遊戯王 Bitten Bullet   作:じぇね

16 / 24
ダイノルフィア・フェイスオフ

━2週間後

━01:43AM

 

「ハァ…スッキリした」

新たな生活に慣れること, はや2週間。

街でダイノルフィア, クシャトリラとの邂逅以来, 或真の薦めで外出を控えてインドア生活を送っていた。その間, 或真とクルヌギアスの手助けを経て, 新たな技術を学びつつあった。

何十回, 何百回もの対戦を経てデュエル・タクティクスを広め, その傍らでリバティ中を走るネットワークの扱い方, プログラム解読の基本などを会得した。

収容所での日々と比べると, 比べようのない濃密な毎日だ。日々, 新しい何かを学習することへの楽しみが芽生えた。

 

シャワーから出て, 衣を纏いリビングに戻る。

或真は自室に篭って, 何やら重要な作業を続けているようだ。普段, ソファーに寝そべっている黄金卿の姿も消えている。

キッチンに回り, 冷蔵庫から烏龍茶のボトルを取ってグラスに入れる。冷たい茶を飲んで喉を潤した。風呂上がりの冷たい飲み物は本当に心地いい。

 

そばの窓に寄り, カーテンをずらして外を覗く。今日は猛吹雪だ。

普段はよく見える目前の道が, 雪と暴風によって霧の如く覆われて不明瞭だ。街灯の光も朧げな白い点にしか見えない。

 

「源。まだ起きてたの?」

背後から声がして振り向くと, クルヌギアスがカウンターの向かい側に立っていた。

「ああ」

「或真くんみたいに夜更かしするようになっちゃって…まぁ, 構わないけど」

混沌の美神はクスリと微笑む。

「この後は?まだ寝ないでしょう?」

「さっきの続きをやる。或真に渡されたプログラムの本を読む」

「あら, またお勉強?シャワーに入る前も, ずっとやっていたのに」

「折角お前達に色々教わっているんだ。やれることを増やしていかないとな」

俺は茶を飲み干し, 窓際から離れてグラスをシンクの中に置いた。

 

そう, デュエル・ギャングの件もある。が━俺は当初の目的を忘れてはいない。

自分の記憶喪失, そして収容所に入れられた理由。

その答えを得るためには, 更なる知識と経験を積まなければならない。だから日々, できることを広げるしかないのだ。

 

「そういう真面目なところも, 彼女に似たのね…」

「え?」

シンクの水を流している間, クルヌギアスが何か呟いた気がした。

「何か言ったか?」

「いえ, 何も。気にしないで」

「…そうか」

 

俺は洗い終えたグラスをタオルで拭き取り, 逆さまにしてカウンターに置いた。

「じゃあ, 部屋に戻るぞ」

「ええ」

リビングの照明を落とそうと, スイッチに手を触れた途端。ピロロロロ, という電子音が部屋に響いた。

 

「この時間に電話?私が出るわ」

クルヌギアスが, テレビの隣に置かれた受話器を手に取る。

「はい, もしもし…」

クルヌギアスが耳に受話器を当てて10秒ほどすると, それまで穏やかだった彼女の顔色が一変, 深刻そうな真顔になった。すると, 俺の方を向いて受話器を差し出す。

 

「源。貴方宛てよ」

「俺…?」

 

俺宛ての電話。一体, 誰が…?

恐る恐る受話器を取り, 耳に近づける。

 

「はい」

『おっ!テメェが例の弾間って野郎か?』

 

この声。どこかで…

咄嗟に思い出した。張りのある女性の声。忘れるはずがない…あの時, 屋上で出会した。

 

「…ダイノルフィアか?」

『ハッ, 覚えてたか!まぁ, 忘れるわけねぇよな!アタシはケントレギナ, ダイノルフィアの頭だ。よろしく頼むぜ?』

 

舌打ちしつつ, 戦慄した。

こいつ, どうやって或真の連絡先を…?

それより, なぜ或真の所に俺がいるのを知っている?

