トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが……   作:全自動髭剃り

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5月20日 クロスベル 1日目 午前(2)

「おや、坊やじゃないか。久しぶりだねェ」

「ええ、お久しぶりです、アシュリーさん」

 

 今、俺は一世一代の大勝負をしている。

 

「変な坊やだとは思っていたけど、まさか女装趣味もあったのかい?」

「いえ、これはまあ、色々事情がありまして……」

 

 大勝負と言っても、勝ちの存在しない勝負である。大負負と言っても差し支えがない。

 俺は今、目前の妙齢の女性に、娘をもらっていいかという質問を投げ掛けなければならないのだ。ナインヴァリの店長、アシュリーさん相手に、ジンゴと結婚がしたいと言い放つわけである。

 ……。

 どっちに転がろうとも、ろくなことにならないのはわかる。

 まずおそらくだが一蹴されてしまうだろう。その場合、クロスベルでの付き合いもあることだし、流石にこの場で俺の処刑が執り行われることはないと信じたい。同じくらいに冗談として流して欲しいと思っている節もある。

 けど真剣に捉えられて、二度とジンゴに近づくなという勅令が下される可能性もなきにしもあらずだ。その場合、俺は確実に夜泣きすることになるだろう。

 万が一にもありえないが、一応シミュレーションしなければならないのは、アシュリーさんから肯定の言葉が飛び出した場合。そのとき、俺はジンゴに対していきなり「君のお母さんの許可をもらったんだけど、俺と結婚しない?」とかいうおそらく人類史上稀に見る地獄のように気持ち悪い告白をしないといけない。……うん。これは流石にやりたくないね。

 

「それよりも、です」

「なんだい、そんな所属1日目に最前線に送り込まれた猟兵のような顔をして?」

 

 諦観にも似た決死の覚悟で俺は口を開いた。

 

「ジンゴを俺の嫁にください!!」

 

「へ?」という声はリィン教官から。頭を下げているので見えないが、おそらくアシュリーさんも似たような言葉を発しそうな呆れた顔をしていることだろう……。

 

 さあ、言い切ったぞ。

 これで満足か、選択肢様よぉ?

 満足なら、もう何もしないでくれ……。

 

「はぁ……。またいつもの発作かい?」

「あ、アシュリーさん……!」

 

 対してアシュリーはため息をつきながら煙草を軽く吸って続けた。

 

「本気なら時と場合と考えないお前じゃないだろう。その悪戯の癖は、士官学院に入ったくらいじゃあ抜けなかった様だねェ」

「あ、あはは。すんません……」

「全く……。アンタの奇行は見慣れたんだ、アタシはもう驚かせないよ」

 

 あ……っ。

 いや、そういうことを言っちゃうと……!

 

   <選べ>

 

【リィン・シュバルツァーに本能からの求愛ダンスを行う】

【打ち上げ花火をしようぜ! 俺が花火な!】

 

 やらねぇよ!? 打ち上がらねえよ!?

 もうぉー、もう驚かないとか言っちゃうから……。選択肢(コイツ)も張り切っちゃったじゃないっすか……。

 アシュリーさんのせいですからね!

 

 ・・・・・・

 

 無事教官に求愛ダンスを見せ終わらせた俺は、ついにアシュリーさんの諦観にも来た呆れた視線と、何してんだコイツというアルの視線、困惑に困惑を重ねたリィン教官の視線を浴びながら、依頼されていたアンケートを書いてもらうこととなった。

 

「クロスベルにいる頃からノクスさんって、こういう感じだったのですか……」

「そうだねェ。毎週1日は旧市街でどんぱちしてたねぇ」

「えぇ……!?」

 

 や、やめてくれー! アルがとんでもなく複雑そうなジト目でこちらを見てきてるって!

