遊戯王 Bitten Bullet   作:じぇね

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勝負, 之一瞬

新たに召喚された騎士━《フルール・ド・バロネス》。

素性の知れない人間の青年, ダイはバロネスを今一度眺めると, 俺に視線を移す。

 

「…なるほど, それか君のエースカードか」

「今の所はな」

「そうか。残念だけど, そいつが出たところで何も変わっちゃない」

 

ダイはもう一枚の伏せカードを開く。

「トラップ発動!《御巫の契り》!デッキから御巫を特殊召喚し, 墓地の装備魔法を装備させる。《剣の御巫ハレ》を特殊召喚!」

舞うような炎の中から, 剣を振り回す赤髪の少女が躍り出た。

 

剣の御巫ハレ

星3/炎/戦士族

ATK 0

 

「契りの効果で召喚されたモンスターが場を離れた場合, 除外される。加えて墓地の《御巫舞踊━迷わし鳥》をハレに装備させる!」

ハレの背後で風が巻き起こり, 鶏のようなオーラが彼女の周りを纏う。

「これでハレはカード効果で破壊されない。さらに, ハレ自身の効果が起動する…デッキから御巫の装備魔法を手札に加える。《御巫の誘い輪舞(ロンド)》を手札に」

「…これで3体か」

 

3体の御巫が攻撃力3000のバロネスに攻撃すれば, 合計9000のダメージを受ける━━

 

「させるか。リバースカード・オープン。《威嚇する咆哮》!」

トラップカードから狂犬の吠えるような叫びが放たれ, 地響きを起こす。それを直に受けた御巫達は後退した。

「このターン, お前はバトルフェイズに入ることはできない」

 

「また防がれたか。やるな」

ダイはしてやられたかと言いたげに首を少し傾けて鼻で笑う。

「けど, 何も殴ることだけが御巫の芸じゃない。手札から装備魔法, 《御巫の誘い輪舞(ロンド)》を発動!装備対象はバロネス!」

 

バロネスの周囲に煌めく水滴が漂う。俺のフィールドから彼女の姿が消えていき, 対してバロネスの鏡像がダイのフィールドに浮かび上がる。

 

「《誘い輪舞(ロンド)》を装備したモンスターは, 御巫達がいる限りオレがコントロールを得る!」

それは不味い。通すわけにはいかない。

「盗らせるかよ!バロネスの効果発動!」

俺の宣言と同時に, バロネスが正気を取り戻したかのように体勢を立て直す。

「カード効果の発動を無効にして破壊する!『フルール・ド・ノクチュルヌ』!」

バロネスが剣に花弁を纏わせて薔薇色の衝撃波を放ち, 水鏡と共に《誘い輪舞(ロンド)》のカードを粉砕した。

 

「まだだ。オオヒメの効果発動!墓地の装備魔法を, フィールドの任意のモンスターに装備させる!」

オオヒメが両手を上に掲げると, 再びバロネスの周囲に煌めく水滴が浮かび上がった。ダイの意図は明白━墓地の《誘い輪舞(ロンド)》を再びバロネスに装備させる気だ。

バロネスの効果無効は1度きりしか使えない━故に奪われれば終わりも同然。

 

「トラップ発動!《亜空間物質転送装置》!エンドフェイズ時までバロネスを除外する!」

バロネスの姿が, 空中に現れた異次元に続くポータルへと吸い込まれた。

「なら, アックス・ドラゴニュートに《誘い輪舞(ロンド)》を装備, そのコントロールを得る」

異次元へと退避したバロネスの代わりに, 隣にいたアックス・ドラゴニュートが相手フィールド上へと移動する。

 

「墓地の《伝承の大御巫》は, 除外することによりデッキから《御巫》カードを墓地に送ることができる。オレが墓地に送るのは, 《御巫の祓舞(はらえまい)》。アックス・ドラゴニュートを攻撃表示に変更して, カードを1枚セット。ターンエンド」

