迷い込んでしまったのはポストアポカリプスな世界でした(旧題:ポストアポカリプスなう!)   作:abc2148

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*2023/08/11
 本文の後半、周辺状況の描写不足によって読者に誤解を与えているため文書の追加を追加しました。


先人の抵抗

・XXXX/XX/XX

 惰性で続けている日記も三冊目に入った。

 とは言っても此処に書くようなことは何も無い、あえて書いたとしても連日メディアが戦争前夜だとか株価上昇と喚いているだけ。

 軍需産業に内定を貰った同期は忙しそうだが俺には全く関係ない、連日研究室で細胞培養の日々を送っている。

 遺伝子学を専攻したがポストが空く様子も無い、当分給料は変わらないだろう。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 帝国に巨大な隕石が落ちたようだ、あと帝国の奴等連邦の攻撃だと言っているらしい。

 最近はそんな話ばっかだ、暗いニュースしか最近聞いていない。

 祖母ちゃんの家にいるダニーに会いたい、あのもこもこの毛に顔を埋めたい。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 学生が実験機材をぶっ壊しやがった!貴重な設備なんだ、お前らの予測年収より高価な代物を手違いで壊すな!

 ……取り敢えず新しい装置の購入、それが駄目なら修理申請を出してみるが受理されるかは分からん。

 今の情勢だと新規購入が難しい、それに年代物の修理を出来る人がいるのかも分からない。

 今日の実験は中断して資料整理に充てた。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 さけうまい

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 二日酔い、頭痛い、気持ち悪い。

 申請が全部却下された、成果の無い研究室に与える金は無いらしい。

 書類をいっぱいかいた、なども突き返された、でもだめだた。

 奴等はあれか、学問は金のなる木だと思ってりうのか、ばかだ、ばかだ。

 取り敢えず酒を飲む、やってられるか

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 四日ぶりに日記を書く、連邦軍で何か大規模なプロジェクトが進んでいるらしく参加を打診された。

 俺は直ぐにYESと答えた、給料が高い、国家プロジェクトの参加は箔になる、あと給料が高い。

 祖母ちゃんに連絡を入れる、喜んでくれて励ましも貰った。

 俺はこのしみったれた研究室から出ていく、世話になった恩師はいない、辞表を大学に叩きつけた。

 ザマーミロ!

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 赴任先の研究所マジヤバい。

 あと恩師が所長だった。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 漸く落ち着いた、機密保持があるから詳しく書けないが俺の仕事は未知の生物の遺伝子を解析する事、それだけだ。

 だとしてもヤバい、国家プロジェクトなだけある、だが燃えて来た。

 取り敢えず奴等の遺伝子を全て暴いてやる、これは人類に与えられた福音だ。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 これ職務経歴書に載せられない代物では?

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 最初からヤバかったがさらにヤバさが増している。

 取り敢えず未知の生物の遺伝子の解析は完了、併せてワクチン開発の筋道もついた。

 だが犠牲になった人が多すぎる、連邦帝国関係なく大勢死んだ。

 いや 死ぬ事も許されずに奴等の先兵となった。

 被害の大きさから隠蔽は無理だろう、そう遠くない内に世界中に知れ渡る、そうなれば守秘義務を多少違反しても大丈夫だろう。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 軍上層部は勝てると思い込んでいたようだ。

 その上で奴等が持つテクノロジーを独占しようとして手痛いしっぺ返しを食らった。

 今更ながら本格的に行動を起こして大部隊を向かわせたようだ、だがニュースでは報道されていない。

 癪だが上層部の判断も理解できる、これを知らしめたら全世界同時パニックになる。

 今は対帝国と偽装して動いている、噂話だが帝国の方も事態を重く見たのか非公式に協力するらしい。

 

 どうでもいいがマイケルがトトカルチョをしているらしい。

 対象となっているのは俺がナタリー女史に告白するかどうか、実に馬鹿らしい、確かにナタリー女史は魅力的だが俺は惚れていない。

 ただ良く会話するだけだ、彼女は話も合うし、笑った顔は魅力的だが俺は惚れていない。

 

 俺は惚れていないんだ!

