━05: 49AM
━リバティ南地区・旧地下鉄
どれほど暗闇の中を歩いただろう。
ディスクから発される電灯の先が照らすは, 土に埋めつけられた線路が漆黒の先まで伸びていく光景だった。
シェイレーンが路線図を片手に先導し, トンネルの壁に貼ってある掲示を頼りに進んでいく。本来ならば人が通るべき道ではないが, とうの昔に棄てられた線路を電車が通るはずもなく。
閑散とした円筒状の空間を歩き続ける。年も整備されていないせいか, 天井からの水漏れが酷い。
不思議とトンネル内は, 物で散らかっていた。人の鞄, 衣類の残骸と思しき布。買い物カゴや棄てられた食類のパッケージや缶詰。汚れ具合から見て, そんなに古くはないものだ。
荒廃した街, そしてトンネル内のこの状態。どれも南地区の異質さを物語っている。
「シェイレーン」
この2時間黙りっぱなしだった中で, 俺は彼女に話しかけた。
「何」
シェイレーンは振り向かず, 歩きながら手短に返した。
「前に, ここを通った人達がいるのか」
シェイレーンは何を聞いているのかと思ったのか, 一瞬俺の方をチラリと振り向き, そして地面に散乱していた物類を見る。俺の質問の意味が分かったのか, 彼女は少し頷いたように見えた。
「…エリア6の避難民かしらね。『
「
「率直に言えば, クシャ共の破壊活動よ」
シェイレーンは吐き捨てるように言い, 少し立ち止まった。すぐに彼女は歩き始め, 続けて聞いた。
「あんた, クシャトリラについてはどこまで知ってるの?」
俺は首を振る。
「やたら暴力的だということ以外は, 何も」
「まあ, そうでしょうね。じゃあ, 少し教えてあげる」
確かに。クシャトリラは他の地区への侵略を繰り返し, リバティの本来の支配者である
一体, 何が彼らを攻撃的にさせるのか?
「クシャトリラ。彼らの目的は, 『楽園』を作ること」
「楽園?」
その意外な言葉に目を眇めた。
「ええ。それが奴…ライズハートの目指す先よ」
「ライズハート…」
言い振りからして, ライズハートというのがクシャトリラの首領らしい。連中が俺を狙うのも, 奴の思惑だろう。
「
「破壊する必要があるのか?」
「ライズハートにとって, 正しいのは自分の思い描く世界。それ以外は不完全で醜い存在なのよ」
なるほど, 典型的な自己中野郎か。思ったよりも単純な相手らしくて助かる…それでも, 強大な力を持っていることには変わらないが。
「私達が昨日倒したクシャ野郎達, いたでしょ?」
「…いたな。それが?」
「あいつら, 人間だから」
「……何だと?」
俺は目を細めた。
思えば, 人型ではあったし, 人間の言葉は発していた…ボコーダーのようにくぐもった声だったが。
「人間なのに, クシャトリラと手を組んだのか?」
「違うわ。
「ああ」
「人間は脆いわよね, 病気になるし, すぐ死ぬし。食べ物も水も必要だし, 何なら感情で動くし。そういう無駄があるから, 不完全なのよ」
「………つまり」
「わかったようね」
シェイレーンは少し言葉を止める。
「不完全な人間の肉体を削ぎおとして, クシャトリラの完全な力を与える…それが, ライズハートの『恵み』。楽園に相応しい生命体の誕生よ」
唖然として, 声が出なかった。
つまり, クシャトリラの雑兵は…改造された人間ということか?
