新たに召喚された騎士━《フルール・ド・バロネス》。
素性の知れない人間の青年, ダイはバロネスを今一度眺めると, 俺に視線を移す。
「…なるほど, それか君のエースカードか」
「今の所はな」
「そうか。残念だけど, そいつが出たところで何も変わっちゃない」
ダイはもう一枚の伏せカードを開く。
「トラップ発動!《御巫の契り》!デッキから御巫を特殊召喚し, 墓地の装備魔法を装備させる。《剣の御巫ハレ》を特殊召喚!」
舞うような炎の中から, 剣を振り回す赤髪の少女が躍り出た。
剣の御巫ハレ
星3/炎/戦士族
ATK 0
「契りの効果で召喚されたモンスターが場を離れた場合, 除外される。加えて墓地の《御巫舞踊━迷わし鳥》をハレに装備させる!」
ハレの背後で風が巻き起こり, 鶏のようなオーラが彼女の周りを纏う。
「これでハレはカード効果で破壊されない。さらに, ハレ自身の効果が起動する…デッキから御巫の装備魔法を手札に加える。《御巫の誘い
「…これで3体か」
3体の御巫が攻撃力3000のバロネスに攻撃すれば, 合計9000のダメージを受ける━━
「させるか。リバースカード・オープン。《威嚇する咆哮》!」
トラップカードから狂犬の吠えるような叫びが放たれ, 地響きを起こす。それを直に受けた御巫達は後退した。
「このターン, お前はバトルフェイズに入ることはできない」
「また防がれたか。やるな」
ダイはしてやられたかと言いたげに首を少し傾けて鼻で笑う。
「けど, 何も殴ることだけが御巫の芸じゃない。手札から装備魔法, 《御巫の誘い
バロネスの周囲に煌めく水滴が漂う。俺のフィールドから彼女の姿が消えていき, 対してバロネスの鏡像がダイのフィールドに浮かび上がる。
「《誘い
それは不味い。通すわけにはいかない。
「盗らせるかよ!バロネスの効果発動!」
俺の宣言と同時に, バロネスが正気を取り戻したかのように体勢を立て直す。
「カード効果の発動を無効にして破壊する!『フルール・ド・ノクチュルヌ』!」
バロネスが剣に花弁を纏わせて薔薇色の衝撃波を放ち, 水鏡と共に《誘い
「まだだ。オオヒメの効果発動!墓地の装備魔法を, フィールドの任意のモンスターに装備させる!」
オオヒメが両手を上に掲げると, 再びバロネスの周囲に煌めく水滴が浮かび上がった。ダイの意図は明白━墓地の《誘い
バロネスの効果無効は1度きりしか使えない━故に奪われれば終わりも同然。
「トラップ発動!《亜空間物質転送装置》!エンドフェイズ時までバロネスを除外する!」
バロネスの姿が, 空中に現れた異次元に続くポータルへと吸い込まれた。
「なら, アックス・ドラゴニュートに《誘い
異次元へと退避したバロネスの代わりに, 隣にいたアックス・ドラゴニュートが相手フィールド上へと移動する。
「墓地の《伝承の大御巫》は, 除外することによりデッキから《御巫》カードを墓地に送ることができる。オレが墓地に送るのは, 《御巫の
アックス・ドラゴニュート(装備: 《脆刃の剣》)
DEF 1200 → ATK 4000
「ターン終了時に亜空間物質転送装置の効果が切れ, バロネスがフィールドに戻る」
TURN 4
源 LP 8000
手札: 1(ツインバレル・ドラゴン1)
フィールド:
フルール・ド・バロネス
ダイ LP 8000
手札: 1(焔聖騎士-リナルド1)
フィールド:
聖騎士の追想-イゾルデ(EXモンスターゾーン)
アックス・ドラゴニュート
オオヒメの御巫
鏡の御巫ニニ
剣の御巫ハレ
-脆刃の剣(装備: アックス・ドラゴニュート)
-御巫の誘い
-御巫の
-御巫舞踏-迷わし鳥(装備: 剣の御巫ハレ)
-伏せ1
「俺のターン, ドロー!」
この状況をどうにか覆さないと…と, 思い始めた須臾。計画を練るどころがドローカードすら見る暇もなく, ダイの猛攻は続いた。
「この瞬間, ニニの効果発動!このターンのエンドフェイズまで, 相手モンスター1体のコントロールを得る!」
「何?!」