 

アックス・ドラゴニュート(装備: 《脆刃の剣》)

DEF 1200 → ATK 4000

 

「ターン終了時に亜空間物質転送装置の効果が切れ, バロネスがフィールドに戻る」

 

TURN 4

源 LP 8000

手札: 1(ツインバレル・ドラゴン1)

フィールド:

フルール・ド・バロネス

 

ダイ LP 8000

手札: 1(焔聖騎士-リナルド1)

フィールド:

聖騎士の追想-イゾルデ(EXモンスターゾーン)

アックス・ドラゴニュート

オオヒメの御巫

鏡の御巫ニニ

剣の御巫ハレ

-脆刃の剣(装備: アックス・ドラゴニュート)

-御巫の誘い輪舞(ロンド) (装備: アックス・ドラゴニュート)

-御巫の水舞踏(アラベスク)(装備: 鏡の御巫ニニ)

-御巫舞踏-迷わし鳥(装備: 剣の御巫ハレ)

-伏せ1

 

「俺のターン, ドロー!」

この状況をどうにか覆さないと…と, 思い始めた須臾。計画を練るどころがドローカードすら見る暇もなく, ダイの猛攻は続いた。

「この瞬間, ニニの効果発動!このターンのエンドフェイズまで, 相手モンスター1体のコントロールを得る!」

「何?!」

 

鏡の御巫, ニニが筆を宙に振るう。筆の軌跡が楕円形を描き, キラキラ光る水滴を背景に鏡を作り出した。

鏡は誘惑的な光を照らし出し, バロネスはそれに見惚れてしまう。

 

「ちょこまかと…!盗ることしか頭にねぇのか!重ねてバロネスの効果発動!『フルール・ド…」

「そこだ。トラップ発動!《無限泡影》!」

バロネスが剣を持ち上げた途端, 罠カードから電子の網が放たれ, バロネスの動きを封じた。身動きの取れないバロネスは, なす術無くニニの呪術に嵌り, 相手フィールドへと姿を移された。

「ち…!それが狙いか!」

 

無限泡影。相手モンスターの効果を無効にする罠カード。

悪い状況から更にどん底に叩き落された。ニニのコントロール奪取はこのターン中のみ有効だが, ターン終了時に戻ってくるのは無力化されたバロネス━御巫達の格好の的でしかない。

ただでさえ突破が難しい御巫達を並べられ, 反撃の活路も見事に潰された。

 

「そしてオオヒメの効果も重ねて発動。墓地の《御巫の祓舞(はらえまい)》をオオヒメに装備し, これでオオヒメは効果で破壊されない」

「…強いな, こいつ」

小声が漏れる。手強い相手だ━本来のヴァレット達を以てしても, 戦局を覆すのは難しいだろう。

メインフェイズに入り, ここで初めてドローしたカードを見下ろす。

 

厳しい。しかし, これくらいしかできることがない━賭けるとするか。

 

「《カードガンナー》を攻撃表示で召喚!」

両腕がブラスターを備えた小さなロボットが着地する。

 

カードガンナー

地/星3/機械族

ATK 400

 

「カードガンナーの効果発動。デッキの上から3枚までのカードを墓地に送り, 墓地に送った数1枚につき攻撃力を400アップさせる」

 

このデッキを握って2戦目。入っているカードは全て把握しているつもりだが, この状況を打開するカードがあるかどうかまでは思い出せない。

3枚のカードを捲り, それを見る━

 

「なるほど。俺はターンエンドだ」

 

ニニの効果が切れ, バロネスがフィールドに舞い戻る。同時に, 《伝承の大御巫》の効果でオオヒメが消滅してダイの手札に戻り, 《御巫の祓舞》は破壊される。

 

「そろそろジリ貧か。なら, 手早く終わらせる」

ダイがカードをデッキトップに当てた。

 

「オレのターン, ドロー…」

 

