リスナーに騙されてダンジョンの最下層から脱出RTAすることになった   作:恋狸

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無いよ……無いよ……ストック無いよ……
毎日投稿は頑張るよ……


やったね!殺ったね!

「僕は死にましぇん……!!!」

 

コメント

・復活後の一言目がコレだよ

・ネタに走るな

・レベル50分の防御力でギリ耐えたなw

・岩にドゥン!ってぶつかってたけどw

 

 あっっっぶない……。

 咄嗟に頭守ってなきゃ即死だった。

 

 全く見えなかった攻撃は、受けた感触から察するに衝撃波の類じゃないか、と思う。現に全身の骨が一撃でバッキバキになったからね。

 吹き飛ばされて一瞬だけ意識を失った僕が、岩にぶつかる寸前に体を丸めて頭を守れたのは、まさしく危険に突き動かされた本能としか言いようがない。

 

「クソぅ。種族名『陽狼』なのに陽が消えた無個性狼くんにやられるなんて……! 屈辱だよ!」

 

 あんなのただの犬畜生でしょ。

 玉ねぎ散布して討伐できないかなぁ……。

 

 というか、犬畜生、犬畜生って言ってるけど、僕犬派なんだよね。本物の犬に失礼極まりないんだけど、パチモン狼くんが悪い。

 

コメント

・無個性狼くんは草

・おもっくそ煽ってるやんけw

・個性消したのお前だよ

・いつも屈辱定期

 

 僕がいつも苦渋を味わっているのは事実だけど、エブリデイが屈辱なわけじゃないから。一応楽しいこともあるよ?

 主に狼くんに屈辱を味わせる事が。

 

「……互いに屈辱を押し付ける仲間……。僕と狼くんは時代が違えば友達になれたのかもね」

 

コメント

・友達と言うには歪すぎるだろwww

・いや、種族差。時代関係ないのよ 

・初手から友好を捨てに行ってるくせに何を言ってるw

・なに仕方なく争ってる、みたいな雰囲気出してんだ

・安定の世迷い言

・本当に名が体を表してんな。ある意味清々しいわ

 

 僕は気に入ってるけどね、名字と名前。

 由来は忘れちゃったけど、結構語呂も良いし覚えてもらいやすい。それに、敬愛してる両親から授かった名前だ。文句の一つもないさ。

 

「さてと。復活したのは良いけど、狼くんどうしようかな」

 

 最早嗅覚も潰れたのか、だいぶ吹っ飛ばされた僕に近づく気配はない。探してるんだと思う。

 満身創痍超えて死に体にしか見えないよねぇ……それでも僕が即死するレベルで強いんだけど。

 

「ここまで来たら煽り含めて悪辣な手で殺りたい」

 

コメント

・ローションでも塗ってあんの?すくわれるぞ。足元

・草

・草

・ちょっとでも自分が優位に立ったら調子に乗る男

・ちょっとどころか依然として劣勢で草

・復讐は何も産まないぞ

・《ユキカゼ》さっさと倒そう……

 

「復讐は何も産まない、か。別に復讐を肯定するわけじゃないけどさ。どうせ倒す敵かつ殺らなきゃ先に進めないなら、自分の気持ちを晴らしてからの方が良くない? 生産性はないけど、少なくとも僕の憂いは晴れて元気になれる」

 

 復讐と言えばハンムラビ法典が一番に思い浮かぶ。

 あそこまでとは行かなくとも、僕はぶたれたら正当な手段で社会的制裁を加えてやろうという気概があるよ。

 ……ふぅ、これでまた僕の知識の引き出しが消えた。

 前の世界史のテストで出たからね。たまたま覚えてた。

 ……ん? なんで僕は心の中で自分の無知を証明してるわけ? 末期?

 

コメント

・一利ある

・まあ……殺すって言うより倒す、だからな。復活するし

・誰にも迷惑かけるわけじゃないしな

・狼「人間って傲慢」

・草

・言えてるわw

・《ARAGAMI》まあ、同意

 

 珍しくリスナーが肯定してる……!?

