Cybernetic Trigger   作:ヴラドミア

7 / 9
戦闘描写、ド下手くそです。


Night combat / 初仕事

近界民(ネイバー)が開く(ゲート)という歪みはボーダーがその技術を以て、基地付近に誘導することができるという。あくまでも引き寄せることが可能なだけで正確にこの座標に(ゲート)を繋げさせるということは出来ない。

だからこそ、ボーダーの正隊員には防衛任務という仕事が与えられる。(ゲート)の発生範囲を警戒区域とし、住民をそこから退去させたとか。イーサンとデイビッドが目を覚ましたのは警戒区域内であり、レイ達は防衛任務の真っ最中だったようだ。

 

『せっかくなら別の色にしておけばよかった?』

『いや、これはこの色じゃなきゃ。』

 

トリオン隊は部隊によって様々な服装を形成してもらうことができる。一般的なのはジャージだそうだが、A級にはロングコートの部隊もあるのだとか。

 

イーサン達はデイビッドが愛用している黄色いジャケットを再現してもらった。これはデイビッドがサイバーパンクとなるきっかけの一つでもある。元はナイトシティの医療チームのもので、デイビッドの母の形見でもある。長袖でサイズは大きめ、少しぶかぶかなサイズ感だがリブ袖でしっかり手首で止まる。襟が高く、ジッパーを全て閉めれば口元まで隠せてしまうほどだ。背中には緑でERというロゴがあり、これはデイビッドが手書きしたものだ。

 

これはデイビッドの私服でもある。彼の場合は前面のジッパーは一切閉じないで、正面からはインナーの黒い布地と首に提げる十字架がきらりと光を反射する。ズボンは少しダボついていて、腰のベルトとリブ裾で固定されていて、付属のサスペンダーは垂れて膝上くらいで弧を描く。

 

イーサンは対称的に前面のジッパーは上まですべて閉め切っている。口元を隠し、袖は肘くらいまで上げていて、細身のわりにしっかりした前腕が顔をのぞかせる。暗い灰色のバギージーンズのせいで、全体的にシルエットは大きく見えることだろう。

 

『オペレーターのシステムは全体的に異常なし。銃も手に馴染むし、準備に問題はないな。』

『ゲートの発生予測とトリオン兵の位置情報は目に映るようにしてある。敵の位置は把握しやすいはずだけど、オペレーターシステムの方で高さの情報を取れないみたいだから高低には気を付けて。』

『OK。持ち場は分かれててもいいよな?』

『未確認のトリオン兵が出てきたら俺に教えてね。それ以外はいつも通りで。』

 

仕事前のチェックもいつも通りに。トリオン体は死んだら基地に戻ってこれるという仕様のため、サイバーパンクの仕事と比べて気が緩んでいる感覚はある。ただ、一つだけ重要なことがあった。

 

『デイブ』

『どうした?』

『この世界にはリパードクはいないし、抑制剤も今のところはない。ドクターのところで教わっているから作ることは出来ると思う。サンデヴィスタン、使いすぎちゃダメだよ。』

『わかってるよ、エタン。』

『防衛任務が終わったら走査をかけるから。』

『ああ、頼む。そっちも無理すんなよ。』

『デイブに言われたくないよ。』

 

そう、この世界にサイバーウェアという技術はない。医療用のサイバーウェアであれば副作用なんてものはないに等しいのだが、武器として使用できるサイバーウェアの多くは副作用がある。それは人の身に余るものほど激しくなる傾向にあり、デイビッドが着用しているサンデヴィスタンは軍用の盗品。放たれた銃弾が止まって見えるというくらい効果は強力で、一般人ならすぐに廃人になるといっても過言ではない。デイビッドはたまたま運よく、適性が高かった。ただし、適性が高くとも副作用がないわけではない。使いすぎれば意識を失うこともあるし、最悪の場合は……。

その副作用の抑制剤だってもちろんこの世界には存在しない。イーサンは作り方を知っているので材料さえあれば調合することは出来るだろうが、この世界にあるかどうかも確認できていない。

 

『んじゃ、仕事に行きますか。』

『了解、リーダー。』

 

 

 

月のない夜の警戒区域はホラー映画にでも使われそうな廃墟群だ。道路標識や塀、家の壁や窓には破壊の跡が残っていて、話に聞いた侵攻の凄惨さが予想できる。

イーサンはその景色をボーダー本部の屋上から見下ろしていた。軍人が使うアンチマテリアルライフルのような狙撃銃アイビスを立てかけ、夜闇にその目を光らせている。

 

任務開始から数時間、二か所で同時に門が発生する。片方はデイビッドに任せ、イーサンはアイビスを構えて門をじっと見つめた。虫のようなトリオン兵―モールモッドが三体と怪獣映画に出てきそうな巨大なトリオン兵―バムスターが一体。

空中に門が発生したために、それらは地面にボトボトと落ちた。姿勢を大きく崩すことはなく、すぐに行軍を開始する。

 

ズガンッ!と大きな音を立ててアイビスは弾丸を吐き出した。トリオンの弾丸は風の影響を受けない。弾は直進を続け、先頭のモールモッドのコアに吸い込まれるように命中した。

それを確認したイーサンはすぐに移動を開始する。アイビスを持ち、屋上から勢い良く、文字通り飛び出した。途中に小さな反射板―グラスホッパーを配置して、まっすぐ一気にトリオン兵との距離を詰めた。トリオン兵はその姿を視認するが、背の低いモールモッドでは届かず、背の高いバムスターに攻撃能力はない。

 

<スナイパーライフル、ちゃんと当てられたか?>

 