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 奴等に帝国と連邦が協同して戦略兵器を大量にプレゼントしたようだ。

 辺り一帯の地形は変わり果てた、人が今後百年は住めないだろうと仲間達が話していた。

 だがその甲斐もあって奴等……もういいや、エイリアン、エイリアンの軍隊を殲滅したようだ。

 これで世界は破滅を免れた筈だ、後は帝国と連邦が停戦すれば平和になる、平和になるんだ。

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 

 

 

・XXXX/XX/XX

 ああ、これは遺書だ、俺は今遺書を書いている、誰にも読まれないものだ。

 研究室がエイリアンに襲われた、奴等地下に穴を前線から掘って此処まで進んできた。

 此処には軍人はいない、警備員はいたが直ぐに捕らわれた、喰うためか仲間にするのかは分からないが死んだも同然だろう。

 エイリアンの目的は此処で研究していたワームホールの実験装置、奴等から得られた技術で将来は宇宙進出に革命をもたらすだろうと所長が嬉しそうに語っていた。

 あれを使って母星に援軍を要請するのだろうと所長は言った、俺達は直ぐに装置を止めようとしたが遅かった。

 エイリアンの数は多かった、生き残った集団かも知れない、ソルジャー、タイタン、一杯いた、皆殺されるか捕まった。

 時間は無かった、でも所長は奴等を此処で足止めすると言った、俺は言われた事をやった。

 装置を誤作動させたことで不活性ガスがフロアに充満、酸素濃度を下げて窒息させてやる、出来なくても時間稼ぎになる筈だ。

 軍には要請を出した、後は研究所ごと吹き飛ばせば終わる筈だった

 

 

 

 

 

 軍からの攻撃が無い、分からない、何故だ

 フロアの気温が下がっている、     エイリアンはフロアを冷凍庫にするつもり、コールドスリープをするつもりだ。

 

 

 

 

 俺には何も出来ない、此処も冷えて来た、酒で誤魔化しているが長く持ちそうにない。

 

 ナタリー女史に告白しておけば良かった、一目惚れだった、なの     助け      きなかった。

 

 さむ    ねむ    だめ

 

 

 

 

 

   たすけて

 

 

 

 

 

 

 

 

 凍り付き力加減を間違えた瞬間に砕け散りそうなページを捲り終えノヴァは日記を全て読み終えた。

 日記に綴られていたのは一人の男の人生であり、そして遥か昔に行われた命を懸けた抵抗の記録だ。

 

『お父様』

 

「ノヴァ様一刻も早く此処から──」

 

 ヘルメットについているカメラによって日記の内容は五号やサリア、護衛部隊に既に共有されていた。

 そして誰もが危険性を理解した、一刻も早く此処から離れるべきだと。

 

 ──だが間に合わなかった、サリアが動き出した直後に施設全体を震わせる大音量の咆哮が轟いた。

 

「遅かったようだね。五号、俺が正面入り口の巨大な隔壁を開けてからどの位経った?」

 

『……42分37秒です』

 

「たったそれだけの時間でお目覚めか、隔壁があった入口は結構大きかったからな。大量の重い不活性ガスが外に逃げて代わりに酸素が入ってきたのが大きな原因だろうな」

 

 当時の研究所所長は起死回生の手段として施設の酸素濃度を低下させる事でエイリアンを窒息させようと試みた。

 その為に研究所中の隔壁を下ろし外部との接続を遮断、密閉状態にして火災鎮火用の不活性ガスを研究所に充満させたのだ。

 

