トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが……   作:全自動髭剃り

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原作とかぶるセリフは省略気味です


4月22日 特別演習1日目 動乱の火種(後編)

「まったく……。お主も因果なものよのう」

 

 ひとしきり気が済むまで俺をしばきまわした後、恥ずかしさからなのか殴り疲れからなのか、顔を少しばかり紅潮させたロゼたんが嘆息しながらつぶやくように話しかけてきた。

 

「もはやここまで来れば、悪者が妾ではないか……」

 

 普通なら自分をひん剥こうとした相手に対しては、ぶん殴った後だろうが嫌悪するとかそういうのが普通なのにもかかわらず、なぜだかよくわからないが、憐れんできたうえに反省までしている。

 え、まさかあの行動(ロゼたんをひん剥いたやつ)が俺の意志じゃないとわかってて……!

 

「ロゼたん、俺のせ――」

 

 と言いかけたところで、とどまる。

 たとえあの選択肢の時間に動いてたとしても、選択肢そのものについて言及することによって受けることになってしまった罰のような選択肢をもう二度と食らいたくなかったからである。

 

「よいよい。言及すること自体がためらわれるものじゃろうし、知らぬことこそが正しい道ということもあろう」

「ロゼたん……」

「ロゼたんはやめい! まったく、……いくら妾の姿が今ロリぃからといって……」

 

 と、いかにもロリじゃない姿があるかのように語るロゼたん。それを聞いて疑わない程度には、ロゼたんにはいろいろと普通じゃない片鱗はあった。先ほど俺の受けたパンチの力に、尋常じゃなく歳を食ったような口調に、イストミア大森林で見せたよくわからない術と、おそらく転移のようなアーツの行使。

 って、そういえば!

 

「あの、俺特務活動中で、リィン教官たちのところに戻らないといけないんだけど……」

「ん? ああ、あの灰の小僧のことか。安心するがよい、エマ――おぬしの教官の知り合いに連絡はすでにしておる」

「それはよかった……。一応俺も連絡入れとくか」

 

 と、ARCUSを開いて教官たちに連絡が取れないかと確認してみると……

 

「通信ができない……。って、聞いてなかったんだけど、ここってどこなんだ?」

「ここか? ここは、そうじゃな……語ったところでおぬしは無害そうじゃから説明してやろう。ここは暗黒の森の狭間にある魔女の眷属(ヘクセンブリード)が本拠地、隠れ里エリンじゃ」

 

 尊大そうにロゼたんは言い放った。

 ものすごく偉そうだった。いや、ものすごい偉いのかもしれないが、その見てくれじゃ、ただのロゼたんでしかない。

 

「えーと暗黒の森ってことは、イストミア大森林のことかな?」

「そうとも言うな」

 

 俺としてはそっちしか知らん……。

 だがまあ、魔女の眷属なんて話が出てきたので、先ほどから確認したかったことを聞くことにする。

 

「えーと、確認だけど……焔の至宝って聞いたことある……?」

「おぬしにとっての大地の至宝以上には詳しいぞ」

「じゃあ、聖獣って……知ってたり……?」

「そうじゃな。それもかなり詳しいぞ」

「…………もしかして、本人だったり……?」

「うむ」

 

 わーお。予想が的中してしまった……。

 焔の至宝も聖獣もなんだか知らんけど……。

 

「えと、もしかして、結構偉い人だったり……?」

「それはそれはかなーり偉い人じゃ。ロゼたんと呼ぶことが不敬罪になるほどじゃ」

「マジ……?」

 

 けど、もう君のことはロゼたんとしか呼べないんよ、俺……。

 

  <選べ>

 

【胸は小さいのに?】

【懲りてないようだからもう一度ひん剥く】

 

 ねぇ、おまえ(選択肢)なんかロゼたんにうらみでもあんのか……? 先ほどからロゼたんに集中砲火しすぎじゃね? というか、先ほどの不測の事態(?)と違って、この選択肢の間はロゼたんも動いていない。本調子に戻ったのだろうか。元気になったからって俺を苦しめるのはやめてほしいが。

 

