乙女ゲーの世界で『ウェイクアップ』と叫んだ男   作:R1zA

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決闘終了後はもっと早めに進めて行きたい。


ep.Ⅻ「やってみろよ」

 

 

 あの後、気絶したグレッグは教師たちによって担架に乗せられて運ばれて行き、俺はダンに乗ったまま控室へと下がる。

 その際、決闘内容に観客たちが、グレッグが意外にたいしたことがなかったと口を揃えて言っているのを聞いた。

 

 

「あいつ実は弱いんじゃないか?」

「実戦が~とか、五月蠅かったのにこの程度かよ」

「期待していたのに残念。弱い男って興味ないわ」

 

 

 ここまでの手のひら返しは流石に同情する。

 俺達以上に期待を持たれていたから、余計に周りの『強い』という理想像から離れたショックは大きいのだろう。

 

 

「……ここまで差を見せつけるか」

 

 

 観客席に居たアンジェリカは蹂躙とも言える程の圧倒的な決闘内容を目にして息を呑む。

 頬を伝う冷や汗をハンカチで拭い、その間今一度先程の決闘の凄さを再認識した。

 

 別にグレッグが弱かった訳では無い。

 むしろこの歳なら相当強い部類なのだが、それ以上にヴァンが強すぎたのだ。

 要は相手が悪すぎたのだ。仮にグレッグが最新式を用意していたとしても一切歯が立たなかったのは、アンジェリカの目から見ても分かる。

 

『(それに鎧の戦闘だけではなく、最後の瞬間……生身の戦いでも明らかにエルブレイブが上だった。あの強さなら正式な騎士でさえ容易に倒せる……が、エルブレイブの実力は今まで全く知れ渡っていない。さては授業の時は手を抜いていたな? リオンとは別の意味で恐ろしい男だな)』

 

 別に本人は態々悪目立ちしたくない、程度にしか考えておらずそこまで大層な考えがあったわけでは無いのだが、グレッグをあそこまで一方的に倒したお陰でその実力は露見した。

 今後は色んな意味で注目株となるだろう。

 

 

◆◇◆

 

 

『バルトファルト……私は二人のように油断しない。最初から全力で行く!』

「そうか。なら、俺も本気で戦うよ」

『……その言葉に嘘は無いな?』

 

 鎧の残骸の撤去が終わってすぐ、次の試合が始まろうとしていた。

 名前は確か……クリスの青い鎧とリオンのアロガンツが闘技場で向かい合っている。

 剣豪と言われてるくらいだから俺もちょっと戦ってみたい気持ちはあったのだが、生憎順番の都合が合わなかった。

 

 

『両者、始め!』

 

 

 合図と共にクリスはリオンに斬りかかろうとするが、リオンは高速で端の方へと後退する。

 剣一辺倒の相手に近接戦は仕掛けないつもりか。

 ……ある意味この試合は恐らくすることはない対リオン戦の参考になる。俺もクリスも主兵装が剣だからな。

 クリスにはどうにか長生きしてもらって、その戦闘を今後の参考にするとしよう。

 

「ルクシオン、ドローン展開」

『了解しました』

 

 アロガンツの背中から八つほどの球体が放たれる。

 その球体には射撃兵装が搭載してあり、一度クリスの鎧を囲んだかと思えば、一斉に射撃を始めた。

 

『なっ……』

 

 大剣を盾にしつつ、何とか避けようとするクリスだが、四方をドローンに囲まれては流石にどうしようもなく、直ぐに身動きが殆ど取れなくなってしまう。

 ……これは逆にどうすれば抜けられる? 弾幕を切りながら進めば何とか行ける気もするが。

 

『くっ…、バルトファルト…お前は…!こんな…こんな戦い方で満足か!?騎士道の欠片も無い…!!』

「言いたいことはそれだけか?決闘なんてどう取り繕っても殺し合いだろうが。銃撃に頼ったら駄目なんてルール聞いてないね!」

 

 まあ言いたいことは分かる。

 剣一本で挑んでアレされたら俺もキレる自信あるし。

 まあだからと言って文句を言うつもりはないけど。

 

「でもさあ、二人に五人がかかってくる方が卑怯じゃない? ま、アンタらが弱すぎるから、せめて俺くらいは手加減してあげていいかなー、とは思ってるよ。君達の言う騎士道ってやつを体現してやろうじゃないか!」

『くっ……、バルトファルト―――バルトファルトォォォォッ!!』

 

 

 リオンの物言いに激昂したクリスは、ドローンの射撃の合間を縫って突撃を仕掛ける。

 かなりの剣速でリオンへと振るわれたその一撃は―――

 

