サトノダイヤモンドの破天荒バレンタイン   作:tigris

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第1話

「はい、チョコどうぞ!」

 

「お、ありがとな」

 

本日は2月14日。世間的にはバレンタインデーに該当する日だ。

海外では性別はあまり関係ないことの方が多いイベントだが、日本は別。女の子が意中の男の子に好意の証としてチョコ及びお菓子を渡す日、というのが一般的な認識だろう。

昨今ではあげるものによって意味がいろいろあったりとやや複雑化しているが、それでも女の子が想いを伝えるために奮闘し、それを期待する男の子がソワソワするというのは変わっていないはずだ。

まあ、俺にとってはそこまで特別な日でもない。

 

「あ、トレーナーさん、この間はありがとうございました。これどうぞ」

 

「おお、ありがと」

 

「私も私も~! はい、トレーナーさん」

 

「はい、ありがと」

 

「シュートっ!」

 

「おい投げんなって!」

 

「どうぞ~」

 

「はいどうも~」

 

と、こんな感じでトレセン学園では毎年結構な数のチョコなりお菓子なりを貰えるのだ。勿論これは俺だけに限らず、男女問わずほとんどのトレーナーがこういう状態。ウマ娘たちによほど壊滅的に嫌われているとかでなければ誰でもこうなる。

俺も学生時代は毎年毎年無駄にソワソワしたものだが、今ではいい歳のおっさん。そしてこれだけの個数を毎年貰っていれば、流石に慣れてくるというものだ。

 

「ふぅ、結構もらったな。2、4、6、8…………」

 

トレーナー室へと到着し、数を確認する。ここでちゃんと確認しておかないと、お返しをするホワイトデーでかなり厄介なことになるからだ。

別に担当のウマ娘でなければそこまで気を使う必要もないのかもしれないが、そこは俺個人の信用というか、性格の問題だ。担当でないからといって全く関わらないわけではないし、せっかくの好意を無下にしたくない。

と、それっぽいことを考えてはいるが、実際のところ俺に対してしっかりとしたお菓子をくれるのは担当の子たちだけなので、他の子には俺の好きなカントリーマアムを返すことにしている。というかトレセン学園内でも俺のカントリーマアム好きは有名なので、大半は不満がることもない。毎年そうしている。

ただ残念なのが、そのカントリーマアムが年々小さくなっていることだ。しょっちゅう買っていると気付きにくいのだが、この前テレビの特集でサイズの変化を見た時はかなりの衝撃を受けた。

子供の頃からあんなに小さくなっているとは思わなかった。成長によって身体が大きくなったものだとばかり考えていたが、カントリーマアム自体のサイズもかなり小さくなっていたのだ。

 

「一個に一枚じゃ釣り合わんかもしれんな…………」

 

無意識にそうつぶやいていた。

最近のお菓子は小洒落ているので、小さくとも結構質が良い。一方カントリーマアムと言えば安さも売りなため、どうしてもイメージは庶民的になる。

4種類のチョコが重なってどうこうとか、こだわりの焼き方で美味しさがアップとか、不思議触感が病みつきだとかいうキラキラした現代的なお菓子に対してカントリーマアムを返すのはいかがなものなのかと考えてしまう。

が、

 

「まいっか、そんときになってから考えれば」

 

俺は楽観的にそう考えることにした。

とりあえず個数と貰った子の名前はしっかり覚えようと決め、2月14日の一日がスタートしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナーさん! おはようございます」

 

「お、ダイヤ。おはよう」

 

まだ始業前のトレーナー室。本日一番最初に遭遇した担当ウマ娘はサトノダイヤモンド。

うちのチームの中では比較的新しく加入した子で、その性格は天然交じりのお嬢様といったところ。

というか彼女の実家であるところのサトノ家率いるサトノグループは巨大企業な為、彼女自身は本当にお嬢様である。

 

「本日はバレンタインデーですね!」

 

「ああ、そうだね」

 

と、ここで俺は『もしかしてダイヤもお菓子くれるの?』と続けそうになった。しかしすんでのところで言葉を飲み込んで踏みとどまった。

少し違和感を感じたからだ。

些細なことかもしれないが、もし何かしらお菓子をくれる気があるなら手に持つか、ポケットなどに入れておくだろう。しかし見たところダイヤにその様子はない。

それに『ハッピーバレンタイン』ではなく『バレンタインデーですね』と、確認をするかのような言葉。下手に貰うことを期待して恥をかくのは避けたかったのだ。

するとダイヤは予想通り何も渡してこようとはせず、普通に話しかけてきた。

 

「あ、あのトレーナーさん!」

 

「ん? なに?」

 

