迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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向き不向き

 面談を終え、<連邦復興委員会>に所属する二人が退出した会議室。

 完全に外部の目が無くなった瞬間、会議室に設置された来客用の高級ソファーにノヴァは身体を沈みこませる勢いで身を投げ出す。

 

「ああああああ~~」

 

 そして、人前では出せないだろう言葉にならない呻き声を出す。

 出さなければやっていられない程に<連邦復興委員会>との面談は、ノヴァにとって強いストレスであったのだ。

 

「お疲れ様です」

 

 サリアの目の前で醜態を見せる今のノヴァには、先程まであった<木星機関>トップとしての威厳は何処にもない。

 もしノヴァを知らない人間が今の姿を見ればだらしない、或いはみっともないとしか言いようがない光景だ。

 だがアンドロイドであり、傍に控えていたサリアは違う。

 疲労困憊のノヴァを優しく労わり、少しでも疲労を軽減させようと自身も同じソファーに座ると同時に膝の上にノヴァの頭を載せ、幼子をあやす様に優しく頭を撫で始めた。

 その一連の流れは極めて自然であり、ノヴァが何時の間にか頭がサリアの柔らかすぎず、固すぎない膝に載せられていた事に気が付いたのは心地良さを感じてから暫く経ってからであった。

 

「……俺は子供ではないのだが?」

 

「では止めますか?」

 

「……もう少しだけ、そのままでいてくれ」

 

「分かりました」

 

 通常の産業用アンドロイドによる膝枕であれば固すぎる機体が身体に突き刺さり、癒しどころか身体に痛みを生じていただろう。

 だが、サリアの機体はノヴァが作った特別製である。

 姿形は人間と遜色ない代物に加え、容姿に至ってはサリア自身が細部まで拘った甲斐もあり十人中十人が振り向かされる美人に仕上がっている。

 其処にサリアの積み重ねた経験が加わった結果、特別製の機体を持つサリアの膝枕は開発者であるノヴァの想定を軽く超える代物となっていた。

 その威力は凄まじく、疲労困憊の頭は身体を動かそうとせず、作り物だと分かっていてもノヴァは伝わる温かさに溺れてしまった。

 

「何時の間にこんな事を覚えた?」

 

「ノヴァ様が失踪して、眠れなくなったルナを落ち着かせる為に覚えました。ルナには好評でしたが、不快ですか?」

 

「……黙秘させてくれ」

 

 ルナリアを落ち着かせるために磨かれたサリアの膝枕は、疲労困憊のノヴァにも効いた。

 しかし、それを言葉にするのが恥ずかしかったノヴァは何も言わずに黙秘を貫いた。

 だが、目は口程に物を言うという諺をサリアは知っていた。

 言葉が無くとも安心しきった目から心情を汲み取り、それ以上は何も言わずにサリアはノヴァの頭を優しく撫で続けた。

 だが、言葉の無い、しかし心地の良い時間は長くは続かなかった。

 

「あの~、姉さん。そろそろ部外者を自主的に締め出すような空気を収めてもらってもよいですか?」

 

「マリナ、いたのですか?」

 

「いましたよ! それを無視していたのは姉さんでしょ!! 私が交渉に特化した機体である事を忘れていませんか!! あんな空気醸し出していたら嫌でも察するしかないんですよ!!」

 

 何時の間にか入って来たマリナのハイテンションな声が会議室に響く。

 その声は膝枕の心地良さに眠りに入り掛けていたノヴァの頭が覚醒する切っ掛けとして十分であった。

 そうしてノヴァは名残惜しさを感じつつもサリアにしてもらった膝枕の心地良さを頭から締め出し、身体を起こした。

 

「それにしても、私は姉さんが<コード119>を唱えられた瞬間に暴れ出さないかとヒヤヒヤしましたよ」

 

「それは、まぁ確かに……」

 

「マリナには兎も角、ノヴァ様に誤解されるのは嫌なので言いますが、既に<コード119>を削除された私達にとってアレは意味のない言葉です。ですから不快感はあっても、それで殺し合いになる程でもありません」

 

