910番 LP 8000
A LP 8000
「先攻は僕が貰う。フィールド魔法, 《暴走召喚陣》を発動!」
Aがカードを発動した瞬間, 地面に赤い紋章が現れる。
これはー前回も見た。彼の使う《召喚魔術》の紋章だ。
「このカードを発動時, デッキから《召喚師アレイスター》を手札に加える。さらに, この陣地が場にある限り, 僕の融合召喚はいかなる干渉を受け付けない」
融合召喚を主軸とした戦術は変わっていないらしい。しかも, 融合召喚に対して効果を発動されないのは, 上級モンスターの安全な着地を保障するということ。厄介かもしれん。
「続けよう。手札に加えたアレイスターを召喚!」
召喚師アレイスター
星4/闇/魔法使い族
ATK 1000
「アレイスターの召喚時, 《召喚魔術》を手札に加える」
早くも来るか, 融合召喚。
だが, 俺の予測はすぐに外れることになる。
「見せてあげよう。現れよ, 獣を喚起せしサーキット!」
「何?!」
Aが空高く指差すと, 召喚魔術の紋章が現れ, すぐに姿を変形させると見覚えのある構造ーリンクサーキットに変わった。
「リンク召喚だと?」
「そうだ。これを操れるのは君だけではない。僕はアレイスターをリンクマーカーにセット。リンク召喚!リンク1, 《転生炎獣アルミラージ》!」
サーキットから炎が降り注ぎ, そこから小さなウサギ型のモンスターが地面に降り立った。
転生炎獣アルミラージ
リンク1(右下)/炎/サイバース族
ATK 0
「何のつもりだ。そんなザコモンスターを…」
「じきにわかるさ。僕はアルミラージを再度, リンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク1!《セキュア・ガードナー》!」
炎の波動となったアルミラージはリンクサーキットに取り込まれ, 今度は電子の青い光から, 両肩に盾を構えたロボットのようなモンスターが出現した。
セキュア・ガードナー
リンク1(右)/光/サイバース族
ATK 1000
わざわざ2回のリンク召喚を経て出したのが攻撃力1000の, 特に何の変哲もないリンクモンスターだと?
「《召喚魔術》発動!墓地のアレイスター, 及びフィールドの光属性モンスターのセキュア・ガードナーを除外!」
除外を介する融合ということは, 前回と同じ…
来る, 召喚獣が。
「空を駆ける神秘の戦車よ。愚鈍なる俗世に顕現し, 神理を遂行せん!融合召喚!」
「疾走せよ。《召喚獣メルカバー》!」
2体のモンスターが暴走召喚陣に組み込まれ, 雷鳴が響くと同時に上空にポータルが開かれた。そこから勢いよく躍り出たのは, 白銀の鎧に包まれた
召喚獣メルカバー
星9/光/機械族
ATK 2500
「墓地の召喚魔術の効果。除外されているアレイスターを手札に戻し, 召喚魔術のカードをデッキに戻してシャッフルする。僕はカードを2枚伏せてターンエンド。さぁ, 君のターンだ」
1体のモンスターだけでターンを渡すか。前回の連続融合とは趣が些か違うか。
ならば容赦はしない。一気に超火力を叩きつけ, 一撃で沈めてやろう。
「俺のターン, ドロー」
「この瞬間, 永続罠発動!《融合塹壕-フュージョン・トレンチ-》!」
《融合塹壕-フュージョン・トレンチ-》 (※アニメオリジナル)
永続罠
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
お互いのフィールドの融合モンスター以外のモンスターは攻撃できない。
②:1ターンに1度、そのターンに融合モンスター以外のモンスターを
召喚・特殊召喚していないプレイヤーの融合モンスター1体は直接攻撃できる。
「このカードが存在する限り, 融合モンスター以外のモンスターは攻撃できない」
「チッ。小賢しい…」
ヴァレルソードでメルカバーを蹴散らそうと思っていたが, あのトラップカードの所為で, 早速その目論見は阻止された。
