トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが……   作:全自動髭剃り

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お久しぶりです! 他の小説にうつつ抜かして、放置してしまってました……。感覚取り戻すまで少し拙い文章になるかもしれませんが、よろしくお願いします!


5月20日 クロスベル 1日目 午前(3)

「アンタ一体なんなのよ!」

 

 尻尾にリボンをつけた猫に怒鳴られるという珍しい体験をしながら、

 

   <選べ>

 

【コミュニケーションにおいて相互理解が重要である。なのでまずは彼女が雄か雌かを確認する】

【とりあえず猫には人になってもらう(強制)】

 

 とりあえず彼女のは強制的に人になってもらうこととなった。

 日本語がおかしい?

 俺もそう思う。

 

「え……? えっ!?」

 

 選択肢を選んだ途端、黒猫の周囲には魔法陣のようなものが浮かび上がり、

 

「な、……えっ!? なんで……!?!?」

 

 困惑する少女の声と共に、魔法陣からは光が溢れ――

 

 ――そして、そこには……。

 

「っ! ……く……っ!!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情でこちらを睨みつける猫耳ロリっ娘がいた。

 長く紫に輝く黒髪のツインテールに、ふさふさで今にももふり欲を掻き立てるような猫耳……身につけている服、あまりに露出が多すぎませんかね……? スカートがぶつ切りになっててその間から足の付け根が見えてるの、あの太もも仮面さんよりも素肌面積が大きいというか……。

 と、まじまじと彼女の立ち姿に夢中になっていると、

 

「こうなったら……!」

 

 そう言うと彼女はその小さな手を振り上げ、

 

「意地でもこの場は切り抜けてやるわ!」

「え……」

 

 その手の先に岩粒ほどの大きさの火の玉を生成して、こちらに投げつけてきた。

 

「ちょっ!」

 

 急いで身を翻してその攻撃を躱わす!

 まるで溶岩の塊のようなその攻撃を生身で軽く受けるわけには行かなかった。

 と同時に、

 

「ま、待ってくれ!」

「問答無用!」

「おわっ!」

 

 再び勢いと数の増えた火の玉を避けることとなる。

 もうこうなってしまってはどうしようもない。

 なので、彼女の気が済むまで付き合うことにしよう。

 

「えいっ! ……えいっ!」

 

 と可愛らしい声をあげる彼女に、なんだか背伸びして大人ぶる子供のような可愛さを感じつつ、その攻撃一つ一つを油断なく見極めながら回避していく。

 なんとも不思議な攻撃手段である。

 導力機関によって行使される炎のアーツにしては駆動をしているようには見えず、俺が使っているばら撒く弾丸のように導力仕掛けの道具を使ってる訳でもなさそうだ。

 

 今まで見たことのあるこれに似た現象について思い出してみると……。

 心当たりがありそうなものが二つほど。

 一つは虚やシズナの持っていた刀、そしていつぞや戦ったことのある騎士様の持っていた槍。物自体がアーツ的な特性を宿している武器である。先ほどリィン教官と一緒に戦った相手もそれの一種だろう。

 だがそのような可能性は低そうだ。見る限りにおいてはそのようなものを使っているわけではなさそうである。

 

 二つめ。彼女自身に何らかの能力がある可能性。

 これについてはあまり詳しいわけではないが、少なくとも俺は一人、目の前にいる彼女とは違う術だが、導力機関では説明できない現象を起こしている幼女を知っている。

 

「はぁ……、はぁ……!」

 

 息を切らしながらもその攻撃の手を緩めない彼女に確認してみよう。

 

「あのさ!」

「何よ! アタシをどうするつもりなのよ!」

「いや、どうもしないって!」

 

 怒りに任せた大玉の火球を虚で振り払いつつ、

 

「ロゼたん――ローゼリアって知っているか!?」

「!? なんでアンタがその名前を……!?」

「やっぱりな……」

 

 自らを魔女と呼称したロゼたん。

 彼女の知り合いならば、“魔女の術”の一部が使えたりしてもおかしくはないだろう……。

 そんな安直にも近い俺の推測はどうやら当たったらしい。

 ならば、俺がロゼたんの知り合いであり、彼女の敵対勢力ではないと伝えればいいと思い、口を開こうとしたところ――

 

「知っているからには、今ここで……!」

 

 大きく飛び上がった少女。

 そして俺を中心として赤色の魔法陣が光り始める。

 

(大技か……! いや――!)

