トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが……   作:全自動髭剃り

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主人公の受難が幕を開けようとしてます


4月23日 特別演習2日目 突破――そして、後始末

(なぁ、虚。あれ、やれるか?)

 

 ――あれくらいアタシにかかれば余裕よ! 一発で消し炭にしてやるわよ!

 

(それはマジで頼もしいけど、あれを壊した後にもう一戦あるかもだから、できるだけ俺の体力消費は抑えてくれよ)

 

 ――ったく、仕方ないわね。アタシに任せなさい。

 

 と、すっかり平時にもかかわらず聞こえてくる虚からの声とコミュニケーションを取りつつ、できるだけ気配を悟られないようにチャージをしていく。

 目の前では、やたらと円形の構造物が沢山くっついてる機甲兵(クソデカVer)VS騎神に搭乗したリィン教官+汎用型機甲兵(ドラッケン)に搭乗したクルトが繰り広げられていた。

 少し離れたところにアルのクラウ=ソラスの障壁防御によって戦いの余波から身を守っているVII組の面々とアッシュがいた。アッシュに関してはどこかしら負傷しているのか、膝をつきながら見守っている。

 目を凝らせば、もう少し離れたところに結社関連の人間と思われるシャーリィや、おそらく彼女が連れてきたであろう閃撃の異名を持つ狙撃手のガレス含めの4人組と、気配しか感じ取れないが戦いを静観している数名もいる。

 結社関連の人間を狙撃するのも手ではあったが、昨日の奇襲の失敗を考えれば諦めた方が良さそうだった。それに、どちらかというと現時点ではあのクソデカ機甲兵の方が脅威度は高いと思われる。

 

(それにしても、この体が熱くなるような感覚……。間違いなく戦術リンクを行ってるARCUS IIによるものだろうけど、体が光り出すとはなぁ……)

 

 ――有用だから許してやってるけど、あんたの武器はアタシだってことを忘れないでよね。

 

(そりゃそうだろうが。虚以外使う気はねぇよ。……てか、ちょっと気になってたんだが、俺が機甲兵をまともに扱えないの、お前のせいだったりするのか?)

 

 ――ギクぅ! な、何のことかしら! そ、それよりも目の前の敵に集中しなさい! 一発しか不意打ちのチャンスはないんだから!

 

(図星だったのが丸わかりだぞ、おい……。まあ、アルと同じような問題だろうし、俺の方で何とかやってみるが……)

 

 と言いつつも、エネルギーチャージも悪くないところまで来たようだ。

 見立てでは一撃であのデカブツをスクラップにするまでは行かなくとも、機能不全にまで追い込める程度のものだろう。あとは、万が一にも教官とクルトに当たらないように注意するためにも、名乗り上げをやっておきたいのだが。

 

(久しぶりに聴きてえな、お前の声が。塵芥と化せ、エテリウム・バスター、ってのが今までの掛け声だったんだけど、虚の声もうダダ漏れで聞こえてるしなぁ……)

 ――何なのよ、文句でもあるわけ?

(いや、そうじゃなくて、なんか新しい掛け声とか技名とか――

 

  <選べ>

 

【久しぶりに聴きてえな、お前の声が。塵芥と化せ、エテリウム・バスター】

【ドキドキラッキースケベを狙え! ポロリスティック・セクシー・透け透けビーム】

 

 変えたいって言ってんだろうが! いや、変えるにしても下のやつはねぇよ! 相手を裸にひん剥く技にしてどうすんねん!

 

「久しぶりに聴きてえな、お前の声が。塵芥と化せ、エテリウム・バスター!!!」

 

 ヤケクソになりながら叫ぶ。

 

 ――結局変えてないじゃない!

 

 ごもっとも! もう少しの間はこれで我慢してもらおう。

 さて、問題の着弾については……、

 

 ――見るまでもないわよ。

 

 虚の言った通り、白煙を上げながら例の機甲兵は機能を停止したようだ。

 

「ノクス!?」

「機能停止を確認。さすがの威力です……」

「君も来ていたのか!?」

「よぉ、待たせたな!」

 

 ユウナ、アル、リィン教官がこちらを振り返り、それに対して無駄にカッコつけながらポーズをとる。……何でかって? かっこいいからに決まってんだろ。

 

  <選べ>

 

【さらにコマネチをしてみよう】

【さらにY字バランスをしてみよう】

 

 悪かったな、カッコつけて! だからって俺の威厳を地の底にまで引き摺り落とすことはねぇだろうが!