鏡の御巫, ニニが筆を宙に振るう。筆の軌跡が楕円形を描き, キラキラ光る水滴を背景に鏡を作り出した。
鏡は誘惑的な光を照らし出し, バロネスはそれに見惚れてしまう。
「ちょこまかと…!盗ることしか頭にねぇのか!重ねてバロネスの効果発動!『フルール・ド…」
「そこだ。トラップ発動!《無限泡影》!」
バロネスが剣を持ち上げた途端, 罠カードから電子の網が放たれ, バロネスの動きを封じた。身動きの取れないバロネスは, なす術無くニニの呪術に嵌り, 相手フィールドへと姿を移された。
「ち…!それが狙いか!」
無限泡影。相手モンスターの効果を無効にする罠カード。
悪い状況から更にどん底に叩き落された。ニニのコントロール奪取はこのターン中のみ有効だが, ターン終了時に戻ってくるのは無力化されたバロネス━御巫達の格好の的でしかない。
ただでさえ突破が難しい御巫達を並べられ, 反撃の活路も見事に潰された。
「そしてオオヒメの効果も重ねて発動。墓地の《御巫の
「…強いな, こいつ」
小声が漏れる。手強い相手だ━本来のヴァレット達を以てしても, 戦局を覆すのは難しいだろう。
メインフェイズに入り, ここで初めてドローしたカードを見下ろす。
厳しい。しかし, これくらいしかできることがない━賭けるとするか。
「《カードガンナー》を攻撃表示で召喚!」
両腕がブラスターを備えた小さなロボットが着地する。
カードガンナー
地/星3/機械族
ATK 400
「カードガンナーの効果発動。デッキの上から3枚までのカードを墓地に送り, 墓地に送った数1枚につき攻撃力を400アップさせる」
このデッキを握って2戦目。入っているカードは全て把握しているつもりだが, この状況を打開するカードがあるかどうかまでは思い出せない。
3枚のカードを捲り, それを見る━
「なるほど。俺はターンエンドだ」
ニニの効果が切れ, バロネスがフィールドに舞い戻る。同時に, 《伝承の大御巫》の効果でオオヒメが消滅してダイの手札に戻り, 《御巫の祓舞》は破壊される。
「そろそろジリ貧か。なら, 手早く終わらせる」
ダイがカードをデッキトップに当てた。
「オレのターン, ドロー…」
ダイを睨んでいた目を大きく見開く。今だ。
「この瞬間!フルール・ド・バロネスの効果発動!」
「なっ…?」
バロネスの周りに花弁が吹き荒れる。すると, 花弁の内にあった騎士と駿馬の姿が消滅しつつあった。
「何が起きている…?」
「バロネスの効果。スタンバイフェイズ時に自身をエクストラデッキに戻し, 墓地のレベル9以下のモンスターを特殊召喚する」
「レベル9以下…?君が今まで召喚したモンスター達では, 御巫を突破することなどできないはず!」
「それは違う」
「何?」
俺は墓地のモンスターカード1枚を取り出し, 彼に見せる。
「《カードガンナー》の効果で墓地に送ったコイツがいる。来い, 《アークブレイブドラゴン》!」
花弁の柱は開放され, そこから飛翔せし一騎の竜が雄叫びを上げた。
飛ぶ後に黄金の輝きを残し, 正しき光をフィールドに齎した。
アークブレイブドラゴン
星7/光/ドラゴン族
ATK 2400
「アークブレイブドラゴンの効果発動。このカードが墓地から特殊召喚された時, 相手フィールド上の表側表示の魔法・罠カードを全て除外する」
「な?!」
「焼き払え, アークブレイブ!『アークフレア・クレンズ』!」
アークブレイブの放つ白い炎が, ダイの装備魔法を尽く消し炭にした。炭の残滓から漂う光のエネルギーがアークブレイブに集約される。
「この効果で除外したカード1枚につき, アークブレイブの攻撃力は200アップする!」
アークブレイブドラゴン
ATK 2400 → 3000
これでダイのフィールドに残ったのは攻撃力0の御巫が2体と, EXモンスターゾーンのイゾルデ。《誘い
「…ただの時間稼ぎだ。墓地の2枚目の《伝承の大御巫》を除外し, デッキから《御巫かみかくし》を墓地に送る。そしてフィールドに戦士族・炎属性のハレが存在することにより, 手札からリナルドを特殊召喚!」
