Cybernetic Trigger   作:ヴラドミア

8 / 9
年齢設定を完全に一つ下に換算し忘れていたので6話目くらいも含めちょっとだけ修正しました。あんまり絡ませなくてよかった……


Safe / 学校

初任務から数日が経過した。殆ど毎日、初日以外は昼間に防衛任務をしているためイーサンとデイビッドの存在はA級・B級問わず多くの目に入っているが、二人と直接話をしたことのある人物は少ない。基本的には部屋にいるし、任務も二人だけで遂行する。任務が終われば足早に部屋に向かって何やらしているようだが、追ってまで話すような内容もない。一緒に防衛任務に就いた者達から見ても謎多き少年達である。

 

そんな彼らと親しげに話すのは諏訪隊と那須隊の面々である。食堂で一緒にご飯を食べるだとか、彼らの部屋に入室するだとか、何かと気に掛けている様子が見受けられた。

また、A級の出水と米屋もその二人との交友関係にあるらしく、部屋から出てくるところを見た隊員がいるらしい。

 

「あいつらがどういう奴かって?ちょっと常識がずれてるところもあるが、普通だよ普通。」

「いい子達だと思うよ。戦闘も強いみたいだし、勉強も頑張ってるし。真面目な留学生って感じかな。」

「オレは二人と違ってあんまり話したことはないんですけど、この前宿題手伝ってくれて。優しい人たちだと思います。」

 

「悪い人達じゃないと思います。私はそんなに話してないけど、くまちゃんと茜ちゃんは良く一緒に勉強してるみたいですし。」

「え、あの二人?別に変なところはないよ、同い年の男友達。ちょっと物を知らなさすぎるところがあるけどね。」

「お二人ですか?宿題助けてくれたし、銃の扱いも教えてもらったし、ちょっとした悩みも聞いてくれるし、いい人達ですよ!」

 

 

 

「とまぁ、概ね高評価を受けているみたいです。」

ボーダー玉狛支部所属の部隊、玉狛第1のオペレーターである宇佐美栞は支部の面々にインタビュー結果を開示した。

 

ボーダーはそれなりに大きな組織である。そして大きな組織には派閥というものが付き物だ。

近界民に対して敵対的な城戸派、街の平和を第一に考える忍田派、近界民と友好的な関係が築けるならそうしたい玉狛派と言われている。

防衛任務でその認知度が上がってきた近界民の二人がその話題に上るのも無理はなかった。

 

「他の部隊はみんな待機で、実働は二人だけって聞いたけど本当なの?」

「うん、それは本当みたい。風間さんも感心してたよ。」

「ふーん……」

 

宇佐美の報告を不敵ににやつくのは小南桐絵。玉狛支部きっての戦闘狂である。戦闘能力がとても高く、それ故にそうなってしまったという側面も少なからずあるようだが。

 

「迅さんは二人にもう会った?」

「いや、俺はまだだよ。見てすらないんだよね。」

「え、そうなの?真っ先に会いに行くと思ってたけど。」

 

玉狛支部所属の自称実力派エリート、迅悠一はその目に映した人の未来を観測することが出来る。ただし彼が見ることが出来るのは、確定した未来ではなく、あり得る未来全てだ。

そのため、何かあれば彼がその先に何が起こるかを観測し、彼なりに最善だと思う未来に繋がる道に繋げようと画策するのだ。

そんな迅が観測していないというのは割りと異常事態と言える。今回に関しては近界民側が協力的であるということもあり、本部側の警戒も薄くなっているらしい。

 

「まあ、話を聞くに彼らはあまり部屋から出てこないみたいだし。でも戦闘の録画は見せてもらったし、彼らが持つ能力は聞いてるよ。」

副作用(サイドエフェクト)持ちってこと?」

「いや、副作用(サイドエフェクト)じゃなくて、彼らの世界の技術らしい。詳しい話は今度聞いてくるよ。」

「あたしも!あたしも行きたい!」

「小南も?」

「戦えるならどれだけ強いか確認しなきゃいけないじゃない!」

 

小南は戦うことが好きだ。そして相手が強ければ強いほど良い。

そんな彼女が、他の部隊に待機させて二人だけで防衛任務につくほどの実力者がいると聞けば、その後の行動は火を見るより明らかだろう。

 

「ついてくるのは構わないけど、戦ってくれるかは小南次第だぞ。」

「戦ってくれるわよ、それだけ強いなら戦いを拒むはずがないわ!」

「小南のその自信が羨ましいよ……」

 

 

 

