乙女ゲーの世界で『ウェイクアップ』と叫んだ男   作:R1zA

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何とか一ヶ月ぶりは避けれた……

課題とテストに追われ、例のニコ動の推しの子に影響されて書こうとしたら先駆者が居たから辞めて……とかしてたらもう二十日以上空いてたよ……


二学期
ep.XⅥ「新学期、学園祭」


 

 

 二学期が始まってから数週間が経過した。

 あの後は特に何もなく、比較的平和な生活を送れている。

 そしてこの季節は学園祭に修学旅行と、大きなイベントが目白押しだ。

 

「あ、二人とも机はもうちょっと右に移動させて」

 

 ダニエルとレイモンドが、よく磨かれた巨大なテーブルを慎重に運んでいた。

 監督役はリオンだ。

 

 三日間あるこの学園祭で、リオン達がやるのは喫茶店。

 リオンを筆頭に、ダニエルとレイモンド、オリヴィアとアンジェリカ、あと俺がメンバーとなっている。

 

「おい、ヴァン。片手で運ぶな、もっと丁寧に扱え。そのティーセットめっちゃ高いんだからな」

「そんなのをこんな所で使うんじゃねえよ」

 

 俺は見るだけでいいやと思っていたのだが、こうしてメンバーの中に引き摺り込まれた。

 リオン曰く、人手が足りてないのだとか。

 だからこうして開店前の準備の手伝いと、店員役をする事になった訳で。

 

 

 

 大皿の上に載せて運んでいたティーセット一式を、先程ダニエルとレイモンドが運んでいたテーブルの上へと置く。

 皿もカップも鮮やかな光沢を纏っていて、高価な物を使っているというのが一目で理解できる代物だ。

 一体何ディアしたのだろうか。

 

 

 そんなことを考えていると、いつの間にかオリヴィアとアンジェリカが着替えて帰ってきていた。

 そちらへと戻ると、アンジェリカが俺達を見ていた。

 

 

「リオン達に制服は無いのか?」

「あるけど、野郎が着ても代わり映えしないよ。だから安い服で良いかな、って」

「もしかして、私達の服で予算が無くなったとかですか?む、無理して高い服を用意してもらわなくても良かったのに」

 

 少し申し訳無さそうにするオリヴィアを見て、ダニエルがくすりと笑った。

 

 

「いや、単純に興味が無いからだよ。だって、その他にはお金をかけまくってるし」

「絶対に趣味だよね。流石にお金を掛け過ぎだよ。他に喫茶店を出す人達が可哀想なくらいにね」

 

 

 ダニエルとレイモンド、アンジェリカさえも、呆れたようにリオンを見ていた。

 その辺の店レベルにまで拘った内装は、やはり彼ら彼女らからしても異常の領域に入るらしい。

 

 

「お前、かなりのお茶狂いだもんな。それもこの学園の中でも指折りの」

「失礼な。俺はお茶に狂ったんじゃなくて、師匠のお茶に惚れ込んだだけだ」

「自覚のない狂人かよ」

 

 

 結局お茶に狂ってるじゃないですか。

 確かにあの人が只者じゃないのと驚異的なカリスマ性を持っているのは認めるが。

 リオンはフッ、と微笑を浮かべて腕を組む。

 

 

「――俺なんてまだまださ」

「腕前の話ではなく、茶にどれだけ金と時間を注ぎ込んだのかという話だぞ」

 

 

 リオンの迫真の決め台詞は、バッサリとアンジェリカに両断されていた。

 まだあるようで、「それに」と、続けるアンジェリカ。

 

 

「この前も私達二人を置いて、あの教師と茶葉を買いに行っただろ」

 

 

 いやー、それは流石に駄目でしょ。

 仲良い女子との用事すっぽかすとかマジないわー。

 ダニエルとレイモンドも同じ気持ちのようで、ちょっと引いた目でリオンを見ていた。

 

 

「お前、二人との約束すっぽかしてそれは無いぞ」

「全くだね。夜道で襲撃したいくらいだよ」

 

 

 ご尤もな意見である。

 たとえその茶葉を二人に振る舞う為だとしても、当日にすっぽかしてまで行くのは如何なものか。

 

 

 ……少し、外の空気を吸いに行こうか。

 

 

「……?おいヴァン、どこ行くんだ?」

「少し鷹狩りに」

「鷹狩り……?」

 

 

 当の女子達は二人だけの空間に入り込んでいて、俺の声など聞こえてないのだから別に大丈夫だろ、と思うも

 レイモンドからの軽い注意を受けて、俺は一旦部屋を後にした。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 一度部屋を離れた後、俺は学園内を散策していた。

