迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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新兵器運用テスト(1)

『……Mr.ノヴァ。貴方が抱える問題の根本的原因が分かったかもしれません』

 

『もう分かったのか!? この分野は完全に専門外だろ?』

 

『確かに、私が新兵器の設計図を見ても仕組みを完全に理解する事は出来ませんが、大まかな概要程度は理解出来ます。その上で、貴方が私の知識を組み込もうとしている制御系を見てみましたが、恐らく間違っていないでしょう』

 

『じゃあ問題点は何だ? やはり制御系の何処かに致命的な見落としがあったのか?』

 

『いいえ、専門外の私から見ても素晴らしい設計です。制御系にミスはありません』

 

『なら、何処に問題が?』

 

『掻い摘んで言えば、制御系の性能が機体性能に見合っていないのです』

 

『見合っていない?』

 

『はい、貴方が生産する予定の兵器は一定の性能を有しながらも可能な限りの簡略化を施していますね。間違いなく、量産性と整備性の向上に主眼を置いているのが分かります。そして、それらの工夫によって低下する性能を、制御系によるテコ入れである程度補完するつもりしょう?』

 

『そうだ、現時点で求められるのは一点物の高性能機体では無く、ある程度の性能を持ちつつ数を揃えられる機体だ。だからと言って粗雑な機体を与えても碌な事にはならないのは分かりきっている。どっちを重視するか悩んだ末に制御系で性能を向上させようと考えたんだが……、もしかして、それが間違っていたのか?』

 

『一概に間違いとは言いません。ですが、凡庸なハードに高性能なソフトを搭載するのであれば、何処かに皺寄せが出てくるのは避けられないでしょう』

 

『まるで経験したような口ぶりだな?』

 

『人体と兵器の有機的な接続というのは帝国連邦関係なく何処も秘密裏に研究するテーマです。実際に私も研究した覚えがありますし、これらの研究における最大の問題である人体と兵器を繋ぐ接続方法は長年議論されてきました』

 

『もしかして、一般には解放されていないだけで、既に帝国軍では制御方法が確立されているのか?』

 

『いいえ、私の記憶違いでなければ帝国は確立する前に滅びました。それと連邦も実用化したという報告は一切聞いていません』

 

『参考になりそうなものは皆無なのか……』

 

『間違いなくこの分野は本当に未知の領域です。しかし、私と貴方の知識と技術を動員すれば実現は可能です。現にあなたは独力で雛形となる仕組みを完成させました』

 

『だが、未完成の欠陥品だ』

 

『基礎理論は問題ないでしょう。根本的な問題は機体の制御系だけが突出して性能が高すぎる点です。機体の性能を十全以上に発揮する為なのでしょうが、ソフトから入力される大量の思考情報に対してハードの反応が追いついていません。その遅れがソフト側に余計なデータを増大させ、ハードは過度な情報流入を処理しきれず反応が遅れる。それが更に余計なデータを増大させる悪循環を引き起こしています』

 

『……性能が不足している訳じゃない。寧ろ高すぎてソフトに余計な空回りをさせているのか?』

 

『はい、問題の本質はハードに見合ったソフトではない一点に尽きます。ハードがソフトの反応に追いつかず、擦れ違いを引き起こしているのです』

 

『アンドロイド用の制御OSを流用する事自体が間違っていたのか……』

 

『アンドロイドにとってAWは兵器でありながら肉体の延長線上にある代物なのでしょうが、人間は違います。アンドロイド視点の“何が出来ないか”ではなく、人間視点で“何が出来るのか”に重点を置けばいいでしょう』

 

『着眼点がそもそも間違っていたと、……そこを起点として作った制御系が操作性の難易度を著しく引き上げていたのか。だが、そうなると……』

 

『Mr.ノヴァ、貴方の理想は理解しますが、妥協する事も必要です。貴方から見れば納得できないしょうが、求められる性能は十二分に満たしています。後は、実際に運用して信頼に足るデータを集めるしかありません。この兵器を運用するのは貴方ではなく、貴方以外の人間なのだから』

 

『……耳が痛いな』

 

