トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが…… 作:全自動髭剃り
「おお、ノクスじゃねえか。待ってたぞ」
「おっす、ジンゴ。……って待ってたって?」
「お前のための品が入ってんだ」
ナインヴァリに入るや否やジンゴがそんなことを言ってきた。
自由行動日の朝、約束した通りライカと共に双銃剣を買いにナインヴァリにやってきたわけだ。
ただ当然、虚と同じような形のものを買うのはそう簡単なわけではなく、ひとまずの間は通常の形の双銃剣を買っておき、慣れてもらおうかと思っていたところだが。
ゴトリと重たそうな音を立てさせながら、ジンゴは裏の方から革布に包まれた商品を取り出し、机の上に置いた。大きさからして双銃剣だろうか。欲しいと連絡したわけでもないのになぜだ……?
ついでに双銃剣を入れるためと思われるホルスターも机に続けて置かれる。
……、しかし、レッグホルスターだと……!? お主、分かっているではないか……!
「クロスベルの爺さんからお前にってことで来た品だ。爺さんが言うには、お前に渡せばあるべき場所に収まるだろうってさ。ついでに、こいつの名前は
「え、爺さんから……? いや、確かに双銃剣は欲しかったけど、タイミング良すぎだろ……」
「そっちの事情は知らんけど、買うってなら金を置いてくんだな」
「しかも金を取るのかよ! 爺さんがくれるって言ったわけじゃないのか」
「世の中には依頼費と輸送費と展示費と手数料と税金があんだ。いらねーってんなら帰った帰った」
今日も商魂逞しいジンゴであった。……こう言ってる時は凡そタダで手に入ったものに対して値段をつけたがっている時だというのも、過去の経験からよくわかるが……。
「え、このちんちくりんがこの店の主人なのか?」
と、俺とジンゴのやり取りを聞いてたライカが訊ねてきた。
「ああ、みっしぃグッズから対戦車地雷までなんでも揃うナインヴァリのトリスタ支店の店長様だよ」
「まじか……」
「で、そいつが次にこれの使い手になるやつか?」
ジンゴは言いながら双銃剣を革布から取り出しつつ聞いてきた。
そこにあったのは――
「そっくり……てか、虚と瓜二つじゃねぇか……」
虚と同じく、特殊形状の双銃剣。レールとなる刃がついており、組み合わせることによってカービン銃となる。また、グリップが簡易的な望遠鏡にもなっている。
流石に使い込みすぎて修復してもまだボロボロの状態の俺の虚とは違ってまっさらではあるが。
「なんでもお前のアレと銃弾も統一規格らしいぞー」
「マジか……。なぁ、ライカ」
「なんだ?」
「覚悟しておけよ。ちゃんと節約して使わんと、銃弾で月に万単位のミラが飛んじまうぞ」
「そんなにか……!」
実際、今月だけで数万ミラが飛んだ。野外でゼムリアストーン弾を使い過ぎてしまったのだ。
「うちが儲かるからどんどん無駄遣いしてけよな、と言いてーところだけど、在庫がほぼないから程々になー」
「おう。いつも無理言って取り寄せてもらってるからなぁ……」
「じゃあ、その日頃の詫びも入れて、誠意ある額を置いていきな」
「またそれかよ……」
誠意ある額。要するに、この支払った額が全てジンゴの小遣い行きになるという意味である。
前回に関しては開店祝いということもあって、1万ミラを払ったが、流石に今は金欠なのでそこまで羽振りよく払ってやることができない。なので、
「じゃあ、つけにしといてくれねえか? 今日、帝都に行くことになってるから、そこでなんか土産を買ってやるよ」
「だったら期待して待ってるぞー」
「じゃ、俺らはこの辺で失礼するぜ」
<選べ>
【ジンゴに高い高いをする】
【ライカに高い高いをする】
もう失礼させてくれよぉ……! 赤ちゃんを相手にしてんとちゃうぞ……。
だけどまあ、ここは実年齢からも、外見からもより赤ちゃんだった時代に近いであろうジンゴを抱え上げることにした……。
「え、な、何すんだー!」
「ジンゴちゃんたかいたか〜い! たかいたか〜い!」
「……」
急に奇行に走り出す俺に、最初こそ珍しくあっけに取られたかのように焦ってたジンゴだったが、俺の行動に呆れ始め、ついには絶対零度のような視線で射抜いてきた。その視線の奥で言いたがっている言葉、俺にはよくわかるぞ。『何やってんだオメー』だ。
その後、数度ジンゴを抱え上げては下ろし、ついに体の自由が戻った。
「……なんか思ったより悪い気分じゃないなー」
えぇ……。
なぜか知らないが、案外評判は悪いわけじゃなかった。なんとなく子供扱いされるのは嫌ってるような雰囲気だったが、完全にそういうわけでもないのかな……?
