルーデウス・グレイラット!我を満足させられるのか、否か!?」

 

「できらぁ!!」

 

 

あ、――つい、売り言葉に買い言葉で返してしまった。

うん、まぁ、大丈夫だろう。

旨いものは、東西を問わず。異世界を問わず、だ。

俺はそそくさと素材を持って、厨房へと駆けていった。

 

 

きっかり二時間後。

食事会は、例の庭園にて行われた。

主賓席には、空中城塞の主である、甲龍王・ペルギウスが鎮座。

俺は手押し車の上に、炊きたての土鍋、茶碗を乗せて登場。

 

 

腕組みをする龍王の目の前で、俺は満を持して、土鍋の蓋を取る。

――ふんわりと、芳醇な香りが立ち込めた。

さしものペルギウスも、喉を鳴らしている。アイシャ米の破壊力だ。

お手製の茶碗に、しゃもじで銀シャリを盛り付ける。

今回は上手く炊けた。お米の一つ一つが立っている。上出来だ。

 

 

「……ふむ。良い香りだな。しかし、主菜が見当たらんぞ?」

 

 

ふふん、食いしん坊ちゃんめ。ここからが、俺の妙技。

 

 

飯を盛り付けた茶碗を置き、別の小鉢に素早く生卵を割り入れる。

醤油を適量注ぎ、軽く箸でかき混ぜ、そして――。

 

 

「ぬおおおお!待て、ルーデウス!何をするのだ!!」

 

 

ペなんとかが喚いているが、キニシナイ!

俺はかき混ぜた黄金色の液体を、純白の宝石の上に注ぎ込む。

嗚呼、この鼻の粘膜を蕩かすような香ばしさよ。

 

 

――甲龍歴431年 空中城塞ケィオス・ブレイカーにおいて、TKGが披露された。

 

   これは歴史的快挙であり、事実である――。

 

 

「……どうぞ、熱いうちに、お召し上がりください」

 

 

放心したペルギウスの前に、ことりと茶碗を置き、俺は数歩後ろに下がる。

俺は満足だった。

この後、ペルギウスはTKGを食し、口から光線を吐きながら、空を飛び回るだろう。

そして、こう叫ぶのだ。美味いぞぉ――。

 

「……貴様、ルーデウス・グレイラット。我を愚弄する気か?」

 

「うーm……うぇぇ?」

 

 

アレアレ、ペッペッペさん、なんか睨んでらっしゃる。どぼちて?

なんか、背景が歪んで見えるし、ゴゴゴゴとか雷みたいな音も聞こえる。

 

 

「これは、一体なんだ」

 

 

ペルギウスは茶碗を指差す。なんか行儀悪いぞ。

 

 

「なんだって、TKGっす」

 

「だから、なんだと言っている」

 

「しつこいなぁ。俺のソウルフードだっていったじゃないっすか」

 

 

俺は段々イライラしてきた。なんだってんだ。とっとと食えよ。冷めるだろ。

しかし、甲龍王は額に何本も血管を浮き立たせて、茶碗を睨んでいる。

 

 

「これは、炊いた米に、生の卵をかけまわしただけではないか!」

 

 

激昂する王様。だが俺は悪びれない。

 

 

「……そうですけど?」

 

 

「貴様!この我を、甲龍王・ペルギウス・ドーラと知っての狼藉か!!」

 

 

ガターン!と席を蹴立てて、ペルギウスは叫んだ。めっちゃ怒ってはる。

 

 

「なんだ、これは!料理と言えるのか!」

 

「だから我は食事を馳走されるのは嫌なんだ!」

 

「人の城に来て、こんなものを食わせるとは!」

 

「オルステッドを呼べぃ!」

 

 

なんか、滅茶苦茶な事言い出してる。あと、社長関係ねーだろ。

 

 

「我も舐められたものだな!古今東西、ありとあらゆる芸術と美食を極めた、この我が!

 

 こんな!ただ炊いただけの米に!生の卵などという汚物をかけ回すなどと!!」

 

 

あ、流石に今、聞き捨てならないセリフを聞いちゃった気がしたなー、俺。

生卵が、汚物?なんだそれ。オメー、もったいないお化けが出てくんぞコラ。

 

 

「へー、ありとあらゆる美食を極めたお方って、一口も食べずに見極められるんですかー」

 

「へー、凄いなー、憧れちゃうなー。とっても俺にはできねーやー」

 

 

俺はヘソを曲げた。曲げるヘソなら、俺に敵う奴はいないってくらいだぞ。

頭来たんで、耳をホジホジして、フッと息で飛ばしてやる。

 

 

「ぬううう!生意気な口を叩きおって!貴様!素っ首出せぃ!捻り切ってくれる!」

 

 

甲龍王は色めき立つ。近くに侍っていた使い魔どもも、一触即発の気配。

 

 

だが、俺はあくまで冷静、冷静です。

 

 

「まぁ、俺の首を捻り切るのもいいですが、一口くらい食べてみてもいいんじゃないですか?」

 

 

俺の料理「TKG」は熱いうちが旬。旬を逃すような真似を、甲龍王様ほどのお方がされるだなん

 

て!食に対する冒涜とも取れますが?