 

「流石は剣豪様、お見事でした」 

 

 

 アロガンツの左手のみで防がれて、剣も無慈悲にそのまま真っ二つにへし折られた。

 クリスの鎧から煙が出て動かなくなっているのを見た審判が、力なくリオンの勝利を宣言する。

 薄っすらとだが、クリスの鎧から啜り泣くような声が聞こえてきた。

 

 

『……どうしてだ。どうして私は負けたんだ。誰よりも努力してきた。私は誰よりも頑張って……認められたかったのに』

 

 

 負け……まあ、負けか。

 剣殆ど関係なかったとも思うが、絶対の自信となっていた自身の剣が通用しなかったのはショックだろう。

 リオンが膝立ちでクリスへと近寄る。

 

「不幸自慢はご自慢の彼女にするんだな。同情してくれるぞ」

 

 

 ……いや、もう少し手心を加えてやっても良いと思う。

 死体蹴りの一言が余程効いたのか、クリスはただ呆然としており、その後鎧から出て運ばれていくまでの間さえ一言も発さなかった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 クリスが闘技場から運び出され医務室に向かう中、ジルクは次の試合の準備を行っていた。

 鎧の整備士に次々と指示を出していく。

 

「ありったけの武器を積み込みなさい。ライフルは軍用の物を、弾丸も対鎧用魔弾を使用します」

 

 その言葉に整備士が目を見開く。

 

「でもジルク様、こんなの試合で使う代物じゃありませんよ!」

「これは決闘です!!」

 

 普段は温和な性格のジルクが、今回は一切の余裕を失うほどに焦っていた。

 鎧には軍用のライフルや、見栄えを重視した剣の代わりに斧が持たされた。まるで戦場に行くかのように。

 

「飾りを外して追加の装甲を取り付けてくれますか。それから、手榴弾の類いも用意して貰いますよ」

 

 突然の要求に、整備士が困っていた。

 今ある部品では限界があると。

 ジルクは俯き、少し悩む素振りを見せて顔を上げた。

 

「構いません。出来る限りの事をしなさい」

 

 

 大急ぎで装備を変更する周囲に目もくれず、ジルクは頭の中で可能な限りの戦法を構築していた。

 

『(せめてエルブレイブだけでも……なんとか私で止めなければ。仮にそれが出来なくとも、ダメージを与えなければ殿下の評価が…)』

 

 田舎貴族二人に五人が蹂躙されたとなれば、ユリウス殿下の評価は地の底へと落ちるだろう。

 王位継承権にも影響が出るかもしれない。

 それを防ぐ為、ありとあらゆる手段を執ることにした。

 ()()近くに置かれていた爆弾を一つ手に取る。

 

 

「……少し出かけます」

 

 

 鎧の装備を換装させ、一人ジルクは部屋を出て行く。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 少しの間のインターバルを挟んだ後闘技場に降り立つと、既に出てきていた緑が声をかけて来た。

 その雰囲気は……何というか、嫌な感じだ。アレだけは他と比べても絶対に仲良くなれない気がする。

 

 

『――君は、貴方方は強い。敬意を表しましょう』

「はあ」

 

 

 なんか褒めてくれたが、その声には何処か隠しきれない焦燥感が入り混じっている。

 もし俺だけならソレにも何とも思わなかっただろうが、生憎こちらにはリオンとルクシオンの凶悪コンビが居る。

 ……だから目の前のこいつが、俺達の()()()()()()()()()()()()()のもお見通しだ。

 

 

「なあ、アンタ……少し焦ってるんじゃないか?」

『はい、確かにそうかもしれません。予想以上に追い込まれましたから』

「そうか。あ、あと一応言っておくが―――悪いな、うちは他人の言うことが素直に聞けないバカ揃いなものでね。……俺も、兄貴も」

『――やはり、貴族の風上にも置けない野蛮人のようですね。貴方方は…!』

 

 

 多分俺が言いたいことを察したのだろう。

 こいつは他の男子を通して、兄貴とリオンの姉に爆弾を仕掛けるよう指示したらしい。

 素直にリオンの姉は従ったらしいが、俺の兄貴の方はバッサリ拒否。

 曰く、「私は一人の騎士を志すとして、貴族として、騎士道に背く愚かな行いはしない。貴様等は確かに貴族の名を背負っているが、どうやら騎士の器では無いらしい」とは、中々格好いいこと言うじゃないか。興奮したらすぐ鼻血出す変態なのに。

 

