迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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突撃!隣の極秘研究所!?

 天気は曇り、厚い雲が空を覆って日の光を遮ることで辺りは昼間でありながら薄暗い。

 風も無風に近い状態であり一言で言えば気味の悪い天候である。

 

 ウェイクフィールドの郊外、街の中心部から離れた民家も疎らな一画に異様な建築物群がある。

 周りにある長閑な光景に全く溶け込むことが無い大きな建物、それが複数建築されているだけでなく周りにはフェンスや防壁の様な囲いが存在している。

 まるで中にある建物を隠すように、もしくは外部から守る為に築かれたようであるが現状目的は全く判明していない。

 そして囲いの中には少なく無い数のミュータントが生息し、不用意に足を踏み入れた生物を容赦なく仕留める危険地帯──であった。

 

「第一分隊は周辺地域の監視、第二分隊は防護施設での施設の防衛に当たれ」

 

「弾丸等の消耗品は第3ブロックに運搬せよ」

 

「検査機器は慎重にテントの中に運べ!」

 

「見てくれ、支給されたばかりの潤滑油だ。混ぜ物無しの一級品だぜ」

 

「おい、それ上級アンドロイドに優先的に支給される代物じゃねえか!一体どうやって手に入れたんだ?」

 

「そいつは企業秘密だが、脱法行為はしてない綺麗な代物だぜ」

 

 だが今や囲いの中のミュータントは一匹残らず掃討され、代わりに多くの武装したアンドロイドが駐屯している。

 ミュータントの死骸を片付け、倒木や廃車等の瓦礫を撤去する人型重機に搭乗したアンドロイド達が数多く動き回り囲いの中は急速に整備されていった。

 そして今も物資を満載した輸送ヘリが到着、中に詰め込まれた補給品を外に運び出していき──

 

「やってきました、突撃、謎の研究施設!中には何があるのかこうご期待!」

 

『パチパチパチパチパチパチ』

 

「五号、無理してノヴァ様に合わせなくても大丈夫ですよ」

 

『あ、そうなのですね』

 

「そんな事はない!リアクション有難う五号!それとサリアは可哀そうな目で見るのはやめてね!」

 

 仕事のストレスと謎の研究施設にテンションの上がったノヴァ、純真無垢な生まれたての人工知能『五号』、付き合いが長くなってノヴァのあしらい方を覚えたサリア。

 何とも面白おかしい組み合わせがヘリから降りて来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ、映像では見たけど実際に見ると怪しいな。……それに冗談抜きで怖いし」

 

 ノヴァの目の前には調査部隊が見つけた研究施設と思われる謎の建築物群が建ち並んでいる。

 薄暗く不気味な天候と相まってホラー映画等の舞台に選ばれそうな雰囲気であり正直言ってノヴァの苦手なシチュエーションである。

 もし一人であれば怖がって絶対に踏み入らない、実体のない幽霊と言ったオカルトはノヴァが大の苦手とするものなのだ。

 

『心拍数が上がっています、お父様は緊張、いや、怖がっているのですか?』

 

「……五号、世の中には言わなくていい事もあるんだぞ。男が頑張って虚勢を張っている時は温かい目で見守るんだ」

 

『分かりました。お父様は怖がりで意地っ張り、それと温かな目で観察すると記録します』

 

「うん、コミュニケーションは難しいね!」

 

 安全の為に強化外骨格を装備したノヴァ、いつも通りの武装の他には肩部に先端にカメラが付いたアームが一つだけ繋がれている。

 カメラを動かしているのは本拠地の地下にある大型演算処理施設にいる五号だ。

外部環境を知覚する為の装置であり今はアームを使用してノヴァや建築物群、働いているアンドロイド達を観察する為に忙しく動き回っている。

 

どうしてノヴァが自分の強化外骨格に武装以外のカメラを付けているかと言えば教育の為であり、五号が真っ赤な思想に溺れるのを防ぐ為に外に連れ出したのだ。

データベースだけではない、予測困難な外の世界の映像を見る事でデータや計算だけでは解決できない事があるのをノヴァは五号に知って欲しかった。

それで最初はノヴァとサリアだけで研究所を訪れる予定を急遽変更して強化外骨格に外付けの観測機器を急いで作って搭載したのだ。

 