 エイリアンも人間と同様に酸素が必要である生物という点に着目した研究者らしい作戦であり、狙いは間違っていなかったのだろう。

 しかしエイリアンは酸素消費を抑える為かは分からないが対抗手段として自発的にコールドスリープ状態に移行する事によって窒息を無効化したのだ。

 それでも所長は諦めなかった、外部にいる連邦軍に研究所を爆撃する事を要請して研究所ごとエイリアンを一掃する二段構えでいたのだ。

 だが連邦軍からの爆撃は実行されず、研究所を襲ったエイリアンは何の妨害も受ける事無くコールドスリープに入った。

 

 そして今、ノヴァが隔壁を開けてしまった事で先人達が封じていたエイリアンの活動が再開してしまった。

 

「不可抗力です!仕方がありませんでした!ノヴァ様が気に病む事ではありません!」

 

「そうだけどさ、流石に限度があるよ」

 

 サリアが必死に言葉を紡ぐ、それを聞いた上でノヴァは乾いた笑いを零した。

 

 ノヴァとしても今回の探索に無策で挑んだ訳ではない。

 今回の様な大規模な研究所かつ防壁によって隔離されているような施設はミュータントの巣窟になっている可能性が高いと想定していた。

 サリアとの約束もあるためノヴァが保有している全戦力までとはいかないが精鋭で構成した大部隊を事前に研究所へ派遣していた。

 彼等の戦力であればミュータントの大群であっても容易く殲滅する事が可能であり、事実研究所外部にいたミュータントの群を殲滅して見せた。

 内部探索の際もノヴァの役割は研究所の制御システムの解除、内部の掃討は引き連れて来た部隊に任せるつもりであった。

 

 だがノヴァが想定していたのはミュータントの大群を相手にすること、施設に封印されていたエイリアンの相手など全くの想定外である。

 だからこそ今、ノヴァの行動が全て裏目に出てしまった。

 

 逃走経路確保の為に入口の隔壁を開放していた──それが外部との空気循環の窓口になってしまった。

 

 未知の敵の襲撃に備えて慎重を期して施設の中を進んでいた──その結果想定以上の時間を掛けてしまった。

 

 日記を優先して空調設備の正常化を後回しにしていた──行動は間違いではなかった、だが真実を知るのが遅すぎた、分岐点を通り越してしまった。

 

 日記を読んでいた三分にも満たない時間など誤差の範囲、現状を正確に理解できた時点で全てが手遅れになっていたのだ。

 

 最初から間違っていた、正しい行動は研究所に問答無用で戦略兵器を撃ち込む事、研究所に足を踏み入れること自体が間違った選択であったのだ。

 

「ははっ、やってらんないな」

 

 もはや笑うしかない、乾いた笑いを空調室に響かせてノヴァは己の浅慮を恥じるしかなかった。

 ノヴァには知識はあった、だがそれは千里眼めいた代物ではなく未来を見通す事は逆立ちしても出来やしない。

 それでも、方法は無かったのかとノヴァは考えてしまった。

 

 だがいくら考えようと事前に研究所にコールドスリープ状態にあるエイリアンが大量にいた事を知る術は皆無、見方によれば確かに仕方がなかったとも言えるだろう。

 だとしても引き金を引いてしまったのはノヴァなのだ、中にお宝があると無邪気に信じて隔壁を解除してしまった結果がこれなのだ。

 

「サリア、全部隊を集結、戦闘態勢に移行」

 

 命令を下す表情を見てサリアはノヴァが何をするのかを理解した。

 

「分かりました」

 

 命令に反してサリアが連れて逃げようとしてもノヴァが抵抗するのは目に見えていた。

 故にサリアは決断を下す、ならば相対する敵の数を減らし、傍で武器を振るい近付く敵を打ち払うと。

 

「それとスコット・スタージス氏の身体を砕けない様に運んで。エイリアンのコールドスリープに巻き込まれた可能性がある。適切な処置を施せば蘇生できる可能性があるかもしれない」

 

『流石にそれは……』

 