 

「よく捕まらなかったな……」

「いやいや! 月一くらいですよ!」

「頻度の問題じゃないと思いますが……」

 

 というか、どんぱちと言えば人聞きが悪くなるが、俺がやってたのは依頼をもらっての治安維持活動というか、言うなれば善のヒーローの活動である。

 と、心の中で言い訳をしていると、アシュリーさんは尋ねてきた。

 

「あの頃のごろつきの舎弟とはまだ連絡をとってるのかい?」

「舎弟……?」

 

 疑問の声を上げるアル。

 いやいや舎弟って……。

 

「あいつらはそういうのじゃないですよ……」

「そう言う割には、なかなか慕われてたじゃないかい」

「それは……、まあ結局はリーダーが急にいなくなったからだったでしょうよ」

 

 あの赤服と青服のごろつきどもの顔を思い出してみると……、少し懐かしい気分になってくる。

 

「まさか本当に反社会的組織のリーダーを……」

「本当にって……。そんな黒い経歴は俺にはないからな? ただここで住んでた頃にちょっと世話をしたり世話になったりしたってだけで」

「つまり不良集団との親交が……」

「主に取り締まる側でね?」

「そして彼らの影響を受けて、少しずつ黒い行為に手を染め始め……」

「ないからな!? って、アル、俺を揶揄ってない!?」

「……少々」

「やっぱりそうだよね!?」

 

 頭をガシガシしながら突っ込む俺だった。

 

「黒い行為をしてないってなら、それは嘘じゃないのかい?」

「アシュリーさん!?」

 

 だが、ここで火に油を注ぎ出したのはアシュリーさんだった。

 

「猟兵顔負けの量の装備に爆薬をうちから一括で買い取ったのはどこの誰だったかねェ?」

「猟兵顔負け!?」

「いや、違いますよ、リィン教官!? それには事情があって……!」

「国家転覆を狙ったテロリスト、ですか……」

「ですか……、じゃないよ!」

 

 てか、俺じゃなくて敵さんはそれだったけど。

 

「それにしても、きみは本当に色々やってたんだね……」

「いや、それほどでも……」

「謙遜のつもりかい? そこの灰色の騎士よりも出鱈目なことをし続けてきてんだ、いい加減自分で認めることさね」

 

 出鱈目って……。

 しれっとリィン教官の素性も当ててるあたり、やっぱ色々と物知りなアシュリーさんである。

 

「それとどうもアンタ、あいつらに何も言わずにノルドに行ったらしいじゃないか」

「なんで俺がノルドに行ってたって知ってんですか……。……いやまあ、あんときは色々事情があってですね」

 

 主に選択肢関連だが。

 別に俺も別れの挨拶をしたくなかったわけじゃないしね。

 

「ふーん、そうかい」

 

 興味なさそうに呟くと、アシュリーは書き終えたアンケートをこちらに渡しながら言った。

 

「また何かやらかすのならうちを頼りな? 手榴弾にロケット、地雷でもなんでも、最近入った導力パルス(Orbal Field Pulse)を使ったOFP爆弾も融通してやる」

 

 いらないっすよ!

 って言い返したかった。

 けど――

 

⦅期限:5月20日16時0分⦆

【オルキスタワーの導力機関を停止せよ】

 

 ――お世話になりそうで言い返せなかった。

 

 ・・・・・・

 

 ナインヴァリに顔を出したのちに、商工会議所にも立ち寄り、依頼のアンケートを書いてもらい、それをケイト准尉長に渡した。

 商工会議所には、リィン教官とただならぬほどに爛れた関係を結んでいるというヴィヴィさんのお姉さんの、無意識にエロいと専ら噂のリンデさんがいたのだが、俺の反社的な付き合いを追求するよりも、アルにはパートナーたるリィン教官の複雑怪奇な女性関係を追ってもらいたいと思う。

 この人、一体どんな手を使って帝国の彼方此方にいる女の子を誑かし続けてきたのだろうか。

 

「ノクス……?」

「はい、なんでしょう、リィン教官」

「なんだかあらぬ疑いをかけられてる気がするのだが……」

「そんなことないですよ、ジゴロ教官」

「やっぱり……」

 

 という閑話休題はさておき、ユウナたちとの待ち合わせ場所であるRF支社ビルへと向かっている道中、

 

「おはようございます、ノクスさん」

「げっ!?」

「せっかく久しぶりに会ったのに、『げっ!?』とはなんですか。……いくら私でも傷つきますよ」

 

 振り向くと、水色の髪をたなびかせた小柄な女の子がこちらを見ていた。

 研究者らしい白衣を纏いながらも、その特徴的な猫耳型の導力装置。見紛うはずもなく、今日俺たちがエプスタイン財団で会う予定であったティオ・プラトーその人だった。

 

「あ、ご、ごめん、そんなつもりじゃ……」

「つまり私は無意識にノクスさんに拒絶された、と……」

「ち、違う、本当にそんなつもりじゃなかったって」

 

 そんなあたふたする俺に対して、どこかアルに似た雰囲気を持つこの青髪の少女、ティオは続けた。

 

「もしもノクスさんが本当に申し訳なく思っているのであれば、何かで埋め合わせてもらわないといけないと思いませんか?」

「へ? ……え、えーと……」

「男らしいノクスさんなら思ってくれると思ったのですが……」

「え? う、うーん? お、思うかな?」

 

 え? 俺そんなこと思ってんの?