 学園祭の準備ということで慌ただしく生徒が動いており、でも実際に動いているのは男子だけというのが何とも言えない。

 女子は後方から指示を飛ばしているだけだった。

 

 

 きっとこの状況に不満を持つものは一定数いるだろうに、異を唱えるものは誰一人として居ないのだから、乙女ゲーとやらの世界は恐ろしいものである。

 

 まさに一部の女子達の理想郷とでも言ったところか。

 

 

「―――ん?何か騒がしいな……」

 

 

 そんなことを考えながら喫茶店の教室付近へと戻ると、割れるような賑わいの声が聞こえてくる。

 何事かと思い早歩きで向かうと、かなりの人数の女子たちがリオンの喫茶店……の隣の教室に群がっていた。

 その人混みもそこそこの物で、遠目からだと殆ど内側の様子が分からない。

 

 同じく女子達のざわめきの声に引かれて部屋から出てきたリオン達に、何かあったのか訪ねてみる。

 

 

「なあ、あの人混みは何なんだ?」

「俺も知らない。だからこうして確認しに来たんだよ」

 

 

 四人と合流して隣の教室前へと向かうと、大勢の女子達に囲まれた皇子たちの姿があった。

 

 

「暇があれば来てくれ。歓迎するよ」

 

 

 笑顔で接客する皇子の姿は、案外様になっているのではないかと思えた。

 相手が皇子というバイアスが掛かっているのもあるが、当然女子達の評判は高い。

 

 

「は、はい!」

「通います。私、学園祭の三日間、全力で通います!」

「わ、私も沢山お金を使います!」

 

 

 自分達の出し物のチラシを女子たちに配っているらしく、扉の横には看板があるが……これはマズいんじゃないか?

 そう、何故なら皇子達が出店する店は―――

 

 

「『喫茶店プリンセス』をよろしく頼む!」

 

 

 偶然か、それとも意図的な物か。

 彼等もリオンと同じく、しかもあえてその隣に喫茶店を出すらしい。

 ダニエルが肩を落としていた。

 

 

「喫茶店を隣同士に並べるなんてあり得ないだろ」

「多分、リオンへの当てつけだよね。 実行委員にも、決闘の賭けで負けた人がいるだろうし。でも、流石にこれは酷いよね」

 

 

 皇子はリオンを見つけると、リオンに向かって意味ありげな笑みを浮かべて近寄ってくる。

 対してリオンは、げぇ、と言わんばかりに嫌そうな顔をしており、傍から見ても分かるその負のオーラは、皇子だけでなくこの場には居ないマリエにも向いているのではとも思えた。

 

 

 やはり、あの『原作』云々の事に関して、リオンはまだ根に持っているらしい。

 

 

「バルトファルト、お前も喫茶店を出すらしいな。俺たちも喫茶店を開くつもりだ。良かったら来てくれ。エルブレイブも是非来てくれて構わない。―――歓迎するぞ」

 

 

 ……心なしか、リオンに比べて皇子の俺への評価が高いような気がする。

 あの件で仲間だと思われたのなら心外だが、別に嫌な訳でもないしこのままで構わないだろう。

 

 

 皇子が渡してきたチラシを受け取って、内容を見てみたオリヴィアが驚いていた。

 

 

「お、お茶とお菓子のセットで百ディア!?」

 

 

 目を回してリオンの方へと倒れ込んだオリヴィアを尻目に、拝借したチラシの中身を見る。

 ……一瞬自分の目を疑ったが、確かにお茶とお菓子合わせて100ディアって書いてあるな。他にも書いてあるその他諸々のサービス料も含めたら二、三百は軽く飛ぶんじゃないかとまで思える。

 

 皆が唖然とする中、皇子はその様子を見て首を傾げる。

 

 

「やはり安すぎたか?だが、これくらいが良いとマリエが言うからな。本当ならもっと稼ぎたいんだが」

「へぇ……幾らにするつもりだったんだ?」

「最低でも500ディア辺りで、それぞれの値段は今の十倍程度にするつもりだったな」

 

 

 皇子の言葉を聞き、リオンとオリヴィア、ダニエルとレイモンドもその突拍子も無い値段に呆然とし、二の句をつぐことさえも忘れてしまっていた。

 確かに今の値段でも中々に不条理な物だが、その領域にまで行くと最早店に近寄るのさえ憚られるな、と皇子以外誰一人として動かない静寂の中で考える。

 

 

