遊戯王 Bitten Bullet   作:じぇね

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不朽の黄金郷(エテルニダード・エル・ドラド)

━バトルフェイズ。

2体の漆黒の龍が臨場感を醸し出す。黄金卿と対峙するその様は, 強大な力同士がぶつかり合う一歩手前, まさに一触即発。

銀河眼の時空竜(ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン)のオーバーレイ・ユニットを一つ使い, 効果発動!」

 

No.107 銀河眼の時空竜

Overlay Unit 2 → 1

 

タキオン・ドラゴンは周囲を回る球体を一つ取り込む。すると, 自らの身体を変形させ, 四角錐のようなコアの形となる。周囲の空間が歪み, 銀河の中を逆行しているかのようなエフェクトが周囲に描かれる。

「バトルフェイズの開始時, タキオンの効果は発動する。フィールド上の全てのモンスターの効果は無効になる!そして, この効果の発動後, 相手がカード効果を発動する度に攻撃力は1000ポイントアップし, 加えて2回目の攻撃を行える!」

これで, 或真の伏せカードの発動を牽制することができるはずだ。

 

「タキオン・ドラゴンで, 黄金卿エルドリッチを攻撃!『殲滅のタキオン・スパイラル』!」

タキオンが赤い粒子の光線を黄金卿目掛けて放つ。黄金卿は防御の構えをとるも, その威力に押されていく。

『ぐ…オオオッ!』

爆散と共に, 黄金卿の姿が消滅した。衝撃波でダメージを受ける或真だが, さほど気に留めていない表情だ━むしろ, 笑ってすらいる。

 

或真

LP 8000 → 7500

 

「続いて, カオス・ルーラーでワッケーロに攻撃!『ダークネス・エラディケイション』!」

カオス・ルーラーの両手から深紅の電撃波が, 盗賊団のゾンビたちを焼き払っていく。

 

「む…やるな!」

或真 LP 7500 → 6300

 

「カードを1枚伏せて, ターン終了だ」

 

TURN 3

手札: 5

フィールド:

混沌魔龍 カオス・ルーラー

No.107 銀河眼の時空竜

伏せ2

 

或真

手札: 3

フィールド:

黄金郷のコンキスタドール

伏せ1

 

「僕のターン。ドロー!お, いい引きだ。2枚目の《強欲で金満な壺》を発動!EXデッキから6枚のカードをランダムに除外, そして2枚ドローする」

これで或真のEXデッキは残り3枚。これだけのカードをEXデッキから捨てているとなると, ハナからEXモンスターを使用する気などないのだろう。ドローを加速するための道具としてのEXデッキ, それも戦術の一つというわけか。

「そして今ドローした永続魔法, 《呪われしエルドランド》を発動!」

黄金の城が描かれた魔法カードがフィールドに登場する。あれが, 黄金卿の根城なのだろうか。

「エルドランドの効果。ターンに1度, ライフを800支払って, デッキから《黄金郷》魔法・罠カードを手札に加えられる。僕はこれを使い, 永続罠《黄金郷のガーディアン》を手札に加えるよ」

 

或真 LP 6300 → 5500

 

「さらに手札から《黒き覚醒(めざめ)のエルドリクシル》を発動!デッキからアンデット族を守備表示で特殊召喚できる…が, フィールドに《黄金卿エルドリッチ》がいない場合, 特殊召喚できるモンスターは1つに限られる…来い, 《黄金卿エルドリッチ》!」

今度は黒い宝石が現れ, 地面に黄金色の塊を放出する。その中から現れたのは…やはり, 黄金の王だった。

 

黄金卿エルドリッチ

星10/光/アンデット族

DEF 2800

 

「2枚目だと?!」

『何も1枚だけとは, 誰も言ってなかろう?』

黄金卿がクックッと笑う。

 

「驚くのはまだ早いよ!僕はさらに, の場にある伏せカード1枚を墓地に送る!」

「何…?」

或真の場にあったセットカードが, ドロドロした黄金の液体と化して溶けていく。

「その後, 墓地に存在する《黄金卿エルドリッチ》を手札に戻す。これも, 黄金卿の第2の能力…自分フィールド上の魔法・罠カード1枚を墓地に送り, 墓地の自身を手札に戻す。その後, 手札からアンデット族モンスターを特殊召喚できる!」