「でも、あんまり頻繁にやったら、けつに
「すんませんでした……」
ジンゴの意外な一面を知ってしまった日となった。
・・・・・・
午前、俺はライカに、まず教練室で最低限双銃剣を扱う方法を教えた。射撃のコツや肉弾戦のコツ、チャージショットのタイミングなどの話である。戦う形態自体は大きく違うが、同じく両手に導力銃の機構が入った警棒を武器としているユウナにも手伝ってもらえたのもかなりためになったのだった。ライカだけではなく、俺にとっても。
「それにしても、使い始める初日なのに、銃弾を銃弾で弾けるようになるって……」
「驚きというか、……何ならそれができるのに数ヶ月かかると思ってたが……」
「なんだかものすごく手に馴染んだんだよ。けど、そこまで褒められると嬉しいものだな」
そう言い切ると、ライカはホルスターにしまっていた双銃剣――贋を目にも止まらぬ速さで抜き出し、両手から一発ずつ射撃する。
そして、その二発の弾丸は空中に互いにぶつかり、跳ねた結果――
「……、すごいね……」
2つの弾丸ともに、臨時で用意した標的のど真ん中を貫いていた。
俺にもできなくはないが、跳弾についての経験などもあって初めてできるもので、あんなのを初見でやろうと思ったら脳が焼けきっちまう気がする。
「銃を使ったことはないんだが、なぜか慣れてるんだ。ノクスの戦ってる姿をよく見てたからかな……」
「それもあるだろうけど、それにしてはセンスがずば抜けすぎじゃねぇか……?」
「あたしには跳弾を扱うことすら無理に思えるし……」
「まあ、ユウナの特殊警棒は正確な射撃に向いてなさそうだし、難しいのも仕方ないだろう。……何ならユウナも双銃剣使ってみるか?」
「うーん、興味がないわけじゃないけど、やめておこうかな。たとえ双銃剣使っても、そんな曲芸できそうにないし。それに、あたしにとって、警棒は大事なパートナだし」
大事なパートナねぇ……。
ユウナ自身元々警察学校にいたし、ユウナが目指してる特務支援課のリーダーも警棒を使ってたしなぁ。そうそう簡単に手放せるものでもなかろう。
「まあ、これで実技でお前たちに遅れを取らずに済みそうだな。それに、ノクスの武の道ってのにも問題なく手伝えそうだな」
「問題なくってか、なんなら一昼夜で追い越されちまいそうなレベルだけどな……」
そして、昨日に続いてテニス部の手伝いの依頼に赴いたユウナと別れた。帝都での依頼は俺とライカで片付けることになっているのだ。
あまりやりたがっていたわけではなかったが、ライカにはアストライア女学院の制服を着て、侵入して話を聞いてもらうことになっている。俺が変装して潜り込むよりかは倫理的に数倍マシだろうし、数倍マシな結果も得られそうなのである。……どこから俺たちの話を嗅ぎつけたのか、ミュゼが昔使っていた制服を献上しにこようとしたけど、門前払いしてやった。何がノクスさんのためだよ、お前のサイズが着れるわけねぇだろうが!
<選べ>
【女装してライカと共にアストライア女学院に侵入する】
【女の子になる】
だからって
……だからって、女の子になるってのは違うじゃん!