不測の事態を臆することなく, ダイは焔の聖騎士を場に出す。
焔聖騎士-リナルド
星1/炎/戦士族
ATK 500
「自身の効果で特殊召喚されたリナルドはチューナーモンスターとして扱う。レベル1のリナルドに, レベル3のハレをチューニング。シンクロ召喚!《
虹色の光を四方に照らす, 純白の無機質な天使が姿を現す。
虹光の宣告者
星4/光/天使族
DEF 1000
「…そりゃあ, ちょっと不味いな」
俺は呟く━或真とのトレーニングで遭遇したモンスターの1体。自身を墓地に送ることであらゆる効果を無効にするカード。
「その瞬間, 俺は墓地の《仁王立ち》を発動する!」
「カードガンナーで墓地に送ったカードか!」
「その通り。《仁王立ち》を墓地から除外し, 自分フィールド上のモンスター1体を選択する。相手はこのターン, そのモンスターしか攻撃できない。俺は《カードガンナー》を選択」
カードガンナーが前進し, 攻撃してみろとダイのモンスター達を挑発する。
カードガンナーの攻撃力は僅か400。戦闘破壊は容易いが, そうすればバトルをそれ以上進めることはできない。その上, 御巫達が攻撃しても屁にもならぬダメージしか与えられない。
伏せカードも無く, 手札も1枚━それも, デスペラードの効果で手札に加えた《ツインバレル・ドラゴン》であることはダイにも明らかだ。
これ以外の防御は俺に残されてない━少なくとも, そう見えるはず。
そして, 事は予想通りに運んだ。
「《
デクレアラーが身を消滅させて放った光線がカードガンナーを引き下がらせた。これで, ダイの攻撃は自由となる。更に…
「デクレアラーが墓地に送られた場合, デッキから儀式魔法…《御巫神楽》を手札に加える」
今までは《伝承の大御巫》で召喚されていたが, 本来オオヒメはレベル6の儀式モンスター。リリース分を確保するつもりだろうが…
「墓地の《御巫かみかくし》は除外することで, 除外された御巫を特殊召喚できる。ハレを特殊召喚!」
剣の御巫ハレ
星3/炎/戦士族
ATK 0
「手札のオオヒメの効果を発動。デッキから2枚目の《御巫の
アークブレイブの効果を受けてなお, リカバリーが激しい。
「
赤髪の少女と交代するように, 今度は薄緑の旋風を纏いし狐耳の少女が躍り出た。
珠の御巫フゥリ
星3/風/サイキック族
ATK 0
「フゥリが存在する限り, 御巫カードはカード効果の対象にならない。そしてフゥリが装備カードを得たことで, デッキから《御巫》の罠カードを手札に加える。《御巫かみくらべ》を手札に。そして, 儀式魔法発動!《御巫神楽》!」
「…来るか」
「手札のハレ, 場のニニを生贄に。これこそが真の神楽。御姿を
ハレ・ニニがそれぞれの力を天に集約させ, 炎と水が混ざりし中から, 見慣れた姿━オオヒメが聖なる光と共にフィールドに招来した。
オオヒメの御巫
星6/光/天使族
ATK 0
「《御巫神楽》でオオヒメの儀式召喚に成功した時, 墓地に存在する装備魔法の種類の数1つにつきフィールドのカードを1枚破壊し, 更に破壊した数1枚につき相手ライフに1000ダメージを与える」
ダイはカードガンナーに指差す。
「墓地の装備魔法は3枚…だが, オレはカードガンナーの1枚を破壊し, 君に1000ダメージを与える。『大日昇天』!」
オオヒメが放った釘指すような鋭利な光がカードガンナーに激突, 爆発とともにロボットが消滅する。そして光は貫通して俺にも当たる。
「ぐっ!」
源 LP 8000 → 7000
「カードガンナーがフィールドで破壊された時, カードを1枚ドローできる」
「…まだだ。《御巫の
鏡の御巫ニニ
星3/水/魔法使い族
ATK 0
俺はため息を吐いて, フッと笑う。
「…見事に振り出しに戻ったな」
状況は前ターンと全く同じ。俺のフィールドには攻撃力3000のモンスターが単騎。対するダイのフィールドには御巫が3体。
「バトル!フゥリとニニで, アークブレイブドラゴンに攻撃!」
6000ダメージか。こればかりは受けるしか…!