そして, その人間達が元は南地区の住民であったことは, 想像に難くない。でなければ, こんなに人気のない荒れた街があるはずがない。
「ああそう。ライズハートの『恵み』をうけるのは人間だけじゃないのよ」
そう言うと, シェイレーンは何かに気付いたかのように立ち止まる。彼女はトンネルの正面からライトを右側に移した。
「見なさい, これ」
彼女に手招きされ, 壁越しの影に自分のライトを照らした。
「これは……」
死体。人間のではない━動物だ。足が4本で, 肌色は赤く, 筋肉質だった。毛は生えておらず, 足先や胴体の所々が妖しい緑色に染まっている。
大きな犬, 狼だろうと思ったが, その顔貌は地球上のどの動物とも似ておらず, 赤い鎧のプレーティングが叩き割られている。
背中には, 何かの武装が鎖で繋がれていた。
その動物が何かは全くわからなかったが, どのような処置を施されたのかは瞬時にわかった。
「…クシャトリラの『恵み』とは, このことか」
シェイレーンは動物の死骸を剣で軽く突く。
「このモンスター…間違いないわ。『スケアクロー』よ」
「スケアクロー?」
「ええ。クシャトリラに侵略された別世界に住むモンスターよ。ここに連れて来られてきたみたいね」
クシャトリラが侵略した場所は, 精霊界にもあるということか。侵略するだけでなく, そこの原住民達を改造し, 場所ごと自分達のカラーで染め上げるということか。
まさに, 暴虐そのもの。質が悪い。
ふと, もう一つ気になったことがあった。
「シェイレーン, お前はなぜクシャトリラと戦う?」
「………」
彼女は黙る。口元を歪ませ, 声を少し低くして彼女は語った。
「…私の世界も, 奴らに壊されたからよ」
「お前の世界?」
「ええ……」
シェイレーンの目が鋭くなる。あの時隠れ家で彼女が見せた, 憎悪の炎が再び垣間映ったような気がした。
「ボーッとしてないで, さっさと行くわよ」
彼女はスケアクローの死骸から目を背けて, 早足で歩き始めた。俺はスケアクローを一瞥した後, そのまま彼女に追随した。
さっきのシェイレーンの様子。怒りと哀しみが入れ混じったような感じだ。彼女なりの事情があるのだろうが, 俺が知る由もない。
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3, 40分ほど歩き続けると, 暗闇の空間が広くなった。
「……ここは…?」
ライトを周囲に動かしてみると, それまで一直線だった線路が枝分かれし, 三つの新たな路を作っていた。線路と線路の間に立つコンクリートの柱は無数の落書きがなされており, 相変わらず地面は瓦礫や物で散らかっている。
「分岐部ね。えぇと…」
シェイレーンが地図を広げる。
「…右ね。そこから歩いていけば, エリア8の駅に入れるはず。行くわよ」
「ああ」
シェイレーンの後を追い, 足を路盤の砕石に踏み入れた時だった。
閃光。
一瞬で脳裏が白くなり, 周りの尽くが見えなくなる。
「な━」
暗闇に順応していた視界が眩む中, 正面から何かが飛んできた。
枝。黄色い閃光を帯びた枝が, 目にも留まらぬ速さで脚に纏わりつく。
「何?!」
「ちょ, あんた!」
シェイレーンが素早く振り向き, 俺の方に向かおうとする。が, 彼女の動きも光る木の枝によって遮られ, 完全に俺と分断されてしまった。
両脚を縛りつけた枝は地面に根差し, びくともしない。手で叩き割ろうとしても, 実物の木の如く固さで, どうにもならない。シェイレーンが水の波動を纏った剣で枝を切ろうとしても微動だにしない。
気づけば, それまで一つも点いていなかったトンネルの電灯が全て光っていた。空間全体が眩い明るさに包まれている。