 なんか勢いで押し切られてる気がするが……。

 

「では貸し一つですね」

「う、うん」

「通算で貸し126個目ですね」

「え!? そんなにあったっけ!?」

「嘘です。本当は――」

「本当は?」

「146個です」

「増えてんじゃねえか! え、俺ってそんなにティオに借りを作ってたっけ……」

「はい。まさか忘れてたのですか?」

 

 心外そうな顔をするティオ。

 どちらかというと心外なのは俺なんだけど……。

 

「覚えてないようですから、思い出させてあげましょう。ワジさん――テスタメンツとの暴力事件、未登録銃火器所持事件、暴行現場の未通報、独断による刑事事件解決、届出なしでの開業……」

 

 ティオの口からは、出るわ出るわの俺の前科たち。

 いや、逮捕されるレベルのことじゃないんだが、言い方を変えればこうも重大な犯罪者になるのか……。

 苦笑いのリィン教官はなんとなく察してくれてそうだけど、アルはすっかり信じ込んでいるようで再びジト目でこちらを見ている。

 

「早朝の起床ラッパ騒動、遊撃士なりすまし事件、ジオフロント花火問題、旧市街での半裸闊歩」

「半裸闊歩!? 俺そんなことした覚えないぞ!?」

「覚えていないのなら、写真もありますよ?」

 

 言いつつ懐から写真を取り出すティオ。

 ……なんで持ち歩いてんだよ。

 

 持ち出された写真には確かに俺が半裸になっていた。服は大型の猛禽類に切り裂かれたように原型を留めておらず、大きい小さい無数の傷が身体中にあった。

 背景は旧市街の広場で、ところどころ路の舗装が砕けており、そして俺は虚を構えながら照準を定めているところだった。

 うん、思い出したわ。

 

「俺ところどころ血が出てるの見えません? それ、クスリ決めて化け物になったヴァルドと殴り合いになった時ですよね!?」

「ええ、そうですね」

「写真撮ってる暇があったら手助けしてくれて良かったんじゃねぇの!? 魔人状態のヴァルドをなんとか人の状態にまで戻してやっとティオとワジがきた気がするんだけど??」

「それまでは写真撮影に忙しかったもので」

「手伝えよ! 俺が殺されたらどうすんだよ!!」

「ピンチになったら手を貸そうということになってましたね」

「ああ、それだったら安心だ……ってならねぇよ!」

 

 いや、実際ピンチにはならなかったけどさ。

 大型の猛獣や装甲などを備えた兵器に対して無類の強さを誇る虚があるのだ。魔人状態じゃない方がむしろ苦戦するだろう。

 

「それで魔人からなんとか人に戻したヴァルドとワジが青春(殴り合い)をして全部掻っ攫ってったのを俺は指咥えて見るしかなかったってのに、半裸で闊歩した扱いになるのはいくらなんでも酷すぎません!?」

「ですが規則は規則なので……」

「なんでそこだけは官僚気質だよ!」

「最大の譲歩として逮捕しない代わりに貸し一つになったじゃないですか」

「俺、アレもしかしたら逮捕されてたの!? 融通効かないにも程があんだろ……」

 

 項垂れているとティオは背伸びしながらポンポンと俺の頭を叩いて、

 

「大丈夫です。どんな負債でも、少しずつ真面目に返済していけば、いつかなくなりますから」

「……まあ、結構色々見逃してもらったりはしたから、その分の借りは返すつもりだけど……」

「はい、ゆっくり返していきましょう。利息は低くしておきますから」

「利息あんの!?」

「はい、トイチに負けておきますね」

「もう返済無理だよ!!」

 

 などと喧々轟々とやりとりしていると、流石に俺たちの話に置いて行かれてしまったリィン教官から声がかかり、面識のなかったティオとリィン教官にアルがそれぞれ自己紹介することとなった。