 

「ノクス、ボロボロじゃねえか! 大丈夫なのか!? ……って何でY字バランスしてんだ?」

「おう、応急措置しといたから大丈夫だぜ!」

 

 ライカに裂けまくってる制服の傷を開いてその下を見せる。シズナが手早く巻いてくれた包帯が見えるだろうから、安心してもらえるだろう。

 

「応急措置って……。制服の下ミイラみたいになってねぇか?」

「大丈夫だ、気にするな」

 

 というわけで敵方の主兵装も破壊したことだし、挨拶代わりに数発結社の人らが集まってる方向に銃弾を叩き込む。だが、予想通り全員が難なくその軌道から身を逸らしたりして対応していた。中には銃弾を斬り捨てたり、銃弾に銃弾を当ててきたやつもいたが。

 

「さぁ、次はてめえらの番だぜ。神妙にお縄につかせていただくか、お尻ぺんぺんされてから強制逮捕か、どっちか選ばせてやる」

 

 と、気の利いたジョークとともに宣言する。

 

「お尻ぺんぺんて……」

「絶妙に不埒な気配が……」

 

 と、なぜかユウナとアルにはあまりウケが良くなかったようだ……。

 だがまあ、俺自身が流石に満身創痍で戦うのは難しいが、あのデカブツさえなければ、人数差もあり、こちらが圧倒的に優勢だろう。それに、すでに移動音が聞こえている増援が来れば、万全となる。

 

「ふむ……。実験は終了か」

「そうだね。いいタイミングみたいだし」

 

 などと、俺の宣戦布告をどこ吹く風のように無視し、帰る支度でも始めようかなという雰囲気の連中。

 

「――そこまでだぜシャーリィ!」

 

 と、重装機甲兵(ヘクトル)に乗ってランディもやってきた。どうやらランディは先行でやってきたらしく、後から分校の生徒たちも増援に来るようだった。

 これで完全に趨勢は決まったも同然だろう。こちらを静観している、おそらく第三勢力の奴らが余程の切り札でも持っていない限りは、だが。

 

 と、そこでシャーリィはおもむろにその第三勢力を呼び出した。

 その名前、猟兵王を叫んで。

 

 話を聞くに、その猟兵王の名前はルトガーというらしく、西風の旅団という猟兵のカシラを務めているという。フィーという旧VII組の元猟兵、現遊撃士でルトガーが育て親だった少女が言うには、すでに戦死していて墓まで作ったのに捲土重来してきたらしい。

 様子を見るに、どうやら結社とは敵対関係にあるというのに、今回は戦闘を避けるような雰囲気である。何ともまあ矛盾した行為だったが、それで見えてくるものもないわけではない。

 何やら結社との話が終わると、ルトガーはこちらに向き直って話しかけてきた。

 

「と、そこの小僧。白銀の剣聖との戦いは見させてもらったぜ。あれをその気にさせて、生き残ってるってのは驚いた」

「死にかけたけどな」

「その戦闘力を見込んで、西風の旅団にスカウトしてもいいか?」

「へ?」

 

 なぜかよくわからんが、昨日に引き続き猟兵団に誘われてしまった。

 

「ノクスなら、シャーリィの方が先に誘ったんだけどなぁ」

 

 文句言いたげなシャーリィの所属する赤い星座は絶対行かないけどな。

 

  <選べ>

 

【マジで興味あるんで、士官学院卒業してから連絡してください!】

【何言ってんだてめえ、そのふざけた口を閉じねえとてめえの〇〇の〇〇に〇〇〇をぶち込んで、〇〇を〇〇に〇〇してやるぞ!】

 

 あらお下品ですわ! つーか、下を選んだらおそらくだけど猟兵王との戦闘に入るだろうが。何で敵を増やしに行くんだよ!