今の手札にはあれに対する回答がないし, 何よりも俺のデッキには融合モンスターはいない。
見事に戦術を封殺されたか…ならば, 守りに転じるしかない。
「マジックカード《トレード・イン》発動。手札のレベル8モンスターを墓地に送り2枚ドロー。さらに速攻魔法《クィック・リボルブ》発動!デッキから《オートヴァレット・ドラゴン》を特殊召喚!」
オートヴァレット・ドラゴン
星3/闇/ドラゴン族
ATK 1600
「顕現せよ, 未来を切り拓くサーキット。召喚条件は, レベル4以下のドラゴン族が1体。オートヴァレット・ドラゴンをリンクマーカーにセット。リンク召喚, リンク1, 《ストライカー・ドラゴン》!」
ストライカー・ドラゴン
リンク1(左)/闇/ドラゴン族
ATK 1000
「ストライカー・ドラゴンの効果を発動すると同時に, リンク召喚に成功したことにより, 手札の《
名前の通り, まさに身体全体が長い弾帯のようなドラゴンがフィールドに這い出る。自らの身体で隔壁を作るようにして, メルカバーの前に立ちはだかった。
星6/地/ドラゴン族
DEF 2100
Wall Counter 0→2
「引き続き, ストライカーの効果でデッキから《リボルブート・セクター》を手札に加える」
「ほう…そのモンスター。僕も攻撃ができなくなるわけか…」
「その通り。
滅多に召喚することのないモンスターだが, せめてこいつで一時の膠着状態を作れたとは感じる。俺は攻撃できないが, 相手も攻撃できない。それに, いざとなれば自分自身をリンク素材にしてしまえば良い。
「カードを1枚セットして, ターンエンドだ」
TURN 2 910番
手札:4
フィールド:
ストライカー・ドラゴン (EXゾーン)
弾帯城壁龍
伏せ2
A
手札:3
フィールド:
召喚獣メルカバー
暴走召喚陣
融合塹壕- フュージョン・トレンチ
伏せ1
「おや, 展開はしないのかい?それが君のデッキの得意技だろうに...まぁ, 攻撃できなければ展開なんて意味がないだろうね」
「図ったな。俺が融合モンスターを持たないと分かっていて」
「当然だ。再戦に備えて策を立てるのは。ドロー」
Aはドローカードを一目した。
「攻撃できないなら, 膠着状態に持ち込む寸法か...だけども。その程度の守りじゃ甘いね。《月の書》発動!対象は
「ちっ!」
裏側表示になってしまえば, 当然攻撃を封じる効果も消える。
「そしてアレイスターを再度召喚。《召喚魔術》を手札に加え, そのまま発動!素材とするのは場のアレイスターと, 墓地の炎属性モンスター, アルミラージ!」
そのために最初のターンでアルミラージを召喚していたのか。連続リンク召喚の目的は, 墓地に融合素材を確保することか!
「煉獄の炎を司りし悪鬼達よ, 終わりなき破壊をもたらせ!融合召喚!《召喚獣プルガトリオ》!」
魔法陣が蒼き炎に包まれると, そこからさらに小さな陣が3つ現れ, 3つの悪魔のモンスターが召喚される。見るからに邪な気配を放っているモンスターだった。
召喚獣プルガトリオ
星7/炎/悪魔族
ATK 2300
「プルガトリオは, 相手フィールド上のカード1枚につき攻撃力が200上がる。君の場にはカードが3枚。よって攻撃力は600アップ!」
召喚獣プルガトリオ ATK 2300→ 2900
「まだだ。僕はトラップを発動!《おジャマトリオ》!」
場に3体のトークンが召喚される。
おジャマトークン(x3) DEF 1000
「ここで, それは…!」
「君の場にカードが増えたことにより, プルガトリオの攻撃力は更に上昇!」
囚人相手にこのカードを使われたことがある。このトークンらは破壊されると1体につき300のダメージを俺に与える。
だが, 単純に増やしたところで攻撃力が上がるだけだ。俺のモンスターの攻撃力をとうに上回っているのに, 今この効果を使うのはどういう思惑だ?