 ティオになんでここにいたんだと聞いてみると、どうも出社する時間にたまたまばったり俺たちに出会ったようで、見慣れた後ろ姿があったので話しかけたようだった。

 俺を相手にするのとは違い、非常に常識的な態度と言動をするティオに呆れつつも、現在はエプスタイン財団のクロスベル支部の開発主任にまで任されるようになった彼女の優秀さには少しばかり羨ましいと感じるものである。ソフトとハード両方に秀でたエンジニアで、その能力だけでみたら我らがシュミット博士に近い感じだ。

 そして俺が苦手な人でもある。

 ……いや、苦手というマイナスなイメージではないが、いつも手のひらの上で転がされてしまうというかなんというか。

 

「わたしの方もあなたのことは様々な方面から聞いてまして。騎神のことや、そちらの方の“黒い傀儡”にも興味ありますね」

 

 などとティオにしては強めのジャブのようなコミュニケーションをリィン教官とアルとやっているようだ。

 前に見た時からほとんど伸びていない背丈に、かなり明るくなった服装からなんとなく大人っぽい雰囲気がするようになった感じがする。年が変わらないのに、学生である俺たちよりも結構大人びているというか……。

 

   <選べ>

 

【このマセガキ、いつか分からせてやるからな】

【ティオを第二分校に勧誘する】

 

 マセガキって! 誰がそこまで言ったよ!? 人の言葉を悪意マシマシに捉えないでもらえないかねぇ!

 てか、上の選択肢をとったら今度ティオになんて言い返されるか恐ろしいので選ぶわけないけどね……。

 

「ティオってさ今年確か16だったよね?」

「ええ、はい。その通りですね」

「じゃあさ、一緒に第二分校入らない?」

 

「え?」という言葉はティオだけじゃなくアルの口からも漏れてきた。俺も言いたかったよね、うん。

 ところが俺の口はそれでも止まることを知らず、

 

「入学時期はズレてるけど、そこら辺の融通は俺が分校長に話通しておくからさ」

 

 などとほざいてくれた。

 おいおいおいおい、死んだわ俺。

 

「分校長に……。もう一度アレをするつもりなんですか……?」

 

 呆れ果てた上に戦慄した顔で俺を見るアル。

 アレってのは間違いなく、俺のオーレリア様による公開処刑のことだろう。アレをもう一度やるって? 俺は自殺志願者じゃないんだがなぁ……。

 ほらリィン教官、あなたの生徒が虎子を得ようともせずに虎穴に躍り出ようとしてるんだから止めるのが仕事でしょ。そこで神妙な顔つきで、『お前がやりたいってなら止めはしないぜ』みたいな顔はよしてくださいよ?

 

「せっかくのノクスさんからのお誘いですが、残念ながらそれは難しそうですね」

「で、ですよねー」

 

 良かったー。

 アンタが嘘でも乗り気だったら、俺は再び死の淵に立たされてたんだから……。

 

「ノクスさんのことだから、学校生活がうまく行ってないのですね?」

「あ、いや別にそういうわけじゃ……」

「皆まで言わなくても大丈夫です。友達ができなくてわたしを誘ってくれているのはわかるのですが」

「いや、そんなわけではないが!? アルも友達だし!」

 

 ねぇ! と呼びかけると、

 

「え、えーと……」

 

 なんか難しそうな顔をされた。

 え!? 俺ら友達じゃなかったっけ!?

 

「アルティナさん、確かにノクスさんは素行不良で、金の亡者のうえ、奇行を繰り返しては、時たま変態的な――今だって何故か女子制服ですし、そういうことをよくするロクデナシの貸し勘定すらまともにできない男ですが」

「言い過ぎじゃない!? 俺そこまで酷いか!?」

「はい」

「『はい』!?!? アルも俺のことそういう目で見てたの!?」

「心は優しいので大目に見てあげて」

「フォロー少なすぎません!? あれだけの罵倒に釣り合わないじゃないんですかね、ティオさん!?」

「たまには話しかけられたら返事してあげてください」

「お願いのハードル低すぎて地中の埋まってるよ!! 基本無視でいいのかよ!!」

「はい、善処します」

「返事するのを善処!? そんなに俺と話したくないの!?!? 2ヶ月士官学院通ってもう結構仲良くなったと思ってたのに! 全部一方通行だったのかよ!」

「はぁ……」

「え、てことは何!? アルが言葉少なめなのってそういう性格だったとかじゃなくて、俺の前だと喋りたくなかったとかいうことなの!? 裏ではベラベラいってたってこと!? そうなの!?」