ダイを睨んでいた目を大きく見開く。今だ。

 

「この瞬間!フルール・ド・バロネスの効果発動!」

「なっ…?」

 

バロネスの周りに花弁が吹き荒れる。すると, 花弁の内にあった騎士と駿馬の姿が消滅しつつあった。

 

「何が起きている…?」

「バロネスの効果。スタンバイフェイズ時に自身をエクストラデッキに戻し, 墓地のレベル9以下のモンスターを特殊召喚する」

「レベル9以下…?君が今まで召喚したモンスター達では, 御巫を突破することなどできないはず!」

「それは違う」

「何?」

 

俺は墓地のモンスターカード1枚を取り出し, 彼に見せる。

 

「《カードガンナー》の効果で墓地に送ったコイツがいる。来い, 《アークブレイブドラゴン》!」

 

花弁の柱は開放され, そこから飛翔せし一騎の竜が雄叫びを上げた。

飛ぶ後に黄金の輝きを残し, 正しき光をフィールドに齎した。

 

アークブレイブドラゴン

星7/光/ドラゴン族

ATK 2400

 

「アークブレイブドラゴンの効果発動。このカードが墓地から特殊召喚された時, 相手フィールド上の表側表示の魔法・罠カードを全て除外する」

「な?!」

「焼き払え, アークブレイブ!『アークフレア・クレンズ』!」

アークブレイブの放つ白い炎が, ダイの装備魔法を尽く消し炭にした。炭の残滓から漂う光のエネルギーがアークブレイブに集約される。

「この効果で除外したカード1枚につき, アークブレイブの攻撃力は200アップする!」

 

アークブレイブドラゴン

ATK 2400 → 3000

 

これでダイのフィールドに残ったのは攻撃力0の御巫が2体と, EXモンスターゾーンのイゾルデ。《誘い輪舞(ロンド)》の装備が解除されたアックス・ドラゴニュートは俺の墓地に送られた。

「…ただの時間稼ぎだ。墓地の2枚目の《伝承の大御巫》を除外し, デッキから《御巫かみかくし》を墓地に送る。そしてフィールドに戦士族・炎属性のハレが存在することにより, 手札からリナルドを特殊召喚!」

不測の事態を臆することなく, ダイは焔の聖騎士を場に出す。

 

焔聖騎士-リナルド

星1/炎/戦士族

ATK 500

 

「自身の効果で特殊召喚されたリナルドはチューナーモンスターとして扱う。レベル1のリナルドに, レベル3のハレをチューニング。シンクロ召喚!《虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)》!」

虹色の光を四方に照らす, 純白の無機質な天使が姿を現す。

 

虹光の宣告者

星4/光/天使族

DEF 1000

 

「…そりゃあ, ちょっと不味いな」

俺は呟く━或真とのトレーニングで遭遇したモンスターの1体。自身を墓地に送ることであらゆる効果を無効にするカード。

 

「その瞬間, 俺は墓地の《仁王立ち》を発動する!」

「カードガンナーで墓地に送ったカードか!」

「その通り。《仁王立ち》を墓地から除外し, 自分フィールド上のモンスター1体を選択する。相手はこのターン, そのモンスターしか攻撃できない。俺は《カードガンナー》を選択」

 

カードガンナーが前進し, 攻撃してみろとダイのモンスター達を挑発する。

カードガンナーの攻撃力は僅か400。戦闘破壊は容易いが, そうすればバトルをそれ以上進めることはできない。その上, 御巫達が攻撃しても屁にもならぬダメージしか与えられない。

 

伏せカードも無く, 手札も1枚━それも, デスペラードの効果で手札に加えた《ツインバレル・ドラゴン》であることはダイにも明らかだ。

これ以外の防御は俺に残されてない━少なくとも, そう見えるはず。

 

そして, 事は予想通りに運んだ。

「《虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)》を墓地に送り, 効果発動。《仁王立ち》を無効にする!」