 

電話を握る右手の汗が滲み, 微かに震え始める。が, こういう時こそ取り乱してはならない。

 

『さて, 弾間。いや, ファーストネームが好みか?どうだっていい。こうしてアタシが電話を飛ばしてる時点でお気づきだろうが, テメェの居場所は突き止めてある』

「そのようだな」

『あん?やけに冷静だな。もうちょい, ビビると思ったんだが…』

フン, と少し不機嫌そうに唸ってから, ケントレギナは続けた。

『此間, アンタがクシャトリラの連中を撒いてるとこを見た。殴り合ってるのもな』

 

驚くことじゃない。西地区はこいつらの縄張りだしな。

 

「そうか」

『ああ。人様の庭にノコノコ入って来た野郎共に一発喰らわせたのは見てて爽快だった。いい根性してんじゃねえか』

「ただの正当防衛だ」

『ハハハ!脱獄者と聞いてたから, 腰抜けだと思ったが…気に入った。だから, チャンスをやる』

「チャンスか。随分と上から目線だな」

『ったり()ぇだ!ここはアタシの縄張り(テリトリー)よ。とにかく, 話はこうだ…アタシの所に来い』

「お前の所, だと?」

『そうだ。場所は旧プライマル・インダストリーズ社ビル。繁華街に行きゃ, すぐにわかるぜ…テメェん所からは歩いて15分, といったところか?』

 

俺は受話器を耳につけたまま, クルヌギアスを見る。彼女にも会話内容は聞こえていたらしく, プロジェクターを起動して地図を表示させた。

プライマル・インダストリーズ…繁華街の中央にある建物か。確かに, ケントレギナの言う通り。吹雪を考慮しても徒歩15分か。

 

「聞くが」

『あん?』

「俺を狙うような連中の元に, おめおめと俺が行くと思ってるのか」

『立場を考えな?アタシが今すぐテメェん所に来てやってもいいぐらいだ。何なら, 治安維持課に通報するのだって簡単だぜ?』

 

そういう寸法か。

俗に言う, 八方塞がりとはこのことか。逃げ場が完全に無くなった。

 

「で, 俺が来たらどうするつもりだ」

『アタシと決闘(デュエル)だ。1対1, 真剣勝負だ』

「ハッ。俺が勝ったら勝ったで, 何か他に考えてるんだろう?」

『ハハハ!そんなセコいことはしねぇ。テメェが勝ったら, 話を聞いてやる。これは保障するぜ』

 

「話を聞いてやる」か。全く釣り合わない条件だが, 俺に選択肢があるわけでもない。

ここ2週間, ずっと潜伏していたわけだ。息を潜めて, 状況を静観していた。

 

だが, 狙われている以上。 逃れ続けることなどできない。分かり切っていたことだ。

ならば, 進むべき道は一つ。

 

━戦うしかない。

 

「いつまでに行けばいい」

『日が昇るまでだ。それまでに姿が見えなかったら…挨拶しに行くぜ』

「わかった。今すぐ向かう」

『いい答えだ。待ってるぜ』

 

ガチャン, という音と共に通話が途切れる。受話器をゆっくりと元の位置に戻し, しばらく触れたままでいた。

戦いの時とは, こうも前触れなくやってくるものか。無論, 戦わねばならないという事実は意識してきたつもりだ。そのつもりなのに…電話を握る右手の震えが徐々に増してくる。

背筋にも汗が流れ始め, 両足が脱力したかのように竦む。

「戦う」という事実と直面することの重さが, 改めて身体中にのしかかるような気分だった。

 

━負けたら, どうする。

 

思えば, この2週間。或真やクルヌギアスとタクティクスを学ぶ傍らで何度か対局したのだが。負けっぱなしだった。

収容所で連戦連勝を重ねてきた自分にとって, 敗北の連続は応えた。慣れない感覚だし, どうにもできない無力感がついてくる。

だが, それは所詮練習試合での負けだ。次に活かす教訓として, 頭に入れておけばいい。

 

だが, 戦いでの敗北が意味すること。事実上の「終わり」だ。

その「終わり」の先にあるものは, 自分にはわからない。

未知だからこそ, 恐ろしいのだ。

 

━何だ, この恐怖感は…?俺は, 戦うと決めた, はず…?