「胸は小さいのに?」

「胸は関係ないじゃろ! そも、妾の本来の姿は、それはそれはグラマラスでないすばでーのボインボインじゃ!」

「は、はぁ……」

「信用してないじゃろ、おぬし!」

「それは、まあ」

「覚えておれよ! 機会があれば、妾の姿を見せて一目惚れさせてやるからの!」

 

 一目惚れするほどなのか……。いや、一目惚れさせてやるとかって自分で言ってる時点で、惚れそうにはないが。

 

「はぁ……。なぜ急に妾のことについて詳しくなったのかもわからんし、鋭い割には至宝も聖獣もなんなのか知らぬようじゃし……。全くどうなっておるのだ……」

「俺自身もさっぱりで……」

「じゃろうな。()()()()()()()()()()()のじゃろう。だからといってこのまま放置するわけにも……」

 

 何かと意味深に語るロゼたん。

 なんか一人で早合点してるようだが、何を言ってるのかは全くわからん。

 

「手っ取り早いのは、滅ぼすことじゃが……」

「え、なんか急に物騒になってない!? 焔の至宝なのか聖獣なのか知んないけど、やるってんならこっちにも考えが――」

 

  <選べ>

 

【懲りてないようだからもう一度ひん剥くぞと脅す】

【先手必勝】

 

 下の選択肢! あえて言わなくてもわかるよね的なわびさびの精神を取り入れてるつもりかもしれんが、結局は先ほどやったことと変わらねえだろうが! というか、今度こそ再起不能なレベルでしばかれるぞ! 滅ぼすとか言ってるし!

 

「懲りてないようだからもう一度ひん剥くぞ」

「もう一度やってみろ、今度こそ滅ぼしてやるぞ」

「すんません……」

 

 口調すら忘れてこちらをにらんでくるロゼたん。脅しだけで済んでよかったぁ……。

 

「それで、おぬしの処置じゃが……。滅ぼすのも酷な話じゃから、いっそどこかに封印を……」

「封印……!? え、俺なんかしたっけ?」

「しておらん。じゃが、これから何かしでかすじゃろう」

「何その疑わしきは罰せ的な話!?」

「そうなのじゃよ。所詮は疑わしいだけじゃから、手を出しても仕方ないのがのう……」

 

 先ほどからなんだか奥歯に物が挟まったような物言いのロゼたん。

 なんだかこれはもったいぶってるというよりかは、どちらかというとロゼたん自身が確信を持ってないような感じである。

 

「灰の小僧の話もあるし……、おぬしのことも高度な柔軟性をもって臨機応変に対応するしかないのかのう……」

 

 戦争に負けてしまいそうな文言をつぶやくロゼたん。

 

「……あとからエマを通して、連絡をさせてもらおうかのう。今おぬしをここに置いて何かが変わるわけでもなし」

 

 そう言いながら立ち上がるロゼたん。エマと言えば、先ほど言ってたリィン教官の知り合いなのだろうか。リィン教官も顔が広い……。

 

「ついてくるがよい」

 

  <選べ>

 

【エリンの里に転移するためのブレスレットをもらうよう交渉する(成功率:高)】

【ロゼたんに第二分校に来るように交渉する(成功率:低、失敗時最悪の選択肢が現れる)】

 

 ほう。そうきたか……。

 上一択である。下の方はそもそも成功率が低い上に、失敗したら罰ゲームってことだろ? わざわざ選ぶ理由がない。けど、正直なところを言うと、下の選択肢を選びたい欲は無きにしも非ずではある。なぜなら、おそらくだが俺の選択肢のことについての、最大の理解者になってくれる可能性があるからだ。

 だが……。

 最悪の選択肢と、こいつが警告するくらいなのだ。これで帝都から毎日イストミア大森林にマラソンしなくてはならないとかいう地獄を味わう可能性もある。実際クロスベルでは味わった。

 なので……。

 

「ちょっと待って!」

「ん? なんじゃ?」

「ここって、隠れ里っていうくらいだから……たぶん転移とか、そういうのを使わないと来れないよね?」

「ああ、そうじゃろうな」

「だったらさ、あとからここに来れるように、転移のためのブレスレットをもらってもいい?」

 

 へ? と、きょとんとした顔になるロゼたん。

 

