一体いつからサッカーに筋肉が必要ないと錯覚していた?   作:リーリンリーリン

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UA数が100000超えたぁぁぁぁぁ!!

ここまでご愛読して下さった方々、そしてここまで感想やお気に入り登録してくださった方々マジでありがとうございます!!(泣)
誤字報告も何度もしてくださりありがとうございます!!・・・毎度毎度どんだけ間違えるねん!!って感じです・・・

※今回から本格的に試合が始まり、試合内容を事細かく書いています。
故に文字数が普段よりかなり多くなっておりますのでどうかご理解いただけると幸いです。


11.初陣

いよいよ始まるチームY戦。

 

ピィィィィ

 

 

俺含むこのフィールドにいる計22人全員が緊迫とした空気の中でその笛を聞く。

 

キックオフと同時にボールは潔からトップ下の國神へ。

 

「どけお前ら!!」

「ボールは俺が取る!!」

 

前進する國神に向かってチームYはポジション関係なく一気に向かう。やはり団子サッカー型となってしまい全員がプレスをかけて来た。

 

(多い・・なら・・)

 

 

しかし國神は落ち着いてボールを後方の雷市へ渡す。

 

 

「おっしゃぁぁぁ!!俺が決め・・」

 

 

ドリブルで前線に駆け上がろうとするがプレスが一気に数で押し寄せてくる。

この数を一人で突破するは難しい。

 

 

「こっちだ!」

 

 

雷市はそこですぐ判断し、左前線へと上がってた久遠へとボールが渡りサイドアタックを仕掛ける。

あらかじめ彼らには無理に攻めず一つ一つ慎重に行こうと伝えてある。身勝手なプレイはほぼしないだろう。自分に与えられた役割を全うしつつゴールを狙ってくれればそれで十分だ。

 

全FWとボランチ含む前線がほぼ中盤へと集中して押し寄せてきたことで久遠含むサイドにいる選手は動きやすくなっているはずだ。久遠の目前に二人のDFが押し寄せる。

 

 

(!・・・どうすれば・・・)

 

2体1の状況下で次のプレイに迷いを見せる久遠。

一つ一つ慎重に行きたいとは言ったが少し判断に後れを取ってしまう。

 

 

「こっちだ!!」

 

 

「潔!?」

 

とそこへ、CFの潔が久遠の近くへと駆け寄る。CFにしてはかなり降りてきた動き出し。

潔には一人のDFがピッタリと引っ付いている。彼のドリブル力はそこまで高くないため振り切ることは困難。久遠はもちろん潔自身もそれを理解しているはずだ。

故にここでパスを出したとしても取られてしまうのは目に見えてわかるだろう。

 

 

 

 

(ここだろ・・!成早!!)

 

 

 

しかしそれこそが彼の狙いだった。

 

 

 

「うっし!!パスパース!!」

 

 

潔は空間認識能力で自身へついているマークの数を把握し、自身を囮に成早とすれ違うようDFを誘導させ彼をオープンスペースへと走らせることに成功した。

 

 

「ナイス久遠♪」

 

そこへ久遠は彼らの頭上を超えたループパスを通す。

やはりこの二人の能力は相性が良い。空間認識能力を使ったDFのおびき寄せ、そこから死角を突いた裏への飛び出し。

身体能力があまり高くない二人であるが、組み合わさえすれば敵を欺く大きな武器へと成り替わる。

 

 

「こっちだゴラァ!!」

 

 

アンカーの役割を担っているはずの雷市がゴール前まで上がってきていた。アイツ・・・強欲過ぎるだろ・・・。

ニアサイドに向かってきた雷市へ成早はボールを繋ぐ。しかし彼にもDFが押し寄せており、彼の体向きはゴールと正反対の状態だ。

 

 

(クッソ・・・・このまま強引に・・!)

 

 

 

「雷市!!」

 

 

 

と強引に突破しようとする雷市へ潔が声をかけて近寄る。

 

 

「!」

「通させるかッ!!」

 

 

が、当然その潔にもDFはついて来ている。

ボールを渡せば確実に取られるようなポジショニング・・・更に言えばそこはボールを持つ前にDFにカットされる可能性の高い死の位置(デッドポイント)。二子だってそれを狙っているはずだ。

 

 

 

彼は判断を間違えたのか?