「可能性はゼロじゃない、何事もやってみないと分からないものだよ。運搬は大型機材を詰めていた箱を使って。断熱、振動、気密性に優れている、中の機材は捨てていいよ」

 

「分かりました、外に待機している部隊に命令を出します。箱の数は──」

 

「あるだけ全部、フロアの中にもしかしたら彼と同じように巻き込まれた人がいるかもしれないからね」

 

 ノヴァはアンドロイド達に命令を出していく。

 どうしようもない程に切羽詰まった状況でありながら不思議とノヴァの頭は冴えていた。

 普段からこれ位頭が動いてほしいと思いながら命令を出し続ける間にも、状況は動き続けていた。

 先程から何度も施設を揺らがす程の咆哮をエイリアンは絶えず放っている。

 加えて施設を破壊しようとしているのか甲高い金属音が何重にも重なり遠くから聞こえる。

 

『お父様』

 

「何だい五号?」

 

『どうしてそこまでするのですか』

 

 五号は生まれたばかりの人工知能である。

 得られた大量のデータを分析し構築した振る舞いは一見自立した知性の様に感じられる。

 だが実際には自立したように見えるだけであり内面は未熟、知性と言う面で見ればサリア達には届かないのが実情である。

 

 だからこそ五号は知りたかった。

 自分を生み出したお父様であるノヴァの心理を、何を考えて行動する事に至ったのか、その過程を知りたいのだ。

 

「理由は色々ある、一つ目は戦力として。言っては何だが俺は強いぞ、サリア並だし武装があれば更に強い」

 

 確かに記録を見る限りではノヴァの白兵戦能力は高い。

 すぐそばに迫ったエイリアンとの戦いにおいて、その戦闘能力を有効活用しない手はない、いざ戦いが始まれば存分に能力を活かせるだろう。

 

「二つ目は此処で行動を起こさないと世界が滅亡しそうだから。命を惜しんで逃げた結果エイリアンで世界が滅亡したら最悪過ぎて今後安眠出来ないのは間違いない、……といっても世界はとっくに滅亡しているけどね」

 

 日記に書かれた内容が事実であればエイリアンが母星に援軍を要請した時点で生き残った人類が負けるのは確実だ。

 ノヴァ達であっても対応できるかは未知数、最悪の場合負けて滅ぼされるかもしれない。

 それを考えれば五号はノヴァの行動に合理性を見出せる、納得できるのだ。

 

「三つ目、これは自分が馬鹿やって仕出かした事の尻拭いだよ、これが一番大きいかな。自分が起こした事の尻拭いも出来ない、そんな情けない奴に俺はなりたくない。持論でも何でもない意地みたいなものだよ」

 

 最後の理由は意地、言葉にすればそれだけだ。

 だがそれがノヴァの動く最たる理由、なんて事の無い様に口に出した言葉を五号は理解し損ねた。

 

「五号、そんな人が世の中にはいる事を覚えておきなさい」

 

『はい……』

 

 だが会話はそれ以上続かなかった。

 ノヴァに何を聞けばいいのか五号が分からないのもあるが、上の階から響く音が無視する事が出来ない程に大きくなってきた。

 ノヴァと五号が会話をする時間はもう残されていなかった。

 

「それじゃ、エイリアン退治と行きますか!」

 

 そう言ってノヴァはアンドロイド達を引き連れて元来た道を戻っていく。

 

 そして二百年間止まっていた滅びの時計は再び動き出した。

 




 エイリアンのモデルはPS3ソフト『レジスタンス 人類没落の日』に登場するアレです。
 この作品は自分がFPSに目覚める切っ掛けとなった作品でありプレイしていた幼い頃はビビりながらプレイしていました。

※2023/08/18 最新話85話「決着」の後、間話を挟まずに本編に移行するか作者も悩んでいるのでアンケートを採ります

  • 本編を書いて
  • 間話を書いて
  • どちらでも良い
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