トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが…… 作:全自動髭剃り
デアフリンガーなどというあほみたいにデカい特別装甲列車が、おおよそ始動したばかりの第二分校へと配備されたこと自体を疑わずに済むのであればどれほどよかったのか、そんなことばかり思いながらも心地よい列車の揺れに身を任せながら、客室から見えるサザーラントの旧都セントアークへの大森林をまたがる景色に黄昏るつもりでのぞき込む。
あの大魔王オーレリア分校長との決闘騒ぎから丸3日も経っていた。短い間ながらVII組のみんなからのフォローのおかげもあり、ライカは無事士官学院にある程度なじむことができたし、俺と同じく学費などの諸費用を手に入れるために便利部の一員にもなった。
便利部と言えば、アレ以降何か変わった依頼があったかというと、そんなことは一切なく、数件の魔獣討伐依頼に、帝都への買い出しや、ちょっと珍しいものでいえば仲良くなったカーネギー書房からの依頼で、ボードゲームに興味を持ってそうな学院生を紹介するとかっていうのもあった。それなりに面倒な依頼もなかったわけじゃないが、時間がかかった分だけ報酬はいただいているので、割に合わない仕事ではないのだ。
とはいっても、いくらめんどくさがりな性格とはいえ、はや数十分見続けている変わらぬ景色をにらみ続けることなどできるはずもなく、折角なのでデアフリンガーにある食堂でサンディが給仕係をやってるらしいので、顔を出しに行こうと思い立ち、宿泊用客室から出かけると、
(あれ……?)
なんだかフラフラと食堂のある3号車ではなく、逆の5号車へと向かっているアルティナが見えた。
(なんかあったのか……?)
すでに夜も更けはじめなのだが、こんな時間に何の用だろうか? 5号車と6号車と言えば機甲兵の格納庫ということで、ティータがオーバルストアを開いてはいるが、俺らが用事を持つにしては珍しい場所ではある。
(ちょっとついて行ってみるか……)
と、そんな好奇心を抑えられずにたどり着いた5号車では、
「よっす、アルティナ。いい夜だな。空は見えないけど」
「あ、ノクスさん。こんばんは」
意味もなく適当にドラッケンをコンコンとたたいてみる。もちろんだが何も起きない。
「なんか元気がなさそうに見えたけど、どうかしたのか?」
「いえ、大したことは。ただ、機甲兵教練ではうまく操縦ができなかったなと……」
「ああ、そういうことか」
先日の機甲兵教練。ドラッケンや
「俺もなんもできなかったなぁ……」
「さすがに私は基本操縦はなんとかクリアしたのですが、ノクスさんは……」
「そうなんだよなぁ……。なんかこう、あれに乗ると思考にノイズというか、違和感が出ちまってまともに歩くことすらできそうにないんだよなぁ」
機甲兵に搭乗した時のことを思い出す。
基本的な操縦方法などは全部覚えてきたにもかかわらず、指定された通りの操作を行っただけなのに、機甲兵はあらぬ方向へと動き出してしまうのだ。
大丈夫、俺はできる子だ、と自己暗示をして、心を静めて再チャレンジしようとすると、なんだかよくわからないけど耳元で誰かに、あれに乗るなと騒がれているような気分になってしまう。
「私の場合はクラウ=ソラスの影響があるようですが……」
俺はそういうのないけどなぁ。いや、ワンチャン、こいつか?