暴風と水流の応酬を喰らい, 俺は後ろに押し返される。
「ぐおっ…!」
源 LP 7000 → 1000
「今度こそ守りの手段は無いようだな。だったら…オオヒメで攻撃!『真言・天照御来光』!」
祈祷の光━悪を祓い, 世界を照らす衝撃波。
それでも, 俺には打つ手がまだあった。
「墓地の《
「…まだ何か隠して…っ!」
ダイがまたもや予想外の防御札に仰天する。その瞬間, 地中から現れた鋼鉄の巨体が尾を振るい, アークブレイブへと向けられた光線を弾き飛ばした。
盾航戦車ステゴサイバー
星6/闇/恐竜族
DEF 2400
「ステゴサイバーは墓地に存在する場合に, 相手モンスターによる戦闘ダメージを無効にして墓地から特殊召喚できる」
「くどいな。いつもギリギリで生き残って…それでもまだ戦うつもりか?」
ダイが残り1枚の手札をフィールドに伏せ, ターン終了の合図を出す。
「悪ぃな。諦めの悪いタイプでね」
「珍しいな, 君。今までのクシャトリラと
「そんな連中と一緒にするな。それに俺は傭兵でも何でもない」
「…さぁ。口先だけなら何とでも言える」
ダイは依然として俺に対する敵意を保っており, 一歩も引き下がるつもりはないようだ。
「君のターンだ。カードを引け」
TURN 6
源 LP 1000
手札: 2(ツインバレル・ドラゴン1, 不明1)
フィールド:
アークブレイブドラゴン
盾航戦車ステゴサイバー
ダイ LP 8000
手札: 0
フィールド:
聖騎士の追想 イゾルデ(EXモンスターゾーン)
オオヒメの御巫
鏡の御巫ニニ
珠の御巫フゥリ
-御巫の火叢舞(装備: 鏡の御巫ニニ)
-御巫の水舞踏(装備: 珠の御巫フゥリ)
-伏せ1
「俺のターン!」
先のターンのカードガンナーで, トップから墓地に送った3枚は天命だった。今の俺にはそれ以上の天命が必要だ。
窮地に追い込まれるのは初めてじゃない。今更焦るようなことでもない。
デッキトップに指を当て, 念じる。
━応えろ, 俺のデッキ。
ドロー, の一言を言わず。無言でカードを引いた。
伸ばした先のカードに, ゆっくりと視線を移す。
「………」
「…何か引けたの?」
横で立つシェイレーンが尋ねる。俺を疑うような表情で, 彼女はぶっきらぼうに言った。それもそうだ━俺の勝敗に彼女の計画が掛かっているのだから。
俺は手札を今一度眺めてから彼女を横目で一瞥する。が, 答えることはしない。
ディスクに1枚のカードをセットする。アークブレイブの背後に, 裏側表示のシルエットが出現した。
「ターンエンド」
「はぁ?!ちょっとあんた?!」
シェイレーンが叫び出す。
「何もしないでターンエンドって, 諦めるつもり?あんた, ここで負けたらどうなるか…」
俺は喚くシェイレーンを横目で見て, 手短に彼女に言う。
「静かにしてくれ。諦めてなどいない」
シェイレーンはまだ納得のいかない表情で横で何やら喚いているが, 何を言ってるのか聞き取れない。
一方, ダイは不可思議な顔を浮かべて俺を眺める。
「…何を企んでいる?」
「さぁな」
俺は肩を竦めて答えた。それを見たダイは尚更警戒心を高める。
「いいさ, じきにわかることだ。エンドフェイズ時, 《御巫かみくらべ》を発動。デッキから《御巫の誘い
アークブレイブが水滴に囲まれ, 相手フィールドへと連れ去られる。
「そして, オレのターン。ドロー」