 じゃあ、遠慮なくやっちゃうとしよう。

 

「ふふふ……。調味料で視覚嗅覚、その他諸々を奪うとしようか。狼くんも火を纏ってない、ってことは火球を撃てないだろうし、攻撃手段が近接と衝撃波ならチャンスはまだある」

 

 衝撃波だって、ポーションを口に含みながら走ったり、見極めて避ければ脅威じゃない。僕を仕留めきれなかったのが悪いんだ。

 諦めて僕の糧になってくれ。

 

 

 と、いうわけで、元々作っていた胡椒爆弾と辛子爆弾、カレー粉を始めとする粉物系の調味料。

 それらを《アイテムボックス》から取り出して、僕は自分から狼くんを探し始めた。

 

コメント

・すごい悪い顔してるなw

・勝利を目前にした調子に乗りまくる男だ……

・ここに来て何個フラグ建てるつもりだお前はw

 

「フラグはフラグって言わなきゃ大丈夫。多分」

 

 そうやってリスナーが不安要素を書き込むから実現しちゃうんだよ。僕は悪くないんだ。多分。

 これまでの行動は僕が全部悪いんだけどね。

 

 どうも。やること為すこと裏目人間です。

 

 

「──いた」

 

 休憩所の方角に向けて歩く僕の視界に、ゆっくりと悠然と歩く狼くんがいた。

 灰色に輝いていた体毛はくすみ、ギラギラした瞳には激情か渦巻いている。

 あ、はい、僕のせいですね。しらねっ!

 

 僕は岩陰に隠れたりして、衝撃波を警戒しながら先に進む。

 狼くんはまだ僕に気がついていない。

 僕の投擲能力的に、あと数メートルは必要だ。

 

 

 もう少し……もう少し……もう少し……。

 

 ──今ッ!

 

「喰らえっ!」

 

 僕はありったけの力を込めて、調味料で作った爆弾類を狼くんの顔に向けて投げつけた。

 

「よしっ、完璧!」

 

コメント

・脱出後の職業候補に野球選手が入る日も近い……?

・打球全部デッドボールになるからダメや

・草

・受ける方だよな、もちろんw

 

 僕はグッと拳を握りながら、完璧な放物線を描いた投げ物に勝利を確信──

 

 ──ボッ。

 

 もやされた。くーちゅーで。

 

「聞いてない……っ!!」

 

コメント 

・狼「だって言ってないし……」

・狼「いつから俺が火球を撃てないと錯覚していた?」

・これだから一級フラグ建築士はさァ……

・倒壊する建物しか作れなさそうw

 

「さすがに今のはないでしょおおおおお!!!」

 

「グルァァァァァァァ!!!!」

 

 激昂。

 叫びと共に放ってきた火球を間一髪で避けた僕は、攻撃の手立てが消えたことで焦っていた。

 五感を奪えれば、幾らでも罠に掛けることができたんだ。誘導して窒息させたり、丘から岩を落としたり。

 一撃一撃は効果が薄くても、それは積もり積もれば大きな攻撃になるはずだった。

 

 

「なんか強くなってない!?」

 

 いや、違う!! 容赦がなくなっただけだ!!

 多分これでも弱体化してる……!!

 

 じゃなきゃ僕は百回死んでてもおかしくない。

 

「アァァァァァッ!」

 

「──っ、衝撃波!!」

 

 狼くんが大きなタメを作る。

 嫌な予感がした僕は、飛び込むように岩陰へ隠れた。

 

 ──刹那、響き渡る轟音。

 僕がいた場所の地面は、隕石でも降ってきたように穴が空いていた。

 

「直線方向の衝撃波じゃないの……!?」

 

 

コメント

・怪獣大決戦

・初期狼くん「弱い奴を全力で狩るとかダッセー」今狼くん「やべぇ!殺らなあかん!!」

・草

・よう生きとる

・《Sienna》衝撃波でなく、見えない攻撃の可能性はあるわね

・《ARAGAMI》地面の抉れ方的に……重力? いや、それはそれで説明がつかないか。自由選択の衝撃波、またはそれに付随するモノだと思われる

・《ユキカゼ》謎の攻撃の前に、狼は口を開ける。だから、口から何かを発射していることは確実。衝撃波なら叫声……風による攻撃……?

・お三方の真面目考察来たァァァ!