 

 明らかに彼女によるものではないアーツの発動!

 この場に現れた第三者によるもの。そもそもこんな場所――ゴーレムが現れるジオフロントでドンパチしていたのだ。介入がない方がおかしい。

 

 だが、彼女に弁解する時間はない――!

 猫耳少女の背後にも現れる魔法陣を睨みつけながら、集中力一気に引き上げていく。

 

「その力……! でも……!」

 

 偽・神気合一は……残念ながらフルでは使えないが……!

 ホルスターから虚を抜き取る!

 

「はぁああああアアア……!!!」

 

 全力で虚へのエネルギーのチャージをしていく!

 急速に身体中の力が抜けていくような錯覚と同時に、眩暈のために中心におさめた猫耳少女と魔法陣以外が暗く狭まる視界。

 だが完全に暗転させてしまえばただの気絶になってしまう。ゆえに歯を噛み締めて耐える。

 

「流石にこの一撃は避けられないわよ! ……クリムゾン・テイル!!」

 

 光り輝く可愛らしい尻尾を振り回すと、そこを起点にして今までの火球とは比べ物にならない熱量の赤い物体が生成され、一直線にこちらに向かってくる。

 まだまだ距離があるのだが、すでにジリジリと肌が焼ける感覚が……!

 

 だが、すでに少女の背後には――!

 

「な……っ!?」

 

 燃え盛るそれに全力で突進ッ!

 左手に構えた虚を斬りあげることによって無理やりに猫耳少女の攻撃の進行方向をずらす。

 火傷のようにジンジンと痛む左手からの痛覚を無視して、彼女へと一直線に向かう。

 

 ――振り上げられた腕は、すでに彼女に迫っており。

 

「マクシマム、バーストォオオオ!!!!!」

 

 飛び上がった体が発砲の反動で床に叩きつけられ――

 

「うがっ!」

 

 と辛うじて悲鳴だけあげて、意識が遠のいた。

 

 ・・・・・・

 

 目が覚めたら、

 

「知らない天井だ」

「あ、目が覚めたのね」

 

 という言葉が記憶に新しい声と共に耳にやってきた。

 えーと確か……。

 ジオフロントで猫を追いかけていたら猫が女の子になり(強制)、なぜかその猫娘に襲われていたところで魔煌兵が襲いかかってきて、って感じだったような……。

 

   <選べ>

 

【君は先ほどジオフロントにいた犬!】

【目の前の少女を強制的に猫に戻し、最低10時間モフり続ける】

 

 犬じゃねえよ! 猫だったろ! って、このツッコミもおかしいわ! 何で猫が人になってんだよ……。あとそれ以上に! 下の選択肢、前半はともかく後半は俺にとっても彼女にとっても拷問だろうが! 物事には限度ってものがあるんだよ!

 

「君は先ほどジオフロントにいた犬!」

「猫よ! どんな見間違いをすれば犬に見えるのよ!!」

 

 そうなんだよなぁ。

 というか、彼女からニョキっと生えている耳を見れば、猫だってすぐにわかるものだ。

 

「ごめんごめん、言い間違えた。って、それより、ここはどこで、君は誰なんだ?」

 

 寝ていた体を起こして辺りを見回す限り、人の生活感がそこそこに薄く、同時にゆったりと一泊するのに最低限必要なものが全て揃えられているような部屋だ。

 ベッドは綺麗にメイクされていて、しわひとつない。

 

「ここはクロスベルの歓楽街にあるホテル。アタシはセリーヌよ」

「歓楽街……、ってことはホテル・ミレニアム?」

「残念ながらそんな豪勢なホテルじゃないわ。それに、あそこって今日から数日の間は一般宿泊客は受け入れないって話よ」

「え? ……あー、視察団の要人たちが宿泊するってことか」

 

 壁にかけられた制服を手に取りながら、セリーヌに話しかける。

 