そして━
「ダイちゃん!捕まえたよ!」
「よくやった, オオヒメ!」
正面には人影が二人。
線路の中央, 俺と向かい合うように立つのは一人の若い人間の男。フラットな髪型に, ベージュ色のパーカーを着た青年だった。腕には旧式の
ライノから譲り受けた, 以前俺が使用していたのと同型だ。
一見, 何の変哲もない大人しそうな青年だった。が, その表情は固く, 俺に対する警戒心が見て取れる。
そして, 青年の隣の女性。
金色の衣━どこか, 巫女が纏うような服装に似ていた。両側から神々しい羽根の生えたカチューシャで結ばれた黒髪のツインテールが目立つ。彼女は地面から離れ, 宙に浮遊していた。
見たことのない女性だったが, その素性はすぐに分かった。
━精霊連れの
「…誰だい, 君は。こんな所を通るなんて」
青年は俺を問い質す。
「人間だ。戦うつもりはない」
そう答えたが, 青年の表情は緩むどころが, さらに険しくなる。
「どうかな」
青年が俺の全身に目をやり, 続けて俺に詰問した。
「どこから来たの?」
「エリア6からだ」
「あんな瓦礫の山から?信じられない」
青年は全く信じられないという口調で返し, 依然として警戒心を解かない。俺の様子を伺うように全身を眺めてから, 彼は続けた。
「もしかして, 君。
「違う。なぜ, そう思う」
「そう思わない理由がないから。どう見ても南の人間じゃない上, 精霊まで連れてるし, クシャトリラのディスクを着けてる」
彼は俺のディスクに指差して言った。
「それじゃなかったら, 傭兵か。クシャトリラにいくら貰った?」
「…誤解だ。俺は━」
「どのみち, ロクな目的じゃない。だったら━」
青年がディスクを展開する。
「オオヒメ!」
「うん!」
ダイという青年の精霊━オオヒメは姿を消し, その光を彼のデッキへと宿す。
「ここで止める。悪い人間が南を荒らすのは, もうゴメンだ」
俺はシェイレーンの方を見るが, 彼女は危機感を露わにした顔で俺に叫ぶ。
「ボケっとしてないで, さっさと戦いなさいよ!」
対話は望めなさそうだ。なら, 仕方ない。
自身のディスクを展開し, "
「「
源 LP 8000
ダイ LP 8000
「先攻は俺だ。《アックス・ドラゴニュート》を召喚!」
黒い二足歩行のドラゴンが巨大な斧を振り回して参上した。
アックス・ドラゴニュート
星4/闇/ドラゴン族
ATK 2000
「カードを1枚伏せ, ターンエンド」
心許ない盤面だが, 拾った寄せ集めで辛うじて形になっているデッキだ。仕方ない。
それに, 攻撃力2000のアックス・ドラゴニュートだ。そこらの下級モンスター程度なら蹴散らせる。
「そうか, ならば。ドロー!」
ダイがカードを引く。
「装備魔法, 《脆刃の剣》発動。アックス・ドラゴニュートに装備」
ドラゴニュートの斧が消滅し, 代わりに神聖なオーラを醸し出す剣が龍の戦士に与えられた。ドラゴニュートの周囲を纏うオーラは著しく増大し, これ以上なく強力な覇気を纏う。
アックス・ドラゴニュート
ATK 2000 → 4000
「……何?」
意図的に俺のモンスターの攻撃力を上昇させた?俺は身構えた。何かを企んでいる。ダイは構わず, プレイングを続けた。
「手札から速攻魔法, 発動。《伝承の
「手札の《
《伝承の大御巫》のカードが激しく光り, 一つの光点がフィールドの上空に浮かぶ。やがて, 太陽の光線の如く演出が広がり, フィールドを金色の光で満たす。
「何だ……?」
「大原を
光の裡から, 人影が現れる。
「《オオヒメの御巫》, 光臨!」
ほんの少し前まで, ダイの隣に居た精霊━太陽を司る光の化身が, フィールドに舞い降りた。