アンデット族。黄金卿自身もアンデット族だ。ということは━

 

「その通り!蘇れ, 《黄金卿エルドリッチ》!」

黄金の沼から勢いよく拳が突き出て, またもや見慣れた金色の煌く図体がフィールドに這い上がる。ただ, この黄金卿は何やら気迫が違う…デッキから召喚された個体よりも, より強いエネルギーを放っている。

 

黄金卿エルドリッチ(B)

星10/光/アンデット族

ATK 3500

 

「攻撃力が上がっている?」

『我は不滅。墓地(はかば)より蘇りし我は, 更なる力を得て舞い戻る』

「…黄金卿の言う通り。黄金卿の墓地効果により召喚されたアンデット族モンスター…つまり, 黄金卿自身は攻守が1000ポイントアップし, 効果では破壊されなくなる。次のターンの終わりまで, だけどね」

 

魔法・罠さえあれば, 攻撃力と耐性を得て無限に復活できるだと?無茶苦茶だ。まさに, 横暴。

 

「手札から魔法カードを発動!《アンデット・ネクロナイズ》!フィールドにレベル5以上のアンデット族がいるとき, エンドフェイズまで相手モンスター1体のコントロールを得る!」

「何?!」

「僕が対象とするのは, タキオン・ドラゴン!」

 

『屈せよ!』

黄金卿が輝く黄色のレーザーを照射してタキオン・ドラゴンを拘束, 力尽くで自身の隣に引き寄せてしまった。

 

「そしてコンキスタドールを攻撃表示に変更。バトルフェイズ!」

黄金郷のコンキスタドール

DEF 1800 → ATK 500

 

「タキオン・ドラゴンでカオス・ルーラーに攻撃!」

謎めいた呪いを受けたタキオンがカオス・ルーラーに突撃する。カオス・ルーラーはそれを迎撃するも, 両者は衝撃波に巻き込まれて消えてしまう。

 

「これでフィールドはガラ空きだ。コンキスタドールでダイレクトアタック!」

「くっ!」

レイピアの斬撃が俺を襲う。

源 LP 6500 → 6000

 

「黄金卿の攻撃!『黄金の征服王(エル・ドラド・アデランタード)』!」

『我が威光の前に, 沈め!』

再び地中から襲いかかる杭の軍勢。

「ぐはっ!」

源 LP 6000 → 2500

 

痛い一撃だ。だが。

「リバースカード・オープン!《ダメージ・コンデンサー》!相手モンスターの攻撃によって戦闘ダメージを受けたとき, その数値以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚できる!チューナーモンスター, ヴァレット・トレーサーを特殊召喚!」

 

ヴァレット・トレーサー

星4/闇/ドラゴン族・チューナー

ATK 1600

 

『ほう…まだ戦うか』

黄金卿が少し関心したかのように頷く。

「なら, 僕はメインフェイズ2に入る。黄金卿の墓地効果の際, 墓地に送った《白き宿命(さだめ)のエルドリクシル》を除外, デッキから2枚目の《黄金郷のコンキスタドール》をフィールドにセット。さらに手札からカードを3枚伏せて, ターンエンド!」

 

TURN 4

手札: 5

フィールド:

ヴァレット・トレーサー

伏せ1

 

或真

手札: 0

フィールド:

黄金郷のコンキスタドール

黄金卿エルドリッチ

黄金卿エルドリッチ(B)

 

呪われしエルドランド

伏せ4 (不明3 + 黄金郷のコンキスタドール1)

 

━厄介。いや, 強い。

或真のデッキ…俺が最初思っていた以上に, 守りと戦線維持に長けたデッキだ。何度でも復活するエルドリッチと, 墓地から除外して次の魔法・罠を供給できる黄金郷カードと, エルドリクシル。まさに━不死(アンデット)

ただでさえ処理の困難な上級モンスターが2体いるのに, 後ろで罠が4枚も構えている。ライフも風前の灯。

あの4枚に動きを完封されたら, 正真正銘の終わりだ。

 

