トリスタから蹴り出されてリーヴスに着いたんだが……   作:全自動髭剃り

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シンクタンクってなんすか? キッチン用品?
あ、本編短めです


4月1日 入学式(後編)

「目が覚めたら、知らない天井だった」

「それ、本当に声に出すのね……」

 

 起き上がるとそこは医務室で、入り口にはちょうど入ってきたであろうユウナがいた。手にしたペットボトルをこちらに投げてくる。

 

「お、スポーツドリンクか」

「喉乾いてるでしょ?」

「わりぃな」

 

 渡されたドリンクを極々と飲み干す。ふぅ、寝起きに気持ちいいぜ。

 

 <選べ>

 

【ユウナもこれ飲む? と気持ち悪い声で聞く】

【もったいないのでベッド脇の花瓶の水もいただいちゃう】

 

 あああああああああ!!!!

 何その寝起きドッキリ!? こっちは病人ぞ? ちったあ加減というものをだなぁ!

 つか上の選択肢とか、今度こそユウナとの関係性を修復不可能レベルにまで壊しちまうぞおい!

 仕方がないので下の選択肢を選ぶ。

 

「ちょ、ちょちょ!!」

 

 奇怪が行動に戸惑うユウナだが、俺がユウナでも同じ反応してる。

 

「ごく……ごく……ごく……! ぷはぁ! うまいぜ!」

 

 うまくねえよ! 青臭かったし。

 

「えぇ……。そんなに喉乾いてたの……?」

「うん、あれがなかったら脱水症状で死んでたかも! いやぁ、助かった〜。あとでちゃんと水を入れ替えれば、入れ替えの手伝いもできるし、やったね」

「やったね……? …………もしかしてだけど、ノクスって……その、そういう行動をとっても、今まで誰にも怒られなかった?」

 

 怒られないわけねえだろうが!?

 と、叫びたい心を押さえつけて考える。もしかしたら、今まで怒られなかったボンボン育ちってことで、今までの言動を、それならしょうがないと許してもらえるかもしれない。

 

「あ、えと、うん」

「あ、そうなの……? じゃあ、もう花瓶から水を飲んではダメよ? もう飲まないと約束できる?」

「うん……」

 

 選択肢がやらせない限り、誰が花瓶の水を飲むか!

 

「私の、その、……下着の色を聞いたのも、今まで怒られなかったの?」

「うん」

 

 聞いたことなかったから、怒られることもなかったからな。

 

「クロスベルじゃ、ありえないし、ノルド育ちって聞いてたけど、ノルドではそういう文化だったんだ……」

「うん」

 

 ごめんなさい、ノルドの人たち。

 

「…………じゃあ、しょうがない……、か……? もう二度としちゃダメよ?」

「うん」

 

 なんか赤子を諭すように説教するユウナに申し訳なくなってきた。でもこれでユウナがめっちゃ優しい子だと知れた。これから困ったときは助けを乞いに行こう。

 

 <選べ>

 

【で、いつパンツの色教えてくれんの?】

【ユウナママばぶーばぶー】

 

 ダメって言ってんでしょうがAAAAAAAAA!!

 

「ユウナママばぶーばぶー」

「そういうところよ! そんな気持ち悪いことは言っちゃあダメ!」

「はい……」

 

 全くもうとぷりぷり怒っている。怒らせた俺がいうのもなんだけど、ユウナマジで優しい。

 

「って、そういえば! ちょっとリィン教官を呼んでくるね!」

 

 と言ってそのまま医務室を後にするユウナ。

 

 小さく息をつく。

 まだ気だるさの残る体を横にしながら、目を閉じてみた。

 一気に寂れた医務室に響き渡るのは、第2分校の生徒たちの活動の音。遠くから聞こえる吹奏楽の音に、少しばかり剣戟の音も聞こえる。

 そういえば、ここ数年、こんなに郷愁に駆られる情景を過ごす機会がなかったように感じられた。

 

 全ての始まりはクロスベルへの帰郷だった。きな臭くなった帝国と共和国の小競り合いを察知した母親が親戚の叔母を頼りに俺をクロスベルに送ったのだ。

 初めは1ヶ月程度の旅行気分だった俺だが、度重なるクロスベルでのトラブルのせいでついには一年近く滞在することとなった。遊撃士の真似事のようなことをして生計を立て、なけなしのミラでその日暮らしを乗り越えたので、なかなかにしぶとくなったものだと思う。