<コード119>自体は、アンドロイドの機能を停止させるだけの緊急停止コマンドでしかなく、コマンドを唱えられても電脳が初期化されることはない。

 コマンド自体が暴走したアンドロイドを安全に停止させ、人的被害を生じさせずに回収する事を念頭に置いて開発された物である。

 そんな魔法の言葉を既に無力化しているサリアから見て、<コード119>を無力化されているとは知らずに唱える人間は逆に滑稽に映っただろう。

 

「内容によりますが、私個人を誹謗中傷する言葉を口にしたのであれば、言い返す用意はありました。ですが……」

 

「ですが?」

 

「あの二人が自身の考えを曲げず、ノヴァ様に思想を押し付ける様な相手であれば物理的に黙らせていたでしょう」

 

<コード119>を唱えられようと不快感を示すだけに留める程にサリアは我慢強い。

 ただし、サリアの我慢はノヴァ限定であれば沸点は一気に低くなる。

 そして、一線を越えた相手に容赦するサリアではなく、口は禍の元であると理解させるための実力行使も選択肢に入れていた。

 

「いや、姉さんの怪力を振るわれたら生身の人間なんて簡単に殺しちゃうよ? それもかなりスプラッタな感じで」

 

「所詮その程度の人間です。遠からずに死んでいたでしょう。その時が今日になっただけです」

 

「……まぁ、空気を読めずに姉さんを怒らせる程度の人間ならいなくなっても困らないかな?」

 

「その話は此処で終わり。今から反省会を行います!」

 

 アンドロイドである故か人間に対する評価が低い二人と、そうなってしまった瞬間の会議室を脳裏に思い浮かべたノヴァは眠気が完全に吹き飛び、背中に冷汗を浮かべた。

 そして思考が物騒なものに偏りつつあった二人の思考を中断させようとノヴァは、態と大きな声を出して二人の注目を集め、話題を無理矢理変更させた。

 

「経験を積んだから少しはマシになったと思ったが、マリナの遠隔サポートがあっても政治は俺には難しいと改めて実感させられた。それでも<木星機関>の立場、考えは誤解の余地なく<連邦復興委員会>に伝えられた筈だ。その事に関してマリナはどう考える?」

 

「間違いなく二人には伝わりました。彼らの憶測交じりの推察を全て否定して、ノヴァ様の口から<木星機関>の立場と考えを主張する。我々のトップとして何一つ恥じる事の無い振る舞いでした」

 

 幾らアンドロイドが誠心誠意を込めて言葉にしても届かなかった言葉を、組織のトップであるノヴァが言葉にして伝える。

 それは幾ら交渉に特化したアンドロイドであるマリナであっても困難な事であり、それを誤る事無くノヴァは成し遂げた。

 それだけでも今回の面談の主目的は達成したようなものであり、後の細かな話は蛇足にしか過ぎないというのがマリナの本心である。

 

「ですから何も問題はありません! ノヴァ様は成すべきことを成したのです」

 

「そうか、マリナが言うなら今回の面談は成功だったと考えよう」

 

 政治的な判断力、或いは交渉術は帝国での経験もあり多少は成長していても、三流が二流になった程度でしかないとノヴァ自身が自覚している。

 そして、マリナの遠隔サポートもあって実現した今回の面談。

 自身の交渉の至らなさを除けば、相手がノヴァの意図を正確に汲み取り、正しく折れるという形で終わり、<木星機関>の目的は達成したと言えるだろう。

 

「後の問題は、彼らが今回の面談で知った事を正確に計画に反映させられるか。こればかりは結果を待つしかない」

 

「其処まで心配する必要はないかと。修正された計画が我々の意図を汲んでいない代物であれば拒否すればいいだけです」

 

「姉さんの言う通りです! 過度な干渉を控える以上、我々は待つことしか出来ませんが、最終決定権は<木星機関>にあるのは変わりません。それに、余りにも酷い場合は<連邦復興委員会>のトップを物理的に挿げ替える手もあります!」

 

「もうちょっと穏便に進めたいかな!?」

 