「―――リオンさん、貴族様って凄いですね。私にはこんな喫茶店に入る勇気がありません」

「それが普通の反応だと思うよ。こいつはもう無視していいから」

 

 しれっと毒を吐くリオンにムッとするものの、皇子は軽く咳払いをして表情を整える。

 

 

「随分と余裕だな。だが、バルトファルト―――次は負けないぞ」

 

 捨て台詞を吐いて去って行く皇子の後ろを、俺達は先頭のリオンに引っ張られるような形で列をなし、ぞろぞろとついて行く。

 部屋の前まで進んだ後、後ろを振り返った皇子が驚く。

 

 

「おい、なんでついて来るんだ!」

「いや、偵察でもしようかな、って」

「図々しいぞ!」

「俺、自分に正直だから、気になったし見ておこうと思ったんだよね。ほら、見せてみろ……よ?」

 

 

 リオンが半ば強引に中へ入ったので、自分も部屋の中へと入るが……視界に入ってきた光景は、想像の斜め下を行く物だった。

 

 

「これは……」

 

 

 部屋の中は、喫茶店と言うにはギラギラしていて余りにも目に悪い配色の内装に包まれていた。

 ローテーブルに豪華そうなソファーが並び、少し薄暗い電球の光が灯っている。

 壁には空のワインの瓶が幾つも並べてあり、見慣れない感じのこの雰囲気は―――

 

 

「ホストクラブじゃねーか!」

 

 

 知っている人ならば分かるであろう気持ちを代弁して叫んだリオンに、衣装合わせをしていたらしい水色と紫……クリスとブラッドが視線を向ける。

 

 

「騒がしいと思えば……バルトファルトと、エルブレイブか」

「敵情視察かい? バルトファルト、相変わらずコソコソと汚い男だな」

 

 

 やっぱり、若干リオンにだけあたりが強い気がする。

 まだ決闘のことを引き摺っているのか?

 

 

「お前ら卑怯だぞ!」

「お前からその言葉を聞けるとは思わなかった。やはり、マリエの提案に乗って正解だったな。お前の悔しがる顔を見られただけでも価値がある」

 

 

 やはり、これはマリエの入れ知恵らしい。

 まあ確かに皇子達だけでこの結論に至るのだとすれば流石にドン引きだが、こいつらを躊躇なくこっち方面の戦略で使うマリエも中々強かだな。 

 

 

 

 

 そんな事を呑気に考えていると、いつの間にかリオンがオリヴィアを庇うような姿勢になっていて、その直後に部屋の中を珍しそうに見ていたダニエルが、メニュー表を発見して驚く。

 

 

「サービス料十分で百ディア!」

「こ、こんなに高額な喫茶店って……」

 

 

 レイモンドもそれを見て驚いていた。

 

 

 

「―――当然よ」

 

 

 部屋の奥から、自分の衣装合わせをしていたらしいマリエがこの場に現れた。側には例のエルフの少年が控えている。

 

 

「言っておくけど、ユリウスをはじめ、みんな元は付くけど名門の跡取りだったのよ。そんな彼らにサービスして貰えるんだから、それくらい払って当然ね」

 

 

 ―――凄いことに気づいてしまった。

 

 マリエが何か言っているが、彼女を紅一点としたこの面子で喫茶店の名前が『Prince(王子様)』でなく『Princess(お姫様)』。

 俺が言えたことじゃ無いが同じ転生者が、見てくれは良いにしても、その背格好でお姫様、お姫様ねぇ………

 

 

「……ハッ」

「な、何よ。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!」

 

 いえいえ何も。ナニモオモッテナイヨ。

 まあ俺は全然いいと思うよ、そういうの。

 

 そんなやり取りをしていると、マリエを見てリオンがチッ、と舌打ちをする。

 

 

「看板のプリンセス、ってお前のことか? お前、子爵家の末っ子だろ?」

「こ、心はいつでもお姫様よ」

 

 

 敢えて指摘したリオンに対し、僅かに赤面して反論するマリエに、ブラッドが助けを出す。

 

 

「マリエ、君はいつでも僕たちのプリンセス。お姫様だよ」

「ありがとう、ブラッド。それに引き換え、脇役もどきのモブのあんたと……あんたらときたら本当に失礼よね」

「ごめん。俺、嘘が言えないんだ。ピュアだから」

「あんたがピュアならモンスターは聖獣になれるしならず者も聖人君子じゃない。冗談は止めて」

 

 

 言葉の応酬が中々に酷い。

 マリエがふわりとした髪をかき上げ、そして俺たちに言うのだ。

 