『これでも生物兵器に限定されますが、上と下からの要求に応え続けてきました。積み重ねた経験は、貴方にも劣っていないと自負しています』

 

『積み上げた経験が天と地ほどの差があるか……。分かった、なら機体に合わせて制御系を再設計する。時間はそう掛からない筈だ。……それと、これ程早く解決するとは思わなかった、感謝する』

 

『構いません。経験があってこその助言です。貴方であれば、直ぐに習得するでしょう』

 

『経験者は語るか』

 

『はい、軍上層部から送られる面倒な仕様を満たす兵器開発、しかも、仕様がコロコロと変わる事があったので本当に嫌でした。……詳しい話を聞きたいですか?』

 

『興味が無いと言えば嘘になる。だが、当分の間は聞く予定はない』

 

『残念です。では、私も制御系の開発に取り組みましょう』

 

『一応言っておくが、検体の選定はまだ終わっていない。それ以外に必要な機材はあるか?』

 

『性能を落とすのであれば人体に直接端子を埋め込む様な人体改造は不要です。操作の補助を念頭に置いた装置であれば、直ぐに出来上がります。後の細かな調整は実際に運用してみないと分かりません』

 

『分かった。必要な資材と機材を運ばせる。今の処は、お前を閉じ込めている区画を中心に丸ごと研究所にする予定だ』

 

『ふふふ、Mr.ノヴァ。やはり、貴方は素晴らしいスポンサーです』

 

『それが取引だ。約束は守る』

 

『分かりました。所で、新兵器の試験運用を任せる組織の選定は済んでいるのですか?』

 

『ああ、今後の影響力確保と首輪を付ける意味でも選定は終えている』

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 嘗ての連邦は一つの大陸をそのまま国土とする巨大な国家であり、国土の中には広大な平野、険しい山脈、長大な河川、深い渓谷等のあらゆる環境が揃っていた。

 そして、国土の大半を占めるのは広大な平野であり、肥沃な大地は人間以外の生物にとっても最適な環境であった。

 

『目標発見! 攻撃許可を!』

 

『逸るな、まだ距離が離れすぎている。先行し過ぎれば連携が崩れるぞ』

 

 そして、帝国とエイリアンという三つ巴の戦争によって地上から退場した人類の空白を埋める様に、地上に進出したミュータントは凄まじい勢いで勢力を広げた。

 それから一世紀以上経過した今となっては地上を我が物顔で闊歩するのは人間ではなく、独自の生態系を長い時間を掛けて築きあげたミュータントとなってしまった。

 地上における支配者は人間からミュータントへ変わり、地上にいる人類よりも遥かに数が多く、生命力に優れ、個体によっては人間を軽々超える程に巨大化するミュータントに対して、滅び掛けた人類に打つ手はなかった。

 

 ──今日この日まで。

 

『ですが、奴は暢気に尻をこっちに向けています! 今なら、奴の股座にキツイ一撃をお見舞いできます!』

 

『だから待てと言っている! もし勝手な行動をしたら、問答無用で機体から降ろすぞ!』

 

『りょ、了解しました!』

 

 広大な平野に点在する水辺、その一つに此処が己の領域であると誇示する様に悠然と聳える巨大なミュータントがいた。

 その姿はカニとエビを掛け合わせたようであり、全身は強固な外骨格で覆われながらも全高は7mを超え、全長に至っては10mを優に超えるミュータント。

 それは正真正銘の化物であり、この化物が鎮座する事によって周囲一帯は人間が踏み入れる事が出来ない危険地帯と化していたのだ。

 そのミュータントは人間から恐れを込めて<水辺のヌシ>と呼ばれた。

 

『よし、行儀よく待つことが出来たようだな』

 

『……この機体から降りたくありませんから。ですが──』

 

『其処までだ。確かに、お前が調子づくのも理解出来るが、これは運用試験だ。機体を壊さずに戦闘データを持ち帰る事が俺達に与えられた任務だ』

 

『……すみません。舞い上がっていました』

 

『理解出来たならいい』

 