「ライカ、アストライア女学院には俺も女装して侵入しよう。ライカだけにリスクを背負わせるのはなんか違うなっと思ったんだ」
「え、あんなに嫌がってたのに? ……どんな心変わりかは知らないが、下心じゃないよな?」
と、疑うライカに急いで無実を主張する。
「違う! 誓って!」
<選べ>
【俺の目にはライカしか映っていないんだ。だから結婚しよう】
【俺はライカのパンツにしか興味はないんだ。だから今日も色を教えてくれ】
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!!!!
「俺はライカのパンツにしか興味はないんだ。だから今日も色を教えてくれ」
「……まあ、聞いてくれても構わないんだが、お前って本当にパンツが好きなんだな……。今日は確か橙色だよ」
「ああ、橙色か……」
昨日の黄緑とは違う。そりゃあ着替えるだろうしな。……でも、そうか。橙色か……。………………って! 何俺は思いを馳せてやがる!
「てか、そうじゃなくて! 女学院の方の依頼も手早く片付けてしまおう!」
「お、おう。そうだな」
この話題を速攻終わらせる。これ以上引きずると、選択肢がまたよからぬことをし始めかねないからである。
その後、十分量の通常弾と何発かのゼムリアストーン弾を渡しておいた。あいにく液体金属弾は在庫が尽きているのだ。
昼食の時間までには片付けられる依頼を片付け、帝都へ向かう諸々の準備を済ませた。
準備とはいうものの、万が一依頼達成時間が伸びて帰るのが遅くなるかもしれないことをランディに伝えたくらいなものだが。……それにしても、便利部始動後というもののほとんど顔を出さないランディは、ほとんどの日はテニス部の顧問もしているとのことでテニス部の手伝いに行っている。
確かにテニスウェア姿のゼシカは非常に健康的な女の子で揺れる青色の髪が映えるし、ルイゼの普段のふわっとした雰囲気とは違ったテニス中に見せるキレのある動きも可愛いし、たまに練習の手伝いにくるユウナの普段とは違うテニスでストレスを発散する姿が新鮮で結構大きめの胸が揺れるのも絶景だもんな。
わかるわかる。
「そういえば俺、ミレイユさんに用事があったことを思い出したわ」
「え? お前がミレイユに?」
「ああ、実はオーバルカメラで、テニス部の部員のスカートからはみ出すパンツを熱心に覗き見るランディの写真が……」
「してねぇよ! ったく、油断も隙もねぇぜ……。変に話が拗れるから、絶対送るんじゃねぇぞ」
そんなことをしてないと否定している割には釘を刺してきた。いや、もちろんオーバルカメラでそんなものを撮影はしたことないけどね。
だけど、ああいうのにはどうしても目がいってしまうのが男のさが。細心の注意を払っても、無意識に無自覚に視線が吸い寄せられてしまうものだ……。
「だったら少しは便利部の方にも顔を出してよ」
「お前がいれば勝手に回るだろうが。……まあ、俺ももうちょっと顔出すようにするよ。というか、お前とミレイユって知り合いだったのか?」
「うん、オルキスタワーに侵入した時にちょっとね」
「あんとき、お前もいたのかよ……。声をかけてくれりゃあ良かったのに」
「まあ、別口の依頼だったからね。ただ潜入してから仕事を終わらせて出れば済んだところを、あんたらが急にどんぱちし始めて車まで突っ込ませてきたからなぁ」
などと昔話に花を咲かせているのも程々に、俺はランディに今日の帰りが遅れるかもしれないことを伝えて、待ち合わせの駅に向かう。
するとそこには紺色のワンピースの格好をしたライカがいた。
「お、かわいいじゃん。似合ってるぜ」
「……と言われても女学院の制服だけどな。まあ、褒めてくれるのは嬉しいけど」
「うん、これで問題なさそうだ」
「ノクスの方はまだ着替えねえのか?」
「流石に公共交通機関で女装をするのは……」
「ああ、そういうことか」
なので制服はリュックに入れている。別に選択肢の強制とはいえ、移動時まで女装することはないだろう……。
と、雑談をしつつ路線図を見て、どのチケットを買えばいいのかを探していたところ、
「やっぱりライカか。遠目で見ても、その髪は目立つな。しかしどうして女学院の制服を……?」
リィン教官が話しかけてきた。
リィン教官に、自分達が帝都に行く予定のことを話すと、なんとリィン教官自身が同行してくれることになった。どうやら教官の妹は女学院の生徒らしく、話を繋げてくれるとのことだった。だったらミュゼにその役をやらせるべきだろうって話だが、嬉々として制服を持ってきた割にはそんなことを言ってこなかったので、何か事情でもあるのだろう。
侵入するよりもスムーズにことが運びそうで安心する。これでもうハラハラドキドキの女装ライフとはおさらばなのである。
<選べ>
【絶対に女装をやめない】
【女になるしかない】
なんでだぁああああ!?!?!?