 なんとかして身に降りかかる火の粉を払っているうちにクロスベルは帝国へと編入され、そのちょっと後にはノルドに戻ることができた。

 その後は選択肢に拉致されるように帝国内を旅することになった。出会いも別れも酸いも甘いも味わい尽くしながら、あと選択肢による無茶振りにも対応しながら、やっと辿り着いた終着点が士官学校だった。

 

 っと、2回のノックののちに医務室の扉が開いた。そこにはリィン教官がいた。

 

「ノクス、体調はどうだ?」

「あ、落ち着いてきました。ちょっと気だるいですけど……」

 

 上半身に力を入れて立ち上がる。

 

「この通りピンピンです。魔煌兵じゃなければ、なんでもこいです」

「ああ、それはよかった。それに、もう放課後だから、魔煌兵はいないぞ」

「授業だったらいるかもってことですか……」

「生身で相対することはもうないはずだけどね」

「機甲兵、でしたっけ……?」

「だな。まあ、それはおいおい授業にも出てくるだろう。ああ、それと、確認をさせてもらってもいいか?」

「確認ですか……?」

「そうだ。」

 

 神妙な面持ちでこちらを覗き込むリィン教官。

 はてなんのことやら……?

 

「VII組特務課、このクラスにはたった4人の生徒に、ろくに概要すら知らない士官学院を卒業したばかりの教官である俺しかいない。だから不審に思うことも不安に思うこともあると思う」

 

 リィン教官から語られたのはこのVII組の現状であった。

 爪弾きにされた第2分校の中でも特段に孤立した集団であることは簡単にわかったけど、まさかリィン教官が卒業後すぐに担任に任されるほどに人材不足でもあるのが露見する話だった。

 

「希望があれば他のクラスへの転科を掛け合うことも約束する。その上で聞かせてほしい。自分の考え、やりたいこと、なりたい将来、今考えられる限りの“自分自身”の全てと向き合った上で、先ほど行われたテストの手応えを通じて、VII組への所属を希望するかどうか」

 

 ひとしきり話したのち、リィン教官は俺の返事を待つために沈黙した。

 うーん。つまりはこういうことか?

 

 <選べ>

 

【リィン教官の率いるVII組に所属する】

【VII組への所属を辞退する】

 

 特段絶対選択肢のようには止まっていない世界で、現れた選択肢を錯覚する。

 大してクラス所属になんて興味もなかったし、どう答えるのが正解だろうか?

 教官の言葉に従って考えれば、俺の考えとやりたいことと将来を勘定に入れるということよな。

 そもそもの話、俺はこの士官学院自体にくるつもりもなかったのだ。たとえ、本校に問題なく通うことになっていたとしても、のらりくらり卒業だけはして、軍属以外の道を選ぶ予定だった。

 自分のやりたいこと、なりたい将来ねぇ。そんなことを考えたこともなかったかもしれない。……いや、ないこともないかもしれない。

 

「俺は……」

 

 気づいたら声が出ていた。リィン教官は静かにこちらを見ている。

 

「俺は、VII組に所属します」

 

 とっくに風化して錆びた約束を、今更になって思い出したのも、多分偶然じゃないのだろうと信じよう。

 

「リィン教官の歩みと、帝国の行末、その交差点に俺が立っていないといけない、そんな気がします」

「……。」

「だから、これからよろしくおねがいします、リィン教官」

「ああ、よろしく」

 

 気づいた時には俺は教官と軽く握手を交わしていた。

 

「ああ、そうだ。ちょっと頼み事をしていいかな?」

「頼み事、ですか?」

 

 そういうと懐からひと束の手帳を取り出した。

 

「ああ、実は生徒手帳が予定より早く完成したんだけど、届いたのがついさっきなんだ。これから俺は用事があるし、みんなに配るのをお願いしてもいいか?」

「生徒手帳ですか。あ、全然問題ないです、やりますよ」

「それはありがたい。じゃあ、お願いしよう」

「お任せくださいな」

 

