一体いつからサッカーに筋肉が必要ないと錯覚していた?   作:リーリンリーリン

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12.憧れのヒーロー像

「チームZ第一試合勝利を祝しまして・・・・」

 

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

第一試合でかなり得点できたため、俺達チームZは大きく祝勝会を挙げた。

少しばかりハメを外し過ぎではないか?と思われるかもしれないが、第一試合突破は俺たちにとって大きなアドバンテージとなる。

先に勝点8以上取れれば次の二次セレクションへと進める可能性が高くなる。

そういった意味で気持ちに少し余裕が出来たんだ。少しくらい贅沢したってバチは当たらないはずだ。

そうして出されていたのは原作よりもはるかに多い量のステーキやその他豪華なおかずの数々。

 

「うぉぉぉぉこれが肉ぅぅぅぅぅ!!」

「これが勝利の味!旨すぎる!!」

「うみゃうみゃ~」

 

いつも貧しい食事ばかり摂っていた彼らにとってそれはまさに至福の一時であった。

 

「しっかしよぉ~俺達初戦でかなり有利になったよな~」

「合計10得点。他のチームの得点数にもよるけどスコアはかなり稼げたはずだな」

「まぁこれも増瑠君がちゃんと戦術を組み立ててくれたおかげだ」

「俺はなにもしてねぇよ。ゴールを奪って来いって言っただけだ・・うま」

「謙虚だなぁ~流石No1の器だ~」

 

別に謙遜しているわけではない。彼らには元々一人でも得点できる大きな能力を持っていた。そんな彼らに俺はちょっとしたきっかけを与えたに過ぎない。

 

「正直俺さ~増瑠って完全な肉弾戦っぽかったじゃん?だからてっきり戦略とか何も考えず身体能力だけでプレイしていたんだと・・・」

「マジでそれ!こんないかにもパワーゴリゴリ系な見た目からは想像もつかないくらい冷静だったよな!」

 

「ハハハ・・偏見すぎだぞ。選手一人ひとりに合ったポジションとフォーメーションを練る。そしてそこから戦術を組み立てる。別に難しいものじゃないさ。基本中の基本でシンプルだぞ?」

「確かに・・・冷静になって振り返ると俺達かなり危なっかしいことしかけてたんだな・・」 

 

まぁ絵心から放たれた衝撃の事実。「負けたら終わり」というワードが彼らを焦らせていたのは言うまでもない。

原作知識が活きて良かった。まぁどっちみちチームY相手なら俺がDFすればどんな状況だろうと点を取られることはなかっただろう。

 

「ホントそれー。増瑠がいなかったらどっかのスタミナお化けさんが出しゃばって自滅してたかもな!」

「ってオイ!?それ俺の事かァッ!?・・・けどまぁ・・・チビの言う通りだ。お前が居なかったら俺たちはあの試合下手こいて勝てなかったかもしれねぇ・・そう言う意味では・・・まぁ・・・感謝してる」

 

とステーキ肉を頬張りながら感謝の意を述べる雷市。

 

「あの雷市がお礼をした・・・だとッ!?」

「明日は隕石でも降って来るのか!?」

 

そんな彼をイガグリや成早は軽くおちょくった。

 

「テメェら・・・・いい加減にしやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「「「「「ぎゃははははははは」」」」」

 

 

チームZの控室はいつもより賑やかだった。

 

 

 

そういえばここで各チームごとの勝点をランキング順にお見せしよう↓

 


 

 

1:チームZ  勝点3  +10 (Z 10-0 Y)

2:チームX  勝点3  +6  (X 7-1 W)

3:チームV  勝点3  +3  (V 4-1 Y)

4:チームW  勝点0 -6  (W 1-7 X)

5:チームY  勝点0  -13 (Y 0-10 Z & Y 1-4 V)

 

 

見ての通りこれまで計3試合でトップに立てたのは俺達チームZ。

その次はなんと強化された馬狼率いるチームX。すげぇな・・・確か原作だと負けてたよな?