 

 

俺は畳み掛けるように言う。果たして、ペルギウスは歯ぎしりせんばかりにしている。

 

 

「グヌヌ…よくぞ抜かしたものだ」

 

 

椅子に座りなおす。すかさず、シルヴァリルがナフキンを首周りに巻きつける。

ペルギウスが茶碗を手に取る。顔に近づけ、匂いを嗅ぐ。

 

 

「――ふむ、香りは合格だ。香ばしい」

 

 

次に、米だけを口に含む。慎重に味わっている。

 

 

「むぅ。これは味わったことの無い米だ。――貴様、まさか!」

 

 

クワッと目を剥き、睨みつけてくる。俺はニヤリとする。

 

 

「……自家製、アイシャ米とでも、申しておきましょうか」

 

「ほぅ、自家製。貴様、米を自力で栽培しているのか」

 

「えぇ。本物を口にしたいのなら、当然でしょう」

 

俺は誇らしげに語る。

 

 

「種籾より数年かけて選別し、我が愛妹アイシャ・グレイラットによって栽培された、今現

在、この世にひとつしかない、アイシャ米。……麗しき処女の手による作品です」

 

 

「ヌッ、あの小娘の手によるものか…」

 

 

ペルギウスは、まるで絵画を愛でるかのように、盛り付けられた米を眺めた。

 

 

しかしすぐに思い直したかのように、厳しい眼差しになる。

 

 

「だが、それと味とは関係ない。そう、要は味なのだ!」

 

 

さっきは食べる前に貶してた癖に。

 

ペルギウスは添えられていたスプーンを手に取る。

そして、そっと、黄金色に染まった米を、掬い取って、口に含む。

 

 

「――うぐっ!!」

 

 

龍王が呻いた。なんだ、なにか問題でもあったか。

しかし、すぐに落ち着きを取り戻したのか、二口目を食べた。

 

 

「……うむ、炊きたての米の香りと、熱された卵黄の香りが、マッチしている」

 

 

咀嚼をして、ゴクリと飲み込む。そして三口目、四口目。

 

 

「米というのは、香り高いモノなのだな。炊き方と水が良いのか」

 

「この卵は、新鮮そのもの━━━今朝、産み落とされたものか」

 

「鶏のエサも、吟味しているというのか。濃厚であり、余計な雑味が感じられん」

 

「この茶碗、そっけなく感じるが、匠の美意識を感じる」

 

 

いや、それ俺のお手製ですけど。

 

 

パクパクと口に入れ、その都度何かしら文句を垂れる。忙しいな。

落ち着いて食べればいいのに。

気が付けば、あっという間に食べ終えていた。

深い溜息をつきながら、茶碗をテーブルに置く。

俺はそれを見計らって、お茶を出す。本当は緑茶が良かったんだが。

そのうち、緑茶もなんとかしよう。

 

ペルギウスはティーカップを手に取り、ズズーっとお茶を啜るように飲んだ。

 

しばし、静寂――。

 

俺は、直立不動の姿勢を崩さず。

ペルギウスは瞑目している。

 

 

「……結論から言おう」

 

「……はい」

 

 

俺は静かに頷いた。

 

ギロリ。ペルギウスは俺を睨んだ。

 

 

「――食えなくは、無い」

 

「――はぁ?」

 

 

俺は茶碗を見る。綺麗に食べきっていた。それなのに。

 

 

「食べきってるじゃないですか」

 

 

俺は問いただす。

 

 

「フンッ!我に食物を粗末にせよとでも言うのか!」

 

 

プイッとそっぽを向かれてしまう。なんだこの王様。

 

 

「味は、悪くはない。だが、これは料理とは言えん!」

 

「料理とは!もっと!精緻であり、手をかけるべきである!」

 

「素材と素材を混ぜただけでは、認めることはできん!!」

 

 

んー、つまり、美味しいと言いたくないだけか。

なんとなく、俺はコイツの言いたいことがわかってきた。

つまり、素材や味だけじゃダメってことね。こーの意地っ張り。

 

 

「……わかりました。一週間お待ちください。本物の料理をお持ちしましょう」

 

 

俺は啖呵を切った。自信は無い。だが、こっちにも意地がある。

 

 

「甲龍王が納得するような、料理をきっとお見せしましょう」

 

 

俺はそう言い残すと、空中庭園を後にした。

長い回廊を足早に。

目指すは愛する家族の待つ我が家。

グレイラット家の総力を結集して、事に当たってやる。

ちくせう!覚えてろよ、ペ様の野郎!

 

 

 

ルーデウス・グレイラットは、伊達じゃない!

 

 

 

 

         

 

 

           ~その2につづきます~

 

 






( •᷄ὤ•᷅)……その2に続いちゃうます。

皆さんは、どのTKGが好きですか?麿は電撃TKGが好きです。
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