デクレアラーが身を消滅させて放った光線がカードガンナーを引き下がらせた。これで, ダイの攻撃は自由となる。更に…

「デクレアラーが墓地に送られた場合, デッキから儀式魔法…《御巫神楽》を手札に加える」

 

今までは《伝承の大御巫》で召喚されていたが, 本来オオヒメはレベル6の儀式モンスター。リリース分を確保するつもりだろうが…

「墓地の《御巫かみかくし》は除外することで, 除外された御巫を特殊召喚できる。ハレを特殊召喚!」

 

剣の御巫ハレ

星3/炎/戦士族

ATK 0

 

「手札のオオヒメの効果を発動。デッキから2枚目の《御巫の水舞踏(アラベスク)》を手札に加えて, 手札の《レアゴールド・アーマー》を捨てる。水舞踏(アラベスク)をハレに装備。ハレに装備カードが加わった効果で, 更に《御巫の火叢舞(ほむらまい)》をサーチ」

アークブレイブの効果を受けてなお, リカバリーが激しい。

水舞踏(アラベスク)の効果。デッキから《珠の御巫フゥリ》を特殊召喚!そして, ハレを手札に戻し, 装備先をフゥリに移行!」

赤髪の少女と交代するように, 今度は薄緑の旋風を纏いし狐耳の少女が躍り出た。

 

珠の御巫フゥリ

星3/風/サイキック族

ATK 0

 

「フゥリが存在する限り, 御巫カードはカード効果の対象にならない。そしてフゥリが装備カードを得たことで, デッキから《御巫》の罠カードを手札に加える。《御巫かみくらべ》を手札に。そして, 儀式魔法発動!《御巫神楽》!」

「…来るか」

「手札のハレ, 場のニニを生贄に。これこそが真の神楽。御姿を(あらわ)せ!オオヒメの御巫, 儀式召喚!」

 

ハレ・ニニがそれぞれの力を天に集約させ, 炎と水が混ざりし中から, 見慣れた姿━オオヒメが聖なる光と共にフィールドに招来した。

 

オオヒメの御巫

星6/光/天使族

ATK 0

 

「《御巫神楽》でオオヒメの儀式召喚に成功した時, 墓地に存在する装備魔法の種類の数1つにつきフィールドのカードを1枚破壊し, 更に破壊した数1枚につき相手ライフに1000ダメージを与える」

ダイはカードガンナーに指差す。

「墓地の装備魔法は3枚…だが, オレはカードガンナーの1枚を破壊し, 君に1000ダメージを与える。『大日昇天』!」

オオヒメが放った釘指すような鋭利な光がカードガンナーに激突, 爆発とともにロボットが消滅する。そして光は貫通して俺にも当たる。

「ぐっ!」

 

源 LP 8000 → 7000

 

「カードガンナーがフィールドで破壊された時, カードを1枚ドローできる」

「…まだだ。《御巫の火叢舞(ほむらまい)》を発動。墓地の御巫を特殊召喚し, このカードを装備する。ニニを特殊召喚!」

 

鏡の御巫ニニ

星3/水/魔法使い族

ATK 0

 

俺はため息を吐いて, フッと笑う。

「…見事に振り出しに戻ったな」

状況は前ターンと全く同じ。俺のフィールドには攻撃力3000のモンスターが単騎。対するダイのフィールドには御巫が3体。

 

「バトル!フゥリとニニで, アークブレイブドラゴンに攻撃!」

6000ダメージか。こればかりは受けるしか…!