「わざわざここまで運んできてくれてありがとう。放っておいてくれても良かったのに」

「そういうわけにはいかないでしょ! ……こっちも問答無用で襲いかかったのは悪かったし……」

「俺も出会い頭に追いかけて悪かったよ。毛並みが似てたから知ってる猫だと思って、な。というか、まさかこんなに可愛い女の子になると思わなかったよ」

「っ! ……はぁ、ほめたって何も出ないわよ」

 

 褒めるというか、まあ事実を言ったまでだが……。てかそういえばコッペはどうしてんだろうか? 商売敵であった特務支援課の建物の近くに棲みついている黒猫だが、時たまキャットフードを持って行ってあげたりしたんだよね。

 近隣の人たちに有名な猫だったし、食いパグれってしまってることはないとは思うが……。

 

 っと、それよりも。

 ARCUSを懐から取り出して、リィン教官に連絡を取ろうとしていると、

 

「エマ経由でアンタの教官には連絡してあるわ」

「え? あ、それはありがとう」

 

 エマ? というのが誰なのかは知らないけど、少なくとも心配かけている状態ではないのは安心だ。

 

「一応起きたって連絡だけは入れておこうかな」

 

 と、連絡機能を使用しようと思っていたのだが、不意に思い出す。

 

「そ、そういえばさ、俺ってどれくらい寝てた?」

「1時間くらいじゃない?」

「てことは現在時刻ってさ……」

「えーと?」

 

 セリーヌは部屋にある壁掛けの時計の目をやりながら、答えてくれた。

 

「12時5分前よ」

 

 そしてその情報と、ARCUSに選択肢が無理やり表示させている一文を脳内で照らし合わせてみる。

 

⦅期限:5月20日12時0分⦆

【アルカンシェルへ顔を出し、イリア・プラティエと話す】

 

 現時刻11:55。

 

 ・・・・・・

 

「どけっ!! 俺はイリア・プラティエに会わないといけないんだあああああ!!!!」

 

 アルカンシェルの入り口で暴れまわりながら、何とかして顔馴染みじゃないセキュリティの人たちを退け、楽屋でくつろいでいたイリアさんのところに突撃をした俺だったが、

 

「え? え?」

 

 と戸惑うシュリに対して、

 

「あら、ノクスじゃない。クロスベルに来てたの?」

 

 侵入者に対しても余裕綽々のイリアさんであった。

 大した大物ぶりだけど、曲がりなりにも超有名女優なら少しは身の近辺を警戒した方がいいんじゃないかなぁ……。

 

 確認する限り時計は12時数十秒前。ギリギリ滑り込み達成ってことでいいのだろうか。

 

「はぁはぁ……、……ふう。お久しぶりです、イリアさん!」

「お久しぶり〜。1年半ぶりかしら? 帝国の方に向かったって噂は聞いたけど、学校に通い始めたのね?」

「はい、紆余曲折があって、今はトールズってところに」

 

 と、そんな感じで談笑を始めた。

 直後部屋の外からセキュリティーの人が駆けつけた音がしたのだが、「この子は私の知り合いだから、気にしなくても大丈夫よ」とイリアさんが説明してくれたためのことなきを得たのだった。

 で、どのくらいの時間が経てば流石のシュリも呆けた状態から回復したのか、

 

「ノクス!? なんでここに、っていうか、なんでスカート履いてんだ!?」

 

 俺に詰め寄りながら尋ねてきた。

 うん、それは普通の反応だよね。イリアさんがどんと構えすぎてて俺も空気に流されるところだったけど。

 

「お前とイリアさんに久々に会いたくてな」

「だからって入り口で大騒ぎしてたのはおかしくないか……?」

「一刻も早く会いたかったんだよ。で、どうなんだシュリ? 最近舞台上手くいってる?」

「……まあ、ぼちぼちだよ。アンタに心配されるほどじゃないさ」

「お、だったらよかった。それでイリアさん、怪我の方は治りました?」

「あの時の? とっくに治ったわ。ノクスくんのおかげでちょっと骨のひびが入っただけで済んだもの」

 

 赤い星座がクロスベルでドンパチを始めようとした日のことを思い出す。景気付けとばかりに公演中のアルカンシェルのシャンデリアを落とそうとしたシャーリィを狙撃したのだが、対処しようとしたシャーリィのチェンソーに削られた灯台の一部が落下してイリアさんに当たったのだ。

