迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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第5次戦闘経過報告

 様々な要因が重なって崩壊し言葉通りのポストアポカリプスとなった世界。

 

 国家と呼べるものが悉く瓦解し形を失った世界に於いて今や生存者達が作り上げたコミュニティが国家の代替となっていた。

 また国家権力の喪失に伴い地図上に描かれていた国境線は消滅、視点を変えれば複数の国家によって分割・統治されていた大陸は一つに纏まったと言える。

 だが纏まった大陸の上における人間の生存領域は大幅に減少、そして人間が積み上げて来た文化や歴史等は無力化された。

 大陸は最早人間の物ではなくなった、大地の上にあるのは何処までも単純かつ慈悲も容赦もない過酷な生存競争であった。

 

『目標発見、戦闘モードに移行。各自作戦通りに行動を開始せよ』

 

 環境の変化によって荒れ果て、草木が疎らに生える無人の荒野を8機のAWが隊列を組んで駆け抜ける。

 ノヴァによって設計製造された巨大な人型兵器は背後にある推進器から発生する推力によって機体を動かし、その背後には大きな砂埃が立ち昇っている。

 そして隊列を組んで移動するAWの進行方向にいるのはミュータントの群れ。

 多種多様な大きさと姿が混ざり列をなして移動しているミュータント──それらはAWが倒し駆逐する対象である。

 

『敵集団は二つ。A集団、B集団と命名、第一小隊はA集団、第二小隊はB集団を排除せよ』

 

 自身を含めたAW8機の部隊を率いるリーダーの命令は部隊を二つに分ける事。

 一個小隊4機、計二個小隊で造られた部隊を小隊毎に分け接近するミュータント集団に対処する事をリーダーは選択した。

 

 命令を受けたAW各機は二つの小隊に分かれ火器の射程圏内に入ったミュータントに順次発砲していく。

 光学兵器の光が、レールガンの弾丸がミュータントを貫いてゆく。

 一定の距離を保ったままAWに搭載された遠距離攻撃兵器で撃ち抜く簡単な仕事である。

 

『第一小隊、敵集団の51%を排除。小型種が多数いるため光学兵器の冷却が追い付かない。距離を取って戦闘を継続する』

 

 ノヴァはミュータントに関する分類を一時的に変更、全高10mを起点にして10m以上を大型、10m以下を小型と分類する事にした。

 

 AWが相対している敵ミュータントは足の速い小型が先行し、その後ろに大型で構成された集団が追走している。

 小型に分類された5m前後のミュータントは素早く動き数が多い、姿も虫のような物から四足歩行の哺乳類に類似した姿をしたものまでありバリエーションは豊かである。

 見た目が異なる種類が混じっていながら統率が取れた動きをしている理由は現時点では不明であるが、その謎を解明するのはAWの仕事ではない。

 遠距離攻撃手段を持たず肉体を用いた格闘戦が主な攻撃手段である小型であるがAWであれば簡単に対処が出来る相手である。

 

 

『第二小隊、敵集団の37%を排除。此方は大型種を多数確認しており排除に時間が掛かる。援護を求む』

 

 小型とは違い大型は10mを超える大きさを持ちAWと同じか超える個体もいる。

 姿もバリエーションが減り現在相手しているのはサソリの様な姿をしており長い尾や鋭い鋏を持つ種類だ。

 大型クラスのミュータントになってくると格闘戦の他にも特殊な遠距離攻撃手段を持つ個体が出現する。

 特に大型を超えた超大型クラスであれば生体ミサイルや遠距離砲撃をしてくる個体も確認しており脅威度は飛躍的に上昇する。

 

 幸いにも今回の戦闘では超大型ミュータントは確認できず、相対している大型も遠距離手段を持たない種類である。

 大型の特徴である生命力の高さは警戒するが今回の戦闘は脅威度の低い()()()()()戦闘である。

 

『第二小隊は距離を保ったまま戦闘を継続せよ。第一小隊は敵集団を排除後に第二小隊の援護に回れ』

 

『了解』

 

 リーダー機である軍用アンドロイドの指揮を受けた7機のAWは各々に動く。

 小型種を掃討しているAWは光学兵器が熱暴走を起こさない様に管理をしながらミュータントを焼いて行く。

 文字通りの光の速さで肉体を熱せられ炭化したミュータントは動きを止め、後続のミュータントに容赦なく身体を踏み砕かれていった。

 大型種を相手にしている小隊は火力を集中させながら一体一体確実に処理を行い、また数少ない実弾兵器であるレールガンも撃ち込む。

 搭載されたセンサーから得られる情報を精査しデータリンクを行っているAW、そして搭乗しているのは戦歴を重ねた軍用アンドロイドである。

 

 各機が最適な行動を選択し続けた事で時間が経つ程ミュータントの数は減っていき、そして敵集団は程なく壊滅した。

 

『敵対勢力の殲滅を確認、各機損害を報告せよ』

 

 部隊のリーダーは各機から送信される損害データを集計、今回の戦闘に於いて大きな損失が無かった事に安堵した。

 しかし搭載された光学兵器の発振器は想定以上の負荷が掛かった様でメンテナンスが必要であり、レールガンの弾丸や機体関節の摩耗等の消耗も少なくない。

 万全の状態ではなく、ミュータントも殲滅された今が撤退の機会である。

 

『これより基地へ帰投する。各機、警戒を怠るな』

 

 リーダーの指示の下、8機のAWは隊列を保ちながら基地へと向かう。

 ミュータントとの戦闘があった場所に残ったのは夥しい数の死骸、だが時間が経てば死肉を喰らいに集まった別のミュータントが現れ一つ残さず喰い尽くすだろう。

 