4位にはそれに敗れた鰐間兄弟率いるチームW。

そして意外だったのはチームVとチームY。まさかチームV相手にここまでチームYが喰らいついていたとは・・・初戦で俺達と戦ったことで生まれた二子&大川コンビの連携によるものだろうか?

しかしそれでもチームVは強い。天才凪や玲王 そして斬鉄のいるチームV相手に負けたチームYは2戦とも敗れたことで次の二次セレクションへと勝ち上がれる可能性が一気に下がってしまった。

やはりイレギュラーの俺が加わったことでの原作改変は馬鹿にならない。

俺自身も強くならねば・・・

 

 


 

食事からしばらく時間が経ち、日課のウェイトトレーニングへと移る。

食後2時間後はある程度食物が消化されているため、トレーニングをするには問題ない。

そんなわけでサプリメントと着替えを持っていきトレーニングルームへと行く。

 

 

「フッ!フッ!フッ・・!フゥゥゥゥ・・・・オらぁぁッ!!」

 

高校生とは思えないほどの強靭な肉体。

一人の男が先客としてスクワットをしていた。

 

 

「國神か。こんな時間になってもトレーニングか・・・」

「増瑠・・・フッ・・そういうお前もだろ?」

「まぁな。なぁ。よかったら一緒に合トレしないか?俺もちょうど脚のトレーニングをするところだったんだ」

「いいのか!?じゃあやろうぜ!!」

 

そうして俺達の互いに筋肉をいじめ合う時間が続いたのだった。

そして最後の種目でのインターバル中での時だった。

 

「フゥ・・・しっかし凄いよな増瑠は。いつからウェイトトレーニングを始めたんだ?」

「ウェイトを持ち始めたのは確か10歳くらいだったな。その前までは自重トレをやっていたんだが・・・ちょうどその頃からだったな。身体が大きくなり始めたのは」

「10歳・・!?・・そんな歳から・・・」

「まぁちょっとうちの両親が大の体育会系でな。幼少からトレーニングしていたんだ」

 

まさか生後一ヶ月目で腕立てさせられたなんて言えないがな。

 

「すげぇな・・・・俺とは段違いだ・・・」

「別に俺と比べなくてもいいだろ?國神にも強力なフィジカルとロングレンジのシュートっていうしっかりとした武器があるんだ」

 

他人と比べていつまでも自身を妬んでいては成長は出来ない。

自分は自分のやるべきことをやり続ける。そうすることで少しずつ自身の掲げる目標に着実に近くなっていく。

筋トレを始めたことで俺はそういった考えを持てるようになった。

 

「それなんだけどよぉ・・今日の試合でわかったんだ。まだこんなんじゃ足りない。同時に考えたんだ。俺の持つ武器は多分お前の下位互換でもあるんだって・・」

 

と自身の能力をさげすむ様に國神は俺へそう告げる。

確かに・・・自惚れではないが俺の持つフィジカルとシュートレンジそしてシュート力は國神より高いだろう。

 

「今のお前の持つフィジカルとロングレンジは今でも十分強力だ・・・が、もしこの先青い監獄(ブル―ロック)を戦い抜くのなら・・・それはまだ不完全だ」

 

という意味では彼の言う通り俺は國神の上位互換でもあると言えるかもしれない。

彼の武器以上の能力を俺以外にも馬狼や凛そして時光と言った一流プレイヤーは持っている。

世界クラスともなるとそれらでさえ劣って見えるだろう・・・故に彼にも成長は必然的だった。

 

「そうだよな・・・だから俺はこれまで以上に己を鍛えてその武器を更に伸ばさないといけないんだ。今よりもさらに強くなって・・・この青い監獄(ブル―ロック)で俺は・・・サッカーでスーパーヒーローになる!」

 

固く拳を握り、自身の目的とする理想像を口にする國神。

 

「スーパーヒーローか・・・・お前らしいよ。國神」

「笑わねぇのか・・・?」

「笑うなんてとんでもない。憧れ目指して頑張るのは何も悪いことじゃないしそれをわざわざ恥ずかしがる必要なんて何もない」

「増瑠・・・・」

 