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだ!」

 

 

 

潔世一にとってはそれすらも計算内であった。

 

 

「!」

 

 

 

潔がゴール前でDFを引き付けたことでP・Aから少し離れた所に出来る大きなスペース。

 

 

 

「ナイスパス」

 

 

 

そこへトップ下の國神が走り込んでいたのだ。

 

 

ゴールまでの距離およそ25m。通常ならこの距離からのシュートは威力が削られて得点率は低くなる。

よってゴール前まで持ち込んでゴールを狙った方がより確実だろう・・・チームYのDFもそう踏んでゴール前をガッチリ固めようと潔と雷市をマークしながら立ち構えている。

 

 

しかし國神はシュート体勢へ。

 

 

(は・・?シュート・・!?)

(そんなロングレンジから・・・!?)

 

 

故に誰もブロックなど飛び込んでいない。

 

 

これこそが彼をトップ下に置いた真骨頂だ。

 

 

そして放たれる左足の砲弾。ボールはゴールネットを深く突き刺した。

 

 

 

1-0

 

 

「ッしゃオラぁ!!」

「ナイッシュ!!國神!!」

「よくあんな距離から決めたな!!」

 

 

先取点を取ったことでチームのほとんどが彼を称える。

 

 

(凄いな・・・)

 

あの距離から決めた國神もだが、それまでの潔のアクションに俺は驚愕する。

久遠からボールを貰いに行くことで成早を裏サイドへ抜けやすくし、ゴール前で雷市へボールを貰いに行ったのも國神のロングレンジシュートを打たせるための布石。

 

空間認識能力・・・間近で見ると恐ろしい能力だ・・・・

 

 

ピィィィィ

 

 

試合が再スタートする。

 

「なッ!?てめぇら・・・・」

 

FWの大川がドリブルで持ち込もうとするが、相手はリードされてるせいかチームYは焦って味方同士でボールを奪い合う始末。

 

「味方同士潰し合って勝てるとでも思ったか?」

「残念だったなぁ!!ボールは俺が貰う!!」

 

國神と雷市のプレスで団子状態のボールは右サイドへと転げ落ちる。

 

「ばっちばち最高潮♪」

 

前線が一気に上がってきたことでチームYはまだ隙だらけ。

 

「くっ・・なんだコイツ!?」

 

ボールは蜂楽へと渡り、彼はその高度なドリブルテクニックでDFを1枚・・2枚・・・そして3枚とあっさり抜く。

 

彼の動きに連動するようボランチの臥牙丸と久遠もゴール前まで上がり込む。

そして蜂楽は中へセンタリングを上げる。

 

 

「うらぁぁぁぁ!!」

 

 

DFはいるものの、長身とジャンプ力を武器とする久遠には高さで誰も勝てなかった。久遠はそのまま強烈なヘディングを叩きつける。

 

「!クッソ・・・!」

 

がしかしボールは不運にもポストに弾かれてしまう。

 

「よし!クリア・・」

 

こぼれ球を相手DFはクリアしようとする。

 

 

 

「だぁッ!!」

 

 

 

と、そこへ全身バネ人間の我牙丸が決死のダイビングヘッドでゴールへと押し込んだ。

 

 

 

2-0

 

 

 

「よっしゃぁぁ!!ナイスシュー!!我牙丸!!」

 

久遠と我牙丸はお互いハイタッチする。

わぁ・・・顔面からズルズルと滑り落ちる彼はとても痛々しい・・

 

「・・・・もう一点だ・・・」

 

 

ピィィィィ

 

 

キックオフ直後もやはりチームYは味方同士でボールを奪い合う。

 

 

「残念だったなァ!!テメェらにはストライカーの資格はねぇよ!!」

 

雷市の猛プレッシャーによってボールは一気にこちら側へ。

しかし前から立て続けにプレスを仕掛けてくるチームY。

 

「雷市。くれ」

「!チッ・・・」

 

ボールは俺の元へとやってくる。

あまり満足にプレイが出来ず不満気味な彼だが、それでもいい働きをしてくれている。

 

「ここで取るぞ!!」

「指図すんじゃねぇ!!」

「おらぁぁぁぁ!!」

 

と相手のFW陣は猛プレッシャーで俺へと向かって来る。

そんな状況下でも俺は落ち着いて前線を確認する。

 

 

(3・・・・2・・・・・1!ここだ!!)