片手には剣, もう片方には鏡を構え, 俺を見下す。
オオヒメの御巫
星6/光/天使族
ATK 0
その神々しい姿とは裏腹に, 俺はソリッドビジョンの数値に目を疑った。
「攻撃力0だと…?」
ダイはほくそ笑む。
「バトルフェイズ。オオヒメでアックス・ドラゴニュートに攻撃!」
「嘘だろ?!」
攻撃力0。対するドラゴニュートは4000━自殺行為にも程がある。
オオヒメが剣を振るい, 光の一閃がドラゴニュートに当たる。が, ドラゴニュートは微動だにしない。それどころが━反撃もしない。ピクリと動かなくなっている。
すると, どうなることか。
ドラゴニュートの身体中からみるみるうちに光が漏れ出し, オオヒメの両手へと集積していく。光の勢いは増していき, オオヒメの額の背後の紋章が強く輝く。
「何だ…?」
「オオヒメの御巫は戦闘では破壊されない」
オオヒメの眼が一瞬, 金色を浴びた。両手の光が増幅し, 彼女が印を作る。
「そして 《脆刃の剣》を装備した発生する戦闘ダメージは, お互いに受ける」
「お互いに4000ダメージ, ということか」
お互いに大ダメージを被るなら…と思ったが, そんな甘い考えはすぐに砕かれた。
「違う。オオヒメの効果, 発動!自身を介した戦闘での, コントローラーへの戦闘ダメージは無効化され…代わりに相手がそのダメージを受ける!」
「何だと?!」
オオヒメが何やら小声で呪文を唱え, 両手の印周りの光が増幅される。
「オオヒメとアックス・ドラゴニュートの戦闘で発生するお互いへのダメージは4000。だが, 自分が受ける4000ダメージは代わりに君が受ける。よって合計ダメージは……」
「……8000!」
「!!」
ダイが勢いよく指を天に向ける。
「オオヒメ, 今だ!」
「はぁあああ…!」
オオヒメの両手に蓄積されたエネルギーが臨界点に達した。
来る。
「『
「はぁーーっ!!」
印を結んだ両手から放たれる, すざましい勢いの光線。浄化の光が俺を葬らんと迫る。
これをまともに受ければ━
「ちょ, あんた!」
シェイレーンが叫ぶ。間髪入れずに, 俺はディスクに指を伸ばした。
「…ちぃっ!トラップ発動!《ガード・ブロック》!」
「!」
光の一撃は, 《ガード・ブロック》によって形成されたバリアに弾かれ, 不発に終わる。
「戦闘ダメージを1度無効にし, カードを1枚ドローできる」
「……マジでか」
少々驚いたらしく, 両目を大きくしてダイがこちらを眺めていた。
俺は安堵の息を吐いた。やれやれ, 危なすぎる。ガード・ブロックを伏せていなければ, どうなったことか…
初っ端からワンショットキルを狙ってくるとは夢にも思わなかった。油断がならない。
「まぁ, いい。カードを2枚伏せて, ターンエンド」
TURN 2
源 LP 8000
手札: 4
フィールド:
アックス・ドラゴニュート
ダイ LP 8000
手札: 1
フィールド:
オオヒメの御巫
脆刃の剣(装備先: アックス・ドラゴニュート)
伏せ2
「俺のターン, ドロー!」
手札は揃っているが, 相手の守りは堅い。
オオヒメの御巫…戦闘においては無敵のモンスターだ。戦闘で破壊されず, 戦闘ダメージは全て反射される。こちらに攻撃力4000のアックス・ドラゴニュートがいても意味がない。
ならば, 効果破壊はどうだ。
「俺は《BM-4 ボムスパイダー》を召喚!」
ランチャーを担いだクモ型メカが着地する。
BM-4 ボムスパイダー
星4/闇/機械族
ATK 1400
「ボムスパイダーの効果発動!フィールドの機械族・闇属性モンスター1体と, 相手フィールド上のカードを1枚ずつ破壊する!俺はボムスパイダー自身と, オオヒメの御巫を選択!」