誰かの夢を否定していい人間なんて存在しない。

甘ったれた理論であって、それが俺の弱さであるかもしれない。

けれど憧れてしまったものはしょうがないだろ?その憧れ目指して努力するのがソイツの道ならば、俺はソイツの背中押して応援してやるまでだ。

 

「俺もな、一時期はヒーローにかなり憧れを抱いていたんだ。特にスーパーマンやキャプテンアメリカは当時の俺がもっとも敬愛するヒーローだった」

「わかる!!あのどんな悪をも打ち倒す感ある圧倒的な感じ!!そして筋肉!!すげぇカッコイイよな!」

「筋肉と言えばマイティソーやウルヴァリンもかっこいい筋肉してたぜ!あの筋肉あるところあの強さありって感じで・・・」

「それ!!特にマーベルの作品ってヒーロー全部が集結するアベンジャーズがあって面白いよな!!けど意外だったな・・・増瑠ならてっきりハルクを目指していたのかと・・・」

「超人ハルクか・・・確かにハルクは純粋な筋肉のデカさは良い。特にあの巨体からあんなアクロバティックな動きが出来るってマジすげぇわ。けど・・当時の俺は純粋な筋力もそうだが正義感溢れる信念の強いヒーローに憧れてたんだ」

「!!俺もだ・・・あのどんな状況だろうと悪を必ず打ち倒そうとする強い精神力と強靭な身体・・・・いつか俺は・・・そんなかっこいいヒーローに・・・」

 

やはり國神のヒーローへの憧れの原点は何もサッカーだけじゃ無かったらしい。

元々は民衆を助け悪を打ち砕く輝かしいスーパーヒーローの姿に憧れ、それを自身の敬愛するサッカー選手に重ね見ていたのだ。

言葉だけ見れば子供っぽく理想ばかりの非現実主義的だと思われるかもしれない。

しかし彼の目からはそんな理想をも実現させようとする固い意志を感じ取れる。

 

 

「確かに今挙げていったスーパーヒーロー達は最終的に悪を打ち倒している・・・だけど、そんな彼らだって一度は大きな()()をしているんだ」

 

「挫折・・?」

「さっき俺が挙げたDCシリーズのスーパーマンも一度はヒーロー組織であるジャスティスリーグと敵対しているんだ。他にも愛するものを失って大きな闇を抱えたまま戦ったドクターストレンジは最終的に悪の帝王サノスに敗れた。両親を失った恨みから生まれたバットマンだってヒーローでありながらスーパーマンと敵対してただろ?時にヒーローと対々する存在となり、時に仲間を失い、時に闇落ちして堕落する。けどそんな彼らだって自身の掲げる正義を持って戦っていたんだ。そんな時にもお前や周りの人達は彼らを()()()()と呼べるだろうか?」

「・・・・」

 

 

実際原作での彼は輝かしい光溢れるヒーロー感に固執し続けたせいで、後の二次セレクションで脱落し敗者復活(ワイルドカード)戦で闇堕ちする運命にある。

 

「國神の想うヒーロー像ってのも別に悪いものじゃない。むしろ素晴らしいものだ。だけど、何でもかんでも全部を救うってことは不可能であってそれはある種の傲慢にもなりうる」

 

誰かを救いたい、そして笑顔にさせたいと願う気持ちは、自身にその能力がない、もしくは何をしていいのか分からず、結局自分自身で願望と無能力の狭間で苦しむということでもある。

 

「だけど・・・それでも俺は・・・」

「今の考え方を改めろって言ってるんじゃない。だけど、時には自分自身を壊してでも進まなきゃいけない道もいずれ現れる。自分にとっての憧れのヒーロー像ってなんなのか?真のヒーローって何なのか?それだけは頭の隅にでも置いといて欲しい」

 

そんな彼を・・俺はどうしても放っておけなかった。ホント・・我ながらおせっかいな性格だぜ・・・

 

 

「・・・・ありがとよ増瑠。まだ完璧には理解はできないだろうけど、少しだけ力になった気がするぜ」

 

いつの間にか少し吹っ切れたのか、彼の表情は少しだけ迷いのない信念ある目をしていた。

 