召喚獣プルガトリオ ATK 2900→ 3500
「バトルフェイズ。プルガトリオは相手モンスター全てに攻撃ができ, さらに守備表示モンスターを攻撃した場合, 貫通ダメージを与える!」
「何?!」
不味い。非常に不味い。
戦闘破壊ごとにプルガトリオの攻撃力は徐々に下がっていくと雖も, トークンの効果ダメージと合わされば大惨事になる。それだけは阻止しなければ。
「トラップ発動!《
「無駄だよ。メルカバーの効果を発動!相手がカードを発動した時, それと同種類のカードを捨てることで, その発動を無効にする!僕は手札の罠カード《
「くっ…!」
「『
メルカバーがその剣を天に掲げると, 空から雷が降り注ぎ, 《巨神封じの矢》を灰塵に帰してしまう。
「これで邪魔はなくなった…プルガトリオよ, 暴れるがいい!おジャマトークン達に攻撃!『大詠唱-
プルガトリオの周りで燃えていた蒼い炎が勢いを増し, 渦となっておジャマトークン達の周りを囲み, 地面が割れて炎柱が天へと打ち上がる。
「ぐっ…!がっは…っ!」
熱い。本当に身体が炎に触れているどころか, まるで燃やされているようだ。
これはソリッドビジョンの衝撃なんかじゃない。プルガトリオの炎が実体として俺自身にも及んでいるのだ。実際に身体は燃えていないものの, 火傷のような激痛が全身を襲う。まるで…命そのものが削られていくような感覚だ。
「プルガトリオはトークンを破壊する度に攻撃力が200下がるから, 与えた貫通ダメージは2500, 2300, 2100。更におジャマトークンは破壊された時, 1体につきコントローラーに300のダメージを与える。よって合計ダメージは7800」
Aは俺が苦しむ姿を歯牙にも掛けず, 淡々と効果の説明を行う。
910番 LP 8000→ 200
召喚獣プルガトリオ ATK 3500→ 2700
「ぐ…」
膝を突いた。冬の冷気は熱い身体を潤すどころが, 痺れるような刺激を染み込ませてきて激痛を更に悪化させる。
落ち着け, まだ生きている, 深呼吸しろ。
カードを落としそうになるが, 心を何とか落ち着かせてゆっくりと立ち上がる。
「おや, あれだけを喰らってまだ立ち上がるか…どのみち君は終わりだ。フュージョン・トレンチの効果を発動!融合召喚以外の特殊召喚を行っていない場合, 僕の融合モンスター1体は直接攻撃できる。メルカバーを選択だ」
メルカバーが勢いよく掛け声を上げると, 突撃準備に入る。
「神の車輪が一撃…フィナーレに相応しい。行け, メルカバー!」
メルカバーが剣に光を集積させると, それは一本の鋭利な光刃と化し, 神の車輪は俺に焦点を合わせて一直線に突進してくる。
「裁きの剣!『
メルカバーが剣を振り下ろす寸前のところだった。
眼前に小さな影が瞬間移動したかのように現れる。
「何?!」
鳴り響く鐘の音。
それは, 不思議な波動をフィールドに放つ。その音を聞いたメルカバーは何かを悟ったかのように唐突に剣を納め, ゆっくりと後退した。
バトルフェーダー
星1/闇/悪魔族
DEF 0
「お前の直接攻撃時...こいつを手札から特殊召喚していた。バトルフェーダーは, 相手モンスターの直接攻撃時に手札から特殊召喚できる。更に, このターンのバトルフェイズは終了される」
「…計算外だ。そんなカードを持っていたとは…」
Aは苦笑いする。
「だが, どのみち君は攻撃できない…次のターンで終わりだ。墓地の召喚魔術を発動し, 手札にアレイスターを, デッキに召喚魔術を戻す。これでターンを終了する」
TURN 3
910番
手札: 3
フィールド:
ストライカー・ドラゴン(EXゾーン)
バトルフェーダー
弾帯城壁龍(裏側表示)
伏せ1
A
手札: 2
フィールド:
召喚獣メルカバー
召喚獣プルガトリオ
暴走召喚陣
融合塹壕- フュージョン・トレンチ
手札の3枚を見る。展開こそできるが, 盤面を覆す火力が足りない。一方で, フュージョン・トレンチのお陰で火力は意味をなさない。
墓地のオートヴァレットの効果ならば破壊する方法はなくはないが, メルカバーの存在がある。
それに, 中途半端な展開もプルガトリオのお陰で命取りになる。
ー運任せは, 嫌いだ。
デッキトップに指を当てた時, 決闘の様子を静観していた666番が初めて口を開いた。
「怖い?負けるのが」
「何...?」
俺を打ち負かした彼女が言うと嫌味にも聞こえて少々不愉快だったが, 横目で彼女を見ながら耳を傾ける。
「恐れを捨てなさい。恐れこそが, 敗北への最大の原因だから」
「そんな悠長なことを言ってられるのが, 羨ましい限りだ」
「悠長?否。貴方も言ってたでしょう, 運命は幻想だって。それはどうして?」
「……」
しばらく考え込んでから, 俺ははっきりと答えた。
「運命などない。道は自分で切り拓くものからだ」
666番はそう聞くと, 満足したかのような笑みを浮かべる。
「そう。ならできるわよね」
彼女は続けた。
「敗北の運命なんてものはない。全てが自分の作り出す必然なら, 恐れる理由なんてない」
「言われるまでもねぇ」
カードを引く。それが見えた瞬間ー先程までの恐れが一気に消沈した。
「弾は揃った。残るは…お前を撃ち落とすことだけだ!」
「!!」
Aが戦慄する中, 奴を照準に捉える。
一度でも捉えた獲物は絶対に逃さない。
「見せてやる。弾丸竜の真価を!」