迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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望んだ再会

 雪崩の如く押し寄せてきたクリーチャーが纏めて吹き飛ばされる。

 凶悪な四肢が爆発によって引き千切れ、鮮血と共にバラバラになった肉体が研究室に撒き散らされる。

 そして爆発の向こう側から現れたプスコフとタチアナの姿を見たノヴァは混乱の極致にあった。

 どうして此処にいるのか、何故帝都に入れているのか、キャンプの防衛は大丈夫なのか、そもそもどうやって此処を見つけたのか。

 聞きたい事も質問したい事も沢山あった、実際に驚いて開きっぱなしの口を動かしてノヴァは問い掛けようとした。

 

「詳しい話は後です!! 今すぐ此処を離れます!」

 

 だが傍に近寄って来たタチアナの鬼気迫った表情からノヴァはその時ではないと悟った。

 少し考えれば分かる事だ。

 現状のキャンプから抽出した戦力で帝都まで来ることは途轍もない困難を伴っただろう

 タチアナ達には悠長に会話する時間は無い、目的を果たす事が出来れば即座に帝都から離脱しなければいけない程ギリギリの戦力なのだ。

 

「待て! せめて水槽にいるアレを、クリーチャーとエイリアンを統率する中枢を破壊しないと!」

 

「ッ!? 分かりました! 持ってきた爆薬を急いでセットしろ、時間は無いぞ!」

 

「でかい……、持ち込んだ爆薬で足りるか?」

 

「やるしかない、やるしかないんだ!」

 

 ノヴァの言葉を聞いたプスコフは研究室の中央に鎮座するエイリアンが収められた水槽の巨大さに息を呑み、それでも持ち込んだ爆薬を手早く水槽に設置していく。

 その姿を見ながらノヴァはふらつく足で立ち上がり、揺れるノヴァの身体をタチアナとプスコフの隊員が肩を貸して支えた。

 そうして歩き出したノヴァの耳には幾つもの咆哮と銃声が聞こえて来る。

 研究所は少なくなったものの隔壁の外から木霊となって聞こえて来る銃声とクリーチャーの叫びは一向に止まる気配がない。

 現状はプスコフ達に優勢であるがクリーチャーの襲撃は絶えず現状は予断を許さない状態である。

 危機感を共有する隊員達は残された時間が余りない事を肌で理解して誰もが迅速に動き目的を果たそうと動き続けた。

 そして持ち込んだ爆薬をセットし終えた頃に隊員の一人が研究所で打ちひしがれていたエドゥアルドを背負って来た。

 

「隊長! その、この子は──」

 

「そいつはエドゥアルドだ。クリーチャーを生み出してキャンプを襲撃した科学者、その記憶を引き継いだ個体だ」

 

 ノヴァの言葉に驚愕した隊員が背負っていたエドゥアルドを地面に落とし小銃を向ける。

 背中から人間には有るまじき触手が生えていたが隊員は動く気力もない子供の姿に騙された、或いは帝都によって改造された子供の一人と思っていたのかもしれない。

 だが子供の正体がエドゥアルドだと知らされた瞬間に隊員は態度を一変させた。

 それも一人だけではない、地面に蹲るエドゥアルドに向けて周りにいた何人ものプスコフが銃を向けているのだ。

 襲撃された怒りか或いは得体のしれない存在に対する恐怖か。

 プスコフ達の顔はヘルメットに隠れてノヴァには伺い知れない。

 それでも向けた銃が小刻みに震えている事から様々な感情を抱いている事はノヴァには容易に理解できた。

 

 ──殺すべきなのだろう、今此処で後腐れなくエドゥアルドを。

 

 その決断を下せるのは此の場でただ一人、プスコフとタチアナが見つめる先にいるノヴァだけである。

 それを理解しているノヴァは力なく地面に蹲るエドゥアルドを見て──短い逡巡の末に口を開いた。

 

「──最重要参考人として捕縛する」

 

「ボス!?」

 

「コイツが作ったクリーチャーに寄生された住人の治療法を吐かせる。如何やって生き返ったのか洗い浚い吐かせて後に処分を決める。殺すのは……今じゃない」

 