 

 

とカウントしながら俺は相手のFW陣のみならずボランチやサイドのDF陣がラインを一定ラインまで上げたタイミングでボールを一気に前線へと蹴り上げる。

 

 

「何ィ!?」

「ロングフィード!?」

「あそこからなんつーキック力だ・・!!」

 

 

ボールはそのままレフトの成早へと渡る。

 

(えっぐ・・・・あんな距離からドンピシャで俺んところ飛んできた・・・)

 

俺のキックの精度は幼少からかなり練り上げられている。

加えて鍛え上げた俺の大腿四頭筋から放たれるキック力ならシュートのみならずこうした遠距離からのロングボールでパスをするにも効果的だ。

 

そしてフリーでボールを貰った成早はそのまま中へクロスを上げる。

 

「うぉぉぉぉ!!」

「だぁッ!!」

「おらぁぁ!!」

 

久遠と我牙丸、そして國神が競り合うも、ボールは彼らと相手DF陣の丁度真ん中に放り込まれてしまう、

 

「ぐっ・・!」

「チッ・・!!」

 

大人数で競り合ったことでボールはそのままゴールとは逆方向のP・A外へとこぼれ落ちる。

 

 

「らぁぁぁぁッ!!」

 

 

そこへP・A内まで走り込んでいた雷市が低弾道でダイレクトシュートを放つ。

國神、久遠や臥牙丸、そして自陣のDFに隠れるように打たれたシュートに相手のGKは反応が遅れボールはゴールネットを揺らした。

 

 

3-0

 

 

「どうだテメェら!!雷市タイム発動だ!!オラぁ!!」

「うぉぉぉぉぉ!!ナイッシュ!!雷市!!」

「よくあの場面から決めたな!」

 

中盤守備から一気にゴール前へと走りこむ彼の運動量。

多少強引ではあるが、彼をアンカーとしておいたのは正解だった。

 

 

「おいお前!!もっと俺にボールよこせよ!!」

「あぁ!?なんだと!?」

 

大きくリードを許したチームYはかなりムードが悪くなっていた。

 

 

(クソが・・・・自由に動けねぇ・・・)

(・・・一体僕はどうすれば・・・・)

 

 

大川は味方の邪魔や俺達固定DF陣がマークについていることで満足にプレイが出来ない状態。

また二子の持つ頭脳もこのような状況下では活かすことなどできない。

仮にカウンターを仕掛けようにもDFの俺らがほとんど固定で動いてるため容易に出来ないのだ。

 

つまりチームYで主軸となるこの二人は完全に抑え込んでいるということだ。

 

 

「おらぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

再び國神の左足が炸裂し、ゴールを突き刺す。

 

 

4-0

 

 

「そーれ♪」

 

 

ノリに乗った蜂楽がドリブルで一気に抜き去り、最後はラボーナで華麗に決める。

 

 

5-0

 

 

國神のワンゴールから風向きは完全に俺達へと向いている。

戦術を練ったのもあるが、これこそが絵心の言う【サッカーを0から1へと作り変える】からくりの正体なのだろう。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

「ハァ・・・これが・・・チームZ・・・・」

「強すぎる・・・・ハァ・・ハァ・・・」

 

一方のチームYはほとんどの選手が試合開始から縦横無尽に走り回っている。

いくらブルーロックに選ばれるほどの身体能力を持っているとはいえ、今回の場合彼らのスタミナはかなり消耗している。

 

 

ピッピッピィィィィ

 

 

前半終了の笛が鳴る。

俺達は指定のベンチ室へと戻り休憩を挟んだ

 

 

「すげぇな!!俺たちってこんな強かったのか!?」

「いや。相手も相手だ。俺たちもちゃんと戦術考えてなかったらああなっていただろう」

「そうだね・・・増瑠君の案がここまで上手くいくとはね・・・」

「チッ・・・悔しいがテメェの言うとおりだったぜ筋肉野郎・・」

 

なんとか俺の案が大ハマりして良かった。得点してやや上機嫌な雷市。

彼らにブルーロックでの戦い方を少し理解できたのは本当に良かった。

とりあえず前半戦は良かった・・・というか良すぎたな・・・

彼らの持つ能力はそのほとんどがバラバラだ。故にその能力を予め共有しておくことで今回のようなスムーズなゲーム展開が行えた。

というかチームZマジ強いよな・・・ここにいるほとんどがこれからのブルーロックで生き残って活躍するだろうから当然か・・。

 