ダイはフィールドを見渡す。今, 俺のフィールドに存在するのは守備力2400のステゴサイバーが1体。
どの御巫でも攻撃すれば俺のライフは容易く尽きる。
「オオヒメの効果発動。墓地の《祓舞》をオオヒメに装備。バトルフェイズ!」
オオヒメが攻撃体勢に入る。ステゴサイバーのエネルギーを吸収し, 最後の攻撃━『真言・天照御来光』を放たんとする。
「この攻撃を凌いだところで, オレは3回の攻撃を残している。今度こそ正真正銘, 終わりだ!」
「オオヒメの御巫で, ステゴサイバーを攻撃!」
「OK!一気に決めるよ, ダイちゃん!」
オオヒメが主に応え, 呪文を唱える。太陽の如く眩い光が天井に溜まる━
「『真言・天照御来光』!」
「せいやーっ!!」
オオヒメの渾身の掛け声と共に俺に降り注ぐ光の衝撃波。
ここだ。
「リバースカード, オープン!」
「!」
「《砂塵のバリア- ダスト・フォース》!」
オオヒメの攻撃がステゴサイバーに激突する寸前, フィールドの中心に砂の群れが出現する。
砂は竜巻のように勢いよく回転し, まるで砂漠の砂嵐の如く視界を霞ませ, 鈍い雑音をトンネル中に響かせた。
「ダスト・フォースだと?!」
ダイは戦慄した。それはそう━今まで俺が行ってきた妨害とは, また違う性質のモノ。
ダイの盤面は攻撃・防御の両者に長けたものだ。俺の強力なモンスターの力を逆手に取り, 肝心の効果による除去も無力化できる。攻撃を封じても, 返しのターンで俺の反撃を牽制できる。
今までの妨害は御巫に対する根本的な解決とは程遠かった。
しかし, 装備魔法・そして自身のモンスター効果に依存する御巫達には, 大きな弱点がある━
「ダスト・フォースは相手モンスターが攻撃宣言した時に発動可能。相手の攻撃表示モンスターを全て裏側守備表示にする!」
砂嵐がオオヒメ達を覆い囲み, 彼女達は襲い来る砂から隠れる━砂嵐が止むと, ダイのメインモンスターゾーンは4枚の裏側守備表示のカードがズラリと並んでいた。
唯一影響を受けないのはEXモンスターゾーンのリンクモンスター, イゾルデ。しかしイゾルデの攻撃力は1600━ステゴサイバーの守備力2400には届かない。
その光景を目撃したダイはショックの余り, 絶句していた。
「お前のモンスターが裏側表示になったことで, 装備魔法は全て破壊される」
装備魔法は裏側表示のモンスターには装備できない。故に, 対象を失った装備魔法は墓地に送られるのみ。
ダイは我を取り戻し, 歯軋りする。
「それでも時間稼ぎだ!メインフェイズ2で反転召喚すれば…」
「甘い。ダスト・フォースの効果を受けたモンスターの表示形式を, プレイヤーが変更することはできない」
「何?!」
ダイのフィールドには無用の長物となったモンスターが4体。
裏側表示のモンスターはリンク召喚の素材にできない。アドバンス召喚でもしない限り, ダイはこれらのモンスターを退かすことすらできない。
「く…」
ダイは苦悶の表情でドローカードを見る。何を引いたかは知らないが, この状況を覆せるものではないということは確かだ。悩み切った上, 彼は静かにターンを渡す。
「…ターンエンド」
TURN 8
源 LP 1000
手札: 2(ツインバレル・ドラゴン1, 不明1)
フィールド:
盾甲戦車 ステゴサイバー
ダイ LP 8000
手札: 1
フィールド:
聖騎士の追想 イゾルデ(EXモンスターゾーン)
