遊戯王 Bitten Bullet   作:じぇね

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龍と黄金の争闘(コンキスタ・ドラゴネス)

ハッとして起きた。

まるで, 何かに呼ばれたかのように。

 

「起床〜!」という号令と共に, 絶え間なく甲高いブザー音が鳴り響いていく様。

部屋を固く閉ざしている自動ドアがガチャリ, と解錠されて, 一斉に看守らが廊下をタンタンタンという足跡を立てていくのが聞こえてくる。

 

「点呼, 点呼, 点呼…」

布団を払い除け, すぐにベッドから降り立って毛布を伸ばし, シワひとつないように整える。服の袖を伸ばし, 裾をズボンの中に入れる。そして, ベッドの下に置いていた靴を…靴が, ない。おかしい。置いていたはず。ベッドの真下に滑っていったか。素早く屈んでベッドの下を覗いた。ない, ない。ない…?

ロッカーの中か。ロッカーは…ロッカー, ロッカー…どこを見ても, 見当たらない。不味い。早く部屋の外に並ばないと懲罰を喰らってしまう。今日に限って, どうして!クソ, クソ, クソ…

 

「クソが!」

「源!」

 

突如, 両肩を抑える感触。ドキッとして, 視界が白くなりそうになるが, すんでのところで目の前にかかった霧が薄れていく。

焦点が戻ると, 正面には白い肌の人影が, 俺の両肩をしっかりと握って, 自分のことを見つめていた。

夢からようやく覚めた感触だった。呼吸は荒いし, 背中は冷や汗でびっしょりと冷たいままだが。

 

「…クルヌギアス。俺は」

「源。大丈夫?」

 

クルヌギアスの表情は, これ以上なく心配そうなものだった。

そうか。俺は━もう, あの豚箱とは関係ない。彼女のお陰で。それでも, 身体が覚えてしまっている。行動を厳しく管理され, ルールを強制されていた毎日を。

 

「いきなり飛び起きたから, 何かと思って」

「すまない。前の癖が出てきた」

「体調は?」

「問題ない。時間は…?」

クルヌギアスはそう聞かれると, 俺のベッドの隣に置いてあるランプの元にあったデジタル時計に指し示す。

「まだ7時よ。貴方, 4時間ちょっとしか寝てないじゃない」

「…そうか」

 

いまいち, 俺自身の時間感覚が歪だ。それを矯正していくには, もう少しかかるだろう。

俺はベッドに戻るが, 寝転がらずにそのまま座る。クルヌギアスは窓のカーテンを開いた。眩しくも暖かい光線が上半身に当たる。一瞬, 顔を左手で軽く覆ってから, 目が眩しさに順応するのを感じた上で窓の外を遠巻きに眺めた。昨日と違って雪はもう降っていないようだが, 地面が白い絨毯で厚く覆われているのが微かに見える。

 

クルヌギアスは隣に腰掛ける。

「寝ないの?或真くんはまだ起きてないと思うわよ」

「…眠れないと思う。お前は, 寝てないのか」

「精霊だから, 睡眠は必要ないの」

「それだと疲れないのか」

「全然。魔力を特別多く使ってるわけでもないしね。本当は食事も必要ないけど, お腹が空いたと思ったら食べるわ」

精霊とは不思議だ。明らかに人間を超越している。他の精霊も同じようなものなのだろうか。

 

「色々準備してくる」

「ええ。私はここで待ってるわ」

そう言って俺は収容所から持ち出した洗面用具を持って一旦部屋の外に出る。洗顔, 歯磨き等を済まして戻り, 窓際の机に向かう。リュックから決闘盤(デュエルディスク), そしてデッキを取って机上に置き, カードの束を広げる。

「デッキの調整?」

クルヌギアスが俺が座る側に寄ってきた。

「見てるだけだ。これ以外のカードは持っていないしな。こいつを除けば…」

俺は昨夜, 駅前で助けた少年から受け取ったモンスター, 《サイコ・エンド・パニッシャー》のカードに手を当てる。非常に強力なカードだが, 俺のデッキとは相性の良いカードとは言い切れない。