「そこにおいてあるお菓子は、今日トレーナーさんが貰ったものですか?」

 

「あ、これ? そうだよ。今日ここに来るまでの間に結構知ってる子に会ってね。その子たちに貰ったんだ」

 

「凄いですね、もうこんなに…………」

 

「まあ所謂友チョコみたいなやつ? トレーニング見てあげたりとかちょっとした相談付き合ったりとかは、担当の子じゃなくても結構してるから、そのおかげかな」

 

ダイヤはしばらく俺の戦利品たるお菓子の数々を眺めていたが、しばらくすると俺に向き直り、口を開いた。

 

「あの、トレーナーさん……実は……」

 

「ん?」

 

「実は今日、私もトレーナーさんにお菓子を渡すつもりだったんです。でも、結局決められなくて…………」

 

「決められなかったの? 別に俺は何貰っても嬉しいけど……」

 

「いえ、それじゃダメなんです!」

 

少し大きな声でそう言い返してきた。一体どういうことなのだろうか。

 

「トレーナーさんは、他のチームメンバーの皆さんからもお菓子を貰うんですよね?」

 

「いやまあ、貰うというか、確定してるわけじゃないよ? 俺から催促してるわけじゃないし、皆次第ではあるよ」

 

「でも、毎年貰ってるんですよね?」

 

「うーん……そうだね。貰ってるね」

 

「では今年ももらえる可能性が高いということですよね?」

 

「そうなる……のかな? あんまり己惚れるというか、驕るのは好きじゃないから断定はしないけど」

 

元々モテるわけではないので、未だに予防線は張ってしまう。

重要なことでならまだしも、バレンタインデーというイベントに期待しすぎて恥ずかしい思いをするのは大人になっても嫌なものだ。

というかダイヤは一体何を確認したいのだろうか。まるで俺が他の子からもらっているお菓子が気になっているような口ぶりだ。

 

「私はトレーナーさんにいつもお世話になっています。こまめに感謝を伝えるようにはしているつもりですが、こういったイベントの際にはより一層の想いをしっかりと伝えたいんです」

 

「もう直接そう言ってくれてる時点でだいぶ嬉しいよ。ありがとうね」

 

「いえ、言葉だけではダメなんです! しっかりと私自身も納得する形でトレーナーさんに贈るものを選びたいんです!」

 

「まあ、そういうことなら……」

 

本人が納得したほうがいいだろうし、俺は貰えるならいくら遅れても困りはしない。

中途半端に悩んだままになるぐらいなら、しっかりと結論を出してくれた方がこちらとしてもありがたい。

 

「ですので、これからチームメンバーの皆さんがトレーナーさんに贈るものを見て参考にして、私の贈り物を決めたいと思うんです!」

 

「お、おう。わかったよ」

 

ということで、今日一日はダイヤが授業以外の時間は俺にくっつくことになった。

なんだか少し変な方向へと話が進んでいる気がしているのは、俺だけだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、トレーナーさん! おはようございます!」

 

「お、ライアンか、おはよう!」

 

ダイヤに続いてトレーナー室にやってきたのは、メジロライアンだった。

名門メジロ家生まれのお嬢様でありながら、ストイックに筋肉を探求するマッスルガール。筋トレの知識を生かしてトレーニングの相談を受けたり、その容姿と肉体美から多くの他生徒を虜にしたりなど、何かと話題に上がることの多いウマ娘でもある。

 

「あ、ダイヤちゃんもいるんだね、おはよう!」

 

「おはようございます、ライアンさん!」

 

この二人はお嬢様つながりで交流があったりするらしい。詳しいことは聞いていないが、メジロもサトノもウマ娘界では有名なので、色々繋がりがあるのだろう。

 

「ああそうだ、トレーナーさん、これどうぞ!」

 

「お、ありがとうこれは……プロテインのセットか!」

 

快活な笑顔と共に差し出されたのはライアン一押しのプロテインパックのセットだった。

少し意外な選択だと思う。これまでの年はもっと乙女チックなものだったからだ。

 

「いちごにチョコ……こっちはグレープフルーツか、いいバリエーションじゃない」

 

「トレーナーさんこの間欲しいって言ってたので」

 

「ああ、覚えててくれたのか、ありがとうな」

 

「いえいえ、これぐらいなんてことないですよ」

 

「でもちょっと意外だったな。俺が担当になってから初めての年なんて、恥ずかしさで真っ赤になりながら手作りチョコくれたのに」

 

「!!!!!!」

 

俺がそう言った瞬間に再現するかのようにライアンの顔が真っ赤になった。事情を知らないダイヤはその様子を不思議そうに眺める。

 

「ちょちょちょトレーナーさん! なんで今言うんですか! ダイヤちゃんいるのに!」

 