 殺すのは容易い、抵抗する気力を失ったエドゥアルドの全身に銃弾を撃ち込み身体をバラバラに引き裂けば今回も殺せるだろう。

 だが殺した瞬間に脳に詰まっているだろう情報は消滅する。

 研究資料を持ち出す暇などないノヴァ達にとって現状においては唯一の情報源を失う事になる。

 誘拐され、脳を狙われ、殺され掛けた、それがエドゥアルドとノヴァの関係だ。

 親しみなど抱き様が無い、紛れもない脅威である事も理解している。

 それでもノヴァはエドゥアルドを今は殺さずに生きて捕縛する事を選んだ。

 

「分かりました。それでも抵抗させない様に四肢を拘束します」

 

「背中もガッチリ拘束してくれ。其処から飛び出す触手はシャレにならん」

 

「……もう、勝手にして、下さい」

 

 力なく蹲るエドゥアルドはテレパシーによる痛みに呻き続けていた。

 テレパシーが齎す苦痛はノヴァには想像も出来ない。

 今もテレパシーによる苦痛は続いているのかエドゥアルドは抵抗する動きを何ら見せる事無くプスコフに四肢を拘束され背中を触手ごと分厚い防弾繊維で幾重にも巻かれた。

 そうして全身を強固に簀巻きにされたエドゥアルドはプスコフの厳重な監視の下で回収される事になった。

 

「遠隔爆破装置を起動! 誤作動に備えてタイマーを10分にセット!」

 

「よし、全部隊撤収!」

 

 そして爆弾設置を完了したプスコフに守られながらノヴァ達は研究室から出て行く。

 隊列の中央にノヴァとエドゥアルドを配置してプスコフは周りを囲むようにして全周囲を警戒しながら地下通路を移動し始める。

 

「正面、敵3!」

 

「右側面、敵2!」

 

「背後、敵5!」

 

「各個撃破、迅速に処理しろ」

 

 道中の地下通路ではクリーチャーが頻繁に襲ってくるもプスコフの脚を止める事は出来なかった。

 数と勢いに任せて押し寄せるクリーチャーを冷静に処理、場合によってはアンダーバレルグレネードで纏めて吹き飛ばす。

 可能な限りの無駄が削ぎ落され、洗練されたプスコフの戦技は守られる側であるノヴァの追い詰められていた心を落ち着かせた。

 そうしてノヴァ達は地下通路を順調に進み、もう間もなくして邸宅に戻る階段に差し掛かかり──その時に男は現れた。

 

「もう直ぐです! 此処を抜ければ戦車が待機して──部隊停止!」

 

 先頭を任されていたプスコフが部隊に停止命令を出す。

 誰もが敵が現れたと考えて停止直後に銃を向けるが、其処にいたのは見慣れたクリーチャーではなかった。

 専用に仕立てたであろう整った衣服を着た身形のいい一人の男、クリーチャーの死骸と硝煙と血の匂いが渦巻く地下通路には不似合いな男がいた。

 一見して場違いであり武装を持っていない姿を見たプスコフ達は何処からか迷い込んだ帝都の人間、若しくは研究の関係者かと予想を付けた。

 それでもプスコフは警戒を緩める事は無く銃口は男に向けたまま、移動の邪魔になるのであれば強制的に排除しようと動き出し──男は荒げた息のまま突如として話し掛けた。

 

「ああ、殿下、生きていたとは!!」

 

 男の視線はノヴァ──ではなく右肩を持つタチアナに向けられていた。

 そして視線を向けられたタチアナは突如として現れた見知らぬ男を驚愕の面持ちで見つめていた。

 

「そんな、まさか──」

 

「クソ野郎……」

 

「え、殿下? クソ野郎? お知合い?」

 

「殿下、お聞きください! あれは不幸な事故だったのです! そして今、帝都に不法侵入を犯した輩がおり臣民は混乱の極致です! 如何か、如何か帝国臣民を諫める為にお力を──」

 