「後半はどうする?」

「そうだな。特に今チームYは混乱を招いている。これはチャンスだ。体力だってこっちの方が多く残っている。畳みかけて点を取りに行くぞ。あとポジションはこのままでいいか?」

「当然だ。後10点は取ってやるッ!!」

「うん。俺もボランチでいいよ!」

「トップ下だとなんというか色々とやりやすいな・・・俺もそのままでいい」

「・・・・」

 

潔だけは少し考えを募らせている。

前半戦に得点出来なかったことに少し不安を抱いているのだろうか?

だが彼の持つ空間認識能力のおかげでここまで苦難を強いられず大差をつけられたのも事実。

後半戦の彼に俺は少し期待した。

 

 

 

 

ピィィィ

 

 

後半戦が始まる。

 

大川がFWとうまく連携を取り前線へと駆け上がっていく。

 

「チッ・・!」

「早い・・!」

 

さすが熊本県得点王に選ばれただけはある。テクニックとスピードが常人よりずば抜けている。

そのまま千切と一対一になる。

 

「遅せえよ!」

「くっ・・・」

 

やはりまだ脚の怪我を引きずっている。大川の全力に今の千切は対応しきれず突破を許してしまう。

 

「南無三!!」

「!」

 

そこへイガグリが続けて突っ込んだことで大川はボールを中央へとこぼす。

大川はそのままこぼれたボールを取ってシュートを打とうとする。

 

 

「ふッ!!」

 

 

「うぐ・・・ッ!?」

 

 

予めカバーリング出来る位置にポジショニングしていた俺はそのまま【筋肉(マッスル)ハンドワーク】で体を入れボールを奪い取った。

 

 

この時増瑠筋夫のフィジカルの強さに大川響はこう考えたのだった。

 

 

(サイにでも突っ込まれたのかと思った・・・)

 

 

そのまま大きくロングフィードへ展開する。

ボールは中盤の國神へ。

 

 

「そんなに開けて大丈夫かよ?」

 

(!しまった・・・)

(コイツはロングレンジの・・・!)

 

分かっていても止められない。

彼の位置はすでに彼の武器射程圏内。

大きく真ん中の空いた状況で國神は必殺ロングレンジのシュートを炸裂する。

それは豪快にゴールをぶっちぎった。

 

 

6-0

 

「っしゃオラぁ!!」

「うおぉぉすげぇぇぇ!!」

「マジかよ!!ハットトリックだ!!」

 

 

一気にチームの得点源へと成り代わった。

 

 

ピィィィィ

 

 

再び試合が再開される。

 

 

「いきますよ」

 

ここでDFの二子が中盤まで上がってきていた。

彼らはしっかりとしたパスワークで攻めよってくる。

 

「抜かせない!」

「何度やっても同じなんだよッ!!」

 

 

再び國神と雷市がプレスをかける。

 

 

「それはどうでしょうか?」

 

二子は味方とうまくパスをつなぎ雷市と國神、そしてサイドボランチの久遠や我牙丸をもかわす。

常にトライアングルを創り上げてからのパスワーク。こちら側がダイヤモンド型を組んでいるのに対抗すべし秘策なのだろう。

DF陣は俺と千切、そしてイガグリがいる。

 

 

「後ろだ!!狙っているぞ!!」

 

 

伊右衛門のコーチングで大川が背後へ狙っていることはわかった。

 

 

(よこせ!!前髪!!)

 

 

二子は一瞬でアイコンタクトを取り俺の裏を狙う大川へとループパスを通そうとする。

なるほど・・・前半戦後に狙っていたというわけか。

確かにこの軌道なら千切やイガグリのカバーリングは間に合わず、2対1で俺と勝負ができる。

大川は素早いステップワークで俺の背後を取ろうとする。それに合わせて二子は俺達のDFラインを確認したのちオフサイドスレスレのループパスを出した。

 

 

(よし!!貰った!)

 

 

まさに完璧なタイミング。

ボールは俺の頭上を超え・・・・

 

 

「低いな」

 

 

ず・・・俺はジャンプでそのまま胸トラップしてボールを保持する。

 

 

「なッ!?」

 

(飛びすぎだろ・・!?)