俺が疑惑の念を虚に向けようとしたとき、後ろからリィン教官の声がした。
「まあ、機甲兵には向き不向きもあるし、焦らずにゆっくり慣れていけばいいんじゃないか?」
「あ、リィン教官。こんばんわっす」
「こんばんは」
どうやらデアフリンガーで見回りをしていたようで、格納庫にまでやってきたらしい。
「……。ですが、ユウナさんやクルトさんはすぐに慣れたので……」
「だよなぁ……」
「……少々、力不足を感じます」
「わかるわかる」
「…………そうか……」
悔しがるアルティナにもろ手を挙げて相槌を打っていると、リィン教官は何やら意味深にうなずいていた。長距離の寝台列車移動にやられてしまったのだろうか、寝れない夜でも過ごしそうである。
でもわかるぞ、教官。俺だってつい先ほどまでそういう感じだったし。よし、ここはさりげなく話を変えてフォローしてあげよう。
「じゃああれだな、アルティナ。俺らは今日から機甲兵へたくそ連盟だ! いっぱい練習して、ユウナやクルトにあっと言わせてやろうぜ!」
「機甲兵へたくそ連盟……。ネーミングセンスはともかく、そうですね。負けていられませんね」
「つきましては、無事演習から帰れたら、まず基本操縦についてご教練ください、アルティナ教官!」
「えと、……そこは熟練者であるリィン教官などから教授を受けるべきではないでしょうか……?」
「いや、操縦ができる人ってのは、苦手な人が躓いてる理由がわかりづらいだろうし、案外できない人同士の方が色々教えあえるんじゃない? 操縦時に違和感を感じる、なんてのは俺らしか共感できないことだろうし」
「確かに……」
それに、と俺はつづけた。
「どうしても困ったらリィン教官に話を聞こう。リィン教官も手伝っていただけますよね?」
「ああ、そのための助力は惜しまないつもりだ」
なんともまあ面倒見のいい教官にあたることができてよかった。
とはいえ、もしも機甲兵に乗れない理由が虚にあるとしたら、少しばかり厄介な話にはなりそうだ。
「そういえば聞きそびれていましたが、明日の活動予定は?」
「ああ、明日の早朝、VII組全員に召集がかかる。詳細はその時伝えられる予定だ」
「事前にはわからない感じですか?」
「そうだな。実は俺も詳細については伝えられていない」
「そんなことあるんすね。……一応確認ですけど、この演習地についてはレクターが連絡した感じになるんですか?」
俺の話を聞いて、少しばかり驚いたような表情をし、すぐさまにそれを隠すリィン教官。
「いや、わからないな。わかっていたとしても、おそらく軍事機密として教えられない」
「その反応でなんとなくわかりましたよ……。それでなんですけど」
念のために確認しておいてよかった。この学校がまともなわけないとは常々思っていたんだが、帝国政府が演習地の設定にかかわるとしたら、おそらくこの演習はもはや口実に過ぎないだろう。そのうえ、分校長までも参加しないという事実まで入るとなると……。
「杞憂に過ぎなかったらいいんですけど、もしも、もしもですよ。レクターが便利部、もしくは俺個人に対して何か依頼を持ってきたら――」
<選べ>
【絶対に達成することを宣言する】
【すべてをリィンに押し付ける】
てめえ! 俺の良心を利用しようとしてやがるな!?
おそらくだが、この演習は、あの内戦後のごたごたでもやっていたように、灰の騎神であるリィン教官を帝国内部のいざこざの鎮圧に利用する口実だろう。そして、デアフリンガーなどという、これだけの走行列車を用意するくらいなのだ。それくらい面倒な案件なのだろう。
だから、リィン教官に迷惑はかけたくない。
……だけどなぁ! 選択肢よ! お前は見誤った……! 俺の怒りを……俺の憎悪を!
たとえリィン教官の迷惑になったところで、あの野郎の依頼を受けるくらいなら、俺は心を鬼にして教官に面倒ごとを押し付けてやる!!
「どうか俺の代わりに――」
<選べ>
【死力をもってして依頼を達成する】
【全身の穴という穴から体液をまき散らせながらリィンに家に帰ってママとパパに会いたいと懇願し、トワにデアフリンガーの行き先をノルドに変更するまで裸土下座を敢行したのちに、オーレリアに対して士官学院をやめることへの覚悟を示す】
……選択肢よ! 俺は見誤った……! お前の悪質さを……!
「死力でもってして依頼を達成するので……! 依頼書を持ってきてください……!」
「あ、ああ……。……だけどなぜそんな悲壮感溢れる……」
「覚悟です! 絶対成し遂げるという、覚悟です!!」
その後と言えば、アルティナはそのまま自室に戻り、リィン教官とは見回りを続けるとのことで別れ、俺も見回りじゃないがプラプラと適当に歩き回る。
便利部としては数日間の休業を告知しているが、同じ学校の生徒からなら別に依頼をもらって困らないし、そういう意味でも軽く見回ることにしよう。……あれ? これじゃあリィン教官とやってること変わらなくね?