暴風と水流の応酬を喰らい, 俺は後ろに押し返される。

 

「ぐおっ…!」

源 LP 7000 → 1000

 

「今度こそ守りの手段は無いようだな。だったら…オオヒメで攻撃!『真言・天照御来光』!」

 

祈祷の光━悪を祓い, 世界を照らす衝撃波。

それでも, 俺には打つ手がまだあった。

 

「墓地の《盾航戦車(じゅんこうせんしゃ)ステゴサイバー》の効果を発動!」

「…まだ何か隠して…っ!」

ダイがまたもや予想外の防御札に仰天する。その瞬間, 地中から現れた鋼鉄の巨体が尾を振るい, アークブレイブへと向けられた光線を弾き飛ばした。

 

盾航戦車ステゴサイバー

星6/闇/恐竜族

DEF 2400

 

「ステゴサイバーは墓地に存在する場合に, 相手モンスターによる戦闘ダメージを無効にして墓地から特殊召喚できる」

 

「くどいな。いつもギリギリで生き残って…それでもまだ戦うつもりか?」

ダイが残り1枚の手札をフィールドに伏せ, ターン終了の合図を出す。

「悪ぃな。諦めの悪いタイプでね」

「珍しいな, 君。今までのクシャトリラと結社(コーポ)の手先は, 誰も彼も腰抜けばかりだったけど」

「そんな連中と一緒にするな。それに俺は傭兵でも何でもない」

「…さぁ。口先だけなら何とでも言える」

ダイは依然として俺に対する敵意を保っており, 一歩も引き下がるつもりはないようだ。

 

「君のターンだ。カードを引け」

 

TURN 6

源 LP 1000

手札: 2(ツインバレル・ドラゴン1, 不明1)

フィールド:

アークブレイブドラゴン

盾航戦車ステゴサイバー

 

ダイ LP 8000

手札: 0

フィールド:

聖騎士の追想 イゾルデ(EXモンスターゾーン)

オオヒメの御巫

鏡の御巫ニニ

珠の御巫フゥリ

-御巫の火叢舞(装備: 鏡の御巫ニニ)

-御巫の水舞踏(装備: 珠の御巫フゥリ)

-伏せ1

 

「俺のターン!」

先のターンのカードガンナーで, トップから墓地に送った3枚は天命だった。今の俺にはそれ以上の天命が必要だ。

窮地に追い込まれるのは初めてじゃない。今更焦るようなことでもない。

 

デッキトップに指を当て, 念じる。

 

━応えろ, 俺のデッキ。

 

ドロー, の一言を言わず。無言でカードを引いた。

伸ばした先のカードに, ゆっくりと視線を移す。

 

「………」

 

「…何か引けたの?」

横で立つシェイレーンが尋ねる。俺を疑うような表情で, 彼女はぶっきらぼうに言った。それもそうだ━俺の勝敗に彼女の計画が掛かっているのだから。

俺は手札を今一度眺めてから彼女を横目で一瞥する。が, 答えることはしない。

 

ディスクに1枚のカードをセットする。アークブレイブの背後に, 裏側表示のシルエットが出現した。

 

「ターンエンド」

「はぁ?!ちょっとあんた?!」

シェイレーンが叫び出す。

「何もしないでターンエンドって, 諦めるつもり?あんた, ここで負けたらどうなるか…」

俺は喚くシェイレーンを横目で見て, 手短に彼女に言う。

 

「静かにしてくれ。諦めてなどいない」

 

シェイレーンはまだ納得のいかない表情で横で何やら喚いているが, 何を言ってるのか聞き取れない。

一方, ダイは不可思議な顔を浮かべて俺を眺める。

 

「…何を企んでいる?」

「さぁな」

俺は肩を竦めて答えた。それを見たダイは尚更警戒心を高める。

 

「いいさ, じきにわかることだ。エンドフェイズ時, 《御巫かみくらべ》を発動。デッキから《御巫の誘い輪舞(ロンド)》をアークブレイブドラゴンに装備し, コントロールを得る」

アークブレイブが水滴に囲まれ, 相手フィールドへと連れ去られる。

 

「そして, オレのターン。ドロー」

 

ダイはフィールドを見渡す。今, 俺のフィールドに存在するのは守備力2400のステゴサイバーが1体。

どの御巫でも攻撃すれば俺のライフは容易く尽きる。

 