「…だが。やってみるしか, ないんだろうな」

「勝てると思う?」

クルヌギアスの問い。望みは薄い, が。

 

「可能性はゼロではない…戦い続ける限りな!ドロー!」

 

この瞬間, 或真の張った第一の罠が正体を露わにした。

 

「スタンバイフェイズ時, トラップ発動!《次元障壁》!召喚法を一つ宣言し, このターン, お互いに宣言した種類のモンスターを召喚できず, フィールド上のその種類のモンスター効果も無効になる。僕は『シンクロ召喚』を宣言!」

召喚そのものを封じるトラップ。度肝を抜かれた。

やはり, 或真のサベージに対する警戒心は依然として高いようだ。

 

「なら, こうだ。《アネスヴァレット・ドラゴン》を召喚!」

 

アネスヴァレット・ドラゴン

星1/闇/ドラゴン族

ATK 0

 

計算は狂ったが, まだ十二分に動ける。

「この時, フィールドに闇属性のドラゴン族が2体いることにより, 墓地のバルジは再び特殊召喚できる」

 

螺旋竜バルジ

星8/闇/ドラゴン族

ATK 2500

 

「今, フィールドにドラゴン族・闇属性モンスターが特殊召喚されたことにより, 手札の《ノクトビジョン・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

ノクトビジョン・ドラゴン

星7/闇/ドラゴン族

DEF 2800

 

「顕現せよ。未来を切り拓くサーキット!召喚条件は, ヴァレットを含むドラゴン族2体。アネスヴァレット・ドラゴンとノクトビジョン・ドラゴンをリンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク2!《ソーンヴァレル・ドラゴン》!」

サーキットから出現したのは, ダブルバレルの腕を構えた黄色いフレームのドラゴン。

 

ソーンヴァレル・ドラゴン

リンク2(左・下)/闇/ドラゴン族

ATK 1000

 

「ノクトビジョンがリンク素材となった場合, カードを1枚ドローできる。そしてソーンヴァレルの効果を発動。手札を1枚捨て, フィールドのモンスター1体を破壊する。俺は手札の《亡龍の戦慄-デストルドー》を墓地へ。耐性を得ていない方の黄金卿エルドリッチを破壊する!」

「黄金卿は破壊させない!カウンター罠, 発動!《永久(とわ)に輝けし黄金郷》!コストとして, コンキスタドールをリリース。相手のカード効果を無効にして破壊する!」

『そんな小細工など, 我に通用せん!』

ソーンヴァレルが両腕から散弾を連射するも, 黄金卿は腕の一振りで弾丸を振り払い, 胸の紋章からビームを発射してソーンヴァレルを撃墜してしまった。

 

「だが, この瞬間。EXデッキから特殊召喚されたソーンヴァレルが破壊されたことにより, 手札の《ヴァレット・リチャージャー》の効果が起動する!このカードを墓地に送ることで, 墓地に存在する別の闇属性モンスターを特殊召喚できる。《暗黒竜コラプサーペント》を特殊召喚!」

ソーンヴァレルの残骸から黒い渦が出現し, コラプサーペントが前線に出た。

 

暗黒竜コラプサーペント

星4/闇/ドラゴン族

ATK 1800

 

「その様子だと, まだまだ続きそうだな…」

或真が興味津々に眺める。この展開の行先を楽しみにしているかのように。

「そして, 墓地の《亡龍の戦慄-デストルドー》の効果。ライフを半分払い, フィールド上のレベル7以下のモンスター…コラプサーペントを対象。対象としたモンスターのレベル分, 自身のレベルを下げて特殊召喚される!」

命を削ることと引き換えに, 地中からゆっくりと這い上がる亡骸の竜。

 

亡龍の戦慄-デストルドー

星7 →3/闇/ドラゴン族・チューナー

ATK 1000

 

LP 2500 → 1250

 

「再び顕現せよ。未来を切り拓くサーキット!召喚条件は, ドラゴン族・闇属性が2体。デストルドーとコラプサーペントをリンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク2!《デリンジャラス・ドラゴン》!」

 