 

「源」

俯く俺に, 白い手が優しく触れる。

「…クルヌギアス」

「源。怖いの?」

嘆息して, 俺の精霊の顔に振り向く。クルヌギアスの表情は, いたって真面目なものだった。

 

「どうして怖いの?」

「…わからない。俺は…勝てるのか?」

「勝てる。貴方は絶対に負けない」

クルヌギアスは確信をもってはっきりとそう返した。

「貴方もそう思わないとダメ。負けるかもしれないと思うから, 人は本当に負けるのよ」

「それは…」

 

収容所でAと対峙した時も, 彼女が放った言葉だ。

「恐れを捨てなさい」と。

 

「これから貴方は自分より強い敵にしか出会わない。それは貴方もわかるはず」

「…そうだな」

「立ち止まることも, 逃げることもできない。自分を守るためにできることは一つ。戦うことだけ。なら━」

 

 

 

「━敵は, 絶対に倒す。何が何でも。そう…それが, 貴方の抱くべき信念よ」

 

 

 

「………」

クルヌギアスの眼。虚ろな紅色が━燃えている。

 

俯くのはやめた。

俺は受話器から手をさっさと離し, リビングを出て階段を駆け上がる。

部屋に入り, 必要な物を全て取る━デッキ, ディスクをリュックに入れる。

コートを纏い, 再び下に降りるとクルヌギアスが普段通り, 微笑を浮かべながら待っていた。

 

「忘れ物はない?」

「ない。行くぞ」

 

玄関のドアを開き, 俺とクルヌギアスは雪の嵐の中へと入っていく。

激しく揺らぐ白い渦は, これからの戦いの予兆であるかのようだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

━02:09 AM

━旧プライマル・インダストリーズ社ビル

 

人気のない, 雪に埋もれた繁華街を抜けた先に目的地は佇んでいた。周囲の高層ビルとさほど変わらぬ, 灰色で目立たない建物だ。

『プライマル・インダストリーズ』という文字が, 入口の真上に刻まれている。が, 相当な年数が経過しているのか塗装が剥がれ ,消えかかっている。

 

「プライマル・インダストリーズねぇ…」

クルヌギアスが妙に感心したような声を上げる。

「知ってるのか」

「ええ。長年, 西地区一帯の開発事業を行なっていた会社だけど…半年前, 結社(コーポ)に買収されたわ」

「なぜ結社(コーポ)はそんなことを?」

結社(コーポ)の計画と衝突したから。それで結社(コーポ)に強引に乗っ取られたの。敵対的買収って言うのかしら?」

「なるほどな…」

「ええ。ともかく, 中に入りましょう」

 

今にも勢いを増す雪風から逃げるように, 自動ドアを潜り抜けてビル内に入った。

ロビーは閑散としていた。かつて存在した会社のオフィスは当然ながら無人で, どこか寂しさを感じさせる。

 

「さて…連中はどこだ?」

そう呟いた須臾, ピーッ, という甲高い効果音が部屋に響くと共に, マイクの雑音がザワザワを聞こえ始めた。

 

『よぉ!よく来たな!アタシ達の根城に歓迎するぜ』

 

ビル内のアナウンスを通じて語りかけてくる声の主は, まごう事なきダイノルフィアの首領, ケントレギナだった。

 

『エレベーターを寄越してやる。13階まで上がってきな』

 

ケントレギナの声が途切れると共に, 右側から光が漏れ出る。振り向けば, 2つあるエレベーターのうち1つが開いていた。

俺とクルヌギアスは何も言わずに乗り, 13階のボタンを押した。ドアが閉じ, 身体が少し浮く感覚が訪れる。

 

「源。大丈夫?」

 

クルヌギアスが聞いた。俺はドアに顔を向けたまま答えた。

 

「大丈夫だ」

「そう」

 

短い会話だったが, それだけで彼女は理解してくれた。

実際, 恐れが完全に無くなったわけじゃない。ポケットに突っ込んだ両手の手汗は止まるところを知らない。足も若干震えている。

 

 

だが, 準備はできている。

 

 

ドアが開く。

開いた先の空間は広く━オフィスを想像していただけに, 驚いた。

ドーム状の構造で, ガラス張りの天井には所々雪が積もっている。荒ぶる雪の旋風が窓越しに鮮明に映る。

 