「ノヴァ様、要請を受けていただきありがとうございます」

 

「君もお疲れ様。問題のセキュリティの解除は任せてくれ。それで封鎖された入口は何処?」

 

「こちらです」

 

 研究所一帯の調査・防衛を担当している上級アンドロイドがノヴァ達の目の前に現れ問題の場所に案内をする。

 着いた先にあったのは分厚い錆び付いた金属隔壁が降ろされた入口の一つ、試しにノヴァが軽く叩いてみれば重厚な金属音が返って来た。

 

「うわ、どんだけ厳重なんだよ」

 

「入口は計三カ所、どれも同じような金属製の隔壁が降ろされています。施設の外にいるミュータントを殲滅した後に内部に侵入しようとしましたが現状では隔壁で防がれています。加えて調査を行った処警備システムが未だに稼働しているようで下手な行動は出来ないと判断しました」

 

「その判断は正解だ、下手に壁を破壊して侵入すれば機密保持で自爆していた可能性もある」

 

 ノヴァは上級アンドロイドの話を聞きながら隔壁の傍にある操作端末に手持ちの機器を接続、確かにアンドロイドの言う通りに警備システムは今でも稼働しているがそれだけではない。

 接続する事で警備システム全体のセキュリティレベルが非常に高く不正アクセスを検知した瞬間見知らぬシステムが稼働するように連動されていたのだ。

 操作を一つでも間違えれば何かが起こる、凄腕の産業スパイや諜報機関でも苦戦は免れない強固なファイヤーウォールであるが今回ばかりは相手が悪かった。

 

「さてさて、残念だけどセキュリティーの解除は得意中の得意。悪いけど中身を見せてもらうよ!」

 

『中身は期待できそうですか?』

 

「今はまだ何とも言えないけど、これだけ強固なセキュリティーを何重にもしているんだ。中身はお宝に違いない!」

 

 ノヴァの力によってシステムを強固に守っていたファイアウォールは成すすべなく沈黙。

 合わせてシステムを解体し無害化と解除を行っていき、それから暫くすると軽快な電子音と共に金属隔壁が動き出した。

 

「よし、解除完了!」

 

「ノヴァ様は下がって下さい」

 

 ノヴァを背後に庇うかのようにサリアが進み出るのと同時に上級アンドロイドが率いる部隊が内部に侵入。

 建物内に潜んでいるミュータントを警戒、また内部に危険がないか調査を迅速に行っていく。

 

「ミュータントの反応、異常、共に無いようです。ですが建物内の酸素濃度が異常に低いのでマスクを着用して下さい」

 

「了解、それじゃ、お邪魔しま~す」

 

『お邪魔します』

 

 ノヴァは剥き出しであった頭部を強化外骨格で覆う。

 視界が暗闇に包まれるがそれも一瞬、頭部にある複数のカメラを通して得た情報を網膜投影することで先程迄と変わらない視界が戻ってくる。

 また上級アンドロイドの報告を裏付ける様にセンサーが警告、建築物内部の酸素濃度が基準値を下回っている事を警告してきた。

 だが建物内部に入ったノヴァの目を引かれたのはまるでここだけ時間が止まったかのように綺麗に保たれていた内装であった。

 

「中は荒れていないが、埃はしっかり積もっている。完全に密閉されていたのか?」

 

 地面には分厚い埃が積もっているが目につくのはそれだけだ。

 荒らされた形跡は無く、ミュータントとの戦闘の痕跡も今はまだ確認できない。

 そして隔壁の操作端末と同じように建物内にある端末も操作が可能であった。

 

「電源が生きているのなら供給源は何処にある?……これは施設の案内図か」

 

 施設の案内所のような場所にあった端末を操作して得られた情報は少ない。

 それでも一通り操作したことでノヴァは大雑把なものではあるが施設の間取りに関する情報を入手、そして施設が軍の極秘研究所である事が判明した。

 