 その後調子に乗って舞台上で俺にタイマンを仕掛けてきたシャーリィの相手を、太もも仮面――もといリーシャに丸投げしたのだ。

 それ以降色々と忙しくなって見舞いにも行けなかったので、少し心配だったのだ。

 

「それはよかったです。いやあ、女優のみに何かあったらと思うと夜も眠れなくてー。あははー」

「――って! しれっと誤魔化すな! なんでスカートなんて履いてやがるんだ、この変態!」

 

 指差しながら怒鳴るシュリ。

 俺も完璧な誤魔化しに気づくとは、……成長したな。

 だが、俺を甘くみるなよ? その程度の質問に答えられない俺ではないぞっ!

 

「ファッ」ションだ。履きたいから履くのはダメなのか?

 

   <選べ>

 

【自らの奥底に秘めたスカートに対する情欲が具現化しただけだ】

【シュリの履いているホットパンツとトレードを申し込む】

 

 き、貴様ァ!! 俺の多様性を盾にした最強の言い訳をッ!

 どっちを選んでも変態じゃねえか!! それに、下の方はド変態どころか、逮捕案件じゃい! 軍警がすっ飛んでくるわ!

 

「いいか、シュリ。スカートってのは夢だ、ロマンだ」

「は?」

「そのひらひらにどれほどの男たちが人生を壊したのか知らないからこそ、そういう態度でいられるんだ。開放的な女性的な自由さと、決して一線は譲らぬ蠱惑さ……。まさにこの世の神秘、女神の至宝にも劣らぬそれを自ら試さずにいて許されるものか!!」

 

 どちらかというと女神にすら許されないようなことを宣う俺の口は、言いたいことだけ言ってやっと自由に動かせるようになった……。

 

「……」

 

 対面にいるシュリは顔を真っ赤にしている。

 照れてるのかなぁ? そんなわけないか〜。うんうん、どちらかつーと爆発寸前の火山? って感じだね。

 だがみくびるなよ? 俺のだって手段はある!

 

「助けて、イリアさん!」

 

 イリアバリアだ! 対シュリ・リーシャに対して絶対防御を誇る最強のバリアだ!

 対してイリアさんはなすがままに背中で俺を守ってくれている。じっと俺の体を睨みつけてるのだけど、気にしている暇はない。

 

「っ! このっ! イリアさん退いて、そいつ殴れない!」

「ふふふ、お前にはどうすることもできまい!」

「っっっ! なめんなよ!!」

 

 そう叫ぶと、シュリは楽屋のテーブルに向かって走り出し、なんとそれを足場に跳び上がった!

 イリアさんを避けるようにして空中で一回転し――

 

「え、ちょっ!」

「――だりゃああああ!!」

 

 勢いのまま俺にかかとを振り下ろすシュリ!

 急いで迎撃体制を整えて、その足を両手で受け止める!

 

「っぶねえ! 何しやがる!」

「お前こそ何やってるんだよ! 離せ!」

「離したら殴りにくるんだろ!? 絶対離さないぞ!」

「んっ! こんの!」

 

 尚も暴れ回るシュリを士官学院で学んだ制圧術で押さえ込もうとするが、さすがはアルカンシェルの劇団員、軽快な足捌きで避けながら俺の顎の下を的確に狙ってくる!

 などと一進一退の攻防戦を繰り広げていたのだが、

 

「ちょっといいかしら?」

 

 という鶴の一言で動きを止める俺たち。

 

「はい?」

 

 大人の声には弱いのだ。

 何事かと思い、イリアさんの方を向くと、

 

「わっ!」

 

 何を思ったのか、徐に俺の胸を鷲掴みにするイリアさん。

 え? なぜに!?

 

「やっぱり思ったとおりね」

 

 全力で飛び退く俺に対して、自分の手をにぎにぎしながら先ほどの感触を思い出すかのようにつぶやくイリアさん。

 ちょ、ちょっと待て! まさか!

