迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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感想を送ってくださった皆様、感想には全て目を通しており作者のモチベーション維持になっております。

今後も作者の性癖が詰まった本作をお楽しみください。



探索 IN ミルラ軍港

 ミルラ軍港、過去の連邦に幾つもあった軍港の一つであり通常の港湾機能に加え幾つもの軍事施設が併設されていた。

 だがミルラ軍港の最たる特徴は連邦海軍士官学校を筆頭にした教育・研究機関が充実している事だった。

 軍事拠点としての重要度は高くは無く、ミルラ軍港の役割は連邦海軍の将来を担う将官を育成する事でありそれに付随する教育・研究を行う場として栄えていた。

 

「目的地に到着しました。此処が本日の探索場所であるミルラ軍港です」

 

 サリアの声掛けを聞きながらノヴァはトラックを下りる。

 すると目の前には長大な塀とフェンスの残骸で囲まれた広大な土地があった。

 街とは違い建物同士の間隔は広く取られ多数の軍用車両が同時に通過できるようになっており見晴らしは非常に良く軍港の入口から埠頭まで視界に収める事が出来た。

 

「だけど何も無いね。空っぽだ」

 

 だがミルラ軍港の埠頭には船が一隻も残っていなかった。

 もしかしたら建物陰に隠れていると考えてノヴァは軍港の中を進み埠頭全体を見渡せる場まで移動したがやはり船は一隻も無く残骸すら皆無であった。

 

「スクラップ同然の軍艦があるかもと期待していたけど一隻も無いし、港に沈んでいる様子もない。軍港が空っぽになるなんてあり得るの?」

 

「あり得なくはない、としか言えません。上層部から戦力温存の為に軍艦の一切を引き上げる命令が下ったのか、それ以外か。すみませんが当時の国防省直轄部隊にいた私は海軍事情に関する情報は不必要と判断されて一切の情報は与えられませんでした。そのため当時何かあったのか全く分かりません」

 

「あ~、機密保持を考えれば当然だね。それじゃ空っぽの軍港探索でもしましょうか」

 

 アランならなにか分かるかもと期待したノヴァだったが返って来た返事は余りいいものでは無かった。

 だが潜入工作員でもあるアランに不必要な情報を持たせなかったのは鹵獲された場合を想定した処置であったのだろう。

 それを考えればアランを責めるのはお門違いであり、しょうがないと諦めるしかない。

 

 期待していた軍艦が見付からなかったノヴァだが気持ちを切り替えて本格的に当初の目的でもある軍港探索に向かう。

 ミルラ軍港は優秀な海軍士官を育成する為の教育機関を兼ねており他の軍港とは違って教育・研究機関が多くあることは事前調査で判明している。

 その為、教育・研究機関が入っていた建物には貴重なアーカイブがあるとノヴァは目星を付けていた。

 軍事関連かはたまた海軍用の兵器製造データか、内容は全く予想付かないがノヴァは期待しながら軍港内部にある建物へ入っていく。

 

「空っぽだ……」

 

 一件目の建物の中には少数のグールやミュータントは住んで居たようだ。

 ノヴァ達を見るなり奇声を上げながら襲い掛かってくるもサリア達護衛の手によって迅速に処理されノヴァが出る幕は無かった。 

 代わりにミュータントの断末魔を聞きながらノヴァは建物内を探索していく。

 書類棚、資料保管庫、高級将校用の個室の金庫等々調べられる箇所は一つ残さずノヴァは持ち前の器用さを発揮して調べていった。

 だが其処には何も無く基本的には空っぽであり、時たま何か見つけたと思ったら錆び付いた拳銃や弾丸位であった。

 

「いや、今回は外れを引いただけだ。次の建物には何かがある筈だ」

 

 碌な収穫が無く軽く落ち込んだノヴァだったが気持ちを切り替えてまた別の建物に入っていく。

 今度こそなにかがある筈だと張り切っていたノヴァだが──

 

「此処も空っぽ……」

 