「フッ・・まぁあくまで俺の持論だ。あとは國神。お前自身に出来ることを探すだけだ。きっと見つかる筈さ・・・

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()ってのがな

 

 

 

「そうだな・・・うっし!サンキュー増瑠。次の試合も絶対勝つぞ!」

 

 

俺達は誓いを立てるよう拳を付け合った。

 

 

「おう!よし!最後はハックスクワットマシンで絞めるぞッ!」

「っしゃぁ!!やるぞオラぁ!!」

 

 

 

 

その後國神は増瑠との脚トレーニングに気合を入れ過ぎてしまい、後日満足に走れなかったそうだ。

 

 


 

さらに次の日・・・

 

「俺が・・・コーチに・・?」

 

「そう!もしよかったら俺たちを強化する専属トレーニングコーチになってなって欲しいんだ!」

「だって増瑠ってこのチーム内で一番強いだろ?しかも表上は高校NO1なんだし。だから強くなるためにみんなで相談したんだ」

「何が自分に足りないか・・・それを短期間で知るためには増瑠に聞いた方が早いんじゃないかって」

「お願いします!神様!仏様!増瑠様!」

 

 

俺がいないところでそんな話をしていたとは。

 

 

「本当にすまない。都合の良すぎる話だって十分分かっている!けれど・・・俺達もこの先青い監獄(ブル―ロック)を戦い抜くために強くなりたいんだ!」

 

 

と頭を下げて頼む久遠。

 

「おいおい・・頭上げろって久遠。そうだな・・・・それは別に構わない。弱点のカバーは早いに越したことはないしな。わかった。俺で良ければ引き受けよう」

「!本当かい!?」

 

これは俺にとって好都合だった。

俺の目指すこの青い監獄(ブル―ロック)で生き残るという目的を達成するためにも俺自身だけじゃ足りない。

特に強化された馬狼含むチームXや原作改変で強くなっているかもしれないチームWやチームVと戦うためにも彼らの強化は必須だ。

俺の持つ原作知識+トレーニング知識で彼らを出来る限り強化させておきたかったんだ。

そういった意味で今回久遠たちが頼み込んでくれたのはまさに好都合と言えるだろう。

 

「ただ俺自身のトレーニングもある。時間はあまり長くは取れないが良いか?」

「もちろんだ!!ありがとう増瑠君!!」

「頼む!!俺たちを鍛えてくれ!増っさん!!」

「よろしくです!増瑠コーチ!」

 

なんか色々と変な呼ばれ方しているが・・・まぁいっか♪

 

 

まずはチームZ各自で自身が伸ばしたい分野のトレーニングごとに分かれる。

主にフィジカル、スタミナ、キック力、スピード、そしてそこにバネやジャンプ力といった強化。

主に弱点強化または長所を伸ばすトレーニングをするつもりだ。

あくまで俺はトレーニング法とメニューの考案その他アドバイスを与えるだけ。

 

 

そこからは己との戦いでもある。

 

 

「久遠はやっぱりジャンプ力強化・・・あと瞬発力も強化したいな」

「瞬発力?」

「あぁ。高さはあるけれどその武器を活かすための瞬発力がまだ足りない。例えジャンプ力はあったとしても最高到達点まで達する瞬発力がなかったら結局競り負けてしまう・・・なら瞬発力とジャンプ力を両方同時に鍛えられるこのトレーニングをやってみろ。短期間でかなりの成果が得られるはずだ」

 

彼の天性のジャンプ力はまだ底が知れない。

ここから更に伸ばすことが出来れば元の高身長から今よりも更に強力な武器へと成り代わるだろう。

 

「雷市、潔、イガグリ、成早はスタミナをつけたいと・・・」

「あぁ。前の試合で眼の使い方はわかったんだけど・・・それを同時にやろうとすると体力をかなり持っていかれるんだ・・」

 

そうだったな。空間認識能力を行いながらのプレイは身体の消費と脳内の消費も同時並行に進む。

故に長時間自身の武器を活かしながらプレイするスタミナを望んでいるのだろう。

 

「俺も!!ずっと粘り強くプレイのできる体力が欲しい!!」

「俺も!身体が小さい分持久力で勝てるようになりたい!」

 