そして, 正面。部屋の照明が当たっている場所は, 紛れもない━収容所で何度も見たのと同じ, デュエルフィールドだった。

オフィスビルの内部にこんな構造があったとは思いもしなかった。

 

「ついに主役のお出ましかァ!待ちくたびれたぜ, 弾間 源!」

 

フィールドの中央に立つ, 長身で短髪の女性━以前と同じパワードスーツを纏った, 西地区の支配者。ケントレギナ。

彼女の隣には, 1人の男性と女性が立っていた。白い, ギザギザした髪の男性と, 茶髪の女性。彼らがケントレギナの配下だろう。

俺とクルヌギアスはフィールドの壇上に立ち, ダイノルフィア達と直面する。

 

「こうして面に向かって話すのは初めてだな。改めて…アタシはケントレギナ。こっちの野郎はディプロス。カワイイのはテリジアだ」

「フン」

「よろしくね」

ディプロスという男は軽く鼻笑いし, テリジアといった女は手を振って見せた。

 

「…3人だけか」

「あん?」

「ダイノルフィア…デュエル・ギャングと聞けば, もっと下っ端を従えている印象だったんだがな」

「下っ端?いらねぇな。アタシ達は3人で十分だ。少数精鋭ってヤツよ。頭数の少なさは, パワーと知恵でどうにでもなるからな!」

ケントレギナは歯を剥き出しにして笑い, 高らかにそう伝えた。

「もっとも…テメェを倒すのには, アタシ一人で十分だしな!」

 

ケントレギナの気迫と自信には, 目を見張るものがある。

そう思う傍らで, 俺はディスクとデッキを取り出した。

 

「始める前に, 聞きたいことがある」

「いいぜ, 何だ」

ケントレギナが腕組みする。

「結局, この決闘(デュエル)の意図は何だ。お前の気まぐれか?」

「気まぐれ?そいつは違うな。これはアタシ…いや, アタシ達の本能だからだ」

「本能…?」

 

ケントレギナは, パワードスーツの後部に付いていた, 機械的な尻尾を動かしてみせる。

 

「これは機械じゃねえ。アタシの身体の一部だ。アタシ達は人間とよく勘違いされるが, それは大間違いだ。恐竜人(ディノサウロイド)っていう種族だ」

「ディノサウロイド…?」

「テメェらの惑星にも, 恐竜はいただろ?奴らは隕石が落っこちて絶滅した。精霊界でもそう, 恐竜種は息絶えた…一部を除いてな。その僅かな生き残りの子孫がアタシ達だ」

「人型でありながら, 本質は恐竜というわけか…」

 

ケントレギナは頷き, 背後に立っていたクルヌギアスを勢いよく指差す。

「テメェの連れている, そこの黒ドレスと似たようなモンだ。ガワは人間でも中身は違う」

俺はクルヌギアスに振り向く。クルヌギアスは首を傾げる。

「あら, もう当たり前だと思ったのだけど。私, 悪魔族だし?」

「…確かにな」

 

「そういうことだ。アタシ達の先祖は弱肉強食の世界, そして絶滅後の過酷な世界を生き延びるため…死に物狂いで闘ってきた」

ケントレギナが両腕を震え上がらせる。

「その精神が, 今のアタシ達にも刻まれている!生存競争。この西地区を守ることも, 他の連中も潰すことも全ては生存のための闘いだ。限界の闘い。そういう闘いの中で, アタシ達は輝くのさ!」

そう叫ぶと, 彼女は左腕のブレードを構え, 見慣れた形状━決闘盤(デュエル・ディスク)に変形させる。そして, 右手にカードの束を出現させ, ブレードにセットした。

 

「つーわけで, テメェにもサバイバル・チャンスを与えてやる。テメェにとって, この闘いは…紛うことなき『生存競争』だろ?」

俺も同様にディスクを構え, 起動させる。その通りだ。

 

「なら, アタシと闘え。限界の闘いを, アタシに味わせろ!」

「…なら, 望むまでだ」

「かかってきな!」

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

源 LP 8000

ケントレギナ LP 8000

 