 

 と、意外すぎる事実に驚愕していると、

 

「ふふっ」

 

 という笑い声がしたので顔を上げてみれば、似た雰囲気の少女が二人して小さく笑っていた。

 

「冗談ですよ。ね、アルティナさん」

「はい。……案外楽しかったですね」

 

 などと仲良くしていたものだから、珍しいものを見てしまっただけに俺は何も言い返せなかったのだった。

 

 ・・・・・・

 

 RFの建物に入り、先に着いていたユウナたちと合流したのちに、ちょっとした会議室に通された俺たちは、そこでそのままティオがルーファス総督に通して持ちかけた依頼の話し合いをすることとなった。

 なんでも導力ネットワークを構築するジオフロントの地下端末に何かしらの不備があって、それに起因したバグが発生しているとのことだった。魔獣もそれなりに増殖してて、制御端末まで行くのにティオ一人では捌ききれないのもあっての要請とのこと。

 

「遊撃士とかがいないことの弊害ってやつかな?」

「ええ、部分的にはそういうことになるかもしれませんが、今回に限っては一概には言えないかもしれませんね」

「警察――軍警が視察団関連の警備を優先したから、ってことですか?」

 

 気付いたように声を上げたユウナに対して、ティオは首肯した。

 

「話をまとめると、自分たちの役目は魔獣の掃討と端末の修復でいいのかな?」

 

 話をまとめるようにティオに確認を取るリィン教官だが、ティオは首を振りながら

 

「いえ、制御端末の修理は専門的な知識を必要とします。ノクスさんに任せるにも“ブランク”がありそうなので、わたしがやります」

 

 残念ですねー、借りが一つ返せるチャンスだったのに、とこちらを見るティオだが、残念だったなティオ。俺はブランクがなかったとしても修理には乗り気じゃなかったしやらなかっただろうね。何せ今日、俺はその導力ネットワークの中枢端末の置かれたオルキスタワーの導力機関を無力化しないといけないからな! はっはっは!

 はっは、は……。

 は……っ、は…………。

 ああ、なんだか虚しくなってきたなぁ。

 

「ですのでみなさんにはわたしの護衛をお願いできればと思っています」

 

 護衛か。

 正直ティオの実力でジオフロントで困ることはなさそうに思えるんだが……、何かあったら困るのはその通りで。

 けど、

 

「リーシ――、じゃなくて、えぇと、あれだ、あの太もも仮面さんとかは忙しい感じなのか?」

「太もも?」

「仮面?」

 

 ライカとクルトが首を傾げている。

 いや、リーシャさんのことだけどね。けど表立ってティオら特務支援課の仲間してるというのも憚られた上に、《銀》とかいうコードネームで呼ぶのはもっと問題が起きそうだったもので、思いついた印象をそのまま単語にしたら太もも仮面になっちまった。

 

「太もも……、彼女のことですね……」

 

 どうやらティオには伝わったようだった。流石である。

 

「今度会った時に報告しておきます」

「いや、報告は勘弁……」

「彼女は忙しいみたいで、少し連絡がつかない状態ですね」

「そういうことね」

 

 色々忙しい人だろうし、そういうこともあるのかな。

 リーシャさん以外にも、アリオスさんやロイドたちなど、潜伏中とは言えこういったことには喜んで手を貸すであろう人たちの手を借りないのには何か事情があるのか、それともたまたまなだけなのか……。

 

 あとでそれとなく尋ねてみようと決心して、ジオフロントへと向かうティオについて行くことにした。

 

 ・・・・・・

 

 見上げた先。

 鈍い紅色の金属光沢を反射させながら、こちらに向かって戦闘体制をとっているゴーレムが一体。

 そして俺たちの背中にも、あと二体の同型のゴーレム。

 威嚇のつもりなのか、轟音を響かせながら持っている大きな鉈のような武装を振り上げている。

 

「囲まれちゃいましたね……」

 

 と、俺の隣で尋常ならざる気配を漂わせるリィン教官に声をかける。

 すると真剣な表情のままリィン教官は、

 

「ああ。それにしては焦っていないようだけど?」

 

 と尋ねてきた。

 

