寒い。
冷たい。
氷のような冷たさが肌に染みる。
━夢, か?
目を恐る恐る開いてみると, 薄暗い橙色が揺れる。
四肢の感覚が段々蘇ってくる。胸や足は冷たいが…橙色の近くにあった両手は暖かい。
両手をゆっくりと上げて, 頬にぺたりとくっつける。
ひんやりとした頬は, 固くなっていた。
━夢じゃ, ない。
身に被さっているモノ。この厚さと色…俺のコート。
自分で被せた覚えはない, が…
炎を宿したストーブで, ほのかに照らされる部屋。
机の列に, 上に山積みされた書類の山やパソコン機器。
…ひどく荒れている。窓ガラスは全て叩き割られたように砕け散っており, 壁の処処に穴が空いている。
まさに廃居。
身を起こす。背中が痛む━でも, 歩ける。
部屋を見渡す。気配は, ない。
どこだ, 皆は。
「…クルヌギアス?或真?」
返事がない。
橋…そうか。あの橋から落ちて━
その後の記憶が全く無い。最後に見えたのは, 壊れゆく橋━
まだ, 或真も黄金卿も, そしてクルヌギアスもあの上に居た。
━探さないと。
幸い, 手がかりはある。
クルヌギアスが言っていたことを思い出す。
俺がクルヌギアスのカードを持つ限り, その形跡を頼りに, 彼女は俺の居場所を見つけられる。
…何も, 案じることはない。カードなら, 手元にいつも━
いつも━
腰のベルトに手を当てるが, 手はズボンの生地に触れるだけだった。
━馬鹿な。
あり得ない。そんなことがあり得るわけが。
コートを退けてズボンのベルトを見る。
━デッキが, 無い。
立ち上がって, 周囲の地面を見渡す。
どこかに落ちているのか, 部屋のどこかに。
ストーブの周り, 狭いオフィスの周りを隅々まで見た, 何回も, 何回も。
何年も使われてないであろう机の中など, ありもしない場所も漁って。
気づけば, 背負っていたリュックも無くなっている。つまり…ディスクも失ったというわけか。それだけではない, 生活必需品もそれなりに積んでいた。
━終わった。
一筋の希望が潰えた。そして, どうしようもない絶望が訪れる。
全身が震える。
心の一部がポッカリ空いたかのような, 虚な感覚━
デッキを持たぬ
それは━武器を持たぬ戦士。戦うことができない戦士。
「…サベージ。クルヌギアス…」
すまない。お前達だけは, 絶対に手放さないと約束したのに。
いや, 仕方ない。あんな状況だったら, 生きてる方が━違う。もっと強ければ, クシャトリラと戦う力があれば━
頭が破裂しそうだ。
全身の血管がブチ切れそうな, 滾る勢い━
「ああああああ!!!」
目の前のデスクを思いっきり蹴飛ばす。重いデスクがびくともせず, むしろ俺の脚への衝撃が大きかった。
「痛ッてえなぁ…バカ野郎!」
もっと苛立つ。デスクの上の書類やパソコンを, 片っ端から投げ飛ばす。
気が済まない。全部, 壊したい。とにかく壊したい━
━ん。
落ちた紙と共に, 煌く何かが床に落ちた。
暴れるのをやめ, 床に視線を落とす。
「…カード…?」
1枚のカードが書類と共に落ちていた。それを拾って見る。
《ツインバレル・ドラゴン》
星4/闇/機械族
ATK 1700/DEF 200
「………」
知らないカードだ。少し垢を被っている…ここに長らく放置されていたのだろう。
2門の銃口を構える機械のモンスターを見た俺は, 何か哀愁感のようなものを感じた。
どことなく, 俺と苦楽を共にした
深呼吸し, 冷静さを取り戻す。
「…他にも, 探してみよう」
俺は《ツインバレル・ドラゴン》のカードをポケットに仕舞い, 改めて部屋のデスクや箪笥を片っ端から漁り始めた。
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「…豊作だな」
ストーブの前の地べたに座り込み, 集めたカードを床に広げた。
知らないカードが大半だが, 効果や使い方は一通り理解できた。隣の部屋等も漁り, 発見したその数, 52枚━突貫工事としては上出来だ。
そして, 一番の収穫━
このディスクは見覚えがある。或真達と初めて西地区の街に出た時に, 俺に絡んだクシャトリラの雑兵共が装着していたモデルだ。