「なんでって言われてもなぁ、ダイヤはライアンのことわかってると思うぞ?」

 

「えっ?」

 

「えーと、何のことでしょう?」

 

いきなり話を振られてキョトンとするダイヤ。そこで俺が『ライアンのイメージ言ってみて』と付け加える。

 

「ライアンさんは……一見するとトレーニングに余念がないストイックな方に見えますけど、実際には可愛い物が大好きで漫画やドラマなどの趣味も恋愛ものが……」

 

「わー!!! わー!!! もうそれ以上いいから! やめて!!!」

 

羞恥心で限界になっているであろうライアンからストップコールが入る。ダイヤはまたしてもキョトンとしていた。

 

「私は素敵だと思いますよ! 私も可愛い物が大好きですし!」

 

「いや、それはその……ダイヤちゃんは可愛いし……そういうのが似合うし……」

 

「ライアンさんも可愛いじゃないですか! 似合うとも思いますよ!」

 

「ううぅ…………トレーナーさーん!!!」

 

「はははっ、相変わらずだなぁ」

 

俺に助け舟を求めてきたライアンが面白かったので思わず笑ってしまった。

とはいえライアンにとってはコンプレックスでもあるので、あまりふざけすぎるのはかわいそうだ。

俺はダイヤにライアンのもろもろの事情を説明し、またライアンにもダイヤのことを説明した。

 

「なるほど、プレゼントに迷ってしまったと」

 

「はい。悩んでいるうちに当日が来てしまって……」

 

「俺は何でも嬉しいとは言ったんだけどね、納得いくものを選ぶっていうのは良いことだと思うから、今日一日考えたらってね」

 

「それなら私のプレゼントはあんまり参考にならないかもですね。バレンタインデーにプロテインは流石に……」

 

「いやいや、俺はめっちゃ嬉しいよ? ライアンらしいとも思うし」

 

「私もとても参考になりました! 自分と相手の共通して嬉しい物を贈るというのは基本的ですがとても大切なことだと思います」

 

「な?」

 

「そうですか……? それならよかったかな……?」

 

まだ恥ずかしいのか、少し自信なさげにそう言うライアン。その様子はなんとも乙女らしい。

と、そこでふと時計に目をやった俺はあることを思い出した。

 

「おっと、そう言えば俺生徒会の方に出しとく書類あるんだよ、ちょっと行ってくるわ」

 

「そうなんですか、わかりました」

 

「あ、私も付いて行きます!」

 

こうしてダイヤと二人生徒会室へと向かうことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

『どうぞ』

 

「失礼しまーす」

 

「なんだ、トレーナーではないか。おっと、ダイヤも一緒か」

 

そう言って俺たちを向かえたのは生徒会副会長のエアグルーヴ。彼女も俺の担当ウマ娘である。

 

「ほら、この前話してたこの書類届けに来たよ」

 

「ああそれか。すまないな、手間を掛けさせた」

 

「いやいやこれぐらいどうってことないよ。ルドルフは?」

 

「会長は今用事で出ておられる。そのまま出席するそうだから、これの確認は後でになるぞ」

 

「ああ、構わないよ。ところで、今日が何の日だか分かる?」

 

「む……なんだ藪から棒に…………」

 

俺が分かりやすくバレンタインデーのプレゼントを催促すると、エアグルーヴはため息をつきながらも察してくれたようで、紙袋を取り出した。

 

「お、やっぱ用意してくれてんのね、ありがとう」

 

「全く、催促などしなくとも渡すというのに、たわけが」

 

「ははは、ごめんって」

 

笑いながら誤魔化すと、急にエアグルーヴの表情が変わり不思議そうな顔になる。

視線の先に目をやると、ダイヤが熱心にメモを取っていた。

 

「あれ、ダイヤなにしてんの?」

 

「メモを取っています」

 

「メモ?」

 

「はい。皆さんからトレーナーさんにたいするプレゼントを参考にしようと思いまして」

 

「ああ、なるほど?」

 

思わずエアグルーヴと顔を見合わせてしまう。状況を把握できていない彼女は頭に疑問符を浮かべていた。

かいつまんでダイヤの状況を説明すると、エアグルーヴは納得したように視線を動かした。そしてダイヤへ声をかける。

 

「一つ良いか?」

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

「間違っても変なものを贈ってこいつを調子にのらせんようにな」

 

「は、はあ…………」

 

「ちょっと、こいつって…………これでもトレーナーだぜ? 俺さ」

 

「そんなことはわかっている! 貴様のことだからどうせ何を貰っても嬉しいなどと言ったのだろう?」

 

「うわマジか正解だよ」

 