え、もう教官の妹というパイプができてるんだぞ。俺の女装の意味なくね? 堂々と用事があるということで入れるのに、なんで女装しないといけないわけ? ねぇ、なんで!?
そうして波乱に満ちた俺の1日は始まろうとしていた。
え? どっちを選んだかって?
あんたはどっちを選ぶ? 女になるって……? まじか、勘弁してくれよ……。もちろん俺は女装することにしたよ。股間のおいなりさんとララバイするのはまたの機会にね。
・・・・・・
「あれ、兄様……!?」
「エリゼ、久しぶりだな。元気にしていたか?」
「兄様の方こそ無理をしていませんか?」
「俺の方は、ぼちぼちうまくやっているよ」
女学院の入り口でリィン教官が話しかけたのは、すごい窓際で黄昏てそうな令嬢みたいな娘だった。長い髪をたなびかせるだけで幾人の男が落ちたのかわからないくらいにはべっぴんさんである。
「なんだか、住む世界が違う人だな……」
嘆くようにライカが呟く。
うん、わかる。なんかこう、箱入りの乙女ってこんな感じだよなって風貌。
「えと、そちらにいらっしゃる
おいおい、ライカは女の子だが、俺は男だぞ……。
別に中性的な見た目とか、線が細いとか、そういう女装のために生まれてきたような外見のつもりはないんだが、化粧の力ってのはこうもすごいのか……。
驚嘆すべきは化粧自体の進歩なのか、たまたま入った美容院の人の手腕なのか……。
「オレはライカだ。リィン教官が担任をしてるクラスの生徒だな」
「でもなぜ女学院の制服を……?」
「ああ、これか。昔ここに所属してた生徒のミュゼって娘からもらったんだが、着替えるのが面倒でそのまま来た」
「着替えるのが面倒……?」
侵入しようとしてたことは伏せてくれただろうけど、それじゃあ違和感がありすぎるぞ……。
「ま、まあ、郷に入れば郷に従えって言うだろ? それで借りたんだよ」
「そういうことですか……って! あなたは男の方なんですか……!?」
さりげなくフォローしようとしたところ、野太い俺の声を聞いて、エリゼさんが跳ねるように驚いた。
「ああ、ライカと同じクラスのノクスだ。女の子の服装が好きで着てるだけだから、あまり気にしないでくれると嬉しい」
「は、はぁ……。えと、と、とてもユニークな方が生徒でいらっしゃるのですね?」
「は、はは。どうしても女装したいって言って聞かなかったし、そっとしておいてあげてくれ。悪いやつじゃないからさ」
「……、兄様がそうおっしゃるなら……」
ありがとう、リィン教官。そのフォローがなかったら俺はただの女装癖で女学院に入ろうとする変態になっただろうし……。
「それにしてもノクスさん、ですか……どこかでお聞きした名前のような……」
「え、俺別にそんな有名人ではないけど……」
「……。あ、そうでした! 確かトールズ士官学院の試験でセドリック殿下を抑えて首席で合格なされた方で」
「あー、それか。ちっとは忖度して皇太子様に最初から首席取らせりゃあよかったのにな……」
おかげで俺が新入生挨拶する羽目になって――
「――新入生挨拶で公然と帝国批判を行ったために第二分校所属になったと噂の……」
「え!? なんで知ってんの!?」
「えと、風の噂で……」
「恐るべし噂話の拡散速度……。人の口に戸は立てられぬってやつか……」
「お前、何やったんだよ……」
「あまりに士官学院行きたくなくて発作が起きた」
「だったらなんで受験したんだよ。しかもどうやって首席にまでなったんだよ」
「ごもっとも」
ちなみにこないだ見た新聞では首席合格者が俺ではなく、セドリック殿下と書かれていた。俺の存在は抹消されてたはずなのだが……。
「えーと、それで皆様はどうして女学院に……?」
話を変えてくれたエリゼさん。ありがとう、これ以上黒歴史を掘り起こさないでくれて。
「ああ、それは――」