 水を得た魚の様に勢いよく話し掛ける男をプスコフは排除するべきか迷った。

 撤退の邪魔であるのは間違いなく、それでも上官の知り合いであろう男の対応をどうしようかとヘルメットの下で悩んだ。

 だが状況を弁えずに長くなりそうだった男の話は続く事は無かった。

 前触れもなく響き渡った銃声と同時に放たれた銃弾が男の身体を貫いたからだ。

 

「え?」

 

「で、殿下?」

 

 男とノヴァは揃ってタチアナを見る。

 ノヴァを支えるタチアナの空いている腕には煙を挙げるサブマシンガンが握られていた。

 それが意味するのは一つ、迷う事も無くタチアナは男を撃った事だ。

 

「な、何故──」

 

 疑問を、理由を問おうとした男の口が開く事が無かった。

 タチアナはサブマシンガン腰だめに構え躊躇わずに引き金を引く。

 弾倉を撃ち切る勢いで放たれた銃弾が男の身体を貫き鮮血が飛び散る。

 男は貫いた銃弾の勢いのまま後ろ向きに倒れ、殆どの銃弾が命中した腹部からは蛇口を捻った様に血が流れ仕立ての良い衣服を真っ赤に染める。

 

「あら、此処は戦場ですから流れ弾が当たったのでしょう」

 

「流れ弾ですね」

 

「流れ弾ですな」

 

「え、いや、あれは──うっす、何も見ていません」

 

 タチアナの護衛だろうプスコフではない帝国軍隊員はタチアナの所業を事故と片づけた。

 いやそれはないだろう、意図的に男を殺したのでないかとノヴァはタチアナに視線を向けるか張り付けた様な笑顔を見てノヴァは口を閉ざした。

 恐らく、いや間違いなく因縁があったのだろうがノヴァは見ざる聞かざる言わざるの精神でこの場をやり過ごす事を決めた。

 それはプスコフも同様であり何かしらの因縁を感じ取りつつも部隊は死んだ男を放置して移動を即座に再開、クリーチャーの襲撃を退けながらノヴァ達は地下通路から邸宅に戻った。

 そうしてノヴァが邸宅から出て見たのは正面玄関前で止まるキメラ戦車が猛烈な弾幕を張り続けている場面であった。

 

「漸く戻って来たか! 弾も残り少ない、急いで乗り込め!」

 

 猛烈な弾幕射撃によって幾つもの建物が崩壊し見通しが良くなった高級住宅街。

 足元には数え切れない程のクリーチャーの死骸が積み重なり、足の踏み場も無い程に空薬莢が散乱している。

 それ程までに強烈な弾幕を張り続けていながら住宅を覆うように現れるクリーチャーの数は底が知れない。

 搭載機銃のみならず隊員の持つ小銃も加えて漸く押し留めている状態であり余裕など微塵も無いのが現状であった。

 ノヴァ達が現れてもなお押し寄せるクリーチャーの勢いは止まらない。

 それを肌で理解したノヴァ達は急ぎキメラ戦車の増設カーゴに走り出し──その直後に弾幕の一部を突破してクリーチャーの一群が接近する。

 

「抜けられた、カバー!?」

 

「既にやっている!」

 

「弾切れ! 新しい弾倉を!」

 

 突出してきた一群を皮切りにクリーチャーの包囲網が狭まる。

 均一だった弾幕の切れ目を突き破る様に行われる死を厭わない捨て身の突撃。

 強靱な生命力を持つクリーチャーを数発の銃弾で動きを止める事は不可能であり此処に至ってクリーチャーの物量による突撃を押し留められるだけの火力が底を尽き始めた。

 

「やむを得ない、一号車はボスを載せて即時離脱! 二号車は殿として時間を稼げ!」

 

 一号車だけは何としても逃がす。

 その為に二号車が殿を務める事をグレゴリーは決断する。

 殿を任せられる二号車は非常に危険であり、下手をしなくても戦場から離脱できない可能性もあった。

 それでもグレゴリーの命令を聞いた二号車に搭乗する部隊全員が此処を己の死地と定めた。

 連れ帰って来たボスの姿を見た事でそれだけの価値が在ると誰もが理解したからだ。

 