 

「マジで興味あるんで、士官学院卒業してから連絡してください!」

「おう、そん時にまだやってたら連絡してやる」

 

 と、なぜか猟兵団から内定を出してもらった。行くかどうかはそん時にでも考えよう。

 そして、用事が済んだからなのかいきなり立っていた小高い丘から飛び降り自殺を図るルトガー。いきなりの奇行にその場にいたほぼ全員が驚いてると、丘の影から紫色の騎神に搭乗して、俺たちがぶっ壊したデカブツをフルスクラップにしてどっかに飛び去っていった。

 同時に結社の連中も転位の術を使って尻尾巻いて逃げていった。チートだろそれ、と言いたかったが、ロゼたんからペンダントもらった俺が言えた立場じゃないと気づく。

 去り際に、「”我々”と”彼ら”の戦い、指を加えて眺めていることね」とかって言ってきたものだから、どうやらこの場の真の第三勢力はルトガーではなく、俺らだったとわかった。

 

「ふぅ……」

 

 と、息を吐く。

 何とか死地は切り抜けたようだった。

 あとは、騎神から降りたリィン教官に俺がもらったレクターからの依頼を手渡そうと――

 

 ――一歩踏み出した時には、すでに意識が反転してしまっていた。

 

 

 ・・・・・・

 

 

「目が覚めたら、知らない天井だった」

「いや、知ってるだろ」

 

 目を開けるとそこには呆れたようなライカの顔があった。

 ガタンゴトンという音が定期的に聞こえてくるので、おそらくここは列車――デアフリンガーの中なのだろう。かなり強い薬品の匂いから、医務室だというのも想像がつく。

 どうやらあのあと医務室まで運び込まれて、相当な時間寝てしまったのだろう。

 

「また、無茶したみたいだな」

「いや、そういうわけじゃ……」

 

 彼女との別れ際に言われたことを思い出し、ちょっとばかし誤魔化そうとしたが、俺の体を指差しながらライカは、

 

「その包帯姿で言っても仕方ないだろ?」

「あぁ……。でもまあ、大袈裟に巻いただけで……」

「応急措置の包帯を新しいのに巻き直してやったのはオレだぞ」

 

 ということは、この下の傷も見えてしまったのだろう。

 だったら、誤魔化しようもない。

 

「ありがとう」

「どういたしまして」

「それと、……すまん」

 

 オレの謝罪に対してライカは少しだけ息を吸って、

 

「何で謝ってんだよ」

「いや、約束したのに、さ……」

「……そうだな」

 

 それっきり、ライカは言葉を続けなかった。

 何とも言えない居心地の悪さに、

 

「ほら、結構苦戦しちまったはしちまったけど、何とか乗り越えれたんだ。お前らを先に行かせたってのも悪い選択じゃなかったろ? おかげでリィン教官の援護も――」

「――そうじゃねぇんだ!」

「え?」

「そうじゃ、ねぇんだよ……!」

 

 オレの言葉を遮り、ライカは続けた。

 

「何で、お前は……!」

 

 先ほどの物静かな顔つきとは違って、金と赤の髪の少女は、とてつもない怒りと今にも泣き出しそうな矛盾した二つの表情を同時にしていた。

 

「ごめん……」

「謝るべきなのはお前じゃねぇんだよ……! あそこで……、お前を見捨てちまったオレなんだよ……!」

 

 捲し立てるようにライカは続けた。

 

「あそこで、オレだけでも残るべきだったんだろう……。お前のわがままなんかに付き合うべきじゃなかった。お前がどれほどの無茶をしでかすのか知っていたのに、オレはお前の隣にいれなかったんだよ」

「……、でもあの時はリィン教官の援護を――」

「――その結果どうなった!? …………。その包帯の下、どうなっていたか、お前自身も把握しきれてねぇだろう」

 

 今現在まさに全身ミイラ状態で、何らかの薬をもらっているのかあまり痛みは大きくない。だが体を持ち上げようとすると至る所から激痛が走る。

 

「そう、だな……」

「オレからすれば、何で生きてるのかすら疑いたくなるような状態だった……。お前自身も死にかけたと言ってたしな……」

 

 ライカはオレを睨みつけながら続けた。

 

「オレじゃダメなのか……? ノクスの隣に立つのも、お前の無茶を少しでも肩代わりするのも」

「いや、そんなことはないよ!」

 

 悲しそうな顔をするライカに、俺は慌てて否定をした。

 確かに現時点では俺の方が彼女より多少腕が立つかもしれないが、入学してから数日と経たないにも関わらず、良くも悪くも年齢に対してかなりの実力者揃いのVII組に同行して魔獣退治などの戦闘に加われる程には、彼女の戦闘センスは高い。それだけではなく、スラム街育ちゆえの経験などから、絡め手的な手法に長けていることもあり、実際あのシズナとの戦闘にいてくれたのならば、俺が死にかけるほどのことにはならなかったのだろうと思う。