「…ふうん。そのカード, 精霊の匂いがするわね」

「匂い?」

「ええ。微かな形跡だけど, 精霊の力を感じるわ。もしかしたら, そのカードを渡したあの子…精霊の可能性があるわね」

あの少年。確かに, 奇抜な髪の色をしていたが…どう見ても人間にしか見えなかった。やはり, 精霊は思っているよりも人間社会に溶け込んでいるのか。また会うことがあるのだろうか。そんなことを考えながら, 俺は他のカードに目を通す。

 

「あら, 貴方。EXデッキに7枚しか入れてないの?」

「それしか持っていないからな」

俺のEXデッキ。シンクロモンスターであるサベージを除けば, その殆どがリンクモンスターだ。

展開要員の《ストライカー・ドラゴン》, 《デリンジャラス・ドラゴン》, 《ソーンヴァレル・ドラゴン》を始め, 火力を叩き込む《スリーバーストショット・ドラゴン》や《ヴァレルロード・ドラゴン》, 《ヴァレルソード・ドラゴン》の6枚。

ヴァレルに直接関係せず滅多に出すことはないものの, 以前の所長との対決で役に立った《アンダークロックテイカー》も入っている。

 

「ならちょうどいいわ。私を入れなさい」

そう言ってクルヌギアスは, 俺に彼女自身のカード━《閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)》を手渡した。

「…お前はドラゴン族でも, 闇属性でもない。ましてや━」

リンク5で, 召喚条件は効果モンスター4体以上。莫大なコストだ。リンク2モンスターを用いれば, 4体分の素材で済むものの…それでも, モンスターを並べなければならないことに変わりはない。

「よく読んで。貴方なら私を扱えるはずよ」

そう言われ, 彼女のカードを今一度注視する━そうか。彼女の言う通りだ。

「なるほど。よく分かった…でも, いいのか?」

「私は貴方の精霊。私の力は, 貴方の力も同然よ。存分に使いなさい」

なら, お言葉に甘えて。俺はエクストラデッキに, 新たに受け取った力を加える。そうすると, クルヌギアスは右手に更なるカードの束を顕現させ, 机に静かに置いた。

「あと, これも。私の力の一端よ」

「ほう…?」

20枚ほどのカードに目を通す。モンスター, 魔法, 罠…どれも既存の展開ルートなどを伸ばしてくれそうな印象を受ける。後はこれらをどう活用するか…

 

「ありがとう, クルヌギアス」

「ん。礼には及ばないわ」

クルヌギアスは縹渺として答える。そのまま俺は, 1時間ほど使ってデッキの改良に勤しむのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

━1時間後。

8:00 AM

 

「━決闘(デュエル), しないかい?」

リビングで出された朝食を食べ終わった矢先に, 聞いてきたのは或真だった。彼は自信溢れた陽気な表情で俺を見ている。

思えば, このように俺によくしてくれる人間は或真で初めてだ。全くというほど悪意を感じず, 概ね好印象しかない。裏で何かを企てている雰囲気も全く感じさせない, 人柄の良さが全面に出ている。

「街を見に行くのは?」

「それは後でもできる。というか平日だし, この時間帯の街は人混みがヤバいからね」

通勤の時間帯, ということか。であれば, 昼頃に街に出るのが良いということか。俺は軽く頷いた。

「まぁ, 街とか世界のことは, これからゆっくり学んでいけばいいさ。何も急いでないからね。それよりも」

或真は懐から決闘盤(デュエルディスク)とデッキを取り出す。

決闘(デュエル)を通して, 互いを知ることができるとも言われているし」

「ほう…?」

「昨日の件で, 君のデュエルセンスも見ているしね。面白そうだと思っただけさ」

なるほど。昨日の一戦を見ていたのか。まぁ…あの程度の相手だったから, 見所のなかった決闘(デュエル)だと思ったのだが。俺は食器を片付けてから, テーブルに戻った。