余裕のある親友からの通信を無視し、加速した状態でアイビスを構え二射目。バムスターはその口を閉じ、コアを守ろうとするが、アイビスはそれすらも貫いてコアを破壊。

グラスホッパーを出現させ、少しだけ速度を殺し、進行角度を上に補正する。高さを利用して一方的に攻撃すれば安全だということはもうわかっているのだ。上空からの射撃にモールモッドはなす術がなく、三体目が撃破される。

 

残るモールモッドはかさかさと走り、イーサンから距離をとった。その走行を貫通する長距離射撃用の武器を前に、そんなことをしても当然無駄である。銃口はすでに向けられていて、移動速度とモールモッドの形状から、少し先の地点に向けて一発。何もない大地に向けたその射線上に、予測通りコアが現れ、四体目が崩れる。

 

<まだ腕は鈍ってないみたい。>

 

イーサンは機械相手ならこんなものかとナイトシティでの戦闘を思い出した。物陰からじっと見て相手を爆発させるよりは戦っている実感がある。

 

 

 

デイビッドはというと、特筆すべきところはない。サンデヴィスタンとはそういう代物だからだ。

機動戦がメインとなるデイビッドはまず門まで全速力で移動する。グラスホッパーを駆使し、跳ねるように進む姿はどこか楽しそうだった。改造したはずの脚が生身に戻っていたことで出来なくなった機動どころか、それを軽々凌駕する立体機動ができる。

門から出てきたトリオン兵は五体。四体がモールモッドであり、こちらも一体だけバムスターが混ざっている。

 

しかし、そんなことはデイビッドには関係ない。少し手前に降りたって、とにかく走る。

門が閉まったのを見計らって、サンデヴィスタンを起動した。脊椎から全神経を辿って、筋肉へ、脳へ。何かが走る感覚と共に、周りはスローモーションになる。

モールモッドが次々と着地するその瞬間。デイビッドは歩き出す。悠々と、ただ路地をふらふらするように。地上に降り立ったモールモッドの目の前に着き、一発。その体を踏み、上のモールモッドへ一発。そこからそれぞれのコアを狙って歩いては撃つ。すべての射撃を終え、伸びながらコンクリートを踏みしめる。二、三歩離れたところで時間は正常に動き始める。

機能を失ったトリオン兵は瓦礫のように詰み上がる。それを背に、デイビッドは民家の屋根に飛び乗って通信を繋いだ。

 

 

 

その後も数回に渡って門は開いたが、出現から三分と経たずにすべてのトリオン兵が撃ち落とされる。

トリオン体の通信で二人が楽しそうに話している。会話の内容は物騒なものだ。どこぞの海岸で銃撃戦をしただの、ギャングを相手に警察を盾にしながら戦っただの。それでも二人は思い出話に浸りながら次々に敵を凪払っていった。

 

<そういえばデイブの家の前の工事現場覚えてる?>

<シックスストリートが暴れてたとこ?>

<そうそう。あそこ、養生シート張られてるお陰で覗き見し放題でさ。>

<ああ、確かに。>

<鎮圧手伝ってあげようと思ったんだけど、見る相手間違えてNCPDにオーバーヒートのデーモン仕掛けちゃって大変なことになったんだよね。>

<え、それいつの話?>

<サイバーパンク始めてちょっと後のこと。ほら、始めてアフターライフ行くときにデイブとH4メガタワーの下で待ち合わせしたでしょ?>

<あの時か。だからあんな大騒ぎになってたわけ?>

<タイミング悪くシックスの増援も来ちゃったんだよ、あの時。化学汚染撒いてデイブと合流したんだけど、謝るに謝れなかったなーって今ふと思い出したんだよね。>

 




・デイビッドのジャケット:Cyberpunk 2077のインゲームアイテム。背中にあるERはサイバーパンクの別称Edge Runnersのこと。エッジの向こう側から帰ってくることはない。

・リパードク:身体にサイバーウェアを仕込んでくれる闇医者。

・副作用:ワールドトリガー世界のサイドエフェクトではない、本来の意味での副作用。人間に出来ないことをするほど人間性を失い、幻覚幻聴や震え等の症状を前兆として、サイバーサイコシス(精神崩壊による暴走)を引き起こす。身体についてるサイバーウェアをフル活用して暴れまわるのでたちが悪い。

・サンデヴィスタン:本来なら人間の肉体で出来る範囲を時間を止めて実行しているようなもんだが、トリオン体になって身体能力が上がっているものだから割りと手がつけられない。

・シックスストリート:ナイトシティ南東部を拠点とするギャング。

・NCPD:ナイトシティにおける警官。なお、賄賂で買収されていることが多い。

・オーバーヒートのデーモン:イーサンのクイックハックはデーモンというコンピューターウィルスを相手のサイバーウェアにアップロードして何らかの効果を発揮する。オーバーヒートはサイバーウェアの稼働率を上昇させ、発火させるもの。

・アフターライフ:地下にあるバー。サイバーパンクの溜まり場だが、許可のあるものしか入れない。

・H4メガタワー:H4メガビルディング。信じられない大きさの集合住宅、マンション的な存在。部屋の立ち入り以外には特に認証が必要なわけでもないので廊下や広場にホームレスも住み着いてる。なおイーサンはH10メガビルディングに住んでいた。

・化学汚染:サイバーウェアの内部にはカドミウムをはじめとする有毒物質が多少存在する。それを生身の人体に流入させるえげつないクイックハック。一人にアップロードするとその人の周囲にいる人に伝染する。

用語解説は

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  • なくても良い
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