SSSS.GRIDFIGHT
学校の至る所から声が聞こえて、何かの音もこだましている。
まだ7月の頭だというのに、蝉の声も聞こえ始めた頃だ。
ただ何をするでもなく、帰るわけでもなく。学校の中庭にあるベンチに座りながら、無限に広がる青空を眺めていた。
「あ、流れ星」
第1.2回『アナタは誰?』
「そんでさ、昨日バトったヤツとまた当たってさ」
「え、またあのねちっこい?」
中学の頃から仲のいい友達。
早見 嵐(ハヤミ ラン)と、ゲームの話をしながら下校している。
「そそそ!んでさ、ミラーして、同キャラ使ってボッコボコに!」
「やっつけた!だな!」
勝てたんだなと、話のテンションから察して放った一言には、ランは空いている口から言葉が出るより先にため息を吐いた。
「負けた」
「え、ダサ」
ミラーは鏡なのは言うまでもないが、同じキャラを使えば、そのキャラをどれだけ熟知してるか、単純な腕の比べ合いになるわけだ。
「慣れないことしたら恥をかく。西宮も気をつけなよ〜。
じゃ!」
「俺はそんなんしねーよ、じゃあなー」
分かれ道。
いくつも交差点があって、どこを通れば最短なのか。
地元の人なら感覚でわかるはず。
ランは、多少道が違うがギリギリまで自分と一緒に帰ってくれる。
家の直前まで来て違和感を覚える。
しかしその正体はすぐにわかった。
(昨日の子だ。いつも同じ時間帯に帰るのに)
人通りはあまり多くはない田舎道と言っていいほどの住宅街。
そんな中に、目新しい人がいたら、それを脳が違和感として認識し、記憶に留めるだろう。
そんなことをいちいち気にしていては、全部が全部気になって生きていくのも辛くなる。
そう言うのを忘れて、家の玄関を開けて入る。
中古で買った、ブラウン管のモニターに、ジャンク品売り場でセールしてあったPCパーツで組み上げたデスクトップパソコンを起動させる。
「やぁ、君のおかげで助かった」
寄せ集めパソコン、通称JUNK・・・・・に繋げられている百均で売っているようなスピーカーから、少し籠った男の声が鳴る。
「最初は戸惑ったけど、でも一緒に戦えてよかった」
「君の勇気ある行動がなければ、私は任務を遂行出来なかった」
銀色のマスクをしてるために、表情がわからない。
しかし、胸の前に手を持ってきて拳を握る。
その動作からして、言葉よりも深い思いで、感謝を伝えているのがわかった。
「ありがとう。
俺も1人だったら、友達も・・・・・この世界も救うことなんて出来なかった・・・・・。本当にありがとう」
「本来ならすぐにハイパーワールドへ帰還しなければならなかったが。
どうしても・・・・・君に伝えておきたかった」
——「目を覚ませ」
しっかりと、意識はあったはずなのに。
どうしてか、眠っていて、夢を見ていた時にふと目が覚めた時のような気分を味わった。
「え、何この場所?撮影のセット??ピンクいしどゆこと?」
CGで描かれた背景。
360度、どこを見渡せど同じ景色。
流れる光。
目が覚めた瞬間に、そんな場所にいたら混乱するのは当然である。
「驚かせてすまない」
「え、誰?!てか、え、ウルトラマンとかのコスプレ・・・・・?」
目の前に突如と現れた、ウルトラマンみたいな着ぐるみを着た人にびっくりして、後ろへ引いてしまう。
壁はないものの、何かにもたれたような感じがするが、ぶつけた。という感じではなく、ただ何かに支えられている感じだ。
「さらにすまない事を言うが、その・・・・・。」
銀色マスクが、言葉を続けようとするが、少し・・・・・。いや、かなり申し訳なさそうな声色で喋り始める。
「君は、死んでしまった」
意味がわからない。
結論から話されると、状況把握はできない。
思わず「は?」と言葉を漏らすところであった。
「わけわかんないから、帰らせて欲しいんだけど」
呆れて声が出なくなる前に、帰ろうとすると、銀色マスクは俯いたまま喋り続ける。
「君は、君がここから出ていってしまうと無になってしまう。
私もだ。
敵の攻撃を受けて、エネルギーが全てなくなってしまった」
背を向けようとする体を、銀色マスクの方へ戻して話を聞く。
「すまない。私がもっと強ければ負ける事もなく・・・・・。
君を・・・・・。」
「わかった、つまり。
アナタがなんかその、敵に負けて落っこちた。