 

「だけどあの時は――」

「――オレは、お前を優先したいんだよ!!」

 

 ライカは叫ぶように続けた。

 

「この学校は憧れだった。教官たちはオレに道を示した。クラスメイトはオレを暖かく迎えた。感謝するにも仕切れねぇさ。けど……! けど、それがあるのは全部、全部ノクスのおかげなんだ……」

「……」

「VII組が、トールズがピンチだってなら、すっ飛んで行って助けたいさ。だけど、お前のピンチには代えられないんだ……!」

「……すまん」

「だから、無茶をすんなとはもう言わない。無茶する時は、オレを呼んでくれ……」

「…………ああ」

 

 そこで俺は初めて実感を得たのかも知れない。

 人を助けられたかも知れないという実感と、もう一つ。……もう一つの方は、まだ少しよくわからない感覚だったが。

 涙目になりながら俯く彼女の頭頂部が見えて、俺は何となくその綺麗な金と赤の髪が目立つその頭を撫でてしまっていた。サラサラで気持ちよかった。

 

「ありがとう」

「何でノクスが感謝してるんだよ……」

「何だか……他人に必要とされてるんだというのが、嬉しくてな」

 

 初めての感覚なのだ。それがどのような意味を持って、俺にどのような影響や結果をもたらすのか、まだわからないけど。

 少なくとも、今はこれ以上になくいい気分なのだ。

 

「そんなの、当たり前だろ」

「ああ、だからありがとう」

 

 そのままひとしきり彼女の頭を撫でていると、おもむろに彼女は撫でている俺の手を掴んできた。

 

「今日は許してやるけど、あんまオレを子供扱いしてるんじゃねぇぞ?」

「いや、子供扱いしてるわけじゃ……」

「こういうのは子供扱いって言うんだよ。……けど、たまにならやってよろしい」

「い、イエスマム……?」

 

 そのまま、ライカに手を握られたまま彼女の頭を撫で続けた。

 

  <選べ>

 

【いいタイミングなので、パンツを嗅いだことを告白して懺悔する】

【いいタイミングなので、逆にライカから撫でてもらう】

 

 てめえ! 折角のライカといい雰囲気になったってのに! なんだ、俺が気持ちよくライカを撫でているのが気にいらねぇってのかよ! というか上の選択肢、選んだ瞬間にライカの中での俺の点数、0を通り越してマイナスに突入するぞおい!

 

「せっかくだし、ライカが俺を撫でてくれないか?」

「へ? まあ、いいけど……。お前ってそう言うのが好きだったのか……?」

「ああ、無性に撫でられたい気分なんだ!」

 

 どういう気分だよ! 自分で言ってて訳がわかんねぇよ!

 と、俺のリクエストに応じて、俺の手を握っていた手を離して、ライカは俺の頭をポンポンと撫でた。

 うお、なんか気持ちいいぞ。多幸感とともに、心なしか少し眠気が来るような、そんな気持ちよさだ。

 

 と、お互いがお互いを撫でているよくわからない状況になっていたが、撫でている手も撫でられている頭も気持ちいいのでこのまま少し時間が経つのを待とう。

 

  <選べ>

 

【いいタイミングなので、パンツを嗅いだことを告白して懺悔する】

【いいタイミングなので、ライカに今履いてるパンツを嗅がせてもらう】

 

 少し! 時間が! 経つのを! 待とう! つってんだろうがああああ!!!

 え、なにこの四面楚歌な選択肢!? どっちにしろライカに嫌われることになるやん! この満身創痍状態でビンタを受けろっての?? 俺の幸福がそんなに気に食わないわけ!?