 水辺のヌシの身体を包む外骨格は分厚く堅牢でありながら、軽くミュータントの機動性を損なわない驚異の代物である。

 そして、ヌシの巨大な外骨格は今日この日に到るまで多くの攻撃を跳ね除けてきた。

 ミュータントの牙と爪は外骨格の前に折れ、嘗てヌシを討伐しようと集まった人間の銃撃は外骨格を貫けなかった。

 そして爪と牙、武器を失くした生物は等しく最後にはヌシの只の手頃な餌と化した。

 

『ではこれより、試験小隊全機により目標に対して攻撃を開始する!』

 

 ──そんなヌシの自信其の物であった強固な外骨格が、突如飛来した何かによって初めて傷付けられる。

 

「────!?!?!?」

 

 何者にも動じない筈の巨体が揺らぎ、連続して飛来する何かが外骨格を傷付け、罅を入れ、そして甲高い音を立てながら砕ける。

 ヌシが声にならない悲鳴を上げるも、正体不明の攻撃は絶えず襲い掛かり続ける。

 強固な外骨格の至る所に亀裂が入り砕け、強固なはずの鎧が吹き飛ばされていく。

 そして、鎧の下に納まっていた柔軟かつ強靱な生体組織が抉られ、一部が消し飛ばされ、関節部に飛来した攻撃は薄い装甲を突き抜け、そのまま身体の奥底へ深く突き刺さる。

 傷口から湧き出る出血は、ヌシに長らく感じていなかった激痛を思い出させ、甲高い悲鳴を上げさせる。

 

『目標に攻撃命中! 奴さん汚い悲鳴を上げています!』

 

 そして、与えられた痛みと怒りがヌシの思考を切り替える。

 ヌシが攻撃された方向に振り向き、其処にいるだろう敵に向け声なき威嚇の咆哮を上げる。

 だが、視線の先にいた敵の姿形はヌシにとって全く未知のもの。

 もしヌシが言葉を話せたのなら、己を傷付けた未知の敵を鋼鉄の巨人だと呼んだだろう。

 そして、その鋼鉄の巨人こと<H-AW>は、ノヴァが滅びかけた人類に与える新たな力であり兵器である。

 

『油断するな! 出血していようと、あの巨体からすれば致命傷には程遠い!』

 

 全高約5mのずんぐりとした人型機動兵器である<H-AW>は、AWの運用で得られた知見と技術を利用して生み出された小型版AWである。

 基本性能は基となったAWに比べれば劣るが、簡素化と同時に洗練された内部機構によって運用コストを可能な限り下げ、現地の人間にも扱える事を念頭に開発された。

 そして今日、己の存在意義を見せ付けるかの様にヌシの正面に隠れる事無く六体の<H-AW>が立ち、牙でも爪でもない、5mの巨体に相応しい大きさの銃を両手で構えて攻撃を続けていた。

 

『いける! これならミュータント共を蹴散らせます!!』

 

『はは!! 派手に吹き飛んでやがる!!』

 

『8匹、9匹、10匹!! キルスコア二桁に突入ぅう!!』

 

『コンバットハイに呑まれるな!! 我々の目的はミュータントを殲滅する事ではない!!』

 

『了か────』

 

 だが、ヌシは突然の出来事に直面して無様に混乱し、悲鳴を上げるしか能が無いミュータントではなかった。

 

「────!!!!」

 

 与えられた傷と痛みによってヌシの思考は既に闘争に切り替わっている。

 強固な外骨格の中でも特別強固な自慢の鋏を盾の様に構えながらヌシは、大気を振るわせる様な鳴き声を吐き出す。

 その直後に地面が勢い良く盛り上がり、土の下で眠っていた子供達が目覚める。

 

 ──その数、実に113匹。

 

『目標の周辺に動きあり! これは、同種のミュータントが周りに大量出現!』

 

『一体何処に隠れていやがった!?』

 

 百を超えて目覚めさせたヌシが生んだ子供である子蟹は、ヌシに及ばないまでも巨大な体躯を持ち並のミュータントを容易く蹴散し、仕留められる程に強い。

 そんな子蟹の軍団が偉大な母であるヌシの命令を受けて、敵を取り囲む様に進軍する。

 