一方でイーサンとデイビッドは漢字という存在に頭を抱えていた。

アルファベットやキリル文字に代表される表音文字というものはその文字が音を表していて、羅列することで単語となり、意味を持つ。

対して漢字は表意文字であり、その一文字一文字に意味を込められているもの。内容を知り、音を知らなければ発音すら出来ない。

平仮名と片仮名を覚えて間もない二人にとって、漢字というものはまさに曲者だった。

 

「コウタロウ、これわかんない……」

「こいつはなぁ、――」

 

「ヒサト、ここ計算間違ってる。」

「え、どれですか?――うわ、ほんとだ、ありがとうございます。」

「ん。」

 

スワ隊の面々が部屋を訪れ、勉強会が開かれていた。イーサンは日本語に苦戦し、デイビッドは隣で宿題を解くヒサトを見ている。なおダイチはレポートの提出があるとかで今日はここに来ていない。

 

「そういえば、お二人って高校通うとか言ってましたよね?」

「うっ……」

「まぁ、マサフミはそうって……」

「何処に通うんですか?」

「マコとヒロと同じ学校、って。」

「え!それなら同じですね!」

「まぁボーダー提携校なんざそこくらいしか通えないだろ。」

「ボーダーていけいこう?」

「防衛任務で学校休んでも成績がよければセーフにしてくれる学校のことだよ。中学生とか高校生が多いからな、ボーダーの隊員。」

 

思い返してみればボーダー基地内には幼い人が多い。食堂で周りを見ても自分と同い年ほど、もしかしたら年下の方が多いかもしれないと思えるくらいには。

ボーダーの隊員が昼間にも防衛任務で仕事をする都合もあるとは思うが、それはそれとして同じ学校の隊員を増やすことで管理しやすくするのも目的の一つなのだろうと二人は邪推した。

 

そんな二人の入学時期はなんと来週に迫っている。日本語でのコミュニケーションは大体とれるようにもなってきたからとマサフミが手続きを完了した旨を伝えた時、二人はどこか遠い目をして、生返事をして部屋にすごすごと帰っていったが。

 

ナイトシティでの学校生活はいじめが横行していたこともあって、いい思い出がほとんどない。イーサンは特に被害を受けていないが、デイビッドは差別の被害者だ。現状このボーダーという狭い空間且つ交友関係も狭い中では、この世界に差別があるような印象はないが、違う場所に出ればどうなるかはわからない。

それだけが理由というわけでもないが、それもあって二人は学校に行きたくないという抵抗の意思を見せ続けていたが、マサフミは強かった。

 

 

 

「お、良いじゃん二人とも。学ラン似合ってるよ」

「ガクランって言うんだ、この服。」

 

ついに三門市立第一高等学校に編入生という形で通うことになった。それと同時にボーダーでの戒厳令も解除され、二人はボーダー隊員として公の存在になり、いろいろな部隊と正式に防衛任務に就くことが決まった。

東隊と影浦隊のメンバーは防衛任務でその戦いぶりを観戦したため、実際に会ったことはないが二人の存在は認知されているようだ。それ以外にも二人の話が解禁されたため、各部隊でその話題が出ることもあるようで、正隊員で二人を知っている人物は急増。知らない人はもはやいないのではないかとされている。

 

学ランにスクールバッグ。荷物を持って学校に行く、という経験は煩わしくても新鮮なものだった。教材はまだ持っていないため、バッグの中身はノートと筆箱、そして財布のみ。連絡を取る手段がないとマサフミが悩んでいたのでそのうちに通信機器を持たされるようになるのだろう。

 

学校生活も、二人にとっては平和すぎて拍子抜けだった。授業はもちろん日本語で進行するため、二人にとっては難しいものであるがそれが良かった。これで全編英語で授業をされたら退屈で眠ってしまうところだっただろう。

ただし、国語の授業は別だ。教科書を読むことすらまだ難しい二人は自身のシステムから自動翻訳を久々に起動して無理矢理にでも読解するしかなかった。日頃から使っている言葉にはない単語ばかりだし、古典なんかは悲惨である。学んだ日本語が一切通用しない日本語とは何なのか。

 

「へぇ。俺は水上敏志。よろしゅう頼んます。」

「よろ…何……?」

「あ、生駒隊の人たちと話してなかったら関西弁は初めてだよね。」

「カンサイベン?」

 

ここでも知っている日本語が通じなかった。同じクラスのサトシはオオサカという場所の出身で、普通の日本語とは少し違う言葉を使うらしい。訛りというものはあっても方言に関してはナイトシティにはおおよそ無いとされる。そもそも言語が違うことのほうが多い。

学校は恐ろしいところではなかったが、そもそも日本という国が変な国なのだという印象が二人の中で強くなった。

 

 

用語解説は

  • あると嬉しい
  • なくても良い
  • どちらでも構わない
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