「ええ、まあ。何回か相手したことがあるので」

「……そうか。油断するんじゃないぞ?」

「リィン教官こそ」

 

 そう言いつつ、ゴーレムの脚部の関節に通常弾を複数回叩き込む。

 もう慣れたもので、問題なく稼働部の最も薄い装甲を貫いた弾丸がその関節接合部を破壊し、一体のゴーレムが体勢を崩して倒れ込む。

 だが同時に鉈を振り下ろしてくるもう一体のゴーレム。

 それに対してはジオフロントの壁を利用した跳弾で、比較的威力の高い炸裂弾を振り下ろしに対して斜めの方向から叩き込むことによって、まっすぐ飛んでくる攻撃の方向を逸らす。

 と同時に、まるで金槌でクロスベルの鐘をぶっ叩いたかのような金属音がし、その音のした方向を見てみると、どうやら三体目のゴーレムの攻撃を真正面から刀で弾き返すリィン教官がいた。

 ひえぇ……。なんでそんな細身な刀身で、人間一個分くらいある武器の攻撃に対応できてんだ……。

 

「はぁああああっ!!」

 

 と咆哮しつつ、リィン教官は俺の攻撃を真似て対峙しているゴーレムの関節に、突き刺すように刀を振り下ろし、、耳をつんざくような金切り音をあげながら、突き立てた刀でそのままゴーレムの脚部を斬り下ろしてしまう。

 倒れている二体のゴーレムを見下ろし、エテリウム・バスターのための準備をしつつ、

 

「思ったより苦戦しなさそうですね」

「ヴァリマールを呼ぶ必要はなかったな……」

「切り札を温存できたと考えればいいんじゃないですかね?」

「それもそうだな」

 

 と軽く話している間にも、攻撃を外してジオフロントの地面に叩きつけたせいで突き刺さってしまった武器を引っこ抜こうと四苦八苦するゴーレム。

 そしてそのゴーレムがやっとの思いで武器を構え直した時には十分なエネルギーを貯めることができた虚の一撃によって頭部を貫かれることとなった。

 

「これで5体目か」

「流石に打ち止めだと思いたいですけどね……」

「制御室の方から音もしないし、ひと段落はつけたな」

 

 そう言いつつ刀を鞘に納めるリィン教官。

 俺もそれに倣って虚をホルスターに仕舞い込み――。

 

 ――ふみゃあ。

 

 という猫の声がした。

 音のした方向を向いてみると、暗いジオフロントの景色に紛れるように、艶のある黒い毛並みが少しだけ見えた。

 

「? ジオフロントには猫も住んでいるのか……?」

「滅多にいないですけど……。もしかしたら知ってる猫が迷い込んでるかもしれないので、ちょっと行ってきていいですか?」

「知ってる猫……?」

「コッペって言うんですけど……、って見失いそうなんで行ってきます! 見つかったら制御室に戻ります!」

「ちょ、ま、まっ……」

 

 引き止めるべきか悩むような声を上げるリィン教官を背にそのまま駆け出す。

 ここはジオフロントの結構深くで、本来ならエレベーターがないと辿り着くのに数十分かかるような場所である。ほぼ確実に自力では出て行けないだろうし、魔獣もうろついている。

 急いで見つけにいかなければ。

 

 というのが十分も経たない前の話。

 そしてなぜか必死に逃げ続ける猫を追い続け、

 

「アンタ一体なんなのよ!」

 

 俺は今、なぜか尻尾にリボンをつけた猫に話しかけられていた。

 

   <選べ>

 

【コミュニケーションにおいて相互理解が重要である。なのでまずは彼女が雄か雌かを確認する】

【とりあえず猫には人になってもらう(強制)】

 

 なんかものすっごく失礼なことをさせようとしてる選択肢が現れた。

 雄か雌か? もう『彼女』って言っちゃってんじゃん。




いつも感想、評価、誤字訂正ありがとうございます!

ヴァルドと戦ってるノクスを見てるワジとティオ(ほへー、なんかやってら。写真でも撮っとくか)

更新頻度が少し遅くなりますが、頑張って完結に向けて少しずつでも進めていきます! これからもよろしくお願いします!

ノクスくんに騎士人形は必要?

  • いらん。フィジカルで戦え
  • 汎用機くらいなら、まあ
  • 余ってるやつなら騎神一個あげてもいい
  • 相克に参加してどうぞ
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