「よぉ、
そんな俺に声をかけたのは、キッチンのカウンターで飲み物をすすっているアッシュだった。
「バトルジャンキーじゃねえよ……。つーかその二つ名広めだしたのお前だろ。同級生からちらほらと聞くようになってるから、マジでやめてくれよな」
「やめるも何も、事実だろうが。分校長サマ相手に大立ち回りしたうえで喧嘩まで売ったんだから」
「事実は否定しないけど……。まあ、いいや……。用がねえなら行くぞ」
嫌な二つ名の発生源を確認できたところで、サンディに軽い夜食を出してもらい、ラウンジに座り込む。胃につまみを水で流し込んでいると、
「よォ、暇してるか?」
ライカがやってきた。
「ああ、寝るまでの暇つぶしをしてた」
「そうか」
そう言いつつライカもサンディのところで飲み物を買って、ラウンジに座り込んだ。
「もう怪我は大丈夫なのか?」
「もう大丈夫だって、心配性だな」
このやり取りもここ数日何度も行われたものだった。
ライカからすれば、自分のせいで俺が戦ったように見えたんだろうから、気にもなるとは思うが、分校長の手加減のおかげもあって、さすがにもう傷は残っていない。
「何度も言ってるけど、あれは俺の自業自得だったんだから、あまり気にすんなって」
「そうだったとしても、気にさせてくれ」
ライカは一呼吸をおいて、真剣なまなざしでこちらを見ながら続けた。
「ノクスが何をどう思っていたのか、それはノクスだけのものだろうけど、ただの半グレの一員になるか、軍に行くかしか選択肢のなかったオレが、この学校の一員になることができたっていう事実はオレたちのものだよ」
「……ああ、そうだな」
「ノクスなしには、オレはオレじゃなくなってたんだ。だから、オレはノクスに感謝してるし、ノクスの心配もしちまう。と言っても別に嫌々ってわけじゃないぞ」
「ありがとう」
「礼を言うのはオレの方だよ。でも、本当に大丈夫そうでよかったよ。これで特別演習も無事乗り越えられそうだな」
長い金と赤の髪が映えるカラッとした笑顔でライカは言った。
「ああ。入学していきなり結構つらいイベントかもしれんが、俺も全力でフォローするから、一緒に乗り越えよう」
「正直どうなるかはわからないけど、ノクスがいれば安心だな。まあ、ノクスがまた無茶しないようには見させてもらうけどな」
<選べ>
【お前のための無茶なら喜んでやるさ】
【俺はドMなので無茶することに興奮を覚えるんだ】
きざってぇセリフとただの変態のセリフを選べってことか。きざったい法も恥ずかしいのでやめてほしいけど、変態の方はあらゆる意味で却下だ。
「お前のための無茶なら喜んでやるさ」
「……おいおい、顔真っ赤だぞ、ノクス」
「お前もな……!」
おい、こらそこサンディ! とんでもない現場を見てしまった家政婦みたいな表情をするんじゃない! って、ユウナまで3号車の入り口で同じ顔で止まってるんじゃない!
こんな針の筵みたいな状態はいやだぞ! 俺は帰らせてもらう!
<選べ>
【そんなことより、パンツの色を教えて】
【そんなことより、パンツを嗅がせて】
あ、終わったわ、俺。
今しがた親密度の上がった女子に、世界で最も最低な行為をするをの、少なくともユウナとサンディとアッシュとあと数名の女子生徒を含むみんなに見られるんだ。
さようなら分校、さようならトールズ。俺は今、退学処分という名の卒業をします。
「そんなことより、パンツの色を教えて」
「な――ッ!?」
「えっ!?!?」
「は……!?」
上から順にユウナとサンディとアッシュね。運がよかったことに、そのほかの生徒はおしゃべりに夢中で気づいてなかったようだ。
ああ、ライカよ。1発とは言わないので、気が済むまでビンタしてくれ。いや、パンチでもいい。お前にはそれをするだけの権利がある。
そう覚悟を決めていた俺だったが、一向に顔に痛みがやってこないので、目を開いて恐る恐るライカに視線を移すと、彼女は制服のスカートの上から手を突っ込みながら
「ん? なんだ、気になるのか。オレも忘れたから、ちょっと待ってくれ。今確認する」
「いや、しなくてもいいから!?」
「あれ? お前から聞いてきたんじゃ――」
「――ちょっと!」
そこで乱入してきたのはユウナだった。
「何してんの!?」
「いや、これはだな……」
「――問答無用!! ライも何を……」
「何って、パンツの色を……」
「なんでライはそんなに乗り気なの!?」
「別に減るもんじゃねぇし」
「そういう問題じゃないの! ちょっとライ! 一緒に行きましょ!」
そう言いつつ、強引にライカの手を引っ張って行くユウナ。
「最ッ低ー!!」
捨て台詞とともにやってきたのはパーじゃなくてグーだった。
全くの余談だが、俺の二つ名はいつの間にか怪人
・・・・・・
翼がもがれた雛鳥って聞いてたからあまり気にしてなかったけど……、ちゃんと探りを入れておいてよかった~。
ランディ兄や灰の起動者だけだったらなかなか楽しめそうだったのに、あの子もいるってのはいただけないな~。
あの子が来ちゃうのなら、いろいろ練り直した方が良さそうなのよね。
パパが過保護なだけだと思ってたけど、ガレスを連れてきたのは正解だったみたい♪
けど、さすがにあの子のためだけに戦力を割けるほどよゆうもないのよね~。
…………そういえば、意外な”ゲスト”がいたし、その人にお願いしちゃおっかな♪
セリス人気高いですね……
主人公と絶望的に相性が悪そうで、下手すると出会った瞬間に断罪されかねないんですよね……
いや、主人公の正体がわかる+容赦ない守護騎士なら全員そうでしょうけど……
実は主人公の件でどなたか守護騎士の方に登場していただかないといけないんですが,誰にしましょう……?
-
セリス
-
ワジ
-
リオン
-
ベルガルド