 

「ノクス()()()、劇団に興味はない?」

 

 ・・・・・・

 

 素敵な笑みを浮かべたイリアさんの申し出を謹んでお断りし、尚も迫り来るイリアさんから命からがら逃げ出たのがつい先ほどのこと。

 リィン教官に連絡を入れると、どうやら幻獣の調査はクルトたちの獅子奮迅の働きもあって一通り終わっており、俺のことを連絡してくれたエマって人とも合流して今は社会見学という名のクロスベル観光をしているようだった。

 アルカンシェルにも顔を出すようで、そのことはイリアさんに伝えてある。まさか逃げ出たすぐ後に出戻りするとは思わなかったが。

 

 今回も特務活動が予定より相当早く終わったということで、午後は主計課や戦術課の奴らにまざるか、クロスベル軍警の手伝いをするか予定は決まっていないらしい。

 手持ち無沙汰ならばということで、俺はここぞとばかりにリィン教官に少し自宅の方に顔を出す時間がもらえないかとお願いした。

 

「家族の方がいらっしゃるんだったら、挨拶させてもらえないか?」

 

 という律儀が服を着て歩いているようなリィン教官の申し出は断らせていただくことになった。

 

「家族はノルドの方にいるので……。久々に家の掃除がしたいだけですから、どうか気にしないでいただけると」

 

 てな感じで、みんなとひとまず別れて単独行動することになった。

 百貨店でひとまず目立たない服を買って、制服の方は一時的にちょっと預かってもらうことにした。ちょっと値段は高かったのだが、変装用のウィッグや伊達メガネも購入する。

 なぜか? もちろん、オルキスタワーに侵入するためである。

 

「ちょっとはマシな外見になったな」

「……俺もそう思う」

 

 もちろんだが、男物の服だ。

 

「けど、制服じゃなくてもよかったのか? 学校としてクロスベル来たんじゃなかった?」

「まあ、自由時間だからなぁ」

 

 それに、流石に誰かに特定されるような格好で侵入するわけにもいかない。

 そう、俺には執行しないといけない任務がある。

 

⦅期限:5月20日16時0分⦆

【オルキスタワーの導力機関を停止せよ】

 

 本格的に取り掛からないとまずいのだ。

 まずいのだが……。

 

「ん? 何だよ。オレの顔に何かあんのか?」

「……いーや、何でもない」

 

 なぜかシュリがついて来ているのだ。

 どうも今日はアルカンシェルの公演日ではなく、午前中のリハーサルを終えて暇を持て余していたらしい。それで、イリアさんが若い人同士で遊びにでも行きなさいと背中を押したらしく……。

 

「……どうすっかなぁ……」

「何か言ったか?」

「何でもないぞ」

 

 何か理由をつけてさっさと離脱するか、それとも振り切って逃げてしまうか……。いずれにせよシュリには申し訳ないが、こちらにも譲れない理由があるんだよなぁ、なんて思っていると、

 

「それにしても久しぶりだな」

「え?」

 

 シュリが話しかけてきた。

 

「ほんと、誰に何も言わずに急にいなくなってさぁ」

「……あー、あんときは色々立て込んでたんだよ」

「連絡くらいしてくれたってよかっただろ。リーシャ姉から教えてもらうまで、どこかでのたれ死んだかと思ってたよ」

「それはそれでひどいな!」

 

 時期が時期だけにあり得なくはない話だけども。

 

「それで、今はどこに向かってるんだ?」

 

 素直に問いかけてくるシュリ。

 うーん、その質問は非常に答えにくいんだよなぁ。馬鹿正直にオルキスタワー侵入大作戦をします、なんて言えるわけもないし。

 

   <選べ>

 

【一切の嘘偽りなく、全てを包み隠さず答える】

【嘘をつく。シュリなど知ったことではないので、彼女を最大級に傷つける言葉と共に最悪の虚言を吐く】

 

 馬鹿正直に言えるわけないって言ってんだろうがぁああああ!! てか、ずるいぞ、こっちの良心を盾にするのは! 

 え? どうすんのこれ?? 上を選んでも下も選んでも地獄なんだが! オルキスタワーの機能を停止させるなんて言った日には十中八九シュリは俺の正気を疑って制止するか、警察に連絡するだろうし、例え納得してくれても彼女を巻き込むわけにはいかないし! だからといって、シュリを最大級に傷つける言葉を選ぶわけにもいかないし!

 なんだ、心を鬼にしろってか!?