 国家によって引かれた不可視の国境により分割された大陸は今や昔。

 原初の頃に戻った大陸は何処までも広く、其処は過酷な生存競争が繰り広げられている。

 其処に途中参入したのがノヴァ達であり、定期的に繰り返されるミュータントとの闘争は新たな日常になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ世界観変わっているな。AWを作ったのは自分だけど」

 

「現在は暫定的に定めた防衛線を基に接近してくるミュータント集団を排除しています。ですが戦闘回数を重ねるごとに接近する集団は増強されており、ミュータントが防衛線に接近する理由も不明です」

 

 デイヴの発言と共にモニターにはこれまでのAW部隊が発見、殲滅したミュータントに関する記録が映される。

 戦場となっているのは暫定的に定めた防衛線、本拠地である『ガリレオ』からは遠く安全マージンは余裕を持って引かれたものである。

 その付近では絶えずAWとミュータントによる殲滅戦が繰り広げられ、現時点ではAW側が優勢である。

 だが問題が皆無という訳ではなく戦闘を重ねる毎にAW部隊からの要望は増えていった。

 

「現段階では大きな損失はありませんが、部隊の方からは予備戦力の拡充と機体の更新を求めています」

 

「それについては理解しているから予備部品から組み上げた機体も用意して急いでいるけど……、先行量産型のAW製造はどこまで進んでいる?」

 

「現在組み上げ前の機体が2機あります。また生産ラインも増強しているのですがAWの増産は時間が必要ですし搭載兵装についても同じです」

 

 現在『ガリレオ』ではプロトタイプAWではなく先行量産型AWの製造に取り掛かっている。

 プロトタイプで判明した欠点を改善、搭載火器の火力と継戦能力の向上、機動性の向上等の改良を加えた機体ではある。

 また光学兵器中心を改め実弾兵器搭載も視野に入れているのも特徴である。

 プロトタイプでは光学兵器を多数運用した事で機体に供給されるエネルギーリソースを奪い合ってしまう事態となった。

 エネルギー不足は機動力の低下に直結、機動兵器の特徴である機動に支障をきたしてしまった。

 それを防ぐ、或いは緩和する為に先行量産型では火薬式実弾兵器の開発にノヴァは取り組み、幾つかの装備の設計、試作は完了している。

 この機体が戦場に投入されれば戦力向上は叶いミュータントとの戦いは容易に──なる予定である。

 

「設計・試作は終わっているんだ。だけど材料と生産ラインが無いとどうしようもない」

 

「部隊の方には補修部品と予備部品で組み上げた追加の三機で当分の間は耐えてもらう事になります。ですが部隊の処理能力を超えた集団が接近した場合は一時的に防衛線を下げてミュータント側の反応を確認します」

 

 防衛線とは言っても『ガリレオ』からは遠く離れており、また防衛線の内側に機関が建設した重要な施設は皆無である。

 そもそもミュータントが防衛線に接近する理由さえ不明、別の場所に移動する為の単なる通行の可能性もありうるのだ。

 それでも戦うのは『ガリレオ』にミュータントが雪崩れ込む万が一の可能性に備えるためだ。 

 

「被害妄想かもしれないがAWは最低でも36機揃えたい」

 

「時間は掛かりますが不可能ではありません。沿岸部の工場群が稼働すれば必要な素材は揃いますから今は待つしかありません」

 

 ノヴァが出来ることは全て行った、後はアンドロイド達の働きを待つしかない。

 工場が完成するのも生産ラインが稼働するのも一朝一夕では無理な話であるのもノヴァは分かっている。

 だが大陸の遥か向こうに大量に存在する巨大なミュータントを知ってしまえば不安が常に胸の内に燻ぶってしまう。

 

「分かってはいるが待つだけと言うのも辛いな」

 

「仕方ありません。それにノヴァ様が現時点で出来る事は休息をとる事です」

 

「それはそうだが……」

 

 ノヴァとしては会議が終わり次第部屋に籠って設計書の確認を行うつもりであった。

 無論既に何回も繰り返しており、問題は粗方発見して解決を終わらせている。

 今更確認した所で新たな問題が見付かる可能性は非常に低いと言わざる得ない、それでも何かしていないとノヴァは落ち着けない状態であり──

 

「お話は聞きました。丁度今ルナリアお嬢様が手作りのプリンを作っているところなのでお休みになさってはいかがですか?」

 

「よし、仕事辞め!ルナの迎えに行くぞ!」

 

 会議室を離れていたサリアが放った一言でノヴァは行動を急転換した。

 最近になってルナはお菓子作りに目覚めたのかサリアや他のアンドロイド達と共に厨房に立って料理する事が増えた。

 最初の頃であれば簡単かつお手軽にできる様な料理を作っていたが扱える材料が増えるに従って色々な料理に挑戦を始め腕は少しづつ上がっている。

 そして娘が作った料理を食べる特権を持ち見逃すノヴァではない、さらに加えて今回作っているのはノヴァの大好物のプリンである。

 

 ノヴァの胸に燻ぶっていた不安は娘の手作りプリンというもので簡単に解消された。

 そして会議室を早足で出ていくノヴァを見てデイヴは何とも言えない感情を抱える羽目になった。

 

※2023/08/18 最新話85話「決着」の後、間話を挟まずに本編に移行するか作者も悩んでいるのでアンケートを採ります

  • 本編を書いて
  • 間話を書いて
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