 

 その時のリオンが「うちの愚姉と交換しない?」と遠い目で言いながら爆弾を解除していたのが印象に残った。

 粗大ごみと変態だと限界まで譲歩しても等価交換にすらならんから普通に断ったけど。

 

『両者、始め!』

 

 審判が開始の合図を出すと同時に、ジルクは右手に持ったライフルを俺に向ける。

 空へと飛び、問答無用で手榴弾を投げつけてくる。

 むくむくと透視のきかない煙幕が盛り上がると共に、俺の視界の殆どが潰された。

 

 

 ……煙幕とは、向こうもかなり本気らしいな。

 

 

◆◇◆

 

 

 ジルクは闘技場でギリギリの高さまで浮き上がる。

 あまり高く飛ぶと失格になるので、ギリギリの距離まで上がって、そこからライフルや手榴弾で安全に敵を打ち下ろす戦い方を選択した。

 

 

「……殿下に逆らった時点で君の人生は終わっている。ここで華々しく終わらせてあげますよ」

 

 

 頼りになる奥の手は潰された。

 何とかリオンの姉を動かすことは出来たが、肝心のヴァンの兄は動かなかった。

 それにもしもの時は実行役を切り捨てればいいとはいえ、向こうは恐らくこの策に気づいている。

 

 

 軍で使用される対鎧用ライフルは貫通力が高い。

 決闘に持ち出すのはあまりいい顔をされないが、今のジルクにとっての唯一の勝ち筋がこれだった。

 

 

 引き金を引く。

 煙の中であるが故に、飛び散る火花しか見えなかったが、確実に命中したとジルクは考えていた。

 

 ―――しかし。

 

 

「な、何だと…!?」

 

 

 そこには、無傷で佇むダン・オブ・サーズデイの姿が。

 剣を振り下ろした様な姿勢で固まっており、下に落ちているのは―――両断された弾丸だった。

 

『(アレは軍用の対鎧用魔弾だぞ!?それを防ぐどころか、剰え剣でソレを切り裂いただと!?)』

 

 そんな芸当はクリスにさえ出来やしない。

 いや、そもそも弾丸自体が普通に考えて常人に反応可能な速度を超えているのだ。

 ダンの紅い双眸が不気味に光る。

 

『ちっ!』

 

 今のはただのまぐれだと断じたジルクは、手榴弾を投げつけ、ライフルを構える。

 ボルトアクションで弾丸を装填し、引き金を引く。

 

 

 するとヴァンが今度は剣を高速で回転させて全ての弾丸を切り裂き、仕上げに少し遅れて飛んできた手榴弾を、剣の腹で球を打つように打ち払った。

 鎧の性能はおろか、まさしく変態と呼ぶに相応しい技量を目の当たりにしたジルクは爆弾を起動することを決意する。

 

 

『これでバルトファルトの鎧だけは……!』

 

 

 セットした爆薬を作動させるため、特殊な魔法をアロガンツのある控室へと向かって放つ。

 

 

 

 

 だがしかし、爆発音は何秒経っても聞こえない。

 そして理解する。

 

 

 

 やはり爆弾は気づかれていた。

 元々ダメ元だったとはいえ、両方に未だ一切のダメージを与えることの出来ていない事実。

 冷や汗が背筋を伝うのを感じながら視線を戻すと、突如として闘技場内に竜巻が巻き起こる。

 

 

『一体何が……!?』

 

 

 もしやと思いヴァンの方を見ると、頭上で蛮刀をプロペラの様に回転させて、この竜巻を引き起こしていた。

 同じ鎧の筈なのに霄壤(しょうじょう)の差がある事実を見せつけられたジルクは歯噛みする。

 いくらなんでも性能が違いすぎる、と。

 

 

 そして煙が霧散し竜巻が晴れた後には―――何も残って居なかった。

 地面に居るはずのダンの姿が、確認出来なかった。

 

『どこだ、一体何処に……!』

「ここだ」

『っ!?』

 

 声のした方――上を見上げると、太陽を背にしてヴァンの鎧が自身の真上に飛び上がっていた。

 急降下しながら振り返り、ライフルを構えるとヴァンもまた急降下して向かってくる。

 引き金を引くが、やはり弾丸は剣に弾かれる。

 

『出鱈目な…!』

「そっち程じゃない」

 

 どうせもう色々と察していると判断したジルクは、戦斧で斬りかかった。 

 ヴァンがそれを剣で受け止めると、闘技場の観客たちに聞こえないように話しかける。

 