 

 

「学園祭当日が楽しみね。まぁ、あんたたちの喫茶店は暇そうだから、私たちの休憩場所に使ってあげるわ。 あ、ちゃんと代金は払うから、ちゃんとしたお茶を出してね」

「……言われなくてもお茶に嘘はつかない」

 

 

 これは中々、面倒な事になりそうだ。

 

 

 

 ……そういえば、帰るときにやけに視線を感じたのだが、俺の気の所為だろうか。

 

 

『あっちのムカつくモブ野郎は兎も角、……もう片方のアイツ、結局何者なの?』

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 学園祭当日。

 上空では、開始を告げる花火が打ち上げられ、学園内は多くの来賓で賑わっていた。

 

 そしてリオン達の喫茶店はというと―――閑散としており、閑古鳥が鳴いていた。

 アンジェリカは重要な運営側の用事が出来たということで、この場には居ない。

 

 

 特にすることがない故、皆が暇そうにしていたが、ふとリオンがあることに気付く。

 アンジェリカ以外に一人、欠けている人員が居ることを。

 

 

「なあ、ヴァンは何処に行ったんだ?」

「ああ、ヴァンならさっき『隣の様子が気になるから見に行ってくる』とか言って出ていったぞ」

「マジかよオイ」

 

 

 ダニエルの説明を受けたリオンが軽く衝撃を受けていると、レイモンドが補足を入れる。

 

 

「あの時にユリウス殿下から『以前の礼だ、是非来てくれ』とか言って優先権を貰ったらしいよ。あとヴァンから伝言だけど、『百文字以内で感想を教えてやる』だってさ」

「……要らねえよあんなぼったくり店の感想なんか。議論の余地もなくクソの二文字で十分だろ」

 

 

 そう何でもないように吐き捨てるが、内心はあの皇子達の出す百ディアのお菓子がどの程度なのか、その辺の砂粒程度には気になるリオンなのであった。

 

 

 

 

 

「受け取れ。菓子と茶のセットだ」

「……どうも」

 

 

 ブラッドが持って来た紅茶と菓子を尻目に、部屋を見回す。

 やはりというか、部屋は多くの女子達で賑わっており、皇子達は隣に座ったり、話し相手をしたりなどの接客で、俺達の方とは違ってとても忙しそうだ。

 

 

 人目につかない部屋の一番奥に案内してもらったので、女子たちからの視線を向けられないのはありがたい。

 まああの後の帰り際に、夏休みの分の借りとか言って皇子にここに来る確約なんかされなければ、そもそも来てすらいないのだが。

 

 

 絶対に借りの返し方を間違っている。

 

 

 取り敢えず、出された菓子を食べる事にする。

 フォークを使って、一口。

 

 

 

 

 ああ、うん。……俺はあまり詳しいことは言えないが、何と言うか、良くも悪くも普通だな。

 別に美味しくない訳では無いが、このくらいなら、普通の店で買えば十個くらいは買える気がする。多分。

 

 

 ―――あと、視線を向けられないと言うのは客の女子達だけの話であり、例外がある。

 

 

「じー……(やっぱりこいつ、何者?‘‘あの’’主人公なの?それとも只のモブ?)」

 

「……」

 

 さっきからマリエがカーテン越しにガン見してきてるせいで、めちゃくちゃ食べにくい。

 もしかして俺何かしたか?記憶に無いのだが……。 まあ折角だし、色々聞いてみるか。

 

 

「……なあ」

「!?……な、なにかしら?」

「いや、暇だし」

「そ、そう」

 

 そう言うとマリエは、こちらへと近寄ってくる。

 やはり客が女子達だと出番が無いらしく、こいつも暇を持て余していたらしい。

 

「一ついいか?」

「何よ」

「―――正直、この茶と菓子の相場、どのくらいだ?」

「えっと……一人分で大体、10ディア弱くらい?」

「やっぱりぼったくりじゃねえか」

 

 

 人件費で一体いくら持っていかれてんだよ。

 多分同じことを俺達がやったら暴動が起きるぞ。 

 

 

 それを指摘すると、マリエが涙目で俺の両肩を掴み、前後に凄い力で揺さぶってくる。

 その雰囲気は、いつになく本気(マジ)だった。

 

 

「分かってるわよそのくらい。でもしょうがないでしょ!!あんた―――無職のボンボン五人抱えて養えって言われても同じことが言えるの!?」

「……何か、すまん」

 

 

 半ば自業自得とはいえ、流石に少し同情したくなる。

 その言い草だと、割とマジでその日暮らしで生きてるのか? 嘘だろオイ。

 

 

「同情されても虚しいだけよ。……てかあんた、結局何者なの?主人公?」

「は?……言いたいことがよく分からんが、俺は俺だ。それ以外の答えは持ち合わせてないぞ」

「そういうことを聞きたかった訳じゃないんだけど……。はぁ……まあ今はいいわ。その内分かるだろうし」

 

 

 結局何が聞きたかったんだ……?

