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ドアが開いた途端に俺を出迎えたのは, 瞬時に頬を凍らせんばかりの冷気。そして耳を塞ぎたくなるような騒音。
ホーム中が人で隙間なく埋め尽くされていて, 降り立つために前に出るのも難しい。目白押し, というのはまさにこのことだ。
「ついて来て, 源」
クルヌギアスにそう言われて, 右手を固く握られる。引っ張られるがまま群衆の中を突っ切っていく。上半身を軽く捻っただけでも他人と肩がぶつかりそうな狭い間隔を, 彼女は素早い足取りですり抜けていく。
階段を降りると, 駅の改札口の正面にたどり着いた。クルヌギアスは切符を1枚俺に渡してきたので, それを使って共に改札を抜けた。
抜けた先は大広場のような空間で, 中央に大理石で作られた噴水がライトで照らされている。その周囲には今まで見たことのないような高い建物が俺達を見下ろしている。とは言っても, 収容所にあったような灰色一色のビルではなく。ガラス張りが巡らされている如何にも現代的なビルや, 奇抜な形なものもある。
まさに, 大都会。無数の人々と建物によって司られた, 鋼鉄の密林。
「待ち合わせはこの辺りなのだけど…まだ来てないみたいね」
クルヌギアスが呟く。どうやら, 落ち合う予定の人物が見当たらないようだ。彼女は懐からスマートフォンを取り出し, 何やら操作をし始めた。俺は彼女の側を離れず, この活気溢れる街中を目を丸くしながら見物することにした。
この大都会の駅━人混みの量から見て, 街の中央駅らしいことが窺える。
そして, この駅に降りて目に入ったのは, あまりに明確すぎる「差」だった。
かたや, 素早い足取りで通り過ぎて行く人々。整った髪型, 整ったスーツにブランド物と思しき鞄を提げている。如何にも模範的なビジネスマン, ビジネスウーマンのような身嗜みだ。クルヌギアス程の優雅さは感じないが, 見た目と動作から一定の気品を感じさせる。
かたや, 街の光から少し外れ, 建物の壁に寄り添っている, 座り込んでびくとも動かない人々。ボロボロの服で身を包み, 冬の寒さに震える者もいる。ひどく痩せこけている人もいる━何日も食べ物を口にしていないのか?
誰も彼も視線は常に下を向いている。まるで隠れるかのように。
通り過ぎる人々は, まるで彼らが存在しないかのように見向きもしない。
どう表現すれば良いかわからなかったが, 連想する言葉はいくらでもある。金持ちと貧乏人。成功者と失敗者。
強者と弱者。
その対比が, どうしても歪に見えた。
もしかすると, 全てが画一化された収容所に居たせいかもしれない。だが, それもそれで歪だ。
人間は素より多様性のある生物だし, それに画一性を強いるのは不条理だ。
だが, 多様性とは━今, 眼前に広がるこの光景も果たして「多様性」なのか?
