十人目?の超能力者(レベル5)   作:凪子22

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十人目?の超能力者(レベル5) 2話

第五学区

 

某大学地下施設 時刻19:00

「あぁ!やっと来てくださいました!いやぁびっくりしましたよ…?????…あのーこちらの方は…」

「ご安心ください、ただの都市伝説です。」

廊下を小走りで駆け寄り徹夜が続きそこにいるだけで疲労困憊と言わんばかりの目の下にクマを蓄えくたびれた様子の細身で猫背の中年教授は目の前の光景が一瞬過労による夢なのではないかと自分を疑った

 

「こんばんは、垣根帝督です」

「垣根帝督」と名乗る彼は180㎝はある長身でスーツを身にまとい一見ホストに見えるが穏やかな表情で好青年のようにあいさつをしてきたこの若者の全体的な色素が薄かったのである。

 

数時間前 第13学区

冷静さ取り繕いながら銀フレーム眼鏡の職員はわくわく感と気まずさで高揚感を抑えるのに必死であった「カブトムシ、いや垣根帝督を施設に連れていけ」という理事長の命令に

(カブトムシって何ぃぃぃぃ!!??)

(しかし!レベル5を二人も拝める!?ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉ!!)

と内心考えている事とは裏腹に冷静な顔をした超能力者オタクの職員は13学区にいる小学生達から聞いたカブトムシの都市伝説、さすがに道の往来では羞恥心が煽られてしまうので路地裏に入り

「カブトムシさん、たすけてぇー…」と半信半疑で言ってみたら

「お困りごとですか?」

(嘘っ!マジ!?)

振り返ると目の前に白いカブトムシが現れたのである。

 

「そのぉ…ごほん、垣根帝督って人ご存じですか?」

自分でも何を言っているのか分からないが正直この現状も分からない

「私が垣根帝督ですが」

サッカーボール位の大きさのカブトムシの体から瞳が緑色で身長180㎝位のホストのようにも見える白い男が現れた

「…え?」

これにはさすがに冷静な顔を取り繕えなかった

 

 

時は戻り大学施設、地下の実験施設に向かう廊下で中年教授は苦笑いを浮かべながら経緯を説明しだす。

「本当は併設してある大学病院の個室の方がいいんでしょうが、ウサギのようなものが溢れ返ってしまうので今の実験場に移動させています。」

 

「3日前搬送され、ケアを行いながら崩壊を引き起こしているとのことでしたので脳波を検査していたのですが、睡眠状態にもかかわらずレベル5と同じかもしくはそれ以上の演算処理のデータが出てきましてねぇ…しかも崩壊の影響も出ていないときた」

「未来予知の研究はあまり進んでいないのもあってうちの設備では中々解析が追っつきませんで…強制的に目覚めさせることもできなくはないですが、それだと負荷がかかっているPCをいきなりシャットダウンさせるようなものですから。自然に目覚めるの待つしかできなくてですね、ハハハ…」

申し訳なさそうに頭を掻きながら苦笑している。元々お人好しな所があるのだろう、声から歯がゆさを感じる。

 

「専門の施設に移送したほうがいいとこちらとしても判断せざるを得ませんでした…いやぁ力不足で申し訳ございません。」

「移送とのことですので、今は栄養剤を点滴しデータの測定はしていません。保存しているデータの解析を私の研究チームにさせています。」

「いえ、こちらも対応に遅れまして申し訳ありません、患者の様子もうかがい明日には専門の研究施設へ移送いたします。」

むしろ対応が遅れた原因はこの人がよさそうな中年教授のせいではないので気に病む必要はないのだが、ここまで申し訳なさそうな声で言われると職員にも罪悪感を感じざるを得なかった。

 

「患者の身辺調査に時間がかかりまして、彼も患者の関係者です。」

「詳しいことは言えないのですが、彼女に会いたいんです。」

大学に向かう道中職員からことの経緯と資料を見たが、肉体を持っていた頃千羽千沙音と出会い何を思ったのか今の垣根には分からない、だが「誰かを守りたい」というプロセスを踏んで今の自分がいるカブトムシにとってはほっとけないことだった。

 

「はぁ、そうですか…あっ、あの小型のウサギについてなのですが」

おそらくこの先に彼女が眠っているであろう実験場の扉の前で中年教授は思い出したかのように振り返った。

「最初に気づいたのは装置から患者を取り上げた職員です。話によると装置を開けた時患者の両隣にすでに二匹のウサギがいたそうなんです、すぐに霧散したそうですが」

「その後ケアをしていた看護師の報告には額から半透明の球体が浮かび上がってウサギの形に変化したそうで。看護師の体調に変化がないので害はないとは思われますが、ただ…」

「ただ?」

「分裂の仕方が少し奇妙でして、ほらウサギってよく糞をするでしょう」

ウサギの食習慣の一つである、ウサギは草食動物ゆえに主に体内に取り込むのは食物繊維なので腸の中で特別な糞を作り食糞をすることでタンパク質、脂肪酸、ビタミン等の不足している栄養素を摂取しているのだ。

「その性質があるのかあるいは真似をしているのかは分かりませんが、糞のような粒からウサギが生まれたり他のウサギに吸収されていったりと繰り返していましてね」

「はぁ、その辺はこちらも考慮しています。捕まえるのに手間取ったりしたのですか?」

身振り手振りで話しているところ申し訳ないが既に報告を受けている事だ、なにか面倒なことがあったのだろうか

(人員を増やすことも視野に入れておくか?アンチスキルにも連絡したほうが…)

「何か思うところでもあったんですか?」

対策を考えている職員を横目に垣根が訪ねる、中年教授の顔を見ると冷や汗を一つ額から垂らしながら少しおびえているからだ

「いや、そのぉ~。これは勘なんですがね…怒っているように感じるんですよ…ウサギが」

「私にはそれが…少々恐ろしくもある…あっ、あのっだからといって研究員や他の患者に害があったとかそういうのはないんですよ!けっして!」

慌てて否定はしているが不安を隠せていない、ウサギが看護師や研究員達に危害を加えたことは一度もない

だが顔をこちらに向けた時ゾッとしたのを未だに忘れられないでいるのだ、誰かに向けての怒りではないまるで

 

「世界が許せない」

 

それがたまらなく恐ろしいのだ

 

 

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