『小型ミュータントが背後に出現!?』

 

『右も同じ!!』

 

『クソ、左も同じだ!?』

 

『囲まれました!?』

 

 周囲を取り囲む様に動く子蟹へ<H-AW>が攻撃を加える。

 銃口から火を噴く度にヌシが生み育てた子蟹の甲殻が割れ、中身を惨たらしく宙に撒き散らす。

 只の人間が粗雑な銃で武装しただけでは倒す事が出来ない強敵の死体が、薬莢が排出される度に量産されていく。

 この瞬間、確かに<H-AW>は己の存在意義を十分に果たし、人間の敵を打倒し続けた。

 

『デカい蟹が移動を開始しました!!』

 

『いや、あれはどうみても海老……』

 

『無駄口を叩く前に、子蟹を追い払え!!』

 

『駄目です! 幾ら倒してもキリがありません!?』

 

『α4、子沢山過ぎます! 一旦引きましょう』

 

『当初の想定をこうも上回るか!!』

 

 だが幾ら倒せると言っても限度があった。

 その異様な殲滅速度はヌシにとって初めての経験であろうと、攻撃の度に弾丸は消費され、巨大なライフルは蓄熱によって歪んでいく。

 そして、包囲網に捕らわれた結果として<H-AW>は機動力を封じられ、逃げることが許されない。

 これこそがヌシの必勝パターンであり、百を超えて同時に襲い掛かかる子蟹の物量によって、大抵の敵は碌な抵抗も出来ずに殴殺され、蹂躙され、群れの食糧となってきた。

 

『駄目です。小型ミュータントを足止めできません!!』

 

『隊長! 残弾が3割を切りました!』

 

『此方も同じです!』

 

 ヌシの生物としての本能は直ぐに鉄の巨人から逃げろと叫んでいた。

 だが、我が子が一方的に殺され続ける虐殺は、本能を凌駕した怒りをヌシに覚えさせる。

 そして、敵の攻撃が想定以上の威力であっても、子蟹は容易く斃れる弱兵ではない。

 甲殻が叩き割られ、中身を盛大に撒き散らそうと身体が動き続ける限り前に進み続ける。

 畏れも恐怖もなく、ヌシの怒りに呼応するようにミンチと化した仲間の死体を踏み越えて敵へと迫る自慢の子供達。

 そして命を賭した献身によって包囲網は完成し、追い打ちを掛ける様に包囲網を狭める事でヌシは敵の余裕を奪う事に成功した。

 包囲による圧力は敵にとって無視出来ない負担を押し付け、事実として巨人が最初に見せた連携は既に崩れているのをヌシは理解した。

 勝利を確信したヌシは追加の子蟹を伴い進軍する。

 無機質な目を敵に向け、その強固な鋏をカチカチと打ち鳴らして敵に迫る。

 最後の仕上げは注意が分散され、連携が取れなくなった敵を一匹ずつ仕留めるだけ。

 

『これがヌシと呼ばれるミュータントか!』

 

「────────!!!!」

 

 巨人を強敵と見定めたヌシは、怒りの鳴き声によって眠っていた子供達を更に呼び起こして軍団に加えていく。

 自慢の鎧を破壊した武器を前にすれば、子蟹の外骨格は軟弱そのものであると理解した上でヌシは物量による圧殺を目論む。

 そして、怒りに突き動かされるヌシと子蟹は一方に不利であった戦況を物量で以って覆し始める。

 

 ─しかし、ヌシと同じ様に敵である巨人<H-AW>を操る人間もまた愚かではなかった。

 

『此処までだ! 現時点を以って作戦を中止! 退路へ全力射撃後に後退!』

 

 巨人に搭乗している人間はヌシを侮っていなかった。

 ただ単に人間側の想定をヌシが容易く超えていただけだ。

 そして、見誤った代償を支払わせようと鋼鉄すら圧し潰す鋏をカチカチと打ち鳴らして近寄るヌシを前に彼等は作戦の失敗を悟ったのだ。

 だからと言って、彼らには最後の悪足掻きとして玉砕するつもりは一切なかった。

 