「アタシの先攻!《魂喰いオヴィラプター》, 召喚!」

背中全体が青い炎に包まれた, 頭部の赤いトサカが特徴的な恐竜が走り出る。

 

魂喰いオヴィラプター

星4/闇/恐竜族

ATK 1800

 

「オヴィラプターの召喚に成功した時, デッキから恐竜族モンスターを手札に加えることができるぜ!アタシはこれで…」

「させない。手札から《エフェクト・ヴェーラー》を墓地に送り, 効果発動!相手の効果モンスターの効果を, ターンの終わりまで無効化する」

「…チッ。やるじゃねえか!なら, カードを3枚伏せて, ターンエンドだ!」

 

随分と大人しいスタートだ。オヴィラプターの効果で何を手札に加えようとしたのかは知らないが…ヴェーラーのお陰で, 更なる展開を防げたのか。

或真に教わったことの一つだ。こういった効果は無効にするのが幸だと。

だが…伏せが3枚か。

 

「俺のターン, ドロー!儀式魔法, 《ヘヴィ・トリガー》発動!手札からレベル8の《螺旋竜バルジ》を墓地に送り…儀式召喚!降臨せよ, 反骨の引き金にして, 騒乱を巻き起こす竜!」

収容所以来の活躍だ。頼むぞ, ライオット。

 

「《ヴァレルロード・R(ライオット)・ドラゴン》!」

 

溢れんばかりの電撃を周囲に放出しながら, スラスターを点火させる蒼き装甲の竜。

 

ヴァレルロード・R(ライオット)・ドラゴン

星8/闇/ドラゴン族

ATK 3000

 

「初っ端からデカいのがお出ましか!」

「ヘヴィ・トリガーの効果で儀式召喚されたライオットは, EXデッキから特殊召喚されたモンスター同士での戦闘では破壊されず, その効果も受け付けない」

「耐性付きの攻撃力3000か。悪くねぇな」

 

ケントレギナは余裕めいた表情で俺の様子を窺っている。

「チューナーモンスター, 《ヴァレット・トレーサー》召喚!」

 

ヴァレット・トレーサー

星4/闇/ドラゴン族・チューナー

ATK 1600

 

「更に墓地の《螺旋竜バルジ》は, フィールドに光・闇属性のドラゴン族が2体以上いる場合に特殊召喚できる!」

 

螺旋竜バルジ

星8/闇/ドラゴン族

ATK 2500

 

「現れよ, 未来を切り拓くサーキット!ヴァレット・トレーサー1体をリンクマーカーにセット, リンク召喚!《ストライカー・ドラゴン》!」

 

ストライカー・ドラゴン

リンク1(左)/闇/ドラゴン族

ATK 1000

 

「ストライカーの効果で, デッキから《リボルブート・セクター》を手札に…そして, ドラゴン族・闇属性モンスターの特殊召喚に成功したことにより, 《ノクトビジョン・ドラゴン》を手札から特殊召喚!」

 

ノクトビジョン・ドラゴン

星7/闇/ドラゴン族

DEF 2800

 

「ノクトビジョン, ストライカーの2体をリンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク2!《デリンジャラス・ドラゴン》!」

 

デリンジャラス・ドラゴン

リンク2(上・下)/闇/ドラゴン族

ATK 1600

 

「ノクトビジョンがリンク素材となったことで, カードを1枚ドロー」

ここまでは普段の流れとは変わらない…が, これ以上展開を伸ばすことは出来なそうだ。

ならば, 攻めるのみ。

 

「バトルフェイズ!バルジで, オヴィラプターに攻撃!」

螺旋竜が纏う銀河の口部から光線が放たれ, 恐竜のモンスターを光に包んで消滅させる。

 

「ちい!」

ケントレギナ LP 8000 → 7300

 

「続けてデリンジャラスの攻撃!」

「ぐっ!」

ケントレギナ LP 7300 → 5700

 

「ライオットの攻撃。『奔雷のヴァレル・ブレイク』!」

ライオットが電撃を右腕に集中させ, スラスターで急接近して強烈な一撃をケントレギナに浴びせる。

「ぐううう!!」

 

ケントレギナ LP 5700 → 2700

 

「カードを1枚伏せて, ターンエンド」

 