あとの三人は純粋な体力強化を望んでいる。

特にイガグリと成早は身体も小さく、フィジカルが重宝されるサッカーにおいてかなり不利かもな。

彼らにはプラスでフィジカル強化のトレーニングも進めよう。

雷市の持つスタミナは今でもかなり凶悪だ。が・・・

 

「・・悔しいがスタミナ面においてもテメェは俺より上だ。だけどテメェに負けたままじゃいられねぇッ!!」

 

どうやら本人は俺に勝つために自分の持つ長所を更に鍛え込んで欲しいのだそうだ。

正直原作での雷市は少しもったいない。せっかく持っている底なしのスタミナを活かすプレイスタイルが彼にはまだなかった。

故に彼は【セクシーフットボール】という周りを魅了する華麗なプレイスタイルを目指しているのだろう。なんとかしたい所だなぁ・・・

 

「なら普段俺がやっている全力シャトルラントレーニングだな。これなら心肺機能と同時に動き出しの加速力も高められる」

「おっしゃぁぁ!!やるぞテメェら!!」

「「おぉぉぉ!!」」

 

「あ・・・成早は少しだけ残ってくれ」

 

俺は成早だけ呼び止め残りの三人は俺の考案したメニュー通りにトレーニングを始めた。

そうして残る俺と成早。

 

「ハイ!増瑠コーチ!どうしたんでしょうか?」

 

 

「成早。お前にはもうひとつ別のトレーニングをしてもらいたい」

 

 

 

 

次は俺が最も専門とするトレーニング。

 

「我牙丸、伊右衛門、國神はフィジカル強化だな?」

 

このトレーニングに関しては生まれた瞬間からずっとやっている。

父の話を聞きながら俺のトレーニング知識、特にフィジカル分野においては専門の域を超えているだろう。

その選手の潜在能力を最大限まで引き出すためのトレーニングを俺は教える。

 

「あぁ。いざフィールドに立った時にもゴールを狙えるようにフィジカルを強くしておきたい」

「フィジカルはもちろんなんだがシュートのレンジをもっと長くしたいんだ」

「もちろん可能だ。キック力とフィジカル強化のトレーニングに関しては俺と同時並行でやろう」

「わかった。頼む」

「やってやるッ!」

 

この3人は身体も大きくフィジカルも並みの高校生よりかは強い。

しかしここは青い監獄(ブル―ロック)。生半可なパワーじゃこの先。特に時光や強化馬狼、または世界選抜の猛者達もいる。

特に國神と伊右衛門。この二人の筋肉のバランスが良い。他にも國神はロングレンジを持っているだけあって下半身の筋力がずば抜けている。伊右衛門はフィジカルこそは國神ほど高くはないが体幹部が秀ている。

俺考案のトレーニングで鍛え上げれば強力なフィジカルモンスターへと成り代わるだろう。

 

「肉弾戦をもっと強くしたい・・・あとバネの強化もできれば・・・」

「そうだな・・・」

 

俺はこれまで中高時代チームメイトのトレーニング育成を何度か監督から頼み込まれていた。

故に数十人のサッカー選手の肉体を俺は見て来た。

しかし我牙丸の肉体は俺がこれまで見て来たサッカー選手の中でもかなり異質だった。

柔軟性の高い、それでいて程よく筋力もある。彼の最大の武器であるバネの柔軟性はアマチュアの体操選手レベルにも匹敵していた。

故にどうアドバイスをすればいいか少し戸惑う。

 

「肉弾戦か・・・つまるところ全身バネの強化ってことか?なら俺がいつもやっているフィットネスヨガを取り入れてみよう。筋力と柔軟性を同時に鍛えられる。一緒にやってみるか?」

「おぉ・・・助かる・・・」

 

 

そしていよいよ最後の一人。

 

 

「足を見てくれ?」

「・・あぁ。実は過去に脚の靭帯を切ってしまって・・・・」

 

これは意外だったな・・・原作同様千切はてっきり今回も遠慮して何も話してくれないのかと・・・

 