「分かった。場所は?」

「家の外!ディスクとデッキを取ってきなよ。外で待ってるよ」

そう言って, 或真は一足先に玄関へと向かった。俺は手を洗ってから自分の部屋に戻り, デッキを右手に取る。クルヌギアスが俺に一声かける。

「或真くんは中々強いわよ。心して挑みなさい」

「お前よりも強いのか?」

収容所内にて, クルヌギアス相手に味わった1回の敗北を思い出す。思い返せば, 本当に呆気ない負け方だ。俺の未熟さもあったのだろうが。

「さぁ…どうかしらね」

またもや曖昧な答えを垂れるクルヌギアスだったが, 俺は黙って玄関の外に出た。

 

朝日が清々しい。或真の家の外は開放感のある広い道路で, 同じような形をしたフラットハウスが車道の両脇に並んでいた住宅街だった。道路の向こう, 少し遠くには高層ビルが隙間なく聳える灰色の風景が映っている。冷え冷えとはしているものの昨日よりは幾分か暖かい。雪で覆われたポーチの正面で, 俺と或真はディスクを展開しながら対峙する。

「楽しみだ。君のタクティクス, お手並み拝見といこうか」

或真が黄金に光るフレームのディスクを操作していく。

「ソリッドビジョンシステム, 起動。ルールは…まぁ, 今更確認するまでもないね」

「ああ。始めよう」

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

源 LP 8000

或真 LP 8000

 

「僕の先攻だ…ふむ。この手札は…」

或真は引いた5枚のカードを眺めて, 顎に手をやる。

「…まぁ, いいか。まずは魔法カード発動。《強欲で金満な壺》!」

壺カードか。デッキからカードをドローする効果に違いないが, この壺は見たことがない。どんな効果が?

「EXデッキのカードを合計6枚までランダムにゲームから除外することで, 除外したカード3枚につき, デッキの上から1枚ドローできる。僕は6枚のカードを除外し, 2枚をデッキからドロー!」

「何…?」

EXデッキのカードを無作為に切ってまで, ドローを行うだと。前代未聞だ。EXデッキには強力なモンスターも入っているはずだが, そこまでして2枚を引く価値があるというのか。

「おや, 解せない顔だね。まぁ…すぐにわかるさ。僕はカードを3枚伏せて, ターン終了だ!」

「正気か!?」

つい声が出てしまった。壁モンスターを召喚することなく, ただリバースカードを3枚伏せるだけでターンを渡す。不可解なことこの上ない。だが, 或真の奴…不適な表情を浮かべている。何か考えがあっての行動なのだろう。

「何を企んでいるか知らんが…俺のターン, ドロー!」

 

改良したばかりのデッキで, 見慣れないカードが手札にあるが, 展開できないわけではない。しかし…伏せカードが気がかりだ。ならば, まずは。

「《メタルヴァレット・ドラゴン》を攻撃表示で召喚!」

 

メタルヴァレット・ドラゴン

星4/闇/ドラゴン族

ATK 1700

 

「バトルフェイズ。メタルヴァレットでダイレクトアタック!」

メタルヴァレットが吠え, 猛スピードで突進する。

 

「『フルメタル・バッシュ』!」

「そう来たか!ならば, トラップ発動!《紅き血染めのエルドリクシル》!」

 

今明らかになった罠カードが光ると, その直上に血の如く深紅の宝石が現れた。宝石は禍々しい紅き波動を放ち, メタルヴァレットの行く先を阻む影を落とす。

「エルドリクシルの効果により, 僕はデッキからアンデット族モンスターを1体特殊召喚できる!ただし, フィールドに『エルドリッチ』モンスターがいない場合, 特定のモンスターしか召喚できない」