デリンジャラス・ドラゴン

リンク2(上・下)/闇/ドラゴン族

ATK 1600

 

「フィールドから墓地に送られたコラプサーペントの効果で, デッキから2枚目の《輝白竜ワイバースター》を手札に。そして, 三度現れよ。未来を切り拓くサーキット!アローヘッド確認。召喚条件は, 効果モンスター3体以上!俺はリンク2のデリンジャラス・ドラゴン, ヴァレット・トレーサー, そして螺旋竜バルジをリンクマーカーにセット!サーキット・コンバイン!」

「リンク4!何が来る…?」

『ほう…?』

 

「リンク召喚!虚構を両断せし暴風, 《ヴァレルソード・ドラゴン》!」

 

ヴァレルソード・ドラゴン

リンク4(上・左・左下・下)/闇/ドラゴン族

ATK 3000

 

「ヴァレルソード…!」

或真が戦慄した。この破壊の権化が場に出たからには, なんとしても攻撃を防がねばならないことを理解しているようだ。

「それは流石に通せないな!リバースカード, オープン!《黄金卿のコンキスタドール》!コンキスタドールの効果でヴァレルソードを破壊する!」

「無駄だ。手札から, カウンター罠を発動!《マーカーズ・ブレイク》!リンク4以上のモンスターが場に存在する場合, このカードは手札からの発動が可能!」

「何?!手札から?!」

「そうだ。相手のトラップの発動を無効にし破壊する!」

《マーカーズ・ブレイク》から放たれた火柱が《コンキスタドール》のカードを焼き払う。

「…それは予想外だ。だが, そいつを野放しにはしておけない!《黄金郷のガーディアン》発動!こいつもモンスターとなって, 守備表示で特殊召喚される!」

黄金に浸食された獅子が躍り出て, 威嚇するようにヴァレルソードに吠える。

 

黄金郷のガーディアン

星8/光/アンデット族

DEF 2500

 

「そして, ガーディアンの特殊効果は黄金卿がいる時, 相手モンスターの攻撃力を0にできる。僕はヴァレルソードの攻撃力を0にする!」

ガーディアンが咆哮を揚げると, 何やら呪いのかかったオーラをヴァレルソードに浴びせる。ヴァレルソードは四肢を黄金の塊に拘束され, 身動きができなくなってしまう。

 

ヴァレルソード・ドラゴン

ATK 3000 → 0

 

「危ないなぁ。これで君の場には攻撃できるモンスターはいない。どうする?」

「…まだだ。まだ戦える!手札のヴァレット・キャリバーは, 闇属性リンクモンスターのマーカー先に特殊召喚できる!俺はキャリバーを, ヴァレルソードの下側のゾーンに召喚!」

諦めない。ここで諦めてはいけない!

 

ヴァレット・キャリバー

星4/闇/ドラゴン族・チューナー

ATK 1700

 

「そして, 墓地のコラプサーペントを除外。ワイバースターを特殊召喚!」

 

輝白竜ワイバースター

星4/光/ドラゴン族

ATK 1700

 

「さらに, 墓地のカオス・ルーラーの効果!墓地に存在する光属性の《輝光竜セイファート》, 闇属性《アブソルーター・ドラゴン》を除外。自身を墓地から特殊召喚できる!」

次元障壁は, フィールドのシンクロモンスターにしか効果が及ばない。故に, 墓地のカオス・ルーラーは影響されない。

光と闇の波動が地面に打たれ, 渦と共に黒竜が再臨する。

 

混沌魔龍 カオス・ルーラー

星8/闇/ドラゴン族

ATK 3000

 

「今, 顕現せよ。()()()()()()()()()()!」

弾丸ではなく, 交差する光と闇が象るサーキット。

 

「アローヘッド確認。召喚条件は, 効果モンスター4体以上。ただし, このモンスターのリンク召喚では, 相手がコントロールするモンスターも1体までリンク素材とすることができる!」

「!!」

 

「あら…ようやくかしら?」

それまで隣で静観していたクルヌギアスがクスリと妖艶な笑みを浮かべ, 姿を消していく。

 