 仕方がないのでまだ比較的マシな上の選択肢を受け入れることにする。前にユウナからも謝るように言われたし……。

 

「なぁ、ライカ。実はライカに言っておかないといけないことがあるんだ」

「え……?」

「ライカがここに来るきっかけになった、カーネギー書房での落とし物の鞄あっただろ」

「あ、ああ。それがどうしたんだ?」

「あそこにライカが着替えただろう服があっただろ?」

「あれか。ボロボロだっただろ、もう捨てたんじゃなかったっけ?」

「そこに下着もあっただろ?」

「ああー。確かにな。見ちまったのか、ちょっと恥ずかしいな……」

 

 少し赤面するライカ。

 俺は大きく息を吸い上げ、覚悟を決めた。

 

「実はあのパンツ嗅いでニオイを確認しちまってた。ごめん!」

 

「………………………………は?」

 

 固まるライカ。

 うん、わかるよ。とてもよくわかる。

 おそらく君の心には憤怒と憎悪が渦巻いていることだろう。だが、どうかそれに支配されないでほしい。でなければ危ないのだ。何がって? 俺の命が。

 

 しばらく無言で見つめ合う俺と固まったライカ。

 困ったあまりに何かを言い出そうとした俺だったが、この状況を打開したのは――

 

「ノクス!! 何言ってるの!?!?」

 

 医務室のドアを開け放ったユウナだった。だが、そこにいたのはユウナだけではなかった。

 

「最悪レベルの不埒度を確認しました」

 

 心底呆れたような顔のアルティナ。

 

「の、ノクスくんってそういう……」

 

 ものすごく困惑した顔のサンディ。

 

「あらあら……」

 

 珍しくどう反応すればいいのかわからないと言った表情のミュゼ。

 

 困ったことに、俺がこの学校である程度関わりのある女子全員である。

 

「珍しくいい雰囲気だったから、見守ってあげようと思ったのに! 行きましょう、ライ!」

「あ、ああ。……えーと、なんだ。ちょっと気持ちの整理をつけてくる」

 

 ライカの手を引いて出ていくユウナ。なんかこの光景既視感があるぞおい!

 

「ノクスさん、最低ですね」

 

 氷点下のような視線で俺を一瞥して歩き去っていくアルティナ。

 

「こ、これはあたしも流石にちょっとあれかなと思ったかな?」

 

 困惑した顔のまま、触らぬ神に祟りなしが如く離れゆくサンディ。

 

「あらあら、大変なことになってしまいましたね」

 

 他の女子陣と違って、俺の方へと歩いてくるミュゼ。あんな発言を聞いた後に来るとは、我ながら大物だと思ってしまった。

 

「お怪我の具合はどうですか?」

「ああ、治り切るまでちょっと時間がかかりそうだけど、たいしたことはなさそうだな」

「それはよかったです。あの後急に倒れてしまって、心配しましたからね」

「心配かけちまって悪りぃな」

 

 バツが悪そうな顔で謝る俺に対してミュゼは訊ねた。

 

「そういえば、無事……と言っていいのかは分かりませんが、白銀の剣聖との一騎討ちを乗り越えたんですよね」

「何とか、な。正直分校長よりも二度と相手したくない……」

 

 分校長の場合は二度目の相手をしなければならないことが決定してるがな。

 

  <選べ>

 

【2ヶ月以内にシズナと死合う】

【2ヶ月以内にシズナに稽古をつけてもらう】

 

 あんた(選択肢)どんだけスパルタだよ! 分校長以上に、あいつは手加減をしてこねぇんだから、相手したくないってのによぉ!!

 はぁ。選ぶしかないか……。え? どっちを選んだかって? 上のわけないじゃん。

 

「分校長に比べても強いお方だったのでしょうか?」

「いや、どっちも似たような化け物だろうよ。分校長は手加減してくれてる分だけまだ何とかなってたけど、シズナは途中からほぼ手加減なしでやってきたし」

「それを凌ぐとは、さすがですね」

「たまたまだよ、たまたま。あのまま続けてたら、間違いなく今日が俺の命日になってたよ」

 

 ため息をつきながら続けた。

 

「で、ミュゼはどこまで把握してたんだ?」

「へ?」

「ハーメル村の位置や直接出会ってもいない人間の正体、他にも色々違和感があったけど、流石にヒントを与えすぎだぞ……」

 

 ここまでくると、俺にいつ気づくかのテストでもしてるんじゃないかと思えた。

 いまだにわざとらしく驚いてるミュゼに、

 

「まあ、どこまで把握してたかは置いとくにしても、もしなんかやって欲しいことがあったら、遠慮なく便利部経由で依頼を出してくれよな。ミュゼならあのカカシ男とは違ってちゃんとした報酬出してくれそうだし、いつでも大歓迎なんだから」

「……」

「だから、そんなわざと驚かなくてもいいぞ。ミュゼならさっきのパンツの件もわざと驚いてそうだし……」

「いえ、あれは純粋に驚きました」

 

 純粋に驚いてたんかい!