・世界上位と渡り合えるユキカゼが結構すごいw

・そう言われてみたら確かに

 

 考えれば考えるほどわからなくなっていく。

 戦いの最中に理解できる程、僕の脳内スペックは高くないよ。考察よりも打開策。……それすらも思いつかないけどさ。

 

「ダメだ、近づけない」

 

 不用意に姿を表せば火球で。

 同じ場所にい続けたら衝撃波が。

 

 狼くんも逃す気なんてサラサラないだろう。

 これだけ僕に辛酸を舐めさせられたんだ。ここですごすご逃げ帰って回復に専念するのも、狼くんのプライドが許さないはず。

 

 

「もう、方法はない」

 

 これだけはやりたくなかった。

 

「僕が長考して考えついた素晴らしく最高で誰もが褒め称える作戦。下層最後の作戦を開始する」

 

 僕はキリッと表情を作って言った。

 

コメント

・嫌な予感

・全然格好良くないぞ

・褒めたことあったっけ 

・よし、解散!

・明日も早いし寝るか。こっちは真夜中なんだよ

 

 いや、折角なら見てってよ。

 

 まあ、強制するようなことじゃないし良いや。

 

 

 僕は早速作戦行動に移る。

 

「狼くん! こっちに来い!!」

 

 岩陰から身を乗り出して存在感をアピールした僕は、踵を返して休憩所とは逆方向に駆け出した。

 当然追ってくる狼くん。

 僕は《アイテムボックス》からポーションを取り出して口に含み、攻撃に備える。

 衝撃波だけは躱す必要があるけどね……。

 

「グルァ!」

 

 火球を躱す。衝撃波の瞬間だけ岩陰に隠れてやり過ごす。

 この二パターンを併用することで、僕は狼くんをとある場所へと誘導することができた。一回火球食らったけど。

 

 

コメント

・マグマゾーン?

・今更窒息作戦か?w

・心中する気かよw

 

 そう、僕が来たのは至る所に点在しているマグマ溜まり。

 それなりに規模が大きい場所だね。

 

 狼くんが来るまでもう少し。

 

「中華鍋召喚!!」

 

 中華鍋をマグマに浮かべて──ダイブ!!

 

コメント

・何してんの!?w

・遂に自ら入ったw

・バカなの!?

・何するか皆目検討もつかんw

・《ARAGAMI》ふむ、実に興味深い

・享楽主義者は黙ってもろて

 

 困惑しているリスナーを最後に、僕は服の内ポケットにスマホをしまう。紛失するのが一番困るからね。

 

「来いよ狼くん」

 

 狼くんは、僕が中華鍋でマグマにぷかぷか浮き始めた数十秒後にやってきた。

 マグマに浮く僕を視界に入れるやいなや、人間臭い表情で嗜虐的な笑みを浮かべて近づいてきた。

 

 当然の如く、狼くんはマグマを物ともせずに入ってくる。それは火を纏っていなかろうが関係のない、謂わば種族適性というかフィールド適性みたいなもんかな。知らんけど。

 

 

 狼くんは()()()()()()()

 

「そうだね、君ならそうするよね」

 

 自分の手で仕留めることに拘ってた君なら。

 袋の鼠になった僕を今更遠距離攻撃で殺すなんて真似はしないよね。

 

「そのくだらないプライドが」

 

 

 僕はスマホを取り出し、ショップ画面を開く。

 

 

 

「──君を殺すんだ」

 

 口いっぱいに()()が広がったことを確認して────ショップの水を×100を買う。

 当然、大量のペットボトルが上から降って、マグマに入る。

 

 

「グギャッ!?」

 

 もう遅い。

 

 

 

 ────轟音が響き渡る頃には、もう僕の意識は完全に消滅していた。

 

 

コメント

・爆発オチとかサイテー

・んなこと言ってる場合じゃねぇw

・《ARAGAMI》なるほどそうきたか……

・《ユキカゼ》ひぇ

・《Sienna》うへぇ

・マグマ水蒸気爆発ってやつか(うろ覚え知識)

 

 

 

 




次回、1章最終話

……理系の方と専門家の方。並びになぜか詳しい方。
許してください。僕の小説ではマグマに水入ったペットボトルを百個入れたら爆発するんです。
密度とか云々はないです(圧)
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