 

「……」

 

 停止した世界で、笑顔を俺に向けているシュリを見る。

 ……。

 …………。

 やっぱできねえよ俺! こんな可愛い女の子を最大級に傷つけるとか!

 

「ジオフロントからオルキスタワーに侵入して、地下にある中央処理施設(メインフレーム)と別棟にある中央処理施設(メインフレーム)がダウンした時に稼働する予備処理施設(サブフレーム)2基、さらにオルキスタワー中央を通っている霊子調整機につながっているコンピュータ室にそれぞれ導力パルス(Orbal Field Pulse)を使ったOFP爆弾を設置して破壊する予定なんだ!」

「は?」

「ついでにOFP爆弾が不発に終わった時のことを考えて、普通のプラスチック爆弾も使う予定。リモートで爆破できるようにして、もしも爆破しないといけなくなったら事前に犯行声明を複数の軍警関連窓口と、念の為に遊撃士協会とトールズ第二分校、繋がるかわからないけど特務支援課の方にも出す予定さ」

 

 唖然としているシュリを前に、俺の口は止まることを知らない。

 

「万が一にも怪我人とか出てほしくないからね。あ、そうそう。最終手段としてHEAT(成形炸薬弾)で外からオルキスタワーをぶち抜く計画も立ててはいるけど、そっちの方は流石に実行する気が引けるかな?」

 

 と、ひとしきりに喋り尽くした俺に対して、

 

「はああああああああああ!?!?!?!?」

 

 見たこともないような態度で驚くシュリ。

 

   <選べ>

 

【全てを知られては仕方ない。共犯者としてシュリを連れていく】

【全てを知られては仕方ない。口封じに処分するしかない】

 

 あーはいはい了解。

 こうなりゃ俺たちは一蓮托生だよもう。恨むなら、俺に行き先を聞いてしまった自分を恨むんだな……。

 

「ここまで聞かれたからには、もうお前をタダで逃すわけにはいかなくなった」

「えっ!?」

「最後まで付き合ってもらうからな」

「あっ! ちょっ!」

 

 逃げられないように、シュリの手を握ってナインヴァリへと向かう。

 

「お、おい! 正気かよ、ノクス!」

「うん、その疑問はよくわかる。けど残念ながら、正気も正気なんだなこれが……」

 

 いっそ狂えてしまえたらどれほど気楽なのか……。

 

「誰かに操られてるとかじゃないのか!? 大丈夫かよ!」

「そういうのもないんよ。俺は自分の意思で動いてる」

「だ、だったらなんでそんなことを!」

「俺にとって大きいけど世界的には小さい問題と、俺にとっても世界にとっても大きい問題の解決のため?」

 

 具体的には俺が男に戻るためと、帝都が大惨禍に見舞われないために。

 

「……??」

「まあまあ、できるだけ穏便な形で終わらせるから安心しろって」

「安心も何も、やろうとしてることが全く穏便じゃないんだが」

「細かいことはいいじゃねえか! 楽しい楽しいオルキスタワーデートと洒落込もうぜ!」

「爆破とかなんとかじゃなかったらまだ楽しめたかもしれないけど、初デートが世紀の大犯罪とか嫌だあああ!!」

 

 尚も抵抗しようとするシュリだったが、カバンを買ってせっせと爆弾を詰め込み始める頃には諦めたかのようなジト目で俺を睨むだけ担っていた。

 念の為にシュリ用に防弾チョッキに導力銃を買い、さらには光学迷彩機能を持つ戦術オーブメントであるRAMDAも2基アシュリーさんから貸与してもらうことになった。

 

「はぁ……、これでオレも犯罪者に……」

 

 遠い目をした武装少女とジオフロント前で光学迷彩をつけることになったのだった。

 

 

 




界の軌跡楽しかったです! この小説書いてる時はまだ黎の軌跡2も終わってなかったのですが、なんと奇跡的に、界の軌跡に考えていた設定が問題なく混ぜられそうでホッとしています。
シュリって可愛いですよね。士官学院にお持ち帰りしたい()

ノクスくんに騎士人形は必要?

  • いらん。フィジカルで戦え
  • 汎用機くらいなら、まあ
  • 余ってるやつなら騎神一個あげてもいい
  • 相克に参加してどうぞ
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