「なんでじゃ? 何か用があるのか?」

「いや、用って程でもないけど……。ロゼたんに会いたいというか……」

「ロゼたんやめい! 妾に会いたいじゃと……? ――あ、まさかおぬし……!」

 

 そこで何かを察するロゼたん。

 さすがは焔の至宝の聖獣(?)、空気を読める幼女なのだ。

 

「妾に襲い掛かったのは因果律が故と思っておったが、まさか幼児愛好者(ロリコン)……!?」

「ちっがーう!! ……いらほら、なんだかんだで俺の一番の理解者がロゼたんだからさ、何かがあったときに頼りたいというか」

「なんじゃ、そういうことか……。まあ、おぬしを野放しにするのも、それはそれで危ない気がするしのう……」

 

 そう言うと、ロゼたんは虚空に手のひらを差し出す。何してるんだと思っていると、その手のひらには摩訶不思議な幾何学的文様が浮かび上がり、

 

「ほれ。持っていくがよい」

 

 その手には見事にブレスレットが握られているではありませんか!

 

「すげえ! マジック!?」

「手品ではないがのう。説明したところで無用ゆえ、そのようにとらえるがよい。それがあればわざわざ妾が送り出すこともなくなろう」

「え、これで出入りできるのか! どうやって使うの?」

「簡単じゃ。目を閉じて転移する前にいた景色を思い浮かべてみよ」

 

 ロゼたんはそのまま俺にブレスレットを握らせ、もう片方の目を優しく目を閉じさせた。

 ふむ。前にいた場所の景色か。

 イストミア大森林の奥の方で薬草を取っていたのを思い出す。

 

「こんな感じ――え?」

 

 目を見開くと、そこはすでにリィン教官たちと別れた場所で。

 日がすっかり沈んでいた。

 

 ・・・・・・

 

「――本当の”戦争”だったら5分くらいで壊滅だろうけど」

 

 そう言っているシャーリィの武器を握る右腕にすでに照準はあっている。

 声が聞こえるくらいには近い距離の狙撃なのだ。外す方が難しいだろう。

 だから、引き金を引く――

 

 ――キンッ!

 

「チ――ッ!」

「!?」

「何者ですの!?」

 

 だがその狙撃はシャーリィの隣にいる甲冑姿の栗毛の少女によって止められた。

 

「はぁ……」

 

 狙撃が失敗したので、ため息が出る。

 これから狙いなおすにしても、警戒されているシャーリィに当てるのは面倒なのだ。

 

「あれ、ノクス、いたんだ~」

「先ほどついたけどな。で、何やってやがんだ?」

「んー、そうだなぁ。安全講習? 立派な装備を持ってるみたいだから、どれくらいやってくれるかなって思って」

 

 とぼけたように語るシャーリィ。

 その背後には火の手が上がっている演習地の姿があった。軽く見るに、対戦車砲で機甲兵を無力化したのちに人形兵器で制圧を試みたのだろうが……。

 

「あっそ。見た限り夜襲に奇襲、さらに圧倒的戦力を用いた先制攻撃にもかかわらず制圧までに至っていない。小手先調べでした、みたいな雰囲気を出してる割には戦術の立て方が甘かったんじゃない?」

 

 ゆっくり、気取られないように近づく。言葉での煽りはそのため。

 

「うーん、そこを突かれると弱っちゃうかなー。予想外もあったしね」

「そうか。”戦争”じゃなくてよかったな。隣の騎士様がいなかったら、撃ち抜かれてたぞ?」

「そうかもねー。正直、ノクスが近づいてきてるのはシャーリィ気づかなかったよ。……やっぱりノクスは猟兵をやるべきじゃない? 今なら部隊長が空いてるからさ、一緒に来ない?」

「……。そうだなぁ」

 

 ここらでいいだろうか。

 近づけたので、仕掛けよう。

 

「てめえを倒した後でな!」

「――おっと」

 

 しかし、シャーリィを斬りつけたと思われる軌道には、すでに誰もいなくて……。

 

「転移か……」

 

 結社のやつらがよく使うトリックのため、残念ながらシャーリィをとらえることはかなわなかったのであった。

 

 ・・・・・・

 