 だが一件目と同じように中には何も無かった。

 何らかの情報が入った記憶媒体一つも見つけ出す事が出来ずひっそりと暮らしていたであろうミュータントが沢山見付かった位だ。

なお、見付かったミュータントは迅速にサリア達によって物言わぬ屍に変わり果てた。

 

「次へ行こう、次へ」

 

 もう一度ノヴァは気持ちを切り替えてまた別の建物の中へ入っていく。

 三度目の正直、今度こそ何かしら有益なものが見付かる様に願っていたノヴァだが──

 

「此処もかよ……」

 

 だがノヴァの願いも虚しく三件目も同じように何も残っていなかった。

 此処まで探して何も見つからない、三件目にして何か嫌な予感を感じてしまったノヴァ。

 だがそれは間違いではなかった。

 

「此処もか!」

 

 その後も建物の中に入って探索をノヴァは試みたが成果は一切無かった。

 此処まで連続して何も残っていないのであれば最早偶然ではない、当時の軍港関係者は意図して一切何も残さない様に行動していたのだ。

 

「根こそぎ持ち出されている、何というか此処まで徹底していると逆に感心するわ」

 

「輸送艦も動員したのでしょう。軍港にある物資は軒並み持ち出し、持ち出せなかった機密情報などは現地で処分したと考えるべきでしょう」

 

 ノヴァが探索した建物の中には碌なものが残っていなかった。

 あるのは錆び付いたパイプ椅子に腐って原型を留めていない木造品に元気に襲い掛かってくるミュータントだ。

 小型の記録媒体一つも見付ける事が出来ず既に日は傾き夕焼けになっていた。

 

「最後の希望だった士官学校に至っては建物ごと焼却処理した跡があるとか勘弁してくれよ。潮風と経年劣化も加わって瓦礫の山と化しているし」

 

 ミルラ軍港は軍事施設としては、弾薬庫や艦載機整備・訓練用の飛行場、水兵や海兵隊用の兵舎など一通りの施設が揃っている。

 その中でもかなりの面積を占めていた士官学校だがノヴァが見たのは瓦礫の山であり、併設されていた図書館や資料館も同様に崩れて瓦礫と化していた。

 士官学校もミルラ軍港による機密保持の一環だろう、記録媒体は残さず処分され何も残っていないに違いない。

 

「さすが正規軍、機密保持として記録媒体を軒並み破壊して僅かな手掛かりも残さない様に建物も処分するとかぶっ飛んでるな!チクショウめッ!」

 

 瓦礫の山と化した士官学校の前で叫ぶノヴァの声は虚しく軍港の中に響いた。

 それで区切りがついたノヴァは足元にあった比較的大きな瓦礫の上に座り込むと呆然として夕焼けを眺める。

 

「肩透かしに終わっちゃったな……」

 

 息抜きではあったがノヴァは今回の探索を楽しみにしていた。

 だが蓋を開けてみればあったのは無駄に広いだけで何も残っていない軍港があっただけだ。

 身体は動かしたもののストレス発散には程遠い結果となっただけだ。

 

「ですが軍港である此処には纏まった広さがあります。今の内に確保しておけば後々何かに活用できるでしょう」

 

「セカンドの言う通り此処を修復すれば基地として再び運用する事が出来ます。海軍を再建するのであれば確保しておくべきでしょう」

 

「いや海軍再建って軽く言うけどやらないからね、其処迄手出しできないから!」

 

 ノヴァにしても軍艦に興味が無い訳ではない。

 大口径砲を積んだ戦艦にはロマンを感じ、空母を見れば艦載機の離着陸シーンには心を躍らせ、ミサイルサイロから発射される対艦ミサイルに見惚れる健全な男の子である。

 だが軍艦がない現状で海軍を再建するのであれば一から軍艦を作り揃えなければならない。

 そして海軍再建にあたり軍艦を設計が出来るのは現状ではノヴァだけである。

 

 ──冗談ではない、これ以上仕事を増やしてなるものか!