TURN 2

手札: 1

フィールド:

デリンジャラス・ドラゴン(EXモンスターゾーン)

ヴァレルロード・R(ライオット)・ドラゴン

螺旋竜バルジ

 

ケントレギナ

手札: 1

フィールド:

伏せ3

 

おかしい。カードを3枚も伏せているのに, 全ての攻撃が通っている。

手札事故でないとすれば, 或真のエルドリッチのようなコントロールデッキ…に近いものと推測される。が, 或真ならば攻撃を1度たりとも通さないはずだ。

それに, 俺の特殊召喚にも反応しなかった…一体, 何を目論んでいる。

 

「ハハハ…いいね, いいねぇ!容赦ない攻め方, アタシは嫌いじゃないぜ!」

ケントレギナがライオットの一撃から体勢を持ち直して大声で言う。

「様子見はこの辺で切り上げだ。アタシのターン, ドロー!」

 

ケントレギナは, ライオットに指差す。

「そいつ…ライオット。特殊召喚を無効化する効果を持ってるな?」

「そうだ」

「そうか。だったら, こいつだ!《心変わり》!」

「何?!」

 

謎の超音波に惑わされ, ライオットが苦しみの咆哮を上げる。すると, 空高く飛び上がって, 対面の着地した。

目の色が赤色に変わり, 俺に銃口を向ける。

 

「エンドフェイズまで, ライオットはアタシのモンスターになる」

「クソが…!」

 

ケントレギナの眼光が変わった。

それまではどこか落ち着いていて, 冷静に状況を見極めるかのような虎視眈々としたものだった。が, 今は違う。

その激しい眼は…狩りの獲物に飛びかからんとする, 肉食獣の如き勢いだ。

 

「だが, 本命はこれだ。見せてやる…限界の闘い, その真価をなぁ!トラップ発動!《ダイノルフィア・フレンジー》!」

トラップカードが開いた瞬間, ケントレギナのスーツが赤く光りだし, 熱を放出するかの如く蒸気がどっと湧き上がる。そして, 同時に彼女を纏っていた覇気が一層増す。

 

「ぐううううう…!」

ケントレギナ LP 2700 → 1350

 

「…自らのライフを半減させた?」

ケントレギナは痛みに耐えるような形相を浮かべながらも, ニッと大笑いしてみせる。

「ハハハ!そうさ。このカードは, ライフを半分払って発動される!アタシはデッキから《ダイノルフィア・ディプロス》, そしてEXデッキの《ダイノルフィア・ステルスべギア》を墓地に送り…融合モンスターを特殊召喚する!」

「…デッキとEXデッキのモンスターを素材に融合召喚だと?!」

 

罠カードから放たれたエネルギーが地面を貫く。

途端, 地面が割れ, 中から巨大な機械的な構造が姿を現す。

 

「大地を闊歩せし暴君の(Rex)!絶大なる力を以て, 立ちはだかる全てを終わらせろ!融合召喚!」

 

機械の全貌が明らかになる。黒いボディに, 羽根のように背中から突出した2本の巨大なロケット・スラスターが火を吹く。

二足の巨大な脚は, フィールドを押し潰すような圧を出し, 地面を震撼させた。

 

まさに━機械の暴君王。かつて, 地球上に君臨した恐竜種の頂点。

 

「《ダイノルフィア・レクスターム》!」

 

ダイノルフィア・レクスターム

星8/闇/恐竜族

ATK 3000

 

その威迫に, 俺はただ立ち尽くして見つめることしかできなかった。

 

━間違いない。これが, 奴のエースモンスター…!

 

 

恐竜の時代。ティラノサウルス━その巨体の前では, 全ての動物は獲物に過ぎないと言われていた。

 

そして━現代に蘇りしティラノサウルスの権化。レクスターム。その身体は機械でも, その目を見ればすぐに判る。

肉食獣としての本質は未だ根強く残っている━獲物を逃さない, 無慈悲で獰猛な本質。

 

俺は, 獲物だった。そして獲物は食われる運命にある。

 

 

「さぁ, 狩りの時間だぜ…準備はいいか?弾間 源!」

 

ケントレギナの猛攻は, まだ始まったばかりだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。