「なるほど・・・それが心的障害・・・つまるところ()()()()になってしまい、スピードを活かすプレイができないってことか・・」

「!知っていたのか・・・?」

「ずっと脚を抑え込んでいたからな。たぶんそれがお前の武器なんだろ?にしてもよく話してくれたな」

 

「・・・・昨日潔と話したんだ」

「潔?」

「あぁ・・・自分の武器を知れたサッカーは面白いって。自分にとってサッカーってなんなんだろうって・・・俺も最初はずっと聞き入れようとはしなかった。だけどアイツの目を見ているうちにかつての自分を思い出しちまってな・・・・アイツのせいでまた熱が付いちまったよ」

 

なるほど・・・モニター室のあのシーンか・・・

元々自分の武器を理解できずにいた潔が自身の武器を知ってのサッカーに楽しさを見出したんだな。

潔の熱い情熱が完全に冷え切ろうとしていた千切の熱を再び呼び覚まさせたってわけか・・・

 

(グッチョブ潔♪)

 

なんとか試合外で千切の覚醒を促せたのはデカい。

次の試合で彼が存分に力を発揮する事が出来ればこちら側の戦力は飛躍的に上がる。

そうして俺は千切の脚を見てみた。

 

「そうだな・・・もう脚は治っているんだったな?これといった問題はない」

「あぁ・・・だけどまたいつか壊れるかもしれない・・・そんな想いがまだ頭の隅にちょっとだけあって・・・」

 

スポーツにおける心的障害は現代でも改善が難しいとされている。

それはどれだけ優秀な医師であっても心の問題とは本人の意思による回復を促さないと根本的な解決に至らないからだ。

原作での千切は〖再びサッカーをしたい〗という強い意志と肉体が連動したことで覚醒を果たした。

しかし今回の場合、千切は意志を少し回復しただけに過ぎない。

本命である肉体、つまり彼の武器である脚を使いこなすためのきかっけがまだ足りないのだ。

それに千切はいまだ脚を恐れている。

 

「・・・よし!ならよ。一度()()()()()()()()()()

 

「え・・・全力・・・でって・・・」

「スポーツにおける精神面の治療法の一つとして、一度神経の可塑性を逆に生かして直すって方法があるんだ。変化を加えるとその性質は変化したままになるんだ。例えば粘土だと、粘土の塊を指で押すと押した箇所に歪みができるだろ?そして指で押した粘土からその指を離したら、押された分だけ凹んだままになる。こうなると元の形には戻らないだろ。このような性質を「神経の可塑性」と言って・・・」

「えぇと・・・・つまり・・・?」

 

おっとマズイマズイ・・・危うく千切が俺のうんちくトークに吞まれるところだった・・・

 

「要するに今千切が不安を抱いている脚を逆に力いっぱい使ってやるんだ。思いっきり走ってみることで感覚を思い出し、かつてのスピードが蘇るはずだ」

 

「!・・・本当に・・・俺はまた走れるのか!?」

「・・・絶対とは言えない。それに時間だってかかるかもしれない。だけどもし千切自身がかつてのように早く走れるようになりたいと思うのなら・・今抱いているその()()()()・・・克服して見ろ」

「・・・わかった!サポート頼んでもいいか?」

「もちろんだ。それと上手く走れるようになったら俺に言ってくれ。なんせお前の脚・・・()()()()()()ぞ?」

「え?」

「しばらく本気で動かしていなかった筋肉を再度使うんだ。もし千切自身が今抱いているトラウマを克服してトレーニングすれば脚の筋肉の記憶(マッスルメモリー)の効果によってこれまで以上の速度を出せるはずだ」

「本当か!?わかった・・・ありがとう増瑠!」

 

そうして全員へのアドバイスを終えて各自でそのトレーニングを実装したのだった。

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・・」

「お前・・・ハァ・・・・こんなのいつも一人でやっているのかよ・・・ハァ」

「し・・・・しぬ・・・」

「なんとか調整されてはいるが・・・ハァ・・・それでも・・・キツイな・・・」

「トレーニングって・・・ハァ・・本当は・・・ハァ・・・過酷なものなんだな・・・ハァ」

「ゼェ・・やっぱテメェは・・・ハァ・・・筋肉オバケだ・・・クッソ・・・」

 