オオヒメの御巫(裏側表示)
鏡の御巫ニニ(裏側表示)
珠の御巫フゥリ(裏側表示)
アークブレイブドラゴン(裏側表示)
「俺のターン, ドロー」
来た。防戦一方だったこの
「《死者蘇生》発動!墓地のデスペラード・リボルバー・ドラゴンを特殊召喚!」
ようやくか, と言いたげに地面を突き破ってデスペラードの巨体がフィールドに這い上がった。
デスペラード・リボルバー・ドラゴン
星8/闇/機械族
ATK 2800
「さらにチューナーモンスター, 《トップ・ランナー》を召喚!」
トップ・ランナー
星4/風/機械族・チューナー
ATK 1100
「レベル4のトップ・ランナーに, レベル6のステゴサイバーをチューニング。シンクロ召喚!再び咲き誇れ, 《フルール・ド・バロネス》!」
駿馬を乗りこなす女騎士が, 花弁を舞わせて駆け付ける。
フルール・ド・バロネス
星10/風/戦士族
ATK 3000
「バロネスの効果発動。ターンに1度, フィールド上のカードを破壊できる。俺は裏側表示となったオオヒメを選択!」
裏側表示となれども, 位置は変わらない。バロネスが剣先から風の衝撃波を繰り出し, 裏側表示のカードを破壊する。
「ち…オオヒメ!」
「そしてバトルフェイズ。デスペラードの効果発動!攻撃する代わりにコイントスを3回行い, 表の数だけモンスターを破壊する」
ホログラムのコインが空高く投げられ, フィールドの中心に並んで着地する。俺とダイは我先に結果を見ようと首を少し伸ばす。
『表』 『表』 『表』
「ぐっ!マジか…!」
「対象は3枚の裏側守備モンスター。『
デスペラードの三連リボルバーが続け様に連射され, ダイのメインモンスターゾーンは空地となる。
「デスペラードの効果により, カードを1枚ドロー。そしてバロネスでイゾルデに攻撃!『フルール・ド・ラプソディ』!」
「ぐおっ!」
ダイ LP 8000 → 6600
「さらに速攻魔法, 《アクションマジック- ダブル・バンキング》!手札を1枚捨てて発動。このターン戦闘でモンスターを破壊したバロネスは, もう一度攻撃が可能となる!」
「ハァッ!」
先程の突撃でダイの背後まで走り去ったバロネスが掛け声を挙げ, 方向転換してダイにもう一度斬りかかった。
「ぐはっ!」
ダイ LP 6600 → 3600
「俺はこれでターンエンド」
形勢逆転。耐えた甲斐があった。ダイのフィールドはガラ空き, 対して俺のフィールドには大型モンスターが2体。
カード効果で除去しようとすれば, バロネスによって無効化される。バトルフェイズに入ろうとすれば, デスペラードの除去を免れない。
「ドロ―…」
ダイがカードを引くと, 肩の力が緩むのが見えた。が, 抵抗を続ける。
「《やりすぎた埋葬》を発動。手札の《フェニックス・ギア・フリード》を捨て…」
「させない。バロネスの効果で無効にする」
バロネスが《やりすぎた埋葬》のカードを粉砕する。
「…ターンエンドだ」
「ドロ―。バトルフェイズ」
明白な勝負の行方を悟ったダイの顔は, 悔しさに溢れていたように見えた。
まだ俺がならず者だと勘違いしているのか知らないが…この後, 話をする必要があるみたいだ。
「デスペラードとバロネスの2体で攻撃!」
デスペラードが放つ援護射撃の中, バロネスが突撃する。花弁を剣に宿し, 重い一撃を喰らわす━
「うわああっ!!」
ダイ LP 3600 → 0