クシャトリラ特有の赤いペイントに, 鋭い刃のようなプレート部分。箱の中に綺麗に収納されていた, 新品同然のディスクだ。
インターフェースを起動させる。しばらく弄ってみて気づいたことだが, どうやらこの
位置を確認すれば…今, 俺は「エリア6」なる場所にいるらしい。「脅威レベル: C-」と表示されているが, 何を表しているかはよくわからない。
時刻は午後8時らしい━あの橋に到達したのが午前8時だったから, 12時間以上は経過している。
まぁ, いい。何にせよ, 必要最低限のモノは揃った。
カードの束をよくシャッフルし, ディスクにセットする。そして立ち上がる。
当面の目標は定まった。
状況を把握し, 仲間達を探し出す。
━待ってろ, 或真。クルヌギアス…必ず, 探し出す。
部屋の外に出て, 暗い廊下を通る。エレベーターは当然機能していなかったから, 階段で下に降りた。
…しかし, 人気のないビルだ。まるで, 何かが起きて人々が急いで去ったような…
正面玄関のドア前に立った途端, ディスクが何か雑音を発していた。
…ガー…ガー
インターフェース画面を見ると, "HQ INCOMING TRANSMISSION"とある。
通信か, 何事だ?
画面をタップし, 音声を聞く。
「…リア6付近の部隊に次ぐ。当エリアで
通信と共に, 地図が表示される。円で囲まれたエリアが表示される…おそらく, クシャトリラの奴らが捜索しているスピリット, 即ち精霊がいると思しき範囲だろう。
精霊となれば, クルヌギアス達の可能性がある。
それに, このディスクを手にしたのは幸運だ…連中の動向が分かるのなら, 幾分か動きやすくなるはずだ。
「…しかし, 顔を見られたら不味いな」
俺はコートのフードを深く被り, 扉を開いた。冬の冷気がどっと身体に触れる。
広い街頭に出た。恐ろしく静かだった━街とはとても思えないほどの。
人は歩いておらず, 車が走る音も聞こえない。道路はろくに除雪されておらず, 止まっていた車に何重にも雪が積もっていて原型を留めていない。
建物にはまるで生気がなく, 電気の一つも付いていない。
「…どうなっている?」
荒廃した街中に困惑する中, エンジン音が左側から唸る。
その音の方向を一瞥した俺は, 反射的に近くの塀の裏に身を隠した。塀の縁から僅かに肩を出し, 近づいてくるエンジン音の主を見る。
サーチライトを照らす赤いペイントの装甲車…そして, それに随伴するクシャトリラ兵が5, 6人。
見るからに, このエリア6の巡察隊の一つだろう。
━何やら話している。聞いてみるか…
俺はクシャトリラ達の会話に耳を傾ける。
「…例の
「ネガティブ。B分隊, C分隊からも報告なし。D分隊とは通信途絶」
「そう遠くは逃げていないはず。ならば……待て。通信だ」
隊員の一人が耳に手を当て, 通信を聞く。
「…了解, 合流する。ブロック4で
「ゴー, ゴー!」
エンジン音が遠ざかっていく…去ったようだ。
コンタクトと言っていた…つまり, 標的を発見したに違いない。
ブロック4の位置をディスクの地図で確認すると, 十分徒歩圏内にある。
「…俺も急がないと」
塀から身を離し, 去っていったクシャトリラ達が雪に埋もれた道路に残した足跡を辿って走る。
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「……チッ。思ったより多い…」
ブロック4と思しき場所の裏路地。俺は巡回しているクシャトリラ達の視線を掻い潜りながら, 状況を窺っていた。
奴らも標的の精霊をまだ発見していない様子だが, 数が多すぎる。自分が見ただけでも軽く2, 30人はいたし, 何なら捜索用ドローンまで使っている。
今思ったが, 連中はよく統制が取れている。兵士達は外面こそ人間に近いが, 命令を遵守し, 無駄のない動きで作業にあたる━まるで, 冷酷な機械だ。
そして, ここに至るまでクシャトリラ兵以外の一般人を一人も目撃していない。街であるのにも関わらず, だ。
活気のある西地区とは大違いだ。この一帯は建物が荒れ, 生活の欠片もない。同じリバティという都市でも, こんなにも歴然とした差があるとは。
違う国に入ったような感じだ。なぜ, これほどに荒廃している?