トレーニングメニューは一応彼らの限界を少し超えた所に調整してはある。次の試合に向けて支障を出さないためだ。

しかしいくら彼らの身体能力でも10数年以上継続している俺のトレーニングにいきなり付いて来られるわけがない。

数人はフィールドや地面に寝そべり、膝をついていた。

しかしこのトレーニングに慣れて来る頃には、より強力なレベルアップが見込めるはずだ。それまではなんとか頑張って貰いたい。

 

「お疲れみんな。今日はしっかりと休んでくれ。休息もトレーニングの一環だ」

「ゼェ・・・そうさせてもらいます・・・ゼェ・・・」

「次の試合まで疲労を残さないようにだけしないとな・・・」

「そうだな・・・飯食いに行こうぜ」

「く・・・食えねぇ・・・・」

「馬鹿野郎・・・食わなきゃ強くなれねぇんだぞッ・・!!」

 

食事と休息も大事だ。

今は無理にでも栄養を取ってもらいしっかり寝て貰おう。

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・俺もトレーニングルーム行くか」

 

そうして全員のトレーニングが終わったところで俺も自身を鍛えるべくトレーニングルームへと足を運ぶ。

 

「ん?なんだ筋夫じゃねぇか」

 

「照英!久しぶりだな」

「ハッ・・そっちはずいぶんと快勝だったじゃねぇか」

「そっちこそ・・・試合結果見たぞ!凄いなお前ら!」

 

「当然だ。だがあの双子兄弟に失点を許しちまった・・・まだ足りねぇ・・・お前に勝つまで俺は誰にも負けられねぇんだ・・」

「フッ・・・去年俺らからハットトリック決めたくせによく言うよ・・・」

「あんなのは偶然だ。俺は俺の力だけでお前に勝つ」

 

彼の言動は謙虚であり力強く信念あるもの。故に彼が原作と違いチームWに快勝できたのだろう。

 

「上等だ。ところで今日は背中トレか?」

「あぁ。フィジカルのうち広背筋はボディバランスを担う役割を担うんだろ?ますは過重懸垂から始める。プル系種目は広背筋の中で最も当たりを強くする個所だったよな?」

「あぁ。よく覚えていたな」

「当然だ。お前と何度トレーニングの話をしたことか・・・」

「フッ。そうだったな・・・あ。実は最近調子が良いと感じた背中トレがあるんだ。もしよかったら・・」

「何!?それ・・今すぐ教えろ筋夫!」

「ちょ・・!?待て待て落ち着けって・・・!」

 

と新しいトレーニングの話を出すたびに飛びついてくる照英。元々強くなるための好奇心と意欲を彼は持っていたが、俺との出会いで筋肉に対する執着心が更に高まってしまった。

もう完全にただのトレーニーだよ・・・ま、それが照英の強みでもあるんだがな。

 

「・・わかったわかった・・・でそのトレーニング法は・・・・」

「・・・・ほう・・・そんなやり方があったとはな・・・さっそくやってみるか・・・」

 

そうしてその日は照英との合同トレーニングで一日を終えた。

 

 


 

 

数日後。

 

 

今日はいよいよ第二試合。

チームY戦からまだ日は浅い。

しかし俺の施したトレーニングによって彼らチームZは少しではあるがパワーアップできたはずだ。

 

 

「来るぞ」

 

 

次勝てば勝ち上がれる可能性がグンと高まる。それほど今回の試合は一次セレクションにおいて重要だ。

そんな俺達と対対する相手チーム・・・

 

 

「あれが・・・・チームW・・・」

 

 

チームWはゆっくりとグラウンドに姿を現した。

 

 




ということで今回は國神と筋トレをしながらヒーローについて語り合う筋夫でした。
筋夫の一言が今後國神の運命をどう左右するのか・・・・
そして筋夫から施されるトレーニングでチームZはどんな成長を遂げるのだろうか・・?
そして次の相手はチームW!!一体どんな戦いとなるのだろうか!?
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