 俺が転生者なのかどうかとか、そういう類の話か?

 だとすれば主人公とかいう単語が出てくるのはおかしい気もするが……、態々考えても答えは出ないか。

 

 

 それに早く戻らないと、リオン達から何を言われるか分かった物じゃない。

 ささっと紅茶を飲み干して、この場を離れる用意をする。

 

 

「そろそろ戻る。いい時間潰しになった」

「はいはいありがとうございましたー。あ、代金百ディアはちゃんと払ってよね」

「へいへい……」

 

 

 結局料金は定価で取られるのな。

 やっぱり損している気がするが、このことはもう自分の中で考えないことにしよう、と決めることにした。

 考えても意味はない。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「ん?何でこんな所に王妃が居るんだ……?」

 

 

 皇子達の喫茶店を後にして自分達の喫茶店へと戻った俺は、視界の中に見慣れない、と言うよりもこの場に居るはずのない人物が居るのを捉えた。

 

 

 恐らく案内をしていたのだろうアンジェリカの横に居るのは、ホルファート王国王妃、【ミレーヌ・ラファ・ホルファート】様であった。

 こんな催しに訪れた理由がまるで分からなかったが、他に別口の用事があるのだろうと見当をつけ、そそくさと部屋の中へと入ろうとする。

 

 

「ヴァン、今は営業中では無いのか? 何故外をほっつき歩いている?」

「……ヴァン? じゃあ、貴方がヴァン君なのね?」

 

 

 が、当然アンジェリカに見つかった。

 一瞬正直に『マリエ達の店を見に行ってました』と言いかけるが、心の中でその言葉を踏みつぶす。

 アンジェリカに皇子の名前を出しても良い顔はされないだろうし、『あの件』で昇進となった際にその場にいた王妃も居るのだから尚更だ。

 

 

「少し外せない用事があってな。二十分程の休憩を貰っていたんだ。……そうですね、俺がヴァンですよ。王妃様」

「あら、もうバレちゃった? 一応お忍びのつもりだったのに……」

「以前お目見えする機会がありましたから、ですかね。 あと用事の件の詮索は勘弁してくれ。主に相手の名誉の為に」

 

 

 そちらの息子が働いているホストクラブを見に行ってました、なんて言えるわけが無いだろう。

 もしバレたらマリエはかなり不味いのではないか?

 

 

 どこか釈然としない表情をするアンジェリカだったが、それ以上追求してくる素振りは無かった。

 逆に王妃はアンジェリカの手を握って、心なしか楽しそうにしている。

 

「さぁ、リオン君を困らせに行くわよ。アンジェも協力してね」

「いえ、あの、私はここのウエイトレスでして、協力は流石に――」

「良いから良いから! 紅茶が温いとか、そうやって文句を付けるだけだから。最低でも三回は入れ直して―――」

 

 

 それは十分迷惑な客なのでは……?とも思いつつ、二人の後ろから部屋に入った先にあったのは……

 

 

「紅茶が温いわ! 煎れ直してきて!」

 

 

 ―――カップを投げつけられて、頭から鮮血を垂らすリオンと、それをニヤニヤした顔で見ながら後頭部を踏みつける、客と思わしき女子の姿だった。

 

 

 

 

 





個人的に修学旅行編からが本番のつもりなので、出来るだけ早く進めていきたい。

ヴァン:五馬鹿からの好感度が謎に高まっているが、こちらが割を食っているだけな気がする。
 最後の光景には驚きはしたものの、アンジェリカに比べれば大分冷静さを保っている。

マリエ→ヴァン:マジで誰……?アルトリーベとは関係無い物語の主人公なのか、それとも関係無いモブなのかを測りかねている。
 でももう一人(リオン)と比べればこちらに害は無いし、もう放置でいいか。ヨシ!(現場猫)



前回高評価をしてくださった、

【☆10】
まさボウさん

【☆9】
YUKI/ユキさん、創風さん、三段腹のネコさん、伝馬さん、哲林さん、SAMPLEさん、アルカミレスさん、翔悟さん、鈴有希さん、イーグルさん


ありがとうございますm(_ _)m

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