 その後、校舎で教員室に向かったリィン教官と別れて、俺は生徒手帳配りの長旅に出かけることとなった。

 いや、そんなにはかかったわけじゃなかったけど、やたらと広い学院の構造に慣れてないせいもあって2、3回ほど同じところを通る羽目になったりもしただけだったりする。

 で、最初に接触できたのが食堂で夕食を食べていたユウナだった。

 

「よっす、ユウナ」

「あ、ノクス! もう体調は大丈夫なの?」

「ああ、ちょっと寝込んだらすっかり治ったぜ。心配してくれてありがとな。で、これ」

 

 と、ユウナの生徒手帳を渡す。

 

「ついさっき届いたらしい」

「あ、生徒手帳!」

「そうそう。てか、俺もまだ飯食ってねえし、一緒にいいか?」

「うん、いいわよ。クルト君とアルティナちゃんも誘いたかったけど見つからなくて……」

「俺も探してたんだが、どこにいるやらなぁ」

 

 購買で適当にサンドイッチを頼んでユウナの向かいに座った。

 

「そういえば、聞いてなかったんだけど、ノクスってなんで士官学院に来たの?」

 

 思い出したかのようなユウナの質問は、なんとも答えづらいものだった。

 選択肢のせいって言えればいいんだがなぁ……。代わりに自分が妥協したラインというか、モチベーションにした理由を語ろう。

 

「ほら、トールズ士官学院ってさ、帝国でも有名な学校で、就職もかなり有利だろ? 卒業してどこかで働こうと思ってたんだよ」

「へぇ。それなのに、首席までとっちゃったんだ」

「実は勉強や鍛錬をしないと酷い目に合わせてくるスパルタンな母親的なのがいて……」

「なにそれ。でも、やらされる勉強だけで首席を取れるほど、士官学院は簡単じゃなかったでしょ?」

「まあ、正直やっていくうちに楽しくなちゃったところはあったけどね」

 

 全く興味のなかった歴史学なんかも,選択肢に強制されてではあるけど帝国を回りながら学ぶとかなり興味深いものだったしな.

 

「つっても、それが全部無駄になっちまったけどな」

「入学式のスピーチだっけ?」

「まあな」

 

 ため息が出そうになるが、グッと抑える。

 

「実はね、あたしも、似たようなものなんだ」

「似たような……?」

 

 全裸ブレイクダンス回避のために帝国批判を……? って、前半はともかく、帝国を毛嫌いしてるユウナなら余裕で帝国批判をしそうなものである。

 

「うん。だからね、やっぱりノクスにもちゃんとクロスベルの血が流れてるんだって思ってね」

「そりゃあ両親がクロスベル出身だしな」

 

 まあ、確かにあの街の雰囲気は大好きだった。西の文化も東の文化もごちゃ混ぜになった、陰も陽も包み込んだような街。どこか仄かに薄暗さを秘めてる明るさも、事なかれ主義に長いものに巻かれながらもしたたかにやっている雰囲気も。

 

「警察学校から来たって言ってたし、ユウナはやっぱり警察目指してる?」

「うん。憧れてる人たちがいて、その人たちになりたいなって」

「憧れかぁ。さぞすごい人たちなんだろうな」

「うん! その人たちはね……」

 

 と、ユウナは饒舌に“その人たち”について語ってくれた。

 ユウナの語るエピソードを聞けば聞くほどに、なるほどそれほどのヒーローならば憧れるものだと思った。

 

「じゃ、俺はそろそろ行くわ。クルトとアルティナにも生徒手帳を渡さなきゃいけないし」

「うん、じゃあ私は一足先に寮に戻るね」

 

 “その人たち”ねぇ。

 ついぞ名前などは聴きそびれてしまったが、それでもあの街の英雄ならばなんとなく見覚えも聞き覚えもあるものだ。

 

 クルトとアルティナを探して三千里。ついに見つからなかったので、探すのを諦めて寮に帰ってくるタイミングで生徒手帳を渡すことにして、寮に戻ると、入り口からも聞こえるような剣を振う音がなっていた。

 鍛錬室を覗き込んでみるとそこにはクルトが双剣でクルクルと舞っていた(激ウマギャグ)。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 息を切らせながらいまだに剣を収めない様子からして、俺には気づいていないようだ。

 え、気づいてないんよな?