 

当たり前だ。俺のちょっと頭を超えるようなループパス程度なら俺の高さとジャンプ力で十分刈り取れる。

今回チームYが取った戦法は二子含めての完全攻撃的陣形。

故にカウンターをするには十分な数だった。

 

 

「行ってこい!!」

「!?しまった・・・!」

「戻れ!!」

 

再び俺は前線へロングボールを放り込む。

 

 

「ワオ♪えっぐいボール♪」

 

蜂楽へと渡る。前半戦で学んだのか彼の目の前にいる2人のDFは、彼からある程度距離を取って構える。

ゴール前はDFと攻撃陣で大きな密集地帯となっている。

ゆえにクロスを上げるのは難しい状況。

 

「なら・・・・ここでしょ♪」

 

が、しかしそのまま蜂楽は大きくアーリークロスを上げ、ゴール前へ。同様に我牙丸と久遠が入るも警戒されマンマークされている。國神や雷市がペナルティエリア外から狙おうとするも自陣まで戻っていた大川によってマークされている。成早もセカンドボールを狙おうとするが二子に警戒されていて動けない。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

しかしボールはマークされてる彼らの頭上を越えてはるか後方へ。

 

 

 

 

 

「ナイスパス。蜂楽」

 

完全ドフリーでポジショニングした潔世一はそのまま大きく足を振り切り渾身の【直撃蹴弾(ダイレクトシュート)】を放つ。

 

 

ボールは綺麗に左上に突き刺さった。

 

 

 

7-0

 

 

「っしゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「うおぉぉぉぉ潔!!」

「こんにゃろぉぉぉ美味しいところ持っていきやがって!!」

 

 

(マジかよ・・・)

 

 

まさか前半あまり目立たない動きをしなかったのはこのためだったのか・・・?

今回チームYは失点を防ごうと前半攻めていた久遠や我牙丸、雷市や國神、成早にマークが集中していた。

それを即座に理解した潔は彼らへマークが集中したところから大きく外れ、蜂楽との一瞬のアイコンタクトから空間認識能力を利用し、彼の持つ直撃蹴弾を最大限に活かせるようフリーで打てるようポジショニング。

彼自身は自分でゴールまで持っていくことにリスクを感じていた。だから潔は前半戦でゴールを目指すような目立つ動きをしないことで自身からマークを外させた。

まさにこの時を待っていたのかと思わせる彼の計画性(シナリオリティ)とサッカーIQ。

 

流石主人公だ・・・少しヒントを与えただけでこうまで化けるものなのか・・・

 

 

ピィィィ

 

試合を再開し、チームYはほとんど二子を中心に攻撃を組み立ててくる。

しかし彼らは自身の能力に応じた適切なフォーメーションを組んでいない。

不慣れなポジションはむしろ彼らの持つパフォーマンスを下げてしまうのだった。

 

「もーらい!」

 

成早がボールを奪い取り、一度國神へと預ける。

 

「國神!!」

「させるかぁぁ!!」

「おい待て行くな!!ソイツは・・・!」

 

潔のCFでのアクション。それはつまり

 

「あざっす潔!!」

「しまった・・!またやられた・・!」

 

空間認識能力×死角からの飛び出しは予想してても止めることができない。

そのまま成早はゴールへと向かいフリーでシュートを放つ。

 

「やっべ!」

 

しかしコースを狙いすぎたせいかポストに当たってしまう。

 

 

「ふんぬぅぅぅぅッ!!」

 

 

そこへスタミナお化けの雷市が詰めてゴールへと押し込んだ。

 

 

8-0

 

 

「ナイスシュ!!雷市!!」

「お前どんだけ走るんだよッ!?」

「当然だアホ!!あとチビ!!ちゃんと決めやがれッ!!」

「マジで感謝です!雷市さまぁ~!」

 

 

すげぇなアイツ。

前半戦から彼は攻守ともにすべてこなしてくれている。

ボランチとしてはかなり消耗の激しい動きのはずだが・・・彼のスタミナはまだ底が知れない。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!」

「ナイッシュ久遠!!なんか前半より飛んでねぇか!?」

「あぁ!絶好調だ!」

 

 

9-0

 

 