「少し遅れるみたい。しばらくここで待つのが良いかしら」
クルヌギアスはスマートフォンをしまい, 俺に振り向く。彼女は俺の表情を窺うや, こう聞いてきた。
「何か気になるの?」
俺はクルヌギアスを一瞥した。
「なぜ, 誰もあの連中を助けようとしない」
クルヌギアスも俺の目線の先にあった, 壁沿いの貧民達を眺める。
「弱者は淘汰される。それが人の本能, 社会の本能だから。助ける価値もない, そういうこと」
「ひどく貧相な考えだな。弱者であることを望んでなかった者もいただろう」
「大事なのは結果よ。彼らはどうあれ, 社会の敗北者。その事実は変わらない」
クルヌギアスは淡々と語り続ける。
「社会を動かすのにふさわしいのは, 強い成功者達だけ。トップに居続けることだけを考えれば社会に認められる。そうすれば豊かな生活ができる」
「……」
「そんな成功者達が弱者を救済するなんて, とんでもない話よね。他人は蹴落とすためにある。自分が上に登っていくための踏み台。他人の手助けなんてしたら, いつかは自分が踏み台にされるだけ」
「…それが, 社会の根底にあるイデオロギーか」
「大雑把だけど, その通りよ」
「それは…」
間違っている。
なぜ間違っているかと聞かれても, わからない。
道理に反していると, そう心が叫んでいる。
何を以て強い, 弱いを決めているのか。誰が決めているのか。否, 第一に決め付ける権利など, あるものなのか。
俺は何も言わず, 引き続き壁の人々を凝視し続けていた。その時, 右端に動きがあった。目線を移すと, その惨劇は明らかだった。
人目のつきにくい, ビルの柱の影。そこに男の3人組が, 柱に寄りかかる何かを取り囲むようにして立っている━よく見れば, 取り囲んでいる「何か」は座り込んだ人間だということに気づいた。
3人組は次々に何だか大きく声を荒げ, 座っていた人物に蹴りを入れている。見るにも痛ましい光景だ。男達は3人ともスーツに身を纏っている一方, 蹴られていた人は古びたフードを被っていて, 顔がよく見えない。
そして, 相変わらず通行人はそれを無視している。見えたとしても, 一瞥した後, そそくさと歩き去っていく人ばかりだ。そして, 柱のすぐ近くの壁に集まっていた貧民たちも見てみぬ振りをしていた。
「その目。何か言いたげな目つきね?」
クルヌギアスが, いつもの謎めいた微笑みを浮かべる。俺が騒ぎに注目していたことに気づいたのか, こう続けた。
「それとも, 貴方も沈黙を貫くの?周りの人達みたいに」
「…ちょっと行ってくる」
そう言って俺はクルヌギアスの元を離れ, 柱の3人組に歩み寄る。近づくにつれ, 彼らの罵言がより鮮明に聞こえてきた。
「…なめてんのか?あ?」
「下民の分際で歯向かいやがって! 身の程知らずが!」
「ビジネスの邪魔をしやがって, タダで済むと思ってんのか!」
「ご, ごめん, なさい…ゆ, るして…」
「はあ?声が小さいんだよ!」
弱々しい声で許しを乞うフードの人物の腹部に, 中央の男が思いっきり蹴りを入れた。その光景には一瞬目を逸らしかねない。
無論, 収容所での生活で喧嘩事は幾度も目撃してきたが, このような一方的な甚振りは別だ。
「おい」
「あ?」
中央の男が振り返るや, 顔面に繰り出される拳。
鈍い音を立てながら, 男は大きな呻き声を上げて咄嗟に殴られた頬を両手で抑える。
取り巻きの男達は大変驚いた様子で狼狽えるが, すぐに状況を理解して俺に突っかかってきた。
「何だ, テメェ!」
「やるってのか!」
「ムカついたんでね。ストレス発散ってことだ。悪く思うな」
「ふざけてるのか!このお方が誰なのか, わかってんのか!」
「倒れてる人をゲシゲシ蹴るような奴だろ?」
怒る取り巻き達だが, 一向に反撃してくる様子はない。所詮, 腰抜けか?と思った矢先, 殴られた男が体勢を立て直して俺を睨んできた。
「お前…
「知らないな。コーポとは何だ」
「…ハハハ!自分のしでかしたことも分かんねぇってか。こいつぁ本物のバカだ!」
ハハハハ, と取り巻き達も高らかに笑い始めるが, 何が面白いんだ?見ていて滑稽だったので, 俺も鼻で少し笑ってみせた。