 あの後新品だったにもかかわらず、運行2日目にしてボロボロになったデアフリンガーで何が起きていたのかについて、リィン教官に説明を受けた。

 イストミア大森林の件については、俺が山道で迷子になってしまって、心優しい現地の住民が見つけてかくまってくれてたことになっていたらしい。リィン教官曰く、魔女の術とかいうよくわからんもので、VII組のみんなも違和感なくそのことを事実のように受け止めているので問題はないが、ミハイル少佐からは迷子になったことへの小言があるかもしれないので覚悟してほしいとのことだった。なるほど、エマという人がちゃんとリィン教官に連絡をしたのだろう。

 おそらく偶発的だと思われる列車の脱線事故が起きたことと、それに加えて人形兵器についても紡績町パルムの付近の街道で多数発見したためにその対処をしたことも教えてもらった。脱線事故についてはともかく、人形兵器についてもう少し詳しく話を聞くと、どうやら自らを狩人と名乗る中年男性がかなりの数の人形兵器を狩って投棄した場所に居合わせたということも分かった。

 ただの野良の狩人とかいうわけのわからない職業ながら腕がたつ人間がいるとしたら捨て置けばいい話なのだが、おおよそ結社に対する敵対勢力なのではないかという予測ができるだろう。とはいえ、俺たちにとっての味方かどうかはわからないが。

 その後、さきほどのシャーリィと甲冑の騎士が演習場を急襲。幸い重傷者は出ていないものの、野営用の備品のほとんどと機甲兵2体が破壊されたとのこと。デアフリンガーにも小さくない損傷が入ったが、運行に支障が出るレベルではないらしい。

 

「すみません、肝心な時にいなくて……」

「仕方ないさ、ノクスもノクスでやることがあったのだろう」

 

 こちらに気を使ってくれるリィン教官だったが、実際には裏で幼女をひん剥いてしばかれてたものだから、本当に申し訳なく感じる。言わないけど。

 

 リィン教官と別れたのち、ほかのクラスの人たちとも合同に野営地の再設立を手伝った。正直周りを小高い丘に囲まれたこの場所は襲撃に耐えるという意味で非常に不利な場所だと思ったが、鉄道が敷いてあるという条件を満たせる場所というのを考えれば贅沢は言ってられないという話ではある。

 VII組のみんなともそこで再会したが、どうやら魔女の術とやらはちゃんと働いていたようで、山道ではぐれて心配したと言われた。マジで申し訳なかったと頭を下げて謝罪をさせてもらった。え? 別にはぐれてないしなんで謝るかって? みんなが必死に仕事したり戦ったりした裏であんなことをしてたからだよ……。

 

 なんだかんだで戦いの後始末が終わったのも結構遅い時間になっていて、夜の哨戒はVIII組が担当してくれるとのことで明日に備えるためにぐっすりと眠らせてもらうことにした。

 

 ・・・・・・

 

 指定時刻より早く目が覚めたので、まだ外で哨戒任務を請け負ってくれている級友――あれはゼシカとマヤかな……? のためにキッチンで軽くつまめるものを作って届けることにした。

 

「感謝する」

「ありがとう」

「いいってことよ」

 

 と、朝から人のために動くことができたので、今日は何かいいことでもあるかなと期待せずにはいられないなと心躍らせながら軽く体でも動かしに野営地の入り口にフラフラと立ち寄ってしまったのが運の尽きで、今世紀もっとも出会いたくないやつが飄々と歩いてくるのを見てしまい、

 

「よう、朝から来るのを待ってくれたのか?」

「とっとと帰りやがれ。帝都にでも、土にでも」

「まったく、つれないね~」

 

 という俺の挑発を受け流して、レクターは俺に封筒を一つ投げてきた。

 

「なんだよ、これ」

「お待ちかねの依頼だ。わざわざシュバルツァーを通して渡すこともないだろ?」

「あっそ。用が済んだんなら帰れ」

「そういうわけにもいかないんでな。で、お前らの使ってる装甲列車、何号車が教員用のスペースになってるんだ?」

「6号車だよ。あんまリィン教官に無茶させるなよ」

「あいよ」

 

 そう言いつつ、6号車に向かうレクター。教員用のスペースは2号車だが、正直に答えるわけがなかろう。フン、せいぜい貨物車に入って迷子になるがいい!