ボムスパイダーがランチャーのハッチを開き, 多数のスフィア・ボムがオオヒメ目掛けて発射される。しかし, ダイは動じない。
「それは予想してる。トラップ発動!《アームズ・コール》!デッキから装備魔法を手札に加え, それをフィールドのモンスターに装備する。《御巫の
スフィア・ボムの群れがオオヒメに触れる寸前, 突如として現れた水の渦がそれらを弾き飛ばした。
「
やはり守る手段は確保していたか。結果としてボムスパイダーだけが破壊された。だが, 手札にはコイツがいる。
「機械族・闇属性モンスターが破壊されたことにより, 手札の《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》の効果を発動!自身を特殊召喚する!来い, デスペラード!」
3つのシリンダーを回し, 撃鉄をガチリと響かせる重厚な機械龍がフィールドを砕く。
デスペラード・リボルバー・ドラゴン
星8/闇/機械族
ATK 2800
今の俺の手札には, どう足掻いてもオオヒメを処理できるカードが無い。このターンは守りに転じるしかないが, 攻撃力4000のドラゴニュートを残すのは危険すぎる。
「アックス・ドラゴニュートを守備表示に変更。カードを2枚伏せて, ターンエンドだ」
アックス・ドラゴニュート ATK 4000→ DEF 1200
「ここで, 伝承の大御巫の効果で特殊召喚されたオオヒメは手札に戻る」
オオヒメの姿が光と共に消え, ダイの手元へと舞い戻る。守りの要がフィールドを離れ, 装備魔法の《御巫の
ワンターンキルは何とか凌いだが, もし奴がオオヒメを継続的に召喚できるなら, 相当辛い戦いになる…
ダイがデッキからカードを引いた。
「ドロー。《強欲で金満な壺》, 発動」
「…またか」
或間にも使われた壺カード。エクストラデッキからランダムに6枚除外し, 除外したカード3枚につきデッキから1枚ドローするカード。
「効果でEXデッキから6枚を除外, そして2枚ドロー」
ダイは新たなドローカードを一瞥し, 俺を睨む。
「オレのワンターンキルを生き延びたところで, 結果は変わらない…!《昇華騎士-エクスパラディン》を攻撃表示で召喚!」
燃え上がる炎と共に, 銀色の鎧を纏った騎士が剣を構える。
昇華騎士-エクスパラディン
星3/炎/戦士族
ATK 1300
「エクスパラディンが召喚された場合, デッキから戦士族・炎属性モンスターを装備できる。《チューン・ナイト》を装備…そして, チューン・ナイト自身のユニオン効果で, 装備を解除して特殊召喚!」
エクスパラディンが剣を掲げると, その号令に応えて可愛らしいネズミの騎士が参上した。
チューン・ナイト
星1/炎/戦士族
ATK 500
「現れよ。舞踏と剣のサーキット!」
上空に見慣れた四角━リンクサーキットが顕現した。
「召喚条件は戦士族が2体。エクスパラディンとチューン・ナイトをリンクマーカーにセット!リンク召喚, リンク2!《聖騎士の追想 イゾルデ》!」
2人のローブを下げた女性が光から歩み出る。華やかな赤い衣装の金髪の女性と, 哀しげな顔を浮かべる銀髪の女性。
聖騎士の追想 イゾルデ
リンク2(右下・左下)/光/戦士族
ATK 1600
「イゾルデの効果。デッキから戦士族モンスターを手札に加えるけど, このターンは召喚と効果の発動はできない。これでオレは《ネクロ・ガードナー》を手札に加え, さらにイゾルデの第二の効果を発動。デッキから装備魔法カードを墓地に送ることで, 送った数と同じ数値分のレベルを持つ戦士族をデッキから特殊召喚できる」
サーチの上に, さらなる展開までするつもりか…1ターン目とは構えが違う。モンスターを並べ, 数で押すつもりか?