で、たまたま落ちた先に俺がいて踏み殺したと」
顔がマスクで覆われていてもわかるくらいに、暗い表情をしているのが雰囲気から察せるくらいには、落ち込んでいる。
「さっきの、俺が出て行くと無になるってのは死ぬっという事だから・・・・・。」
頬に指を3本当てて、ぺち、ぺちと音を立て考えて。
「つまりは、たぶん。
この空間の外に出なければ死なない!だよね」
「そうだ。正確には繋がりが保てていれば無になることは無い。
君にその意思があるのなら・・・・・。」
「ある、アナタの使命だかなんがかわかんないけど、俺がこのまま出ていけば果たせなくなっちゃうし。
俺も死ぬ事になるなら、背に腹は変えられない、て事だね」
俯いていた顔から、少し顔をあげ、こちらの様子を伺っていたようだが。
自分の言葉でその心は動かされた。
「わかった」
強烈な光が、自分の左腕から発せられ輝きが収まるとそこには、変なおもちゃみたいなのがくっついていた。
「なにこれ?」
「それは私と君を繋ぐ、パイルアクセプター。
危機が来れば知らせる。その時は君の意思でアクセスフラッシュしてくれ」
18時33分21秒。
この瞬間から、日本中のテレビ番組が一斉にニュース番組へと切り替わった。
「推定時刻18時29分に、謎の巨大生物が出没しました!」
「ですらして、自衛隊に市民の避難誘導を・・・・・。」
チャンネルを変えても、国の偉い人を問い詰める記者や、怪獣を中継しているドローンの映像ばかり。
「ただ今、18時36分を持ってして、巨大怪獣ゴジファスと認定呼称!
戦車隊は、砲撃位置にて待機!指示を待て!」
道路に、7台ほどの戦車が横一文字に整列して、待機する。
「怪獣が見えた!撃て!!」
花火大会などとは比べ物にならないほどの爆音が、街に鳴り響く。
近くの建物は、その音の反響によって窓ガラスが割れ、またはその振動によっては物が床に落ちるほど。
「自衛隊による、攻撃が開始されました!
戦車の砲弾が巨大な怪獣に命中しましたが・・・・・。煙でうまく見えませんね。
ドローンをもう少し接近させて確認してみます」
アナウンサーの声の後に、ドローンが煙で姿が目視できなくなった巨大怪獣ゴジファスへ接近する。
煙の中にドローンが突入して、その影を見た瞬間に。
「グゴゴゴゴゴ!!」
鳴き声らしき音声をドローンがとらえた瞬間に、映像が途切れてしまう。
街だった一部が、道路がまるでラグビーボールのような隕石が降って地面を抉ったかのような跡が残る。
その跡を辿るとやはりその先は、巨大怪獣だ。
ゴジファスはどこを目指してるのか、その巨大な足を動かして歩き始めた。
焼けて、何もかもなくなった熱線の跡の上を。
「今こそ使命を果たす時だ」
銀色マスクが何かに反応して言い放った。
「今の私は、実態の無いエネルギーにしかすぎない。
君と私が1つにならなければ戦う事ができない」
「アクセプターで繋がるんだな」
左腕に巻き付いたおもちゃのようなもの。
これが、2人を繋ぎ戦う力を与えるという。
ふと、聞き忘れていた事を思い出す。
「そう言えば状況が飲み込めてなくて聞くのをわすれてた。
俺、西宮 菜弘(ニシミヤ ナヒロ)。アナタの名前は?」
自分の名を名乗り、相手の名前を尋ねる。
いつまでも銀色マスクなんて呼ぶのは長いし分かりにくい。
それに、これから共に戦うのに、それじゃ合わせにくいと感じた。
しかし。
「私の名は、グリッド・・・・・。グリッド・・・・・。
・・・・・。すまない・・・・・。どうやら記憶の一部が欠落してしまっている・・・・・。」
敵の攻撃を受けた時のショックなのか名前を忘れてしまっているようだ。
「んー・・・・・。そうだなぁ」
“グリッド”の後に何かあるはず。
でもそれが思いつかないらしい。
「じゃあ、グリッドファイトでどうかな?」
「グリッドファイト・・・・・。了解した!
よろしく頼む、ナヒロ!」
これから一緒に戦うグリッド。
わかりやすくていいと感じたから。
グリッドファイトも、それで納得してくれた。
ゴジファスが都心へ向かう。
立ちはだかる戦車やヘリを攻撃、あるいは無視して。
18時をすでにまわっており、太陽が沈み怪獣の夜が訪れた。
しかしそれは、怪獣だけの夜ではなかった。
「アクセス!フラーッシュ!!」
—次回『必殺技』