『……貴方達は何も分かっていない』

「そりゃあな。みんながみんなお前のように何でも知ってると思うなよ」

『殿下と決闘をするつもりですか?君達は貴族として終わりますよ?』

「次決闘するのは俺じゃない。リオンだ。俺に言っても大して意味が無いだろう」

 

 一般的な男子ならここまで言えば普通は察する。

 仮に察しが悪くても、デメリットを言えば何かしら交渉の余地を生み出す事が出来た。

 だが目の前の男は、何を言ってものらりくらりと躱すだけで、一向に話が進展しない。

 面倒な相手だった。

 

 

 ジルクの脳裏に浮かんだのは、自分に向かって微笑んでいるマリエの姿。

 不思議な女性だった。

 出逢ったときからまるで自分のことを完全に理解しているようで、自分の理想そのものと言える程の女性だった。

 

 

『私は!初めて理想の女性に出会った!』

「そうか。幸せにな」

『ならば何故私達の邪魔をする!? 殿下も私も、彼女のことを本当に愛しているんだ! 独占したいんじゃない。彼女に幸せになって欲しいんだ!』

「――成る程、訳分からん」

『何故……!』

 

 

 何故ここまで言っても理解できないのか。

 普段とは別人と言える程に激情を顕にしていた今のジルクには、それを考える程複雑な思考をする余裕は無かった。

 ダンの伸ばした左腕が自身の鎧の肩を掴み、ジルクの鎧のカメラの目の前にはダンの頭部が大きく映り込んでいた。

 

 

「正直、ここでワーワー言うのは好きじゃ無いんだが……。お前、さっきから小汚い戦法ばっかりしてるけど、それで勝ってあのマリエとやらに誇れるのか?」

『これは決闘です!戦い方など関係ない…!それに、彼女はそのようなことで私に失望したりなどしない!』

「それには概ね同意だ。確かに戦い方は千差万別、人それぞれだ。……でもさあ、相手に自分の理想を押し付けるのは少し納得出来ないよ」

 

 

 その物言いにジルクは激憤する。

 他人の意見に耳を傾ける訳でも無く、マリエのことを蔑むような物言いが気に食わなかったから。

 肩を掴んでいる腕を振り払おうとするものの、膂力の差で押し留められる。

 

 

『彼女を侮辱する気ですか!?』

「侮辱じゃない、事実だ。完璧な人間なんてこの世には居ない。お前が言うようにマリエとやらが、お前のその考え全てを笑って許すと本気で思ってるのか?」

『彼女は器の広い人だ!だからこそ私達は彼女を愛した!そしてずっと一緒に居たいと思ったのです!』

「その考えこそが理想の押し付けだと思うんだがな、俺は…。まあいい、これはついでみたいな物だったさ。本題は次だ」

 

 

 漸く肩から手を離したかと思えば、再び加速して自身へと斬り掛かってくる。

 なんとか攻撃をライフルで受け止めると、衝撃でライフルは弾かれ、そのまま地面に落下した。

 そして生まれた僅かな隙の間、蛮刀を右腕に装着したダンが今度は両手で自身に組み付いてくる。

 ジルクが斧で斬りつけるも、まるでなまくら包丁で鉄の塊を切っているかのようにびくともしない。

 

 

 ジルクがヴァンに羽交い絞めにされたのも束の間、ヴァンは単刀直入に問を投げた。

 

 

「お前―――婚約者が居たはずだよな?」

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

『貴方には関係無いでしょう……!』

「ああ、無いな。でも決闘相手として聞く権利くらいはあると思うんだが?」

 

 

 元々こんなことを聞くつもりは無かった。

 数日前に、皇子以外にも定められた婚約者が元々居たのだと耳にするまでは。

 

 結局は他人事、対岸の火事だ。

 リオンにとっては、こいつらがマリエとやらと付き合うのが不味いらしいが、その辺りの事情を詳しく知らない俺からすれば、好きにしろとしか言いようがない。

 

 だからこの問いも、俺にとっては誰かも知らない婚約者とのけじめをつけずにこうしているのは、あまりにも不義理なのではと考えた俺が勝手に言っているだけだ。

 ある意味でこいつらと同じような、身勝手な考えの押し付けに軽い自己嫌悪を覚える。

 だが言ってしまった以上、もう後戻りは出来ない。

 

 

「今のお前がそいつを愛しているのは、俺にはもう変えようの無い事実だな。……でも、それならお前は前の相手に最低限のけじめをつけたのかって聞いてるんだ」

『やはり貴方は何も分かっていない!それは返って彼女を傷つけることになるだろう!私はそんな事を望まない!』

「確かに、今の俺にお前達の思いは……誰かを愛する心は、理解できないよ。―――でもさ、お前がそいつを裏切った以上、もう傷つけてるだろ。なら最後の言葉くらいは正面から言ってやれ!」