 先の見えない不安を抱えるノヴァを優しく気遣ったサリアとは正反対に、妹であるマリナは笑顔で過激な代案を出す。

 だが、サリアとマリナともにノヴァを思っての発言なのは疑う余地もない。

 そして、二人が言うように最終決定権があるのは<木星機関>であり、トップであるノヴァ次第であるのだ。

 その点を考えれば、サリアの言うように提出された計画を拒否する事も、マリナが笑顔で言った<連邦復興委員会>のトップを挿げ替える事も選択肢には入るのだ。

 入るのだが──。

 

「確かに最終決定権を事実上握っているのは俺だ。計画の拒否やトップの挿げ替えは簡単に出来るだろうが反動が怖い。ある意味では諸刃の剣だ」

 

「練り上げた計画を拒否された場合の反感は確かに大きいでしょう。一部の人間は逆恨みするかもしれません」

 

「……うわぁ、簡単に想像できるな。それにトップを変えるにしても<連邦復興委員会>に二人以上の人材はいるのか?」

 

「ハッキリ言ってしまいますが、該当する人物は現時点ではゼロです。その為、挿げ替えた場合、<連邦復興委員会>は傀儡になるしかありません」

 

「やっぱりそうなるか……」

 

 これが<木星機関>の交渉役であるマリナや帝国のタチアナであれば相手を上手く転がして、自身の利益となる様に交渉を落とし込む事も出来ただろう。

 だが、政治的能力が二流のノヴァには不可能な芸当である。

 しかし、それ以前にサリアはノヴァの行動に疑問を抱いていた。

 

「ですが態々ノヴァ様が彼等を相手する必要はあったのですか? マリナに一任すれば苦労をせずに済みました」

 

「それは確かに正しい」

 

 サリアの言う通り、ノヴァが直接交渉せずともマリナに全ての交渉を任せれば今の様に苦労する事はなかっただろう。

 ノヴァが大まかな方針を伝えて、マリナが方針に沿って細かな交渉を進めるのが一番楽で効率的なのは間違いない。

 

「確かにマリナに任せて上手くいく可能性はあった。だけど、反対に大失敗する可能性もあった」

 

「それは何故ですか?」

 

「彼らの根底にあるのは連邦時代の常識。力ではなく、言葉と感情で相手を動かそうとする人種だ。そんな彼らにアンドロイドの言葉が届くとは思えない」

 

 現地勢力の人々であれば、圧倒的な武力と莫大な援助を見せ付ける事で大人しくさせる事が出来た。

 だが、今回は相手にするのは同じ人間であっても過去の連邦市民であるのだ。

 そして、彼らにとってアンドロイドというのは便利な人型の道具であり、自我を持つことなど認められる訳が無い。

 そうした意識の発露は援助される立場でありながらアンドロイドに対して不信感を持っている様子があったというカルラの報告からでも簡単に推測出来た。

 そんな現地の人々とは全く異なる価値観と判断基準を持つ人間。

 ある意味では時代遅れの考えを持っている人々の相手は、交渉に特化したマリナであっても不可能であるとノヴァは判断するしかなかった。

 

「認識の違いからの衝突は十分にあり得る。無論、俺達が負ける可能性は万に一つもないが、戦端が開かれた時点で一方的な弾圧にしかならない」

 

 現代に目覚めた連邦市民は持たざるものであり、身を守る為の武器を何一つ持っていない弱小勢力である。

 そんな彼らが認識の対立から反抗しようと<木星機関>の武力であれば簡単に黙らせる事が出来る。

 出来るが、それは戦いではなく一方的な弾圧にしかならないのだ。

 そして、安易な武力行使による弾圧は彼らの心の中に元から存在したアンドロイドに対する不信と憎悪を育てる結果となるのは確実だ。

 例え、弾圧した理由が理に適ったものであっても大多数の人々にとってみれば言い訳にしか聞こえないのが、良識に基づく連邦市民という人間なのだ。

 

「ですが、彼らに配慮し過ぎなのでは? 現時点で彼らは我々の援助が無ければ破滅するしかない集団です。何より必要以上の配慮はノヴァ様の心労にしかなりません」

 