 と、そんな俺の些細な復讐は置いておいて、渡された封筒を破いて中身を確認する。

 

 依頼内容:パルム街道に生息する機械型を含む全ての大型魔獣の討伐依頼

 依頼人:レクター・アランドール

 報酬:トールズ士官学院第二分校に所属する生徒一人の、2年分の学費及び生活費

 

 こういった、レクター自身が持っている情報をすべて渡さないような依頼内容に、俺が受けざるを得ないような報酬も、いつも通りなものであった。いつも通りと言っても、2回しか受けてないが。

 一見簡単な話である。

 結社が哨戒用に使用している人形兵器で、街道にまで進出してしまったものを片付けろということだろう。これだけなら昨日俺たちが受けた要請と同じだ。だからと油断していけば、どんな目に合うか知れたものじゃない。といっても、現時点で何か対策ができるかというとそんなこともないのが質の悪いところである。

 

「あ~あ、ろくなことにならなさそうだぜ、全く……」

 

 独り言の声が出てしまうくらいには憂鬱な気分を抑えて、そろそろ起床時刻となってアラームに起こされるであろう級友たちと合流して、本日の特務活動の連絡でも聞こうかと思っていたら、どうやら2号車にあるブリーフィングブースではすでに教官たちが集まっていた。ブース外にも数名ほどいたが。

 どうせろくでもない話をレクターがしているのだろうという予測は当たり、リィン教官にサザーラントでの結社の問題は全部リィン教官に押し付けるらしい。

 で、俺と仲良く一緒に盗み聞きをしていたリィン教官の元同級生たちが入るくらいのタイミングで俺は離脱。下手に聞いてるのがばれても、ミハイル少佐あたりが面倒なのだ。

 ……話は変わるが、シャーリィの服装も相当なものだったけど、先ほどの盗み聞き仲間の一人であるフィーって人の服装もやばくないか? 最近の帝国の流行なのか……。

 

 特にやることもないので、フラフラと野営地で手伝えることがないかと歩き回りながら聞いてると、装備品を置くテントの下で、ミュゼが話しかけてきた。

 

「おはようございます、ノクスさん。レクター少佐から依頼を受け取ったのですか?」

「ああ、おはよう……ってなんで知ってんの?」

「朝起きて窓の方を見たら、何やらやり取りをしているレクター少佐とノクスさんを見てしまいまして」

「そういうことね」

 

 別に隠すほどのことでもないんで、もらった依頼書を見せる。依頼者のプライバシー? レクター相手に尊重する気にはならねえよ。

 

「昨日の今日でこれだよ……。昨日ならまだ特務活動中にやれたのに」

「でも、リィン教官のあの様子では、本日は特務活動の方は難しいのではないでしょうか?」

「そうだな…………。って、おい。何で知ってるし」

「朝起きて窓の方を見たら、ちょうど――」

「なにも見えねえだろ!」

「うふふ」

 

 意味深な微笑を浮かべるミュゼ。どことなく裏ですべて操ってますよ、みたいな雰囲気を出しやがって……

 

「言いたくないなら聞かないけどさ……。まあ、いずれにせよ達成するにはミハイル少佐あたりに許可を取りに行くか、抜け出していくかくらいしかないけど」

「あら、そんなこと私に言ってしまって大丈夫ですか?」

「ああ、なんとなくだけどミュゼからは悪い子のオーラするから、言ってもばらさないだろ? なんなら協力してくれない?」

「やだ、そんな悪い子だなんて……。でも、私にできる範囲でノクスさんのお手伝いならさせていただきますね。先日のおいしい晩餐の借りも返せていませんので」

「マジで? ありがとうな」

 

 などと雑談をしていると、列車の方からリィン教官が出てきた。そのリィン教官に向かって走っていくわれらがVII組のみんな。

 

「あら、行かなくてもよろしいんですか?」

「おう、ちょっと行ってくる」

 

 特務活動の詳細もろもろ含んで話を聞きにいかないといけないので駆け足で行く。

 

 どうやらリィン教官は盗み聞きした話通り、俺らとは別行動になるみたいで、予測通り本日の特務活動はなくなり、VIII組IX組と合同でカリキュラムに取り組むということになった。