『スモークを展開した後に全速力で撤退! 強行突破だ! 退路以外の敵は無視しろ! 子蟹を寄せ付けるな!』

 

『『『了解!』』』

 

 ミュータントと人間の知恵比べは、僅差で人間が勝利する。

 脚部に外付けされた高速移動用の車輪が展開、甲高い音を奏でながら大地を捉えた<H-AW>は地上を高速で駆け抜ける。

 包囲網を押し留めようとした射撃を退路のみに集中させ、僅かに開いた突破口へ全速力で突き進み、文字通り体当たりして道を切り開く。

 加えて、少しでも敵の視線を遮る為に機体に搭載されていた発煙筒を戦場にバラまき、ヌシと子蟹の視界を遮る様に白い煙が周囲を満たしていく。

 

「────────!!!!」

 

 一秒毎に敵の姿を覆い隠そうする白煙と共に遠ざかる巨人の音。

 このままでは逃げられるとヌシは考えるも、対抗策は一向に思い付かない。

 それは子供を虐殺されたヌシには我慢の出来ない敗北であり、身体の内から沸き上がる怒りを抑えきれなかったヌシは、今迄秘匿していた切り札を出す。

 

『隊長、敵が何かを仕掛けてきます!?』

 

『馬鹿な!! この距離だぞ!!』

 

 脚を地面に突き刺す様にして身体を固定したヌシは、逃亡している敵がいると予測される方向に頭部を向け、凄まじい圧力によって加速された消化液を放つ。

 それは水鉄砲と同じ原理でありながら、ヌシの強固かつ強靱な巨体だからこそ可能とした消化液のウォータジェットは音速を超える。

 

『隊長の機体が!?』

 

 鋏の届かぬ距離など関係ないとばかりに放たれたヌシの必殺の一撃。

 それはヌシの狙い通りに既に遠く離れていた敵に確かに命中した。

 

『問題ない! お守り代わりに持っていた盾が防いでくれた!』

 

『いやでも凄い勢いで溶けてますよ!?』

 

『ふざけるなよ!! ああ、くそ! デカくて頑丈で子分が沢山いて、その上に飛び道具まで持っているのかよ!!』

 

『無駄口を叩かずに機体を動かせ! さっさと此処から逃げるぞ!』

 

 だが命中した筈のヌシの必殺の一撃は巨人本体ではなく、肩部に追加で装備されていた盾に命中していた。

 強固且つ可能な限りの軽量化を施した金属製の盾が、急速な腐食と同時に異臭を発生させながら融けて崩れていく。

 しかし、盾は本懐を果して機体を守り抜き、お陰で逃走を中断する事もなく<H-AW>は全速力でヌシから離れて行く。

 小さくなっていく敵の姿を前に、一度足を止めてしまったヌシが追い付くのは不可能であると、ヌシが持つ闘争本能は理解する。

 

「────!!!!」

 

 その逃げ足はヌシよりも早く、土埃を巻き上げながら逃げる敵をヌシは只見ることしか出来なかった。

 それでも、己の内に渦巻く怒りを解き放つかのようにヌシは恨めし気な鳴き声を上げる。

 だがそれは敗者の泣き声に非ず。

 次に出会った時は必ず仕留めるというヌシの宣言であった。

 そんな怒りを遠くに聞きながら、鋼鉄の巨人である<H-AW>はヌシに見せ付ける様に土煙を巻き上げながら戦場を離れて行った。

 

 

 

 

 

「──以上が、今回の試験において得られた結果です」

 

 それが、つい先日行われた新兵器の実戦であり、<連邦復興委員会>が<木星機関>から依頼された新兵器の運用テストの結果である。

 その一連の戦闘を収めた映像は会議室であり執務室である大部屋で上映された。

 視聴者であり責任者である代表と副代表の二人は、コミュニティーの中では見る事は出来ない、そして想像が及ばなかった過酷な外の世界の映像を口数少なく、冷や汗を流しながら見るしか出来なかった。

 そして迫力満点の映像が終わると同時に張り詰めていた緊張を解き、盛大な安堵の息を漏らした。

 

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