裏路地が二手に分かれる。
━確か, 右の方に敵が多かったような気がするな。
そう思って角の左側に身体を寄せ, 曲がろうとしたその時。
「何?!」
目にも見えぬ速さで, 何かが胸ぐらを掴む。
反応する暇もなく, 猛烈な力で地面に叩き落とされた。
「ぐわっ!」
衝撃で地面の雪が飛び散り, 少し顔に掛かる。冷たさと痛みが背に伝わる。
目を開けて立ち上がろうとすると, 何か光るモノを首に突き出された。
「な━」
「動くな。動いたらアンタを殺す」
光る鋭利なモノを下目に見ると, それは剣だった。よく見れば, 3本の羽根のガードで彩られた剣。
剣の持ち主は身体を紺のローブで包んでおり, それ以外の服装は見えない。
少女だった。
ツーサイドアップの銀髪の先端は青色で染まっていて, 目つきは鋭い━が, ケントレギナのように, 野獣のような鋭さではない。
何処か, 嫌悪感と哀れみの混じったような, 複雑な目。そして彼女の額には, 小さな
「吐け。私の仲間達をどこにやった!」
少女は俺に詰問する。
「待て。俺はクシャトリラじゃ…」
「とぼけないで!それは何!」
少女は俺の左腕のディスク━クシャトリラ製のディスクを睨みつける。鋭利な剣先をさらに近づけ, 彼女は迫る━今にも喉仏に触れそうな勢いだ。
「クシャ野郎…アンタ達なんて, 一匹残らずこの私が…!」
彼女が呪詛の言葉と共に俺を串刺しにしようとした瞬間, 唐突に動きを止めた。
怒りに溢れていた表情は, 困惑に変わる。
「…アンタ。どうしてここに居るの?」
少女は剣を下ろす。今度は俺が顔を顰める番だった。
「…は?」
「は?じゃないわよ。一人でここに来たわけ?」
「何の話だ…?」
「バカなの?アンタ。さっきまで寝てたじゃない!」
雪を身体から取っ払い, 身を起こした俺は彼女を見る。
どうして彼女が, 俺が眠っていたことを知っているのかが疑問だった…が, 考えるまでもなかった。
━もしや, この少女が俺を…
「
「標的の
背後からクシャトリラの戦士が2人躍り出る。奴らの持つサーチライトの眩しい光が一瞬, 視界を遮る。
「チッ。アンタなんかに構ってるからバレたじゃない!」
「…投げ飛ばしたのはお前だろう」
「決まってるじゃない!ピリピリしてるんだから, こっちは!」
標的の精霊━それがこの少女か。
クルヌギアス達では無かったが…クシャトリラとは敵対しているらしい。
なら, 話が通じそうだ。
「…なぁ。左は俺がやる。右を頼む」
「はぁ?」
新たに入手した
重低音の音声が響く。
"
すると, どうなることか。
相対するクシャトリラの2人のディスクが勝手に起動し, 俺と同様に展開状態になる。
「な, 何だ?!」
「貴様!なぜ我々と同じ━」
なるほど, こう使うのか。クシャトリラの技術は優れたものだ。
俺は二人のクシャトリラに向かって宣言する。
「お前らなら, 知ってるはずだ…挑まれた
「…
少女も剣を仕舞い, 左腕を構える。すると, 水の波動らしきエネルギーが彼女に集い, 青のディスクが顕現する。
「ハッ!思い上るな。人間の
クシャトリラ達もやる気満々だ。いいぞ, これは。
俺はほくそ笑む。
「始めるぞ…」
「「
源 LP 8000
クシャトリラ LP 8000
「私の先攻。チューナーモンスター, 《トラパート》を召喚!」
二つの魔法使いが合体したかのようなマスコット型のモンスターが現れる。
トラパート
星2/闇/戦士族・チューナー
ATK 600
「そして戦士族が場に存在する時, 手札から《キリビ・レディ》を特殊召喚できる!」
頭巾を被った小柄な女性型モンスターが, 両手に持った火打石を叩く。
キリビ・レディ
星1/炎/戦士族
ATK 100
「私はレベル1のキリビ・レディに, レベル2のトラパートをチューニング!」
「ははぁ, シンクロか…もう恋しくなってきたな…」