俺とライカが第二分校で便利部をやっており、ミュゼからそれ経由で依頼をもらったこと、リィン教官はたまたま時間があって付き合ってくれたことを説明すると、エリゼさんは警備の人と話をして、俺たちを女学院の生徒会室に招き入れてくれることとなった。
ちなみに俺の女装にはやはり釈然といかなかったのか、エリゼさんは最後まで怪訝そうな目線を向け続けてきた。
・・・・・・
さすがは内戦の英雄。リィン教官が歩くとそこには黄色い叫び声が上がり、俺とライカはリィンが連れてる愛人的な人として見られた。
ライカはまあ、英雄様とは言え釣り合ってそうな外見をしてるが、俺は……。
いや、これを機に女装を特技にでもしてみようかな。色々役に立ちそうっちゃあ、役に立ちそうではあるので……。本当にいいのか、俺……?
そんなわけでたどり着いた生徒会室で紅茶とケーキを振舞ってもらい、エリゼさんには依頼書に名前が書いてある女学院の生徒を呼んできてもらうこととなった。
うまいうまいと舌鼓を打ちながらいただいたケーキは、俺の人生で味わったことのないレベルの味で、生来ほとんど甘味に興味のなかったにも関わらず、これからはもっと知っていかないといけないなと思えるほどであった。
「こんにちは! って、灰色の騎士様じゃないですか……!? それに女性がお二方……。英雄色を好むと言いますし、そう言うことなのでしょうか……」
などと元気よく生徒会室に入ってきた桃色の髪の子がリィン教官がいることに驚きながら言ってきた。俺、また勘違いされてるみたいだし、リィン教官に至ってはもっと酷い誤解をされてそう。
「えと、あなたがたが会長の言っていた、不審者の調査をしていただける方々ですか?」
「あ、ああ。ミュゼから話を聞いてね」
「え、その声、あなたは男の方なのですか……?」
「ま、まあ。生物学的には……」
「……ほう、女装男子……、いや、男の娘ですか……。さすがは内戦の英雄、趣味も広いのでございますなぁ……」
リィン教官が女装した男を侍らせてることになってる。大スキャンダルもいいところなのだが、この女子生徒はどうやら舌なめずりしながら、俺たちを品定めしていた。
ああ、腐ってやつですかい……。
「まあ、灰色の騎士様の趣味は置いておいて――」
「――置いておくな。……って、あらぬ噂になるのは俺だけじゃなく、きみも同じだからな」
「大丈夫ですよ。俺は女装やめたら関係なくなるんで。リィン教官は教官らしく全ての需要に応えていきましょう」
「そのすべての需要に応えることが教官らしさと何か関係があるのか……」
と、戯れも程々に、女子生徒から話を聞くことにした。
曰く、その子は帝都でよく休日や空き時間に帝都博物館に赴いては、展示物とともに本を読むのが習慣であるらしい。
帝国随一の規模の博物館なだけあって、いろんな人が一目見ようとよく訪れる場所なのだが、その女子生徒と同じく、博物館の魅力に取り憑かれた常連も珍しくはないという。ただし、入場料などの問題もあって、相当入れ込んでいる人か、女学院の生徒のように無料で入れる身分の人じゃないと常連にはなれないのである。
そこで、彼女は最近、何やら展示物には興味を示さないような常連を見かけることが多くなったようである。
「初めのうちは長期滞在しているだけの旅人かとも思ったのですけど、それにしてはあまりにも馴染みすぎているような……」
「馴染みすぎてる?」
「はい。異国風な服装というわけでもなければ、帝国人らしくない振る舞いもするわけじゃないし、本当に普通の方って感じで……」
「……、旅人っぽくなかったと」
「はい……」
それに、と彼女は続けた。
「その、いつも男の方が数人一緒にいて、不自然だったんです。学者の方ならばおかしくはないしょうけど、そういうわけでもないのに、いつも一緒にいらっしゃるんですよね」
「男複数人か……。2人ってわけでもないのか」