「…ふぅ。こんなに笑ったのは久々だぜ。おい, ゴミ!どこの誰だが知らねぇが, 俺は優しいお方なんでね。頭下げて謝れ。今すぐ」
「謝る?もし断ったら?」
「ハッ, お前がこの街で二度と生きていけねぇようにしてやるだけさ。身元も洗いざらい調べあげて…」
「じゃあ, こうしよう。その腕に付けてるそれ,
俺は男の左腕に巻かれた, 円形の装置を指差す。俺の物と違い, ディスクブレードが見当たらないが。デッキホルダーに入っているカードの束が明瞭に見える。
「
俺はリュックからディスクをサッと取り出し, 左腕に装着した後にデッキを右手に取って, 彼に見せつける。
「ああ, そうそう。ついでにデッキも賭けてやる。悪くない提案だろ?」
「お前, 何を勝手に━」
取り巻きの一人が突っかかるが,
「ハハハ!ナメられたもんだ。いいぜ,
男はディスクを起動させると, 彼のディスクから
「「
源 LP 8000
男 LP 8000
「先攻はもらうぜ!」
「勝手にしろ」
収容所内でも先攻は言ったもん勝ちだったが。どうやら外の世界でもそこは変わらぬらしい。
「俺は《ライオウ》を召喚!」
ライオウ
星4/光/雷族
ATK 1900
稲妻を周囲に放ちながら, 青いフレームのロボットのようなモンスターが現れる。
こいつは…いきなり厄介なカードが来たな。収容所でも使われた経験がある。
「ライオウがフィールドに存在する限り, お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることはできねぇ!更に俺は, 装備魔法《ミスト・ボディ》をライオウに装備!これで, ライオウは戦闘で破壊されなくなる!」
ライオウの身体に霧がかかり, 半透明になっていく。あらゆるモンスターの攻撃が効かなくなる, ということか。
「そして永続魔法, 《カイザーコロシアム》を発動だ!こいつが発動している限り, お前は俺のフィールドに存在するモンスターと同じ数までしかモンスターを出せない!」
守りを固めてきたか。もうここまで来れば, 相手のデッキの主旨が分かってくる。俺の戦術を封じるロックデッキといったところか。
「カードを2枚セットして, ターンエンドだ!さぁ, あがけよ!ハハハ!」
TURN 1
源 LP 8000
手札: 5
男 LP 8000
フィールド:
ライオウ
ミスト・ボディ(装備先:ライオウ)
カイザーコロシアム
伏せ2
「俺のターン, ドロー」
なんだ, この程度か。ならばやることが単純で助かる。
「マジックカード,《月の書》。ライオウには裏側表示になってもらう」
「なっ…?」
ライオウの姿が消滅し, その場には裏側守備表示のカードが現れる。これで, デッキからのサーチ効果が使える上, ライオウのもう一つの効果である特殊召喚の無効化を恐れる必要がなくなった。同時に, 装備されていた《ミスト・ボディ》も墓地に送られる。
「加えて速攻魔法,《ツインツイスター》。手札を1枚捨て, フィールドの魔法・罠カードを2枚破壊する。《カイザーコロシアム》と, その隣の伏せカードを破壊だ」
「クソ…!」
隣の伏せカードは…《奈落の落とし穴》。危ない, 危ない。残る1枚の伏せカードが気になるところだが, それは踏み抜いていく覚悟だ。
「この時, ツインツイスターのコストで墓地に捨てた《アブソルーター・ドラゴン》の効果が発動。デッキからヴァレットモンスターを1枚選び, 手札に加える」
「ヴァレットだと?!」
男の形相が豹変する。まるで何かに気づいたかのように。
このデッキを知っているかのような顔つきだが, 気にしない。俺はプレイを続けた。
「俺が手札に加えるのは…《ヴァレット・シンクロン》。そして手札からフィールド魔法, 《リボルブート・セクター》を発動し, 今効果を使用する!手札のヴァレット2体を守備表示で特殊召喚する。来い, 《ヴァレット・トレーサー》, 《ヴァレット・リチャージャー》!さらにリボルブート・セクターの効果により, ヴァレットモンスターの攻守は300ポイントアップする」
ヴァレット・トレーサー
星4/闇/ドラゴン族
DEF 1000 → 1300
ヴァレット・リチャージャー