 

 サリアとアランが言ったのは選択肢の一つでしかないがノヴァは全力で首を横に振る。

 とはいっても軍港の中にいたミュータントを粗方処理して確保した土地を態々放置するのも何だか勿体ない、軍艦を建造する予定は無いがミュータントが入り込んで巣を作らない様に少数の常駐部隊を置くべきだろう。

 一先ずは軍港を確保してその後に活用方法を見付ければいいとノヴァは判断した。

 

「取り敢えず部隊を此処に派遣して確保だけはする。それで軍港で探索はもう終わり?」

 

「いいえ、あと一つだけ残っています。ですが探索を切り上げるのであれば迎えの車両を呼びますが如何しますか?」

 

「……いや、此処まで来たから最後まで行こう」

 

 ノヴァの気持ちとしては切り上げたかったが残ったのが一つだけとなれば無視する訳にもいかない。

 特に深い理由は無い、碌な収穫が無いとしても一つだけ残すのは収まりが悪いというノヴァのちょっとした拘りに過ぎない。

 そんな理由でノヴァは最後に残った建物へ向かった。

 幸いにも直ぐ近くとは言えないものの少しだけ長い距離を歩いた先に目的の建物はあった。

 

「最後に残ったのが此処か」

 

 それは何の変哲もない格納庫である。

 潮風と経年劣化により今にも崩そうな見た目をしており金属部分には赤錆が目立つ。

 そんな軍港で散々見て来た格納庫と大差ない姿であり──しかし目の前にある格納庫は違った。

 

「何かいるね」

 

「ノヴァ様お気をつけ下さい」

 

 サリアがノヴァの前に出て警戒態勢に移行する。

 なぜなら格納庫の周りには数多くのミュータントの死骸があるのだ。

 白骨化した死骸や数日前に倒されたのか蛆が湧いた死骸等が格納庫の入口を囲うように積み重なっている。

 格納庫に何かがいるのは間違いなかった。

 

「ミュータントの死骸がこれ程積み重なっているなんて、コレは臭うね!」

 

 今まで続いていた肩透かしから一転して気分が昂ったノヴァだが一人で勝手に行動はしなかった。

 護衛のアンドロイドに守られながら少しずつ格納庫に近付いていく。

 そして護衛のアンドロイドの一体がミュータントの死骸を踏み越えると格納庫で何かが動く音がし始めた。

 異変を感じ取ったサリアは護衛アンドロイドに通信を行い、警戒レベルを引き上げる。

そして格納庫に近付くノヴァ達を迎えるかのように入口から大きな何かが出て来る。

 

『し、シンニュ、者、ハイ除、……』

 

「ビンゴ!」

 

 ノヴァは格納庫から出て来た四足歩行の多脚重装警備ロボットを見て喝采を挙げた。

 壊れた人工音声で警告を発する多脚ロボットはゲームにおいて度々登場する敵対的なロボットの一種である。

 硬い、デカい、強い、と言った三拍子そろったロボットでありゲームでは当然登場しては容赦なく殺されたものである。

 だがこの警備ロボットの特徴は一回倒せば設計図が手に入りプレイヤーが製造する事が可能になるのだ。

 そして製造した警備ロボットにはロケットやガトリング砲を搭載する事も出来、原型機よりも強力なロボットに改造できる。

 そうなれば大物であっても大抵のミュータントは一方的に倒す事が出来る強力な味方になるのだ。

 

『こ、こ、は立ちイ、キン……ハイ除』

 

「いいね、いいね!サリア、なるべく形を保ったまま鹵獲したいから壊さないでくれ!」

 

 忘れかけていた記憶がよみがえると共にノヴァも否応なく昂っていく。

 そして背負った武装を展開し護衛のサリア達と共に警備ロボットに向き合う。

 

「さぁ!最後の締めに行きますか!」

 

 武器を握り叫びながらノヴァは警備ロボットに戦いを挑む。

 その顔はサリアが久しぶりに見る晴れ晴れとしたものであった。

 

※2023/08/18 最新話85話「決着」の後、間話を挟まずに本編に移行するか作者も悩んでいるのでアンケートを採ります

  • 本編を書いて
  • 間話を書いて
  • どちらでも良い
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