「只の研究所じゃなくて本当に軍の極秘研究所のようだな。取り敢えず此処の管制室を第一目標にして部隊を進ませよう」

 

「分かりました。それではノヴァ様達の護衛を行いながら施設内を進んで行きます」

 

 武装したアンドロイド達がノヴァを囲みながら施設の中を進んで行く。

 ノヴァの聴覚が拾うのはアンドロイドの足音と僅かに聞こえる空調設備の音だけ、それ以外の音は全く聞こえず建物内は静まり返っている。

 

「本当にミュータントがいないね。侵入する前に研究所を封鎖できたのか?」

 

『操作ログは残っていなかったのですか?』

 

「権限がないから其処は調べられなかった。入口の端末は職員の勤怠管理受付と施設案内位しか許可されていない、詳しく調べたいならこの施設を一括で管理している可能性のある管制室に行かないと駄目だ」

 

『因みに部隊を分散させないのは何故ですか?部隊を分ければ迅速な調査が可能になりますよ』

 

「確かにそうだ。だけど二つの理由でそれは出来ない、まず一つ目は事前情報の無い施設で分散してしまうと何かが起こった時に対処出来ない可能性がある。下手をすれば各個撃破される可能性があるんだ」

 

『成程、因みにもう一つは何ですか?』

 

「そんなもん俺が怖いからに決まっている。こんな不気味な施設の中を少人数で動き回れるか!」

 

『……比重としては二番目が高そうですね』

 

「いけませんよ五号。そう言った事は口に出さず、電脳内に収めておくものです」

 

「そうだぞ、正直さは時に無自覚に人を傷つける。覚えておいて損はないぞ」

 

『因みにお父様は傷ついていますか?』

 

「不意を突いたドッキリ展開に備えて気を張っているから傷付く暇がないな!」

 

「あの、皆様、出来ればお静かにして下さい……」

 

 だが、その静寂さを破るかのように騒ぎながらノヴァ達一行は施設の中を進んで行く。

 幸いにも音に釣られてミュータントが出てくる事も、システムから切り離されて暴走した警備機械が襲ってくることも無い。

 厳重な警戒がまるで不要であったかのようにノヴァ達は順調に進み──だがその足は途中で止まる。

 

「なんだコレ?」

 

 脚を止めたのはノヴァ、そして立ち止まり視線を向けた先にあるのは壁に立てかけられた一つの白骨標本だ。

 ガラスケースの中にある白骨は人型であり成人男性と同じ大きさであり、それだけならばノヴァが脚を止める理由にはならない。

 

『照合しましたがデータベースにある人間の骨格、人型ミュータントの骨格とも全く異なります。ミュータントとは言えベースになった人間と近い骨格をしていますが目の前にあるモノは全く異なります。標本の基となった生物の正体は何でしょうか?』

 

 人型ミュータントの骨格は人間に近く、大きさの差はあれど逸脱した形状はしていない。

 だからこそ、ノヴァの視線の先にある白骨標本の頭部の異常さが際立ってしまう。

 

「……一つだけ正体に心当たりがあるな」

 

『お父様?』

 

 何時の間にかノヴァの心臓の高鳴りは嫌になる程高まっていた。

 強化外骨格の中にある身体には冷や汗が流れ、呼吸は浅く短くなっていく。

 白骨標本の基となった生物、その名前を口にした瞬間更なる不幸が襲ってくるような錯覚がある。

 これがもし偽物であれば後で笑い話にすればいい、だけどもし本物であれば──最悪だ。

 

「エイリアンだよ」

 

 ゲームでは僅か数行のテキストでしか存在しなかった生物。

 地球で生まれた生物ではなく、はるか遠くの星で誕生した生命体。

 

 宇宙からの来訪者、その名は世間ではこう呼ばれる──エイリアン、と。

※2023/08/18 最新話85話「決着」の後、間話を挟まずに本編に移行するか作者も悩んでいるのでアンケートを採ります

  • 本編を書いて
  • 間話を書いて
  • どちらでも良い
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