「はい。2人なら、そういうこともあるのかなって思ったのですが……」
「そういうこと……?」
ライカが首を傾げてる。軽く耳打ちで、どういうことなのかを教えてやると、あぁーそういうことねって感じで納得してくれた。
「私からすればもっと展示を楽しんで欲しいなと思うので複雑な気分ですけど、博物館っていいデートスポットですから……」
「いい、デートスポットかぁ……」
「はい」
感慨深そうに呟くライカ。やはりそういうところにはあまり行ったことがなかったのだろう。
俺もそんなにないけど。
「何もなければいいんですけど、万が一展示物を狙った泥棒だったらと思うと、ちょっと不安で」
「それでミュゼに連絡したと」
「いえ、その件の相談のために連絡したわけではなくて、ミュゼさんがたまたま帝都にいらした時にお話ついでに伝えただけで……」
「そういうことね」
友達想いだったミュゼが俺たちに依頼を出した、と。
依頼の全容がやっと見えてきたのもあって、ひとまずその場は解散となった。名残惜しそうにしてるエリゼさんのためにリィン教官を置いて行こうかと提案したりもしたが、エリゼさんから丁寧に断られた。やることが終わって時間が空いたらまた訪ねてきてほしいとのこと。
「あ、そういえば」
思い出したことがあって、送ってもらった女学院の入り口、その前で俺はエリゼさんに聞いておくことにした。
「先ほどもらったケーキ、あれ驚くほど美味しかったんだけど、どこで買えるんだ……?」
「ああ、あれですか。あのケーキはプラザ・ビフロストで購入したものです。夕方までお店が開いてると思うので、それまでなら購入できると思いますよ」
「おう、そうか。ありがとう」
ケーキの場所も教えてくれた、兄様想いの健気な妹さんのためにも手早く依頼を終えなければならないと誓ったのだ
・・・・・・
<選べ>
【彼らを鉄道憲兵隊へと突き出す】
【彼らを見逃す】
くっ、殺せ! とばかりに悔しい顔で無力化された工作員たちが蹲っている。
彼らの命運は俺たちの手にある。
リィン教官としてはクレア少佐に連絡をして、なんとかしてもらおうとしているのはわかる。
ライカもそれに異論はないだろう。
だけど――
俺は選ばなくてはならない。
帝国の分水嶺の一つになりうるこの盤面。
――俺の意思を示さなければならない。
実はこの主人公、創の軌跡まで生きたままたどり着けて、コピーが作られた場合、誰の手にも負えない存在になりかねないというか……。
しかし、このまま行くと黎の軌跡2のpc版の発売は来年以降になりそうですね……。それまでに黎の軌跡3が発売されてしまったら、PS5を購入することを検討しようかなと思います。
次回、ロゼたん受難回。乞うご期待!(下手すると次々回かも!)
追記
小説の作者の方なら共感いただけるかもしれないですけど、ハーメルンのマイページを開いて感想が来てないかとドキドキしながら確認するのが癖になってます……。もっとみんなに感想を書いていただける面白い作品にしていかないと……!
セリスさんvsノクスくん、どうなると思います?
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仕事モードセリス、外法にかける情けなし
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手加減モードセリス、辛勝
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選択肢で温厚モードセリス、ブチギレ
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主人公うっかり覚醒
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案外気が合って仲良くなる