星4/闇/ドラゴン族
DEF 2100 → 2400
「な, なぜお前が, ヴァレットを…」
「ゴチャゴチャ言ってないで続けるぞ。《クイック・リボルブ》発動!デッキからヴァレットを特殊召喚…この時, ヴァレット・トレーサーのモンスター効果!フィールドの表側表示のカードを破壊し, デッキから別のヴァレットモンスターを特殊召喚する!今発動したクイック・リボルブを破壊し, 《オートヴァレット・ドラゴン》を特殊召喚!そして, クイック・リボルブの効果が発動され《エクスプロードヴァレット・ドラゴン》を特殊召喚!」
オートヴァレット・ドラゴン
星3/闇/ドラゴン族
ATK 1600 → 1900
エクスプロードヴァレット・ドラゴン
星7/闇/ドラゴン族
DEF 2000 → 2300
「一気に4体のモンスターが並んだだと?」
「行くぞ。現れろ, 未来を切り拓くサーキット!」
例の如く, 弾丸が宙を砕くような演出とともにリンクサーキットが顕現した。
「召喚条件は, 闇属性のドラゴン族モンスター2体。エクスプロードヴァレット・ドラゴン, ヴァレット・リチャージャーをリンクマーカーにセット!リンク召喚, リンク2! 《デリンジャラス・ドラゴン》!」
デリンジャラス・ドラゴン
リンク2(上・下)/闇/ドラゴン族
ATK 1600
「まだだ。続いてリンク2のデリンジャラス・ドラゴンと, ヴァレット・トレーサーをリンクマーカーにセット!リンク召喚, リンク3!スリーバーストショット・ドラゴン!」
スリーバーストショット・ドラゴン
リンク3(上・左・下)/闇/ドラゴン族
ATK 2400
胴体に3連の銃口を装備した, ワイバーンのようなドラゴンが降り立つ。頭部についたスコープのような目が, 照準の先の男を捉える。
「さて, 俺はまだ通常召喚を行なっていない。チューナーモンスター, 《ヴァレット・シンクロン》を攻撃表示で召喚!」
ヴァレット・シンクロン
星1/闇/ドラゴン族・チューナー
ATK 300 → 600
「ヴァレット・シンクロンの効果発動。墓地のレベル5以上のドラゴン族・闇属性モンスターを特殊召喚する。蘇れ, エクスプロードヴァレット・ドラゴン!そして, 墓地の《デリンジャラス・ドラゴン》の効果を発動。ヴァレットが特殊召喚された場合, 同時に墓地から特殊召喚できる!」
長い導火線の如く竜と, 青いフレームのドラゴンが同時にフィールドに舞い降りた。本来ならば, ここでデリンジャラスを出さなくても良かったのだが。今回は手札にはこのカードがある。
「ライフを半分支払い, マジック発動。《おろかな重葬》!このターン, 俺は魔法・罠をセットできない代わりに, エクストラデッキからモンスターを1枚選んで墓地に送ることができる。俺は《ヴァレルロード・ドラゴン》を墓地に送る!」
「ハ…ライフを削ってまでエクストラデッキのモンスターを直接墓地に置くだぁ?狂ったか?」
源 LP 8000 → 4000
「じきにわかる。俺はレベル7のエクスプロードヴァレット・ドラゴンに, レベル1のヴァレット・シンクロンをチューニング!」
幾度も繰り返して来た口上と共に, 7つの星, 1つの光輪が
「雄々しき竜よ。その獰猛なる牙を今, 弾丸に変え撃ち抜け!シンクロ召喚!虚構を貫け, 《ヴァレルロード・
夜の街に輝く, 弾丸の切り札。
収容所の薄暗い照明でも輝いて見えたが, ここでは一層強く煌めくように見える。
ヴァレルロード・
星8/闇/ドラゴン族・シンクロ
ATK 3000
「バカな!なぜお前が, そのカードを!」
男が喚く。同時に, 周りからもざわめきが聞こえてきた。気がつけば, 俺達の対局を見物している人の輪が出来ていた。聴衆の話し声が微かに聞こえてくる。
「ねぇ, あれ…」
「間違いない。例の
「一体, なぜ彼が?」
「あの人, 一体誰なの?」
…聞くにも興味深い話が広がっている。まるで, 俺の使っているデッキ…ヴァレット達が知れ渡っているかのような感じだ。それも, 一般に行き渡っているようではなく, 何か特別扱いされている。
どういうことだ?疑問を感じつつ, フィールドに意識を戻す。
「ヴァレルロード・
ヴァレルロード・