「俺はカオス・ルーラー, ヴァレルソード, ワイバースター, キャリバー。そしてお前のフィールドの強化された黄金卿エルドリッチをリンクマーカーにセット!」

『フ…混沌の力。大人しく糧になってやろう』

黄金卿の周囲を, 漆黒の柱が取り囲む。黄金のボディは完全に闇へと呑まれ, そのまま他の4体と共にリンクマーカーへと飛来する光線となった。

 

「サーキット・コンバイン!」

普段とは違う, 混沌の場(カオス・フィールド)の如く青白い光が眩くフィールドに照射される。光柱の内から四方に現れる, 闇の閃光。

 

「陰陽交わる(とこしえ)の冥闇に彷徨う光よ。万象を無に還し, 終焉の(さきがけ)となれ!リンク召喚!」

 

 

「《閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)》!」

 

 

光を腕の一振りで払い除け, フィールドに歩み出るは流麗の女神。

闇でありながら, 光でもある。右手に掲げた杖は, 白と黒の雷鳴で纏われている。そして━彼女の背後に佇む, 影の如く暗い龍。その軌道は『(むげんだい)』を描き, フィールド全体に重い瘴気を放っている。

 

閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)

リンク5(上・右上・右・右下・下)/光/悪魔族

ATK 3000

 

「ふふ, 久しぶりね。こんな形で出るのは」

クルヌギアスは微笑を浮かべる。表情こそ柔和だが, フィールドを覆うエネルギーは, 重力そのものよりも一層身体を重く感じさせている。彼女の持つ強大な力が周囲に伝播しているのだ。

 

「さて…黄金卿。純粋な攻撃力では私の方が上。覚悟は?」

『笑止。冥神よ, 貴様がここで我を破ろうとも, 我は不死鳥の如く蘇るのみ』

「それはどうかしら?」

『何?』

 

「手札から速攻魔法, 《墓穴の使命者》を発動!すでに墓地にある黄金卿エルドリッチを除外。次のターンの終わりまで, 黄金卿の効果を無効にする!」

「今になって, それは聞いてない…!」

或真は予想外に予想外を当てられたかのように, 仰天した表情だ。それもそうか。俺が黄金卿の効果をもっと早く理解していれば, 前のターンで除外できていたはず。

ともかく, 少なくともこれで次のターンに黄金卿が自身の効果で蘇ることはない。

 

「バトルだ。クルヌギアスの攻撃!」

クルヌギアスは, 周囲を廻る影のドラゴンを上空に送り, 天に目掛けて杖を掲げる。ドラゴンが混沌のエネルギーを自身の身体に纏わせ, それがクルヌギアスの杖先へと流れると, 銀河の如く大きな白と黒の渦が形成された。

 

「『虚無光断波(ヴォイド・コンクルージョン)』!」

「ハァッ!」

 

終局をもたらす, 光と闇の螺旋。黄金卿は両腕で壁を作り, それを食い止めようと耐えるが, 次第に押し負けて光に呑み込まれていく。

『小癪…!』

 

「墓地に送られたワイバースターの効果により, デッキから2枚目のコラプサーペントが手札に来る。カードを1枚伏せて, 俺はターンエンド」

「…なら, エンドフェイズ。《永久に輝けし黄金郷》の効果でリリースしたコンキスタドールを除外。デッキから《紅き血染めのエルドリクシル》をセット」

 

TURN 5

手札: 1

フィールド:

閉ザサレシ世界ノ冥神

伏せ1

 

或真:

手札:0

フィールド:

黄金郷のガーディアン

呪われしエルドランド

伏せ1(紅き血染めのエルドリクシル)

 

次々と迫り来る罠の妨害, そして黄金卿を乗り越えたわけだが…

「やるね。ここまで押されたのはしばらくぶりだ」

或真は依然としてほくそ笑んでいる。なぜ…?まだ何か隠し持っているというのか。

一気に形勢逆転されてフィールドをほぼ空地にされ, 挙句エースの能力を封じられている状況だ。ガーディアンは戦力にならない。そして手札はわずか1枚。仮にエルドランドやエルドリクシルの墓地効果を使って罠を補充したとしても, 罠カードの性質上, 直ちにアクションを起こすことはできないはず。