 気づいてて無視してたら悲しすぎて泣く自信あるぞ?

 

 目の前で繰り広げられているのはおおよそみる人からしてもその鋭さがわかるような剣戟で、さすがはヴァンダール流と言えるものだった。そう言った武術云々に疎いど素人の俺からしても、一眼でパネエ強さってのがわかる。

 分校長ってこのヴァンダール流とアルゼイド流両方を修めたらしいから、飛んだ化け物なんだろう。

 

 ついつい見惚れてしまい、気づけばクルトは剣を振るう手を止めていた。

 

「人の鍛錬の盗み見か? あまりいい趣味とは言えないぞ?」

「あ、すまんすまん、格好良くてつい……」

「褒めてもらえるのは嬉しいが……。それで、何か用なのか?」

 

 <選べ>

 

【汗ばんでるクルトに恋心を抱く(強制)】

【不思議な踊り(クルトのCP-100)】

 

 お前、その選択肢選んだらいつも強制だったろうがよぉおお!!(血涙)

 なんで急に思い立ったかのようにホモにならなきゃいかんのやあああああ!!!

 

 カミサマモアキレルヨウナ~

 \(^o^)ν
   / >

 」

 

 <クルトのCPはガクンと減った。>

 減らねえよ! みろよあの澄ました顔、何事もなかったように汗を軽く拭い、こちらに歩いてきたぞおい。水も滴るイケメンすぎるぜ。

 

「不思議な踊りだな。まるで天真爛漫だ」

「あ、あぁ。……え?」

「それよりも、何か用があったのでは?」

「ああ、そうだった!」

 

 急いで懐からクルトの分の生徒手帳を出す。

 

「教官から配るように言われてな」

「生徒手帳か」

「そうそう。先程届いたらしい」

「ありがとう、確かに受け取ったぞ」

 

 素敵な笑顔を浮かべるクルト。ひゅー、イケメン!

 

「VII組になると選んだんだな」

 

 脳内で囃し立てていると、神妙な面持ちでクルトが話しかけてきた。

 

「わざわざ別のクラスに行くほどのこともないしなぁ」

「でも本校の入試で首席だったのだろう? 環境に対して文句を言っても咎められないだろうに」

「その環境を自業自得で手放したし、言える立場にはないな。そもそも、俺、士官学校来るつもりもなかったしなぁ」

「ほう。それで首席とは、なかなかやるな。俺も負けておれんな」

「まあ、競うのもいいけど、VII組の男子コンビとして仲良くやってこうぜ」

 

 拳を振り上げて突き出す。合わせてクルトも拳を突き合わせてくれた。

 

「そうだな。これからよろしく、ノクス」

「こちらこそ」

 

 お、これは好感触。少なくともボッチの学校生活からは逃れれたかも!

 踊る心を少し鎮めつつ、

 

「っと、そう言えば、アルティナを見なかった?」

「アルティナか。小要塞を離れてからはみた記憶がないな……」

「ったく、どこ行ったんだ……? 学校中探し回っても見つからねえ」

「……もしかしたらすれ違いですでに寮に戻ってるかもしれないぞ」

「3階なぁ。ちょっくら行ってくるわ」

 

 などと言葉を交わす。

 

 それにしてもアルティナかぁ。

 なんか訳ありな感じはするけど、悪いやつな気は全然しない。

 行動の節々からリィン教官に懐いてるような雰囲気が出てるし、外見も可愛いし。可愛いは関係ないだろって? 

 

 女子階に足を踏み入れるのを少し躊躇う。いや、普通の学校ならまだしも、ここ士官学校だし、そういうルールはないっちゃあないし、辺なことしに行こうってわけでもないし……

 

 <選べ>

 

【寮にいないかもしれないし、もう一回校舎を回る。全速力で】

【せっかくなので全裸で女子階に行く】

 

 あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛

 

「アルティナぁああああ!!」

「え」

「これが生徒手帳じゃあああああ!!」

「え」

「リィン教官から渡せと言われたああああ!!」

「え」

「じゃあな!!」

 

 どこにいたかって?

 女子階にいたよ。

シズナ登場させてヒロインにしてももよき?

  • よいよい
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