 もちろん、俺らの考えとしては帝国の要請があろうがなかろうが、結社がここで何かをやらかそうってのなら、それを何とか食い止めたいし、そのためにリィン教官が動くってのなら、ついていきたいのだが、アルティナの私は教官のサポート役です攻撃に対しては、今はVII組の生徒だろという反撃を行い、クルトの僕の力では不足ですか攻撃に対しては、不足だと正面突破を行っていくリィン教官。

 ほら見ろ、ユウナが爆発寸前の爆弾みたいな表情をしてるだろ。リィン教官も強く当たりすぎなんだよ……。…………と言ってもその爆弾を爆発させたことのある俺からすれば、まだまだ余裕がありそうには思えた。そんなことを思える人生ではありたくなかったが……。

 そのままユウナはアルティナを連れていき、その場に残ったVII組のメンバーは俺とライカだけになった。

 

「こういう時にわがままを言うのもなんだから、せめてこれだけは言わせてください。気を付けていってください」

 

 ライカもそう言うとユウナが走り去った方へと向かっていった。

 そして、俺だけが残った。

 え、俺もなんか言った方がいいの?

 と、部妙な雰囲気の中でしどろもどろする俺を見かねたのか、リィン教官は

 

「ノクス、君は彼らのサポートをしてくれないか? 君がそれなりの実力と経験を持っていることはわかっているつもりだが、君も同じくVII組の生徒なので俺個人の要請につきあわせられない。君には正しい選択を選んでほしい」

 

 なんて言ってきた。

 いや、別についていくつってわがまま言ってたわけじゃないのに拒否られた。いやまあ、ついていく気満々ではあったので、間違ったことは言ってないけども。それに、そのとってつけたような言葉だって、何か意図があるわけでもないかもしれない。

 けど――

 

「了解です。教官も気を付けてくださいね」

 

 ――少しだけ、腹が立った。

 

 ・・・・・・

 

 VIII組やIX組に混ざってカリキュラムをこなしていると、あっという間に午前が過ぎ、俺たちVII組はテーブルを囲んで食事をとっていた。

 ユウナはアルティナのことをアルと呼び、面倒そうにしながらもアルティナはそれを承諾し、

 

  <選べ>

 

【自分もアルって呼びたいと主張する】

【ユウナのことをユウナたんと呼ぶ】

 

 いやいや! アルってあれじゃん! 女の子同士とかでつけるあだ名でだなぁ! 俺が言うとなんかちょっと違くない!? だからといってユウナたんはちがうだろ……。

 悩みに悩んだ末、

 

「じゃあ、俺もアルって呼んでいい?」

「へ?」

 

 きょとんとした顔になったのはユウナだった。

 

「はぁ。一人も二人も変わらないですし、構いません」

 

 すんなりと受け入れるアルティナに、ユウナも物申すにもうしなくなって、そういうこともあるのかというような顔をしてしまった。

 

「じゃあ、オレもそうさせてもらおうかな」

 

 つられてライカもアル呼びにし始めてしまった。

 

  <選べ>

 

【クルトもどう?】

【クルトもアルと呼ぶ】

 

 なんでだよ、下の選択肢! クルトだったらクルとかだろうが!(激うまギャグ)被るだろうが!

 

「クルトもどう?」

「いや、僕は遠慮させてもらおう……」

 

 微妙な顔で答えるクルト。うん、ごめんね変なことを聞いて。

 と、微妙な顔な顔のままクルトは立ち上がり、そのまま一人で食堂車から出ようとしていた。

 

「あれ、外に用事か? リィン教官のところに行くなら付き合うぜ」

「いや、ただの稽古だ。半端ものだけど、……さすがに一人で飛び出そうとするほど愚かではないさ」

「クルト君……。教官にああいわれたからって……」

「別に落ち込んじゃいないさ。あの人が、僕らを機関から遠ざけるためにあんな態度をとったことくらい、わかっているつもりさ」

 

 自分の実力不足をかみしめながら、それを次に生かそうと、そう続けた来るとは宣言するように言った。

 