 

 ――どれだけ計算高いと言っても、あんたが女の子のパンツを嗅ぐとまでは思ってなかったんじゃない?

 

 虚も語りかけてくる。

 

(って、戦ってない時は寝てるとかって言ってなかったっけ!?)

 ――そりゃあ普通は寝てるけど、たまに起きてたっていいでしょ?

(まあ、それはそうだけども……)

 

「じゃあ、俺が一枚上手だったってことだな」

「ノクスさんがそれで良ければ……」

 

 やったぜ! ミュゼの一枚上手だ! ……って、女の子のパンツ嗅いで一枚上手って何だよ!

 

「では、ノクスさんの体調が戻りましたら、遠慮なく依頼を出させていただきますね」

「毎度ありだぜ」

 

 その後、少しばかり雑談をして、ミュゼは退出していった。

 俺はというと、ずいぶん寝ていたにも関わらず、いまだに襲いかかる眠気に負けて再び微睡の世界へと旅立った。

 

 

 ・・・・・・

 

 あの後の話というか、今回の特別演習のまとめの話。

 レクターの出した依頼については、あのデカブツの機甲兵――あとから名前を知ったのだが、結社の作り出した自律走行人形兵器の一つである”神機”の破壊でもってして達成されたことになったらしく、無事ライカの2年分の学費と寮費は免除されるという形となり、生活支援費として毎月幾ばくかのミラが支給されることとなった。

 当初は受け取りに渋っていたライカだったが、便利部として依頼をこなして得た正当な報酬だということでゴリ押しをさせて受け取ってもらうことにした。レクターから金をふんだくれるのなら、遠慮することはないのだ。

 

 次に一度崩壊しかけていた俺とVII組女子組+サンディとの関係性は、俺の弛まぬ努力で、何とかユウナが俺が変なことをしないように監視していくという話になり、それで小康状態にまで持ち直すことができた。だがユウナよ。お主はまだ選択肢の悪質さに気づいてはいない……!

 特別演習中にたまっていた便利部の依頼については、臨時的に手伝うと申し出てくれたリィン教官の助けもあって、今のところ順調にこなしていけている状態である。だが、そろそろ手に負えない件数まで出てきそうなので、その対策を考え始めないといけないところまで来ている。次の特別演習までには決めないといけないだろう。

 

 その次といえば、意外な人物が第二分校の臨時戦術指導教官として着任したのだが、それはまた別の話とさせていただこう。

 

 終焉へと歩み続けるこの帝国で、最後の穏やかな日々を享受するためにも、学校生活を思う存分に楽しんでやろうと思うのだった。

 

 ・・・・・・

 

 うん。……うん。

 

 確かに全員を動かすのは流石に難しいね。

 

 うん、悪くない条件だね。

 

 了解した。契約成立だね。

 

 想定してはいなかったけど、こういう方向性もあり得るか。

 

 せっかくの一石二鳥の機会だし、乗らない手はないね。

 

 ではよろしく頼むよ、

 

 

 ――かわいい指し手さん。




次回からは伏線回収用のオリジナル回です

選択肢IFコーナー

(1) ドキドキラッキースケベを狙え! ポロリスティック・セクシー・透け透けビーム
虚「二度と口をきいてあげないわよ」

(2) さらにコマネチをしてみよう
ルドガー「誘うのやめよ」

(3) 何言ってんだてめえ、そのふざけた口を閉じねえとてめえの〇〇の〇〇に〇〇〇をぶち込んで、〇〇を〇〇に〇〇してやるぞ!
ルドガー「喧嘩売ってんのか、アァ?」

追記
主人公のSクラフトをゲーム内表記してみると
エテリウムバスター
攻撃(威力5S+ ブレイクA 崩し有効):直線S
遅延+6,HP・EP-50%,駆動時間4
って感じですね!

確定させるわけじゃないですが、卒業後のノクスの進路ってどこが一番らしいように見えますか?

  • 遊撃士
  • 情報局
  • 猟兵
  • スプリガンもどき
  • 結社
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