ATK 3000 → 4500
Borrel Counter 0 → 4
「攻撃力4500だと?!」
「バトルだ。スリーバーストショット・ドラゴンで裏側守備のライオウに攻撃!スリーバーストが守備表示モンスターを攻撃する時, 相手に貫通ダメージを与える!」
スリーバーストショット・ドラゴンが3つの銃口にエネルギーを蓄積し, それぞれからエネルギー弾を連射する。
「フ…かかった!《聖なるバリア-ミラーフォース-》発動!」
男は意気揚々と最後の伏せカードを発動する。ミラーフォース…相手モンスターの攻撃宣言時, 相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する破格の性能を持った罠カード。本来であれば壊滅的だが…生憎, 俺の場にはサベージがいる。
「サベージの効果発動。ヴァレルカウンターを一つ使い, カード効果の発動を無効にする。『アンチ・エネミー・ディセーブル』!」
「な, なに〜?!」
サベージのシリンダーから放出されたプラズマ弾が, ミラーフォースのカードに電撃を浴びせて無力化する。これで奴を守るものはもう無い。
「攻撃続行!スリーバースト, 奴をブチ抜け!『プレシジョン・レイン』!」
スリーバーストの放った弾が, ライオウを貫通して男に直撃した。
「ちいっ!」
男 LP 8000 → 6400
「デリンジャラス, オートヴァレットの2体で攻撃!」
デリンジャラス・ドラゴンが両腕の短い銃口から続け様に連射し, オートヴァレットが体当たりをしかける。
「ガッ…バカな。こんなことが…!」
男 LP 6400 → 2900
「フィナーレだ。焼き払え, ヴァレルロード・
サベージが銃口を展開させ, 高速回転するシリンダーと共に電磁砲弾がチャージされていく。
「『迅雷のヴァレル・ファイア』!」
「どわぁああああ!!」
男 LP 6400 → 0
味気ない
「俺の勝ちだ。さっさと失せろ」
「ひ…お前…」
敗北した男は取り巻きを連れてそそくさと逃げていった。周りのざわめきが未だに止まないが, 観戦していた人混みは解散しつつあった。俺は後ろに振り返る。
柱に座り込んでいた, 男達に虐められていたフード姿の人物に歩み寄って屈む。
「…大丈夫か?」
「う, うーん…」
フードの人物は俺を見上げた。声は弱々しく, ひどく疲労している。それにしても, 髪の色が中々奇抜だ。金髪…というよりは黄緑に近い。顔を見る限り, 年齢は10代後半といったところか。少年とも少女とも言い切れない, 中性的な顔だ。目の色は澄んだ緑色だが, 先ほどから甚振られていたせいか, 目に光がない。
「痛いところはないか?」
「…だいじょう, ぶ。助けて, くれて, ありがとう」
そう言って立ち上がったので, 俺も立ち上がった。そして, 懐から何を取り出したかと思うと, 1枚のカードだった。
「これ, お礼」
「…必要ない。当たり前のことをしただけだ」
「ううん。ボクは, 受け取って欲しい」
少年の目を見ると, なんだか嘆願しているかのような表情だった。仕方なく, 彼からカードを受け取る。そうすると, 彼はそそくさと走り去ってしまった。
「お, おい!」
呼び止めに応じず, フードの少年は人混みの中に消えていってしまった。首を横に振り, 受け取ったカードを表に返す。
《サイコ・エンド・パニッシャー》
星11/光/サイキック族・シンクロ
ATK 3500 / DEF 3500
「何だ…?」
「源!」
俺の名を呼ぶ声がしたと思うと, クルヌギアスが駆け寄ってきた。
「クルヌギアスか」
「中々やるじゃない。まぁ, 心配してなかったけど」
クルヌギアスがフッと笑いながら言う。
「大したことじゃない。それで, 例の知り合いというのは来たのか」
「ええ。たった今ね」
クルヌギアスがそう言うと, 彼女の隣から男が一人顔を出した。ツーブロックの茶髪の若い男だ。トレンチコートに身を包み, 両手には革製の手袋をしている。そして, コートの左腕に装着されていたのは, 黄金のフレームが目立つ
若い男は俺を見るや, 軽く頭を下げてニコリと屈託のない笑顔を見せた。
「君が源くんか。僕は