そして黄金卿の攻撃力は2500。クルヌギアスは3000。どう足掻いても, このターンでは…

 

「…決着がつかない, と考えた顔だね?」

「何?」

「残念だけど…このターンで終わるよ!《紅き血染めのエルドリクシル》で墓地の黄金卿を特殊召喚!」

三度現れる, 不死の王。

 

黄金卿エルドリッチ

星10/光/アンデット族

ATK 2500

 

「バトル!黄金卿で, 冥神に攻撃!」

「何?!」

もっとも愚かな行動に見えた。攻撃力の劣るモンスターで攻撃など。だが━その真相はすぐに明らかになった。

 

「ダメージステップ時, 手札の《オネスト》を発動!自分の光属性モンスターが戦闘を行うとき, 手札からこのカードを捨て, 相手モンスターの攻撃力を自分の光属性モンスターに加えさせる!」

「…嘘だろ?!」

 

黄金卿エルドリッチ

ATK 2500 → 5500

 

『少年よ…惜しかったな。我が一撃での敗北に咽び喜ぶがいい』

 

増幅した光のエネルギーを浴びた黄金の杭が, 自分の周りに突き刺さる。それを受け, 身体が後方に吹っ飛んでいった。

「く…そ…!」

 

源 LP 1250 → 0

 

 

負けた, か。決闘(デュエル)終了の効果音と共に立体映像(ソリッドビジョン)が解除されていくが, クルヌギアスと黄金卿は消えずにそのまま立っていた。或真が俺の方に走り寄り, 倒れた俺に手を差し伸べた。

 

「いい決闘(デュエル)だったよ。やっぱり, 君は良いデュエルセンスを持ってる」

或真の手を取り, 身を起こす。クルヌギアスと黄金卿が横から俺達を眺めている。俺はクルヌギアスに振り向いて, ため息を吐いた。

「すまん。俺には上手く扱えなかった」

「初めてにしては上出来よ。気にしてないわ」

クルヌギアスは気に留めない様子で答えた。

「あとは経験だな。今の調子で数をこなしていけば, 自ずと実力はついてくるさ」

或真が俺の肩をポンと叩く。経験, か。そうか━収容所の中で勝ち続けたことで, 一つなかったことがある。それは, 『学び』。 失敗するから見えることもある, ということ。

 

「さて, 時間的にもちょうどいいし。街に出るとしようか!」

或真が腕時計を一瞥して高らかに宣言する。

「レストランとか色んなお店とか見せてあげるよ。あと, カードショップも見に行こうか!車を出してくるよ」

そう言って或真はフラットハウス横のガレージへと走っていった。俺, クルヌギアス, そして黄金卿が残された。

 

そういえば, と。思い出した。俺は二人に, ある問いを投げかけた。

「クルヌギアス, 黄金卿。聞きたいことがある」

「何かしら?」

『何だ, 少年』

二人の精霊は俺を見た。

 

「黄金卿が言っていたけど…クルヌギアス。『新たな主』って, どういうことだ?」

他愛のない問いだった。ふと, 思い出したから軽い気持ちで聞いてみただけだった。だが, 二人の精霊はどういう訳か。しばらくの間, 無言を貫いていた。

クルヌギアスも, 黄金卿も, 何か言いたげな表情を浮かべつつも何も言ってこなかった。

 

「二人とも?」

「…ん。ええ, 源。どうしたの?」

クルヌギアスが微笑みを浮かべてこちらに振り向いたが, 明らかに上の空な返答だった。いつも落ち着いていて周到な彼女がこうなるのは, 何かがおかしい。

あたかも…質問を初めから聞いていなかったかのような態度だ。いや, 反応は確かにあった。聞いていないのではない。

 

答えたくないのだ。

 

「いや, 何でもない」

そう呟いた矢先, 或真のSUVが玄関前に走ってきた。

「そう」

クルヌギアスは背を向けて, 車へと歩いていった。俺もついて行こうと足を一歩前に出した矢先, 黄金卿が口を開いた。

 

 

『じきに分かるだろう, 少年…じきに, な』

 

 

 

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