かつてのエースモンスターを思い返し, 俺は呟く。
「シンクロ召喚!《ゴヨウ・ディフェンダー》!」
ゴヨウ・ディフェンダー
星3/地/戦士族
ATK 1000
「ゴヨウ・ディフェンダーの効果発動!フィールドに存在するモンスターが戦士族・地属性のシンクロモンスターのみの場合, EXデッキから2体目の《ゴヨウ・ディフェンダー》を特殊召喚できる!」
1体目のディフェンダーの隣に, もう1体が現れる。
「さらに2体目の効果を適用!3体目のディフェンダーを召喚!」
一直線に並んだ3体の小柄な戦士が, 盾を構えてこちらを睨んできた。
「カードを2枚伏せて, 私はターンエンド!」
TURN 1
源 LP 8000
手札: 5
クシャトリラ LP 8000
手札: 1
フィールド:
ゴヨウ・ディフェンダー(1)
ゴヨウ・ディフェンダー(2)
ゴヨウ・ディフェンダー(3)
伏せ2
「俺のターン, ドロー」
さて, 新しいデッキだ。デッキと言っても…拾ったカードの寄せ集めだが, 戦える形にはした…試験運転といこう。
「フィールド魔法, 《
両肩にミサイルランチャーを備えた, 蜘蛛型のメカが着地する。
BM-4 ボムスパイダー
星4/闇/機械族
ATK 1400
「ボムスパイダーの効果発動!自分フィールド上の機械族・闇属性モンスターと, 相手フィールド上のカード1枚ずつを選択, その2枚を破壊する!」
ボムスパイダーのランチャーハッチが開き, 内部のスフィア・ボムが明らかになる。
「対象はボムスパイダー自身と, お前の右側の伏せカードだ。『ワイド・デトネーション』!」
ボムスパイダーがランチャーを放つ。自身もを巻き込む爆発で, 伏せカード━『狡猾な落とし穴』が破壊される。
「ハハハ!召喚したモンスターをそのまま破壊するとは, 血迷ったか?」
クシャトリラは愉快そうに笑うが, 無知なのはそっちだ。
「この瞬間, フィールド魔法《
「…何?」
「ボムスパイダーは闇の機械族。よって, 俺は手札からコイツを召喚する。来い, 《ブローバック・ドラゴン》!」
頭部がセミオートの拳銃を模した, 二足歩行の機械竜が現れた。
ブローバック・ドラゴン
星6/闇/機械族
ATK 2300
「さらに!自分フィールドの機械族・闇属性が破壊された時!このモンスターは自身の効果で, 手札から特殊召喚される!来い,
腕に2丁, 頭部に1丁。3丁の
デスペラード・リボルバー・ドラゴン
星8/闇/機械族
ATK 2800
「ここで, ブローバック・ドラゴンの効果発動!『バレット・ロードアップ』!」
ブローバックの頭部のスライドが後方にスライドし, 装填音が鳴る。
「コイントスを3回行い, 2枚以上が表なら対象のカードを破壊する。対象は残り1枚の伏せだ…いくぞ」
ディスクのコイントス機能を発動させると, フィールドにホログラムのコインが空高く投げられる。金属音と共に着地し, 結果を凝視する。
『表』『裏』『表』
「ビンゴ!『ハイパワー・キャリバー』!」
ブローバックの銃口から勢いよく弾丸が発射され, 伏せカードを爆破する。
「くっ…!《デプス・アミュレット》が…!」
これで罠は処理できた。あとは攻撃するのみだ。
「バトルフェイズ!」
「ハハ!無駄だ!ゴヨウ・ディフェンダーは, 他のディフェンダーの数だけ攻撃力を1000上げることができる!貴様のモンスターでは突破できない!」
「無駄なのはそっちの方だ。デスペラードの効果発動!」
デスペラードが3門の銃口を, ゴヨウ・ディフェンダーの列に突きつける。
「デスペラードは3つの銃を持つ…それぞれが発射される確率は1/2。コイントスを3回行い, 表の数だけ…相手モンスターを破壊する!」
「何?!」
コインが投げられ, 着地する。
『表』『表』『表』
「バカな?!あり得ない!」
「ドンピシャだ。やれ, デスペラード!