「…《御巫舞踏━迷わし鳥》を墓地に送り, デッキからレベル1, 《焔聖騎士-リナルド》を召喚!」
馬に乗った赤髪の青年騎士が駆け出した。
焔聖騎士-リナルド
星1/炎/戦士族
ATK 500
「リナルドの効果。墓地の《御巫の
加えて,
リナルドが水の渦と共に姿を消したと思いきや, 荒れる水飛沫の中を踊る, 青髪の少女が出現した。手に筆のような得物を持ち, 水で周囲の景色を映し出す鏡を描いていた。
鏡の御巫ニニ
星3/水/魔法使い族
ATK 0
「
「…手札効果もあるってのか」
「そうさ。デッキから《御巫》カードを手札に加え, 手札を1枚捨てる。2枚目の《伝承の大御巫》を手札に加え, イゾルデの効果で手札に加えた《ネクロ・ガードナー》を墓地に捨てる」
ネクロ・ガードナー。墓地から除外することで, 相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にできるカード。攻めの展開で, 次のターンの防御も視野に入れているプレイングだ。このダイという人間, 明らかに手慣れたデュエリストだ。
そして, 伝承の大御巫の効果は…
「《伝承の大御巫》発動。手札のオオヒメを再び特殊召喚する!」
「やはりか…」
ダイの切り札が再びフィールドに着地し, デスペラードと相対する。
オオヒメの御巫
星6/光/天使族
ATK 0
「さらに, トラップ発動!《御巫かみくらべ》!」
「このタイミングでトラップか…?」
「フィールドのモンスター1体を対象とし, デッキから《御巫》の装備魔法をそのモンスターに装備させる。デスペラードを選択!」
「…!」
不味い。俺のモンスターを指定したということは, さっきの脆刃の剣のような, 実質的に俺だけにデメリットを押し付けるカードに違いない。
であれば, これを今使う!
「俺は手札のチューナーモンスター, 《ホップ・イヤー飛行隊》の効果発動!」
「なっ?!」
「相手のメインフェイズ中, このカードを手札から特殊召喚できる!」
翠色の毛肌が特徴的な, 耳が羽根のウサギ型モンスターが羽ばたく。
ホップ・イヤー飛行隊
星2/風/獣族・チューナー
ATK 300
「チューナー…?」
「ホップ・イヤーの効果!俺のフィールド上の他のモンスター1体と共に, シンクロ召喚を行う!」
「…何だって?!」
ホップ・イヤーが飛び上がり, デスペラードは雄叫びを上げると姿を消し, 8つの点となる。
「レベル2のホップ・イヤーに, レベル8のデスペラード・リボルバー・ドラゴンをチューニング!」
「高貴なる風の騎士よ。戦いの場を駆け抜け, その栄華を示さん!シンクロ召喚!」
「咲き誇れ, 《フルール・ド・バロネス》!」
薔薇色の花弁が宙を舞い, 青空を背に一騎の馬が走る。その背には, 旗印のような盾と長剣を構える女騎士が, 仮面の裏の眼光を煌めかせてフィールドに優雅に参上した。
「ハァッ!」
フルール・ド・バロネス
星10/風/戦士族・シンクロ
ATK 3000
薔薇の騎士の前に立ちはだかる巫女達。
オオヒメはバロネスを睨むと, ダイに振り返る。
「ダイちゃん, 気をつけて。この人, 只者じゃない」
ダイは頷く。
「分かってる…だからこそ, 本気で叩き潰す!」
「…あんた」
シェイレーンが横から声をかけてきた。俺は彼女を横目で見る。
「何だ」
「勝てるの?」
シェイレーンが怪訝そうな表情で聞いた。
状況は未だ相手の方が有利。このテンポが長引けば, 敗北は免れない。カードの寄せ集めのデッキとは比べ物にならない程, 相手の構成, タクティクスは整然としている。
俺は視線をバロネスに戻す。
拾ったカードの中だと, 彼女が最も強いモンスター。絶望的な状況で, このカードに巡り合えたのは幸運だろう。
だったら━
「━勝てる。この勝負…いける!」
バロネスが手綱を勢いよく引き, 鎧の駿馬が気高く鳴く。