続いて成早からの大きめのクロスに久遠が前半よりもはるかに高いヘディングでゴールへと叩きつける。

本来原作での初戦で彼らは敗北し、久遠は裏切りによる不安定な精神下にいた。それゆえに彼の持つ潜在能力を無意識に抑え込んでしまっていたのだろう。

しかし今回の場合はかなり点差を広げている。気持ちに余裕が出来ている。

今の彼の表情は純粋に心置きなくサッカーを楽しんでいるように見え、それは彼の持つ能力を更に高めるものへとなった。

 

 

スコアは9-0

残り時間もあとわずか。

故に勝利は無理と断念したチームY選手はチーム内得点王になろうとほぼ全員での総攻撃を仕掛けてくるだろう。

ずっとDFやボランチを担当していた二子までもがFWまで上がってくる。

 

何を仕掛けても止めて見せる。

 

 

「行きますよ大川君!」

「ちゃんとついて来いよ前髪!」

 

「!?」

「え・・!?ちょ・・・お前ら!?」」

 

とお互い合図をしたと同時に大川と二子は自陣を完全置き去りにして連携で中盤を一気に突破する。

 

「すまん!!カバー頼む!!」

「チッ・・・こいつら・・・・!!」

 

マズイな・・・大川のテクニックと二子の頭脳。ここへ来てこの二人の能力が嚙み合い始めた。

 

「南無三・・!!」

「くっ・・・!」

 

イガグリと千切が対応するも突破されてしまう。

まさかここでこの二人の息が合うとは。原作にない連携に俺は少し焦りを見せる。

 

 

「あとはアンタだけだ。No1!!」

「惨めに終わるつもりはありません。ここで一点取らせてもらいます!」

 

まさにゴールだけを狙おうとする互いの共通目的から生まれた超速連携。

 

大川&二子VS俺。ゴール前での二対一の状況は心理的にこちら側がかなり不利となってしまう。

突破されたら確実に失点してしまう。いくら伊右衛門でも即席GKだ。

なんなら俺達がDFに集中しすぎて今回彼はまだボールすら触ってすらいない。

 

「大川君!」

 

 

と声をあげ二子はドリブルしながら大川へと目をやる。

その声と同時に大川は反対側へアクションし俺と交差するように飛び出す。

このアクションだとどっちが来るかわからないランダムな状況となる。DFはどちらに対応すればいいか一瞬判断が遅れ、難なく突破される。

お互いの意思疎通ができてないと不可能なプレイだ。

 

 

まさに絶体絶命。

 

 

 

伊右衛門含むチームZの誰もがそう思った。

 

 

 

 

 

 

()()()だろ?」

 

 

 

 

 

「「!!?」」

 

しかし俺はゴールへと向かっていた()()のボールを奪い取る。

そして俺はロングボールを蹴りだし前線へとカウンターを仕掛ける。

カウンターを仕掛けたことでボールを持った國神はそのままロングレンジのシュートを打とうとする。

 

「打たせるかぁぁ!!」

 

しかし彼の武器を理解したのかDF一枚がブロックへ飛び込む。

 

「出せ!!國神!!」

 

そこへ雷市が駆け寄る。

前半から一体どれほど彼が走りこんでいるのだろうか・・・終盤になっても彼の運動量は変わらないままだった。

 

「チッ・・・」

 

そのままゴールへ向かうもチームYはほぼ全員がゴール前まで戻ってきており、守備をガチガチに固めている。

FWの潔、成早、蜂楽はもちろんボランチから上がっている久遠や我牙丸にもマークが付いている。

この状況下で点を取るのは難しい。

 

 

(なら・・・)

 

 

「「!?」」

 

二子と大川は驚く。

これまでずっとDFに専念していた()が一気に前線へと駆け上がっていた。

恐ろしく早いスピード。ものの数秒で彼ら二人を置き去りにし自陣からハーフコートをあっという間に突破。

 

 

(スペースがねぇ・・・どうすれば・・・・)

 

 

 

ガッチガチの守備に攻めの動向を伺う雷市。

 

 

「こっちだ」

 

 

「!?」

 

 

そこへ一人のストライカーが姿を現す。

 

 

雷市陣吾はそのあまりの光景に疑問を抱く。

同時に彼は迫りくる彼に思わずパスを出してしまった。

 

 

ボールを持った彼はそのまま大きく足を振りかざす。

 

 

(は・・?)