「エルドリッチ…?」

「ご名答。最果ての黄金の都を統べる, 暴虐の征服王(レイ・コンキスタ)よ。顕現せよ!」

エルドリクシルの宝石の光が増し, 地中より紅き稲妻の柱が勢いよく飛び出る。それを突き破るように, 巨大な影がフィールドに躍り出た。

 

「《黄金卿エルドリッチ》!」

 

その身体はまさに, 黄金。

上から下までを覆う, 宝石で彩られた, 光り輝くも禍々しい黄金。

4つの眼が妖しく発光し, 傲然たる笑みを俺に見せる怪物━否, アンデット。

 

黄金卿エルドリッチ

星10/光/アンデット族

DEF 2800

 

『ほほう…』

「何?」

黄金のアンデット━黄金卿は俺を見るや, 目を見開いた。

重低音の, 渋い声だ。

 

『アルマよ…これが, 噂に聞く少年か。フム…良い目をしている』

「喋った…?」

俺が驚いていると, 或真が口を開いた。

 

「紹介するよ。《黄金卿エルドリッチ》。僕の精霊さ」

『精霊?アルマよ, 貴様は我の眷属であろう』

「…なんて言ってるけど, 中身はただの気まぐれなオヤジだから。気にしなくていいよ」

『ムゥ…』

 

若干不服そうな黄金卿に, 少し親しみを覚えた。見るからに暴君という風貌をしているが, 或真とはそれなりに仲が良いと見える。黄金卿は, 俺の隣にいたクルヌギアスに目線を合わせた。

 

『冥神。これが貴様の新たな(あるじ)か』

「ええ, そうよ」

『…我には見える。彼の(うち)の心火が…微々たるものだがな』

「あら, そう。貴方にもわかるなら, 良かったわ」

 

新たな主…?

俺は眉を細めてクルヌギアスを見る。前に, 他の人間といた経験があるというのか…?

 

「黄金卿!話は後にして!今は決闘(デュエル)中だよ!」

『フン。知っておる』

或真が後ろから呼びかけると, 黄金卿は少し唸って防御の構えに入り, 威厳溢れる眼差しを向ける。

 

『少年。せいぜい我を楽しませるがいい!』

 

「…バトルは中止だ。メインフェイズ2に入る」

守備力2800の大型モンスターか。メタルヴァレットを丸腰でフィールドに残すのは不味い。

「顕現せよ。未来を切り拓くサーキット!」

上空に現れる, 未来回路。

「メタルヴァレットをリンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク1!発進せよ, 《ストライカー・ドラゴン》!」

 

ストライカー・ドラゴン

リンク1(左)/闇/ドラゴン族

ATK 1000

 

「ストライカー・ドラゴンのリンク召喚時, デッキから《リボルブート・セクター》を手札に加え…そのまま発動!」

「させない!トラップ発動!《黄金卿のコンキスタドール》!この罠カードは, 発動後モンスターカードとしてフィールドに特殊召喚される!」

《黄金郷のコンキスタドール》のカードから, 黄金の鎧を纏った馬を乗りこなす, レイピアを構えた戦士のゾンビが駆けつけた。

 

黄金郷のコンキスタドール

星5/光/アンデット族

DEF 1800

 

罠カードであり, モンスターでもあるカードか…しかし, ステータスが低いだけのモンスターに見えるが…

「コンキスタドールは《黄金卿エルドリッチ》が存在する状態で特殊召喚された場合, さらに相手フィールドのカードを1枚破壊する!僕は《リボルブート・セクター》を破壊!」

「何?!」

コンキスタドールが突撃し, 剣の一振りでフィールド魔法を切り刻んでしまった。

…図ったな。明らかに, 或真はリボルブート・セクターの効果を理解していると見た。これ以上の展開は無理か。

「ならば, カードを1枚伏せて, ターンエンド!」

 

TURN 2

手札: 5

フィールド:

ストライカー・ドラゴン

伏せ1

 

或真

手札: 3

フィールド:

黄金卿エルドリッチ

黄金郷のコンキスタドール

伏せ1

 

「僕のターン。ドロー!ふむ, やることがないね。ならば, 黄金卿を攻撃表示に変更!」

 

黄金卿エルドリッチ

DEF 2800 → ATK 2500

 

「さらに墓地の《紅き血染めのエルドリクシル》を除外し, 効果発動。デッキから《黄金郷》と名のついた罠カードを, フィールド上にセットする。僕は《黄金郷のワッケーロ》をセット!そしてバトルフェイズ!」

黄金卿の胸にあった赤い紋章が光り, 力を解放する。 

「黄金卿の攻撃!」

夥しい数の黄金の杭が地面を突き破り, ストライカー・ドラゴンを貫かんと勢いよく飛来する。

「『黄金の征服王(エル・ドラド・アデランタード)!』」

『灰塵と化すがいい!』

杭は次々と直撃し, 大爆発と共にストライカーが破壊される。

 

「ちいっ!」

源 LP 8000 → 6500

「カードをさらに1枚伏せて, ターン終了だ」

 

「俺のターン!」

この時点で或真のデッキの戦術が大分わかってきた。罠カードで俺の展開を封じ, 盤面の主導権を握っていくコントロールデッキ。この類の相手に長期戦は望ましくない。さっさと突破口を見つけないと…

「チューナーモンスター, 《ヴァレット・トレーサー》を召喚!」

 

ヴァレット・トレーサー

星4/闇/ドラゴン族・チューナー

ATK 1600

 

「チューナー…!トラップ発動!《黄金郷のワッケーロ》!このカードも, 発動後モンスターとして場に召喚される!」

身体を黄金に浸食されつつある, 盗賊の服を纏ったゾンビの群れが躍り出た。

 

黄金郷のワッケーロ

星5/光/アンデット族

ATK 1800

 

「ワッケーロは黄金卿がフィールドに存在する時に召喚された場合, 相手の墓地のカード1枚を除外する。《ストライカー・ドラゴン》をゲームから除外させてもらう!」

ワッケーロが地面を掘り起こし, 俺の《ストライカー・ドラゴン》のカードを奪ってしまった。

 

「…なるほど。そう来たか」

「君のサベージは厄介なカードだ。出させるわけにはいかない」

「そうだな…クルヌギアス」

「ええ, 何か?」

クルヌギアスが俺の呼びかけに首を傾げる。

 

「お前から受け取ったカード…早速使わせてもらう」

クルヌギアスがフッと微笑む。

 

「そう。使いこなしてみせなさい」

 

「ああ, いくぞ。墓地の闇属性モンスター, メタルヴァレット・ドラゴンを除外。《輝白竜(きびゃくりゅう)ワイバースター》を特殊召喚!」

宙に現れた闇が, 白い渦に取り込まれる。渦の中心が眩い光を発すると, そこから蒼い鱗の, 光のドラゴンが飛翔した。

 

輝白竜ワイバースター

星4/光/ドラゴン族

ATK 1700

 

「そのモンスターは…!そうか。クルヌギアスさんか」

或真は悟ったような表情でワイバースターを見た後, 腑に落ちたかのように頷く。

 

「さぁ, 行くぞ。レベル4のワイバースターに, レベル4のヴァレット・トレーサーをチューニング!」

ワイバースターの胴体から光の波動が巻き起こり, 自身を包んで4つの光の粒子と化す。粒子はトレーサーから生じた4つのリングの中央に並ぶ。

 

「光を喰らい, 闇をも裂く魔龍よ。愚鈍なる世界に, 混沌を(もたら)さん!シンクロ召喚!」

 

「来い!《混沌魔龍 カオス・ルーラー》!」

 

天に現れた青い光から舞い降りた, (あかしま)なる黒竜。

初めて対峙した時は敵同士だったが, 今は俺の元にある。クルヌギアスの力。

 