デスペラードの回転銃が火を吹く━右, 中央, 左, 順次弾丸が発射され, ゴヨウ・ディフェンダーの盾を貫通して爆散させる。
「効果を使用したデスペラードは攻撃できないが,
ブローバック・ドラゴンが突進し, セミオート射撃を浴びせる。
「ぐはっ!!」
クシャトリラ LP 8000 → 5700
「カードを2枚伏せて, ターンエンド」
TURN 2
源 LP 8000
手札: 1
フィールド:
デスペラード・リボルバー・ドラゴン
ブローバック・ドラゴン
伏せ2
クシャトリラ LP 5700
手札: 1
「く…私のターン!くそ…!モンスターを裏守備でセット, ターン終了!」
為すすべもなしか, クシャトリラは最後の抵抗をしてみせる。
「俺のターン, ドロー。《スピア・ドラゴン》を召喚」
嘴が槍のように長い, 青い翼竜が羽ばたく。
スピア・ドラゴン
星4/風/ドラゴン族
ATK 1900
「バトル。スピア・ドラゴンで攻撃」
「かかったな!リバースモンスター, 《サイバーポッド》!」
「…!」
「フィールドのモンスターを全て破壊だ!」
裏側表示から正体が露呈した機械のポッドは, 全てを吸い込まんと真空の空洞を作る。が。
「カウンター罠。《天罰》。手札を1枚捨てて, モンスター効果を無効にし破壊する」
「な, 何だと?!」
空から降ってきた雷がサイバーポッドを貫き, 効果を発動させることなく破壊する。
「そしてスピア・ドラゴンによる貫通ダメージを受けてもらう」
「ぐっ!」
クシャトリラ LP 5700 → 4700
「とどめだ。ブローバック, デスペラードで攻撃!」
2体の銃の機械竜が前に出て, 一斉射撃を浴びせる。
「う…うわあああああ!!!」
クシャトリラ LP 4700 → 0
鈍い音を立てて地面に倒れ伏すクシャトリラ。
良い, なかなか良いモンスター達だ。これなら戦える。
さて, 隣の彼女はどうしている…?
「終わりよ。
「ば, 馬鹿なぁあああ!!」
同様に少女の対戦相手も, 植物のドラゴンの一撃によって葬られる。
フン, と言いたげに彼女は外方を向き, ディスクを消滅させる。俺の方に一瞥すると, 彼女が静寂を切った。
「あら, アンタも勝てたの。少しはやるようね」
「…あんなの相手に, 手こずってる場合じゃない」
「へぇ, そう」
素っ気ない様子で, 少女は俺をジロジロと眺める。
思い出した。そういえば, 彼女に聞かねばならないことがあった。
「おい」
「何よ」
「さっき, 俺が寝ていたとか言ってたよな」
「………」
少女は言葉を返さないが, 俺の話を聞いている。
「…俺を助けたのは, お前か?」
少女は少し眉を上げて考えるかのような表情をしばらく浮かべ, こう返した。
「そうよ」
━やはりか。
少し頷いて, 俺は彼女に手を差し伸べる。
「…弾間 源。助けてくれて, ありがとう」
少女は俺の手を神妙な顔で眺めていると, その意図を理解したかのように, 大雑把に掴んで振る。
「…冷たっ」
表情を歪めて, すぐに手を離してしまったが。
深呼吸し, 彼女の視線は俺の顔に動く。
「…シェイレーン」
「うん?」
「シェイレーン。それが私の名前」
精霊の少女━シェイレーンは, よろしく, と言うように首で会釈した。
「こちらこそだ」
「…アンタ, どこから来たの?明らかに南の人間じゃないでしょ」
「西地区だ」
「西, ねぇ…ま, どうだっていいけど」
彼女は後ろに振り向き, 倒れている2人のクシャトリラの体に目を向ける。
「話は後。動くわよ, クシャ野郎共が集まる前に」
「行き先は?」
「ついて来て。私の言う通りに動くこと。いい?」
「…任せる」
シェイレーンの後を追い, 俺達は裏路地から消えた。