 

 

 こういうのは有耶無耶にするよりも、バッサリとけりをつけた方がずっと良いと勝手ながらに思う。

 その辺の経験がない以上、完全に憶測なのにこんな偉そうに語っている訳だなのだが。

 こいつの婚約者の名前も知らない以上、これが切欠で迷惑を掛けてしまったら申し訳無い。

 

 

『黙れ!私はどんな手を使っても君には負けない。もしも貴方が、貴方達の何方かが……殿下に何かするつもりなら、私の全てを賭けて君を――いや、君の家族にも責任を取らせる!』

「……っ」

 

 

 家族―――家族か。

 確かに、俺の我儘でこんな騒動に実家まで巻き込むのはいけないことだ。

 羽交い絞めにしていた緑を離すと、緑は手ごたえを感じたのか俺へと一直線に斧を振りかざしてくる。

 

 

 

 でもさあ―――

 

 

 

 

 お前が言うのなら―――()()()()()で良いんだな?

 

 

「―――やってみろよ

『な……!?』

 

 斧を剣で力まかせに吹き飛ばし、直ぐ様上へと刃を走らせることによって緑の鎧の右腕を両断する。

 今の俺達は空の上で戦っており、観客たちは見上げている状況で声など聞こえていない。

 だからといって散々言っても聞かずに、挙句の果てに一線を超えたこいつにかける情けは既にない。

 

 それと、こいつは一つ勘違いをしていた。

 

 

「実家の圧力で潰せると思ってるようだが……そもそも、マーモリアとエルブレイブならエルブレイブの格のほうが上だ」

『一体何を……』

「宮廷貴族だから?王国は実力主義だろうに。あとそもそも、俺よりもうちの爺さんの方が何倍も強いからな。武力で家に敵うとでも思うなよ」

『う、嘘をつくな!ロストアイテムを超える戦力など、早々存在するはずが―――ま、まさか……!?』

 

 

 ……この調子だと、何か気付いたか。

 王宮暮らしなら元々何かしらの情報は持っていたのだろうな。大方親や世話役から『最強のロストアイテムの鎧を所持する辺境貴族が居る』と聞かされていたとかの。

 虎の威を借るようで胸糞が悪いが、先にやってきたのはそっちだから文句は言えまい。

 

 

「実家に言ってみろよ。『エルブレイブのクソ野郎を潰すから飛行船と鎧を貸してくれ』って。もしそれで手を出してくるなら―――俺達はマーモリアを、王国の膿と判断して容赦しない

『……っ!』

「だから精々婚約者に手紙の一つでも送って、誠心誠意謝罪して来るんだな!」

 

 

 自分でも驚く程に底冷えする冷たい声が出て、俺に空中で踏みつけられた緑の鎧は地面に向かって堕ちていく。

 轟音を響かせて地面へと叩きつけられた鎧は無惨な姿となり、動けそうにない。

 

 

『(間違っていた―――潰されるのは、私達だ。殿下、こいつは危険です。絶対に戦ってはだ――め――です)』

『しょ、勝者、ヴァン・フォウ・エルブレイブ!係員は、ジルク・フィア・マーモリアの救助をお願いします』

 

 

 審判が緑の状態を確認し、俺の勝利を告げる。

 闘技場の観客全員が、今の試合内容に瞠目していた。

 

 

 

 

 





改めて見返したら中々酷えなオイ。


ヴァン:最初は本当に説得する気だった。
 でも何を言っても相手の心には響かず、自身の周囲をダシに脅して来てやっぱりプッツンした。
 終わった後はいくらか冷静になり、少しやりすぎたと思っている。

ジルク:恐らくこの作品の五馬鹿では一番損な役回り。
 昔周囲の人に、確かにそんな話を聞いていたが、自分の興味を引く為の噂と創作だと判断していた。先程までは。
 当然親は勇者の栄光を、その脳裏に焼き付けている。




前回高評価をしてくださった、


【☆9】
雨宮 八音さん、Ilyveghtaさん、ライリーフさん、睦月透火さん、ルートクロフクさん、室伏周平さん、ヘルマンさん、ナイトアーツさん、打出小槌さん、楽師さん、ホーエルさん、日ノ森さん、冬獅子さん、〇米3さん、juda3412さん


ありがとうございますm(_ _)m


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