混沌魔龍 カオス・ルーラー

星8/闇/ドラゴン族・シンクロ

ATK 3000

 

「カオス・ルーラー…!それも受け取っていたか」

『フン…』

 

「カオス・ルーラーの特殊能力!シンクロ召喚に成功した時, デッキの上から5枚のカードを見て, その中に光・闇属性のカードがあれば手札に加えることができる。それ以外を墓地に送る」

カオス・リファインメント。カオス・ルーラーが両腕を赤く光らせ, 同時の俺のデッキトップから5枚のカードが宙に浮かぶ。

 

《アブソルーター・ドラゴン》

《螺旋竜バルジ》

《ハイバーネーション・ドラゴン》

《輝光竜セイファート》

《ヴァレット・リチャージャー》

 

「俺は《ヴァレット・リチャージャー》を手札に加え, 残りを墓地へ。シンクロ素材としてフィールドから墓地に送られたワイバースターの効果!デッキから《暗黒竜コラプサーペント》を手札に。さらに, 今墓地に送られた《アブソルーター・ドラゴン》の効果も発動できる!デッキからヴァレットモンスター…《ヴァレット・キャリバー》を手札に加える!」

 

一気に3枚ものカードが手札に補充された。やはり, カオス・ルーラー…あまりにも強力なカードだ。戦術の幅が一気に広がるのが感じ取れる。微かな関心を覚え, 次の一手を考える。さて, どうすれば…

 

「源。墓地をよく見なさい」

「墓地…?」

「そう。墓地も貴方の力の一部。そこから更に繋げられるはずよ」

「…そうか。なら, これはどうだ。俺は墓地の光属性, ワイバースターを除外。《暗黒竜コラプサーペント》を特殊召喚!」

 

ワイバースターと対を成す, 闇のドラゴン。光を飲み込む闇の渦から, 攻撃的なプレッシャーを纏って出現した。

 

暗黒竜コラプサーペント

星4/闇/ドラゴン族

ATK 1800

 

「そして, 墓地の《螺旋竜バルジ》の効果発動!俺の場に光・闇属性のドラゴン族モンスターが2体以上存在する場合, 墓地から特殊召喚できる!」

 

銀河の螺旋そのものを纏ったような, 不気味な触手を無数に生やすドラゴンが虚空より現れる。

 

螺旋竜バルジ

星8/闇/ドラゴン族

ATK 2500

 

「バルジの第2の効果。自分フィールド上の全てのモンスターのレベルを8にする!カオス・ルーラーは元々8だから, 効果を受けても変わらないがな」

 

暗黒竜コラプサーペント 星4 → 星8

 

「コラプサーペントのレベルを…?そうか!」

或真が何かに気づいたように目を見開く。その通りだ。

 

「俺は, レベルが8となったコラプサーペントと, 螺旋竜バルジをオーバーレイ!」

地面が開き, 生じる銀河のような暗黒空間。2体のドラゴンは光のエネルギー体と化し, 空間の中心へと飛び込む。途端, 起き上がる大爆発。

 

「2体のモンスターで, オーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

「現れよ。ナンバーズ107!」

 

「107」の数字が宙に描かれ, 爆発から一騎のドラゴンが飛翔する。

 

戦闘機のような, 機械的な黒いフレーム。翼は赤いエネルギーが走り, その巨体の周りを2つの球体が公転する。

 

「《銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)》!」

 

その雄叫びと共に, 衝撃波が猛烈な地響きを起こした。

 

No(ナンバーズ)107. 銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)

ランク8/光/ドラゴン族

ATK 3000

Overlay Unit: 2

 

「…こりゃ, デカいのが出てきたな。黄金卿?」

或真が呟く。2体のドラゴンが, 黄金卿とその下僕を睨む。

黄金卿は臆することなく笑って見せた。

『フン…面白い』

 

「バトルだ。タキオン・ドラゴン!」

悠久なる時を司る銀河竜の咆哮が, 黄金の軍勢を震撼させる━

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