「イエッサー!」

 

「ボスを頼みます!」

 

 だが二号車の決死の覚悟を磨り潰す様にクリーチャーの大群は圧力を増していく。

 幾ら弾丸を撃ち込もうとそれ以上の数を以て押し寄せ──だが上空からの苛烈な攻撃によりクリーチャーは群れ諸共勢い良く吹き飛んだ。

 

「これは!?」

 

「うおぉぉお!?!?」

 

 連続した発生する爆風から逃れようと二号車の隊員はカーゴの陰に隠れる。

 そして身を隠せた事で漸く突如として行われた攻撃が宙を飛ぶAWの物であると理解した。

 遠目にしか見えなかった空飛ぶ巨人、その威容を間近で前にしてグレゴリーもタチアナも、プスコフの誰もが目を奪われた。

 だが、その中でAWと言う兵器を文字通り確立し製造したノヴァは帝都に現れた鋼鉄の巨人を前にして別の意味で困惑した。

 

「なんで帝都にAWが? 見る限りだと製造途中の第二世代が何故?」

 

 AWの姿を見上げたノヴァの脳裏には幾つもの疑問が沸き上がり──だが全ては目の前に突然降り立った強化外骨格を前にして中断された。

 そして外骨格が勢いよく展開して文字通り飛び出してきたサリアをノヴァは見た。

 

「サリ──」

 

「ノヴァ様!!」

 

 ノヴァが口を開くよりも先にサリアは抱き着いてきた。

 その勢いのまま倒れそうになったノヴァだが何とか踏ん張る事で耐えた。

 そして現れたサリアが研究所で離れ離れになった時の姿とは違い一目では人間と変わりない姿をしている事に気が付いた。

 その機体がサリア専用に製造した最新鋭の機体である事をノヴァは覚えていた。

 そして抱き着いているのがサリアであると改めて理解するとノヴァには言いたいことが沢山あった。

 どうして此処にいるのか、皆は無事でいる、AWを此処に運んで来たのか……、聞きたい事は沢山湧いて出て来た。

 

 ──だがそんな情報はどうでも良かった。

 

 アンドロイドの膂力で、しかしノヴァを傷つけない様に加減して抱きしめられている事を理解したノヴァは思考よりも速く口が開いた。

 

「ゴメン、沢山心配かけた」

 

「……本当です、本当ですよ」

 

 サリアは感情を獲得しているがアンドロイドには涙は流せない。

 それは無機物で作られた肉体に涙を流す機能は付けられていないからだ。

 だからこそサリアは涙を流す事無くノヴァに抱き着いていて──それでもノヴァの目にはサリアが泣いている様に見えてしまった。

 だからノヴァは抱き着いてきたサリアを慰める様に後頭部を優しくなで──

 

『お父様! 今迄何処にいたのですか! サーバーを掌握して必死に探していたんですよ!』

 

「五号! ゴメンもうちょっと音を抑えてくれ」

 

『ノヴァ様、ご無事……ではありませんが生きていて何よりです』

 

「心配かけて済まない、デイヴ」

 

『ノヴァ様ですか!? 本当にノヴァ様ですか!? 偽物じゃありませんよね、本物ですよね!?』

 

「本物だよ、マリナ」

 

『ノヴァ様を無事確保出来たようで。これで私の任務も一区切りつきました』

 

「アラン!」

 

『パパ! やっと会えた!』

 

『ワンワンワン!!』

 

「ルナ、ポチ! ああ、ゴメンな、本当にゴメンな」

 

 サリアが脱ぎ捨てた強化外骨格を通してノヴァの耳には懐かしい声が幾つも聞こえて来る。

 映像は無く声だけではあったがそれはノヴァが会いたいと思い続けた家族だ。

 

「良かった、ご無事で、本当に……」

 

 そして今も離れる気配のないサリアの頭を撫でながらノヴァは口を開いた

 