「確かに彼らに配慮をするのは正直に言ってしまえば面倒だ。だけど、これはカルラと話し合った結果として必要だと判断した」

 

 ノヴァ不在の間に彼等を一時的に管理していたカルラにとっても、元連邦市民である彼らは扱いにくい存在であった。

 衣食住全般において最低限の基準が現地住民よりも高く、何より厄介なのが法治によって確立していた権利意識を手放さない点である。

 止めに、差し伸べた善意に対して感謝ではなく恨み言が返ってくるのだ。

 こうなれば、統治を任されているカルラとしても可能な限り相手にしたくないと結論を出すしかないのが現状だ。

 

「<連邦復興委員会>、彼らにはある程度の力を付けてもらう。そして今も連邦中にいるだろうコールドスリープされた連邦市民の受け皿になってもらう」

 

 それでもノヴァとカルラが安易な武力の行使に踏み切らなかったのは、厄介な連邦市民の受け皿として彼等を利用するためだ。

 連邦全土に今も眠っているだろう人々の数は<木星機関>であっても参考となる記録がなければ正確に割り出す事は出来ない。

 だが放置するには数が多すぎ、そんな人々が纏まりもなく<木星機関>の統治領域内で行動するのをノヴァもカルラも嫌ったのだ。

 しかし、<木星機関>が彼等を一人一人捜し出して保護するのは大きな負担になる。

 だからこそ、ノヴァとカルラは厄介な人間の対処を丸投げ出来る組織を必要とし、そこで白羽の矢が立ったのが<連邦復興委員会>である。

 

「善意から保護しても常識の違いから敵意を向けられる。だが放置するには個々人の能力は現地人よりも高い。殺すのは俺の心情的にも無理だが、何より前例を作ってしまえばアンドロイドの印象が最悪になってしまう」

 

 管理という面で見れば<木星機関>が直接保護するのが一番ではあるが、一人一人に掛かるコストが現地人に比べて大きい。

 コストの面で見れば一番手間が掛からないのが放置であるが、能力の高さ故に<木星機関>の統治領域内でどんな動きをするのか予想不可能であり面倒。

 皆殺しは程よいコストと手間であるが、殺したという事実が問題となる。

 何よりノヴァもそうだが自我を持ったアンドロイド達にも大きなストレスとなり、これまで築いて来たアンドロイドのイメージを悪化させる。

 直接保護するのは面倒、放置するのは厄介、皆殺しにするのは改善させたアンドロイドの印象を悪化させる。

 現代に目覚めた連邦市民という存在は、どの手段をとっても厄介な問題の火種にしかならないのだ。

 

「赤の他人が何処で何をしようと勝手だ。だけど、それは自分の目が届かないところでやって欲しい、そう考えた時に<連邦復興委員会>は都合が良かったんだ」

 

 ノヴァが望むのは平和であって決して戦国乱世ではない。

 そして、ノヴァは自身が定めた一線を越えた相手には容赦する事はない。

 だが逆に言えば、一線を越えない相手にはノヴァの根底にある文明社会で育んだ善意と思いやりが適応され、彼等を見捨てるという選択肢が許されない。

 だが、人生の全て掛けて苦しむ人々を救う限度を超えた博愛精神までは持ち合わせていない。

 そんなノヴァの心の平穏を保つ為にも<連邦復興委員会>には頑張ってもらう必要があるのだ。

 何より、自ら望んで立ち上がったのであれば泣き言は言わせない腹積もりであり、その為の出費は許容範囲内であるとノヴァは割り切った。

 

「ノヴァ様が熟慮を重ねた結果であれば私は何も言いません。それでも負担に感じたのであれば何時でもいいので頼って下さい」

 

 そんなノヴァの甘い考えをサリアは即座に肯定すると同時に、再びノヴァの頭を膝に乗せると労わる様に頭を優しく撫でた。

 

「既にノヴァ様の行動で救われた人間は大勢います。個人でこれ程の事を成し遂げたノヴァ様に他人がこれ以上を求めるのは筋違い、他力本願にも限度があります。ノヴァ様がご自分を責める必要は何一つありません」