「オオヒメの効果発動。墓地の《祓舞》をオオヒメに装備。バトルフェイズ!」

オオヒメが攻撃体勢に入る。ステゴサイバーのエネルギーを吸収し, 最後の攻撃━『真言・天照御来光』を放たんとする。

「この攻撃を凌いだところで, オレは3回の攻撃を残している。今度こそ正真正銘, 終わりだ!」

 

「オオヒメの御巫で, ステゴサイバーを攻撃!」

「OK!一気に決めるよ, ダイちゃん!」

オオヒメが主に応え, 呪文を唱える。太陽の如く眩い光が天井に溜まる━

 

「『真言・天照御来光』!」

「せいやーっ!!」

 

オオヒメの渾身の掛け声と共に俺に降り注ぐ光の衝撃波。

 

ここだ。

「リバースカード, オープン!」

「!」

 

「《砂塵のバリア- ダスト・フォース》!」

 

オオヒメの攻撃がステゴサイバーに激突する寸前, フィールドの中心に砂の群れが出現する。

砂は竜巻のように勢いよく回転し, まるで砂漠の砂嵐の如く視界を霞ませ, 鈍い雑音をトンネル中に響かせた。

 

「ダスト・フォースだと?!」

ダイは戦慄した。それはそう━今まで俺が行ってきた妨害とは, また違う性質のモノ。

 

ダイの盤面は攻撃・防御の両者に長けたものだ。俺の強力なモンスターの力を逆手に取り, 肝心の効果による除去も無力化できる。攻撃を封じても, 返しのターンで俺の反撃を牽制できる。

今までの妨害は御巫に対する根本的な解決とは程遠かった。

 

しかし, 装備魔法・そして自身のモンスター効果に依存する御巫達には, 大きな弱点がある━

 

「ダスト・フォースは相手モンスターが攻撃宣言した時に発動可能。相手の攻撃表示モンスターを全て裏側守備表示にする!」

 

砂嵐がオオヒメ達を覆い囲み, 彼女達は襲い来る砂から隠れる━砂嵐が止むと, ダイのメインモンスターゾーンは4枚の裏側守備表示のカードがズラリと並んでいた。

唯一影響を受けないのはEXモンスターゾーンのリンクモンスター, イゾルデ。しかしイゾルデの攻撃力は1600━ステゴサイバーの守備力2400には届かない。

 

その光景を目撃したダイはショックの余り, 絶句していた。

 

「お前のモンスターが裏側表示になったことで, 装備魔法は全て破壊される」

装備魔法は裏側表示のモンスターには装備できない。故に, 対象を失った装備魔法は墓地に送られるのみ。

 

ダイは我を取り戻し, 歯軋りする。

「それでも時間稼ぎだ!メインフェイズ2で反転召喚すれば…」

「甘い。ダスト・フォースの効果を受けたモンスターの表示形式を, プレイヤーが変更することはできない」

「何?!」

 

ダイのフィールドには無用の長物となったモンスターが4体。

裏側表示のモンスターはリンク召喚の素材にできない。アドバンス召喚でもしない限り, ダイはこれらのモンスターを退かすことすらできない。

 

「く…」

ダイは苦悶の表情でドローカードを見る。何を引いたかは知らないが, この状況を覆せるものではないということは確かだ。悩み切った上, 彼は静かにターンを渡す。

 

「…ターンエンド」

 

TURN 8

源 LP 1000

手札: 2(ツインバレル・ドラゴン1, 不明1)

フィールド:

盾甲戦車 ステゴサイバー

 

ダイ LP 8000

手札: 1

フィールド:

聖騎士の追想 イゾルデ(EXモンスターゾーン)

オオヒメの御巫(裏側表示)

鏡の御巫ニニ(裏側表示)

珠の御巫フゥリ(裏側表示)

アークブレイブドラゴン(裏側表示)

 

「俺のターン, ドロー」

来た。防戦一方だったこの決闘(デュエル)だが, ようやく攻勢に入れる。粘り続けた末に掴み取ったこのチャンス, 今こそ活かす時!