 

(何やってんだよ・・・・)

 

(パス・・・・いや!!違う!!)

 

(まさか・・・)

 

(嘘・・・だろ・・・そっから何メートルあると思って・・・・)

 

 

距離はP・Aからかなり離れた所。ほとんどセンターサークルに近い場だ。その距離・・・

 

 

 

およそ40m。

 

 

あまりにも予測できない彼のプレイに誰もが大きく目を見開く。

 

 

 

 

ドォォォォォン

 

 

 

 

グラウンド中に大きく響き渡る轟音

 

 

ストライカーの本性を曝け出すように彼・・・

 

 

 

増瑠筋夫は左足からの超ロングシュートを放つ。

 

 

 

(バケモン・・かよ・・・・)

 

 

 

超長距離射程からも届く高威力。更にそのあまりの美しい彼のシュート精度にピッチにいる誰もが魅入ってしまう。もちろんGKさえそれに反応すらできず・・・

 

 

ボールはゴールネットを大きく突き刺した。

 

 

10-0

 

 

 

ピッピッピィィィィィ

 

 

 

同時に試合終了の笛が鳴り響く。

 

 

ラストプレイの出来事。

空気は一瞬静寂なものへと包み込まれ・・・

 

 

「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

 

しばらくしてチームZの全員が彼の元へと駆け寄った。

 

 

「すっげぇ!!ナイスシュ!!増瑠!!」

「やりやがったなこの野郎!!あんなシュートまで打てたのかよ!!?」

「さっすがはNo1だ!!」

「胴上げだぁぁ!!って重ッ!?」

「いやお前の腕力じゃ増瑠を持ち上げられるわけないだろ・・・」

「そうだった・・・俺も鍛えよう・・・」

 

 

そうしてひと段落落ち着いた俺たちチームZ。

 

 

「勝ったんだな・・・俺達・・・」

「あぁ・・・」

「まずは一勝だ」

 

 

チームZ 10-0 チームY

 

 

潔世一:1ゴール

蜂楽廻:1ゴール

國神錬介:3ゴール(ハットトリック)

雷市陣吾:2ゴール

臥牙丸吟:1ゴール

久遠渡:1ゴール

増瑠筋夫:1ゴール

 

 

まさに圧巻の勝利だった。

 

 

 

 

俺がフィールドを去る際

 

「ラストプレイ・・・どうして僕に来るとわかったんですか・・・?」

 

と二子が悔しさを握りしめながら聞いてきた。

 

 

「どっちに来たって結果は同じだ。あの場面で大川にボールが渡ったとしても俺の持つスピードと反応速度なら追いつける。まぁ・・ちょっとだけお前のゴールへの信念を信じただけだ。それに・・・たかが二対一で俺を抜けるとでも思ったか?」

 

 

 

「!」

「くっ・・・!」

 

 

それだけ言い俺達チームZはグラウンドを静かに去った。

 

 

 

「チームZ・・・次元が・・・・違いすぎる・・・・」

「あれが増瑠筋夫・・・・とんだ化け物じゃねぇか・・・」

 

 

 


 

同時刻

 

 

別フィールドにて

 

 

ピッピッピィィィィ

 

 

 

試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 

 

「・・・・こんなもんか・・・」

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・クッソ・・・・!」

「ふぅ・・・ふぅ・・・ふん・・・・・!」

 

 

「ちょっと連携が旨いからって調子に乗ったな。お前ら才能ねぇよ・・・・

 

 

 

あと・・・

 

 

 

 

 

()()もな」

 

 

 

 

 

フィールドへ崩れ落ちる彼らへ(キング)は静かにそう告げたのだった。

 

 

 

チームW 1-7 チームX

 

 

 

馬狼照英 7ゴール(ダブルハットトリック)

 

 

 

 

 




ということで、チームZの完勝で今回は終わりを迎えました!!
こうみるとチームZは筋夫君の原作知識でめちゃくちゃ強化されてますね・・・
まぁ強化馬狼がいるわけなんでこれくらいでちょうどいいかも?
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奪敵決戦(ライバルリーバトル)誰と組ませる?

  • 馬狼
  • 國神
  • 時光
  • オシャ(蟻生)
  • 氷織
  • 黒奈
  • その他

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