 

「そうかな?」

 

「そうです。これ以上は苦労を背負い込む必要はありません」

 

「……そうかもな」

 

 今のノヴァは自分の匙加減の一つで人を殺すことも生かす事も出来る立場に立っている。

 それが望んでいたものでは無い事は付き合いの長いサリアは知っている。

 だが今の立場を放棄する事は出来ない、許されないとノヴァ自身も理解している。

 だからこそ、サリアは少しでもノヴァのストレスを和らげようと頭を優しく撫で、心を癒そうとした。

 

「姉さんの言う通りです! それに暫くはトップ同士の面談はありません。それまでの間に行われる事務レベルの協議は私が対応しますので、心配する事はありませんよ!」

 

「それもそうだな。マリナ、後の事は頼めるか?」

 

「お任せください!」

 

 マリナの言う通り、当面の間はノヴァの出番が無いのは確定事項だ。

<連邦復興委員会>は今回の面談で明確になった<木星機関>の立場を考慮に入れた計画を練り直す必要があるからだ。

 その調整は数日で終わる様なものではなく、最低でも週単位の時間を必要とするだろう。

 そして調整が終わったとしても事務レベルでの協議から始めなければならないのだ。

 

「ああ、やめだ、やめだ。一先ず認識の擦り合わせは終わったから後はマリナに任せれば何とかなる。そう考える事にする!」

 

「それでいいのです」

 

 餅は餅屋に、下手の考え休むに似たり。

 ノヴァはサリアに膝枕されながら、頭に巣食っていた細々とした思考を追い出す。

 今迄の援助関係の話はノヴァが道筋をつけ、アンドロイド達が内容に関して肉付けを行う方式で行っていた。

 帝国に飛ばされた時も優れた文官でもあったタチアナを中心に丸投げをしていたのだ。

 であるならノヴァが細かな事を一から考えるよりも専門家に任せるべきなのだ。

 何より、予想外ではあったがアンドロイド達はノヴァ不在の間に実効支配したエリアの統治を行い、大きな問題なく治めていた。

 その点を考慮すればアンドロイド達に頼るのは何も間違っておらず、それどころか信頼して任せるべきなのだ。

 

「では、ノヴァ様の得意分野でしか解決できない事があります! 其方は任せてもよろしい

 ですか?」

 

「俺の得意分野?」

 

 だからこそ、マリナの提案にノヴァは疑問符を浮かべるしかなかった。

 現状の<木星機関>において現状維持に限定するのであればノヴァの力は殆ど必要とされないのが現状であり、それだけの基盤を築いた自負がノヴァにはある。

 その上でマリナでも解決できない問題というのは、現状のシステムで見落とした不具合が表面化したのだとノヴァは考えた。

 

「ノヴァ様は地方都市で出会った<スカベンジャー>を覚えていますか?」

 

「覚えているも何も、あの時ほど自分の浅はかな行動を後悔した事はない。もしサリアがいなければどうなっていたか考えたくないな。だが<スカベンジャー>の問題の解決が俺の得意分野とどう繋がるんだ?」

 

<木星機関>が成立する前、アンドロイドが予想以上に集まったせいで資源不足に陥ったノヴァ達が新たな資源回収先として選んだ地方都市。

 そこに隠れ住んでいた人間の勢力の一つであり、自身の迂闊さによって起きた一連の出来事はノヴァの脳裏に深く刻まれている。

 だが、今では過去の問題を乗り越えて<スカベンジャー>と<木星機関>は互いに友好的な取引相手となっていたとノヴァは覚えていた。

 

「実はスカベンジャーから依頼が来ているのです」

 

「依頼?」

 

「はい、彼らが従来の武器とは異なる、強力かつ汎用性に富んだ兵器を開発してくれないかと依頼をしてきたのです」

 

「強力かつ汎用性に富んだ兵器??」

 

 マリナがノヴァにしか解決できないと判断したスカベンジャーからの依頼。

 その内容は予想外にも程があるものであり、聞いたノヴァの頭は更に多くの疑問符を浮かべるしかなかった。

 

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