 

「《死者蘇生》発動!墓地のデスペラード・リボルバー・ドラゴンを特殊召喚!」

ようやくか, と言いたげに地面を突き破ってデスペラードの巨体がフィールドに這い上がった。

 

デスペラード・リボルバー・ドラゴン

星8/闇/機械族

ATK 2800

 

「さらにチューナーモンスター, 《トップ・ランナー》を召喚!」

 

トップ・ランナー

星4/風/機械族・チューナー

ATK 1100

 

「レベル4のトップ・ランナーに, レベル6のステゴサイバーをチューニング。シンクロ召喚!再び咲き誇れ, 《フルール・ド・バロネス》!」

駿馬を乗りこなす女騎士が, 花弁を舞わせて駆け付ける。

 

フルール・ド・バロネス

星10/風/戦士族

ATK 3000

 

「バロネスの効果発動。ターンに1度, フィールド上のカードを破壊できる。俺は裏側表示となったオオヒメを選択!」

裏側表示となれども, 位置は変わらない。バロネスが剣先から風の衝撃波を繰り出し, 裏側表示のカードを破壊する。

「ち…オオヒメ!」

「そしてバトルフェイズ。デスペラードの効果発動!攻撃する代わりにコイントスを3回行い, 表の数だけモンスターを破壊する」

ホログラムのコインが空高く投げられ, フィールドの中心に並んで着地する。俺とダイは我先に結果を見ようと首を少し伸ばす。

 

『表』 『表』 『表』

 

「ぐっ!マジか…!」

「対象は3枚の裏側守備モンスター。『三連銃砲撃(トライ・ガン・キャノン・ショット)』, ファイア!」

デスペラードの三連リボルバーが続け様に連射され, ダイのメインモンスターゾーンは空地となる。

「デスペラードの効果により, カードを1枚ドロー。そしてバロネスでイゾルデに攻撃!『フルール・ド・ラプソディ』!」

 

「ぐおっ!」

ダイ LP 8000 → 6600

 

「さらに速攻魔法, 《アクションマジック- ダブル・バンキング》!手札を1枚捨てて発動。このターン戦闘でモンスターを破壊したバロネスは, もう一度攻撃が可能となる!」

「ハァッ!」

先程の突撃でダイの背後まで走り去ったバロネスが掛け声を挙げ, 方向転換してダイにもう一度斬りかかった。

 

「ぐはっ!」

ダイ LP 6600 → 3600

 

「俺はこれでターンエンド」

形勢逆転。耐えた甲斐があった。ダイのフィールドはガラ空き, 対して俺のフィールドには大型モンスターが2体。

カード効果で除去しようとすれば, バロネスによって無効化される。バトルフェイズに入ろうとすれば, デスペラードの除去を免れない。

 

「ドロ―…」

ダイがカードを引くと, 肩の力が緩むのが見えた。が, 抵抗を続ける。

「《やりすぎた埋葬》を発動。手札の《フェニックス・ギア・フリード》を捨て…」

「させない。バロネスの効果で無効にする」

バロネスが《やりすぎた埋葬》のカードを粉砕する。

「…ターンエンドだ」

 

「ドロ―。バトルフェイズ」

明白な勝負の行方を悟ったダイの顔は, 悔しさに溢れていたように見えた。

まだ俺がならず者だと勘違いしているのか知らないが…この後, 話をする必要があるみたいだ。

 

「デスペラードとバロネスの2体で攻撃!」

デスペラードが放つ援護射撃の中, バロネスが突撃する。花弁を剣に宿し, 重い一撃を喰らわす━

 

「うわああっ!!」

ダイ LP 3600 → 0

 

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