「皆、心配を掛けてゴメン。早すぎるかもしれないけど、ただい──」

 

 だが全てを言い終わる前に足元で大きな振動が起こる。

 異常を察知したサリアがノヴァから離れ強化外骨格を纏うと震源地らしき地点に視線を向けノヴァを庇う様に前に出る。

 其処はノヴァが脱出してきた邸宅から離れた場所であり、その上に建っていた無傷の建物が崩壊していく最中であった。

 

「大丈夫、大丈夫!! さっきの爆発は地下にあったテレパシー装置を爆破しただけだから! 俺に怪我は──」

 

 心配する事は無い、問題が起こった訳は無いとノヴァが通信機越しに告げようとした。

 だがノヴァ達を取り囲むクリーチャーの変化した動き、先程まで一心不乱に襲い掛かって来たクリーチャーがノヴァ達を無視して移動し始めたのだ。

 行先は先程倒壊した邸宅、その動きに不信感を覚えたのはノヴァだけではなかった。

 

「これは、いったい……」

 

 グレゴリーが呟いた言葉は此の場に集った人々の総意であった。

 何かが起こっているのは間違いない、だが何が起こっているのかは全く分からない。

 その不気味な光景に誰もが知らずに武器を持つ手が強張っていく。

 

「異常事態が発生しているのは間違いありません。ノヴァ様は速やかに此処から離脱して下さい」

 

「そうだな、帝都に展開している部隊も回収して速やかに──」

 

 だがノヴァが言い終わるよりも早く崩壊し廃墟と化した邸宅から噴火の様に瓦礫が勢いよく上空に吹き飛ばされた。

 粉塵と共に吹き飛んだ瓦礫が住宅街に勢い降り注ぎ無事だった幾つもの邸宅を破壊していく。

 それはノヴァ達も例外ではなかったが大きな瓦礫はAWによって撃ち落され損害は微々たるものに収まった。

 そして瓦礫が粗方落ち切った時を待っていたかのように巨大な何かが地下から現れた。

 

「あ、あれは」

 

「なんだ、アレは……」

 

「大きい……」

 

 帝都の地下から現れた巨大な何か、それは当たり前の様に宙に浮かんだ。

 AWの様にスラスターやバックパックからの反作用によって宙に浮かぶのではない、青白い炎を出す事も無く不自然としか言いようがない異様な飛行。

 その異常な光景を誰もが驚きと共に宙に飛ぶ巨大な物を見るしかなく、だがノヴァとサリア達は違った。

 宙に浮かぶ巨大な物が何であるか知っている、何故なら過去に二回も遭遇した因縁の在る敵であるからだ。

 

「アイツ、息を吹き返したのか!」

 

 その姿はエイリアンの上級個体と相違ない姿形をしている。

 不要として切除されていた巨大な触手も再生されており、そればかりかノヴァが知る上級個体よりも二回り以上も大きな身体である。

 だが一番の特徴はロボトミー手術によって切り開かれ幾つもチューブが繋がっていた剥き出しの中枢神経系には後から付け足されたかのように歪な突起が生えていた。

 そしてノヴァは隣のプスコフから望遠鏡を借りて突起を覗き、その正体が人間の身体である事を理解して驚愕した。

 巨大な身体と比較して小さく見える人間の身体はボロボロになった衣服を纏い、腰から下がエイリアンと融合していた。

 それは人間とエイリアンの融合体とでも言うべき異常な個体である。

 そしてノヴァは融合している人間に覚えがあった──具体的に言えば邸宅に戻る前にタチアナが躊躇もしないで撃ち殺した男であった。

 

「……の」

 

「の?」

 

「ノぉぉぉおおヴぁぁぁあああああああ!!」

 

 そして人間とエイリアンの融合体が帝都中に聞こえる程の大声で叫んだ。

 その叫びは濁っていたが何を叫んでいたかノヴァにも理解出来た。

 理解出来たからこそノヴァは宙を飛ぶ融合体に聞こえない事は百も承知でありながら堪らずに大声で叫んだ。

 

「お前に名乗った覚えはねぇえ!!」

 

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