「そうはいっても結局、俺らはただ悔しいだけだよな……」

「そうね。あんな風に遠ざけられて、納得なんてできるわけない。きっとアルだって同じだよ」

 

 話を振られたアルティナ――アルは気持ちの整理がうまくついていないながらも、生徒だという理由でリィン教官に同行できないことに納得がいかない様子だった。

 

「だけど――だからって、どうすればいい……!?」

 

 自分の未熟さを嘆きながら、どこにもぶつけられない怒りをはらんだ口調でクルトは叫んだ。

 どうすればいいかなんて、そんなの……。

 

「納得できないことがあるなら、とにかく動くしかない。でしょ?」

「ユウナの言うとおりだ。オレたちがここで立ち止まって腐ってるよりかは、一歩前に踏み出す勇気を持たなくちゃいけねぇだろ」

「それは教官からの指示を破る勇気だけどな」

「ノクスだって同じ気持ちじゃねぇのか?」

「同じだぞ。ただ、あとでリィン教官からお叱りを受けちまう覚悟が、俺()にはあるのか気になっただけだよ」

 

 俺はそう言うと、懐から今朝もらったばかりの依頼書をテーブルに広げた。

 

「幸い、口実は作れる。それに、俺は教官から、正しい選択をしろと言われた。俺の思う正しい選択肢ってのは、一人どころか、便利部の部員だけじゃあ達成できそうにない、帝国情報局書記様から出された依頼を、ここにいる全員で達成しに行くってやつだぜ」

 

 正直のところ、この選択をしたことが正しいと確証は持てない。

 俺たちはあくまでも実力も経験も足りないガキに毛が生えた程度の集団だ。シャーリィなら俺が何とか抑えられるが、昨日いた栗毛の剣士に本気で切りかかられたら正直耐えられる自信がない。だからこそ俺たちに対応できるのは、人形兵器くらいだろう。

 そんな戦力で戦地に向かうことの正当性なんざ、俺たちの気持ちくらいのものだ。

 

「面白い話してるようじゃねぇか。俺も誘ってくれよ」

 

 そこで俺らの話を聞いてたのか、アッシュがやってきた。

 そしてその後、同じく話を聞いていたのか、ミュゼがやってきて、俺たちに最後の道しるべを与えた。

 

 決行時刻は機甲兵教練中ということになり、俺たちは自らの意思を通すことになった。

 

 ・・・・・・

 

 

 ――立ち上がりなさい、ノクス!

 

 ――ここで諦めたら、斬り殺されるわよ!

 

 ――アタシもサポートしてあげるから!

 

 そんな叱咤激励の声がするが、真っ赤に染まった視界は端から少しずつ陰り始めていた。

 そして、おおよそ観測することすら難しい速度で彼女が目の前まで踏み込み、振り上げられた白銀の刀の刃が振り下ろされ――

 

  <選べ>

 

【真の力を引き出す】

【斬り殺される】

 

 そして、俺は初めて違和感を感じた。




シズナパートまで書き切ろうと思っていたのですが,案外時間がかかってしまいました…….

さすがに描き続けて一週間たつので,数日間お休みします(本当に休むかはわからない)


選択肢IFコーナー

 (1)懲りてないようだからもう一度ひん剥く
 ロゼたん「滅ぼしてやる!!」
 (2)先手必勝
 ロゼたん「滅ぼしてやる!!」
 (3)ロゼたんに第二分校に来るように交渉する(成功率:低、失敗時最悪の選択肢が現れる)
 成功した場合
 ロゼたん「なぜ妾がエマよろしく学校なぞに……!」
 失敗した場合
   <選べ>
 【□□□が顕現する】
 【すべてを捨て、□□の長となる】

追伸
ロゼたんが心優しいおかげで滅されずに済んだのにひん剥いた主人公がいるらしいんです。
あと、セリスさん登場確定しましたので、主人公強化イベントが早送りになりました。ただし勝てるとは言ってない

次はバトルです。ですが、前回のバトルが長引きすぎたのも考えて、どれくらいの長さがいいのか、皆さんの意見を参考にしたい

  • 前回と同じく1万字程度
  • 1万字以上でもかまわない
  • 長すぎるので短めに
  • 好きなように書いてどうぞ
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