「はぁ……やっぱりか。貴様がそうやって無駄に親切心を発揮するから贈る側も選ぶのに苦労するんだ」

 

「えー酷くないー? ○○店の高級和菓子じゃなきゃ受け取らない、みたいなのよりよっぽどいいだろ?」

 

「極端な例を持ってくるな。多少はそっちで方向性を示してくれた方が楽だという話をしてるんだ」

 

「へいへい」

 

「とまあこんな感じでこいつは適当だ。分かってると思うが考えすぎんようにな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

俺としてはやや不服ではあるものの、贈る側からすれば良い意見だったのだろう。

ダイヤはそこからいくつか質問をし、エアグルーヴが丁寧に答えていった。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「おっと、もうこんな時間か」

 

「そうだな。二人とも授業頑張ってな」

 

「ああ」「はい」

 

そうして始業の時間となったため、一旦解散。

俺は業間の休憩時間にはこれといってトレーナー室以外に行くことはないので、ダイヤが行動を共にするのは昼休みにしようということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……トレーナーさん…………」

 

「おっとカフェか、珍しいね昼食時に」

 

昼食を取ろうとやってきたカフェテリアで声を掛けてきたのはマンハッタンカフェ。黒いロングの髪が特徴的なミステリアスガールだ。

生徒会公認で古い理科準備室を私室化しているので、トレーニング以外で見かけることは少ないのだが、今日は違うようだ。

 

「トレーナーさん、今から一杯いかがでしょうか?」

 

「コーヒー? うん、勿論」

 

「いえ、コーヒーではないんです。今日はせっかくのバレンタインデーですし、ホッとチョコを用意してきました…………」

 

「おお、いいねホットチョコ。俺甘党だからめっちゃ好きよ」

 

ということでカフェがホットチョコを御馳走してくれるということで、遠慮なく頂きに行くことに。

ダイヤの事情も説明し、了承もしてもらえた。

 

「お邪魔しまーす」

 

「どうぞ、ごゆっくり」

 

「わぁ~凄いです! 私ここに来るの初めてです!」

 

俺は旧理科準備室に以前も来たことがあったが、ダイヤは初めてだったようで、キラキラとを輝かせながらあちこち見て回っている。

 

「あれ? そういやタキオンは?」

 

「彼女はいません。トレーナーの方に薬入りのチョコを渡すと張り切っていましたから」

 

「ああ、なるほどね」

 

元々カフェ個人の部屋として使われていた旧理科準備室だったが、現在はアグネスタキオンの研究室も併設されている。

タキオンをお目付け役としてカフェが選ばれた形だ。

 

「あいつも大変だよな~さっき見た時はまだ光ってなかったけど、この分じゃ帰りはピッカピカかもな」

 

「そうですね、タキオンさんにも少しは遠慮して欲しいものですが。はい、どうぞ」

 

「お、ありがとね」

 

あらかじめ準備されていたこともあり、少し雑談している間にホットチョコを出してもらえた。

早速一口味わってみる。

 

「うわーすげぇ~あまーい」

 

「ど、どうでしょうか……?」

 

「いや美味いこれ。甘くて美味しいくて最高だ~」

 

「ふふっ、それは良かったです」

 

俺の反応を見て、満足そうに笑みを浮かべるカフェ。

カフェのことをよく知らずに不気味がる子も少なくないのだが、今のこの笑顔を見たら多くの者が印象を改めることだろう。

 

「ダイヤさんはどうでしたか?」

 

「はい! すっごく美味しかったです! ありがとうございます!」

 

「それは良かったです。どうでしょう? 何かヒントにはなりましたか?」

 

「うーんそうですねぇ…………私にはこういった発想はなかったので、ただただ感心するばかりで。こういった形の贈り物もあるのだなと」

 

「とても熱心なんですね。良いことだと思います。私は的確なアドバイスができるような者ではありませんが、気持ちを大切にしているのが伝わってくるので、最終的に何を選んでも間違うことはないかと思います」

 

「気持ち……ですか?」

 

「はい。コーヒーも同じなんです。豆の引き方一つとっても様々な方法がありますが、時としてそういった方法よりも気持ちの大きさが、コーヒー一杯の美味しさを大きく左右することがあるんです」

 

「なるほど…………」

 

「贈り物を選ぶというのは難しいことだとは思いますが、ぜひ頑張ってください」

 

「はい! ご丁寧にありがとうございました!」

 

そんな二人のやり取りを見ていた俺はカフェの言葉に感心するばかりだった。

想いの大きさや大切さは言わずもがなだろうが、それをただ普通に言ったところでなかなか飲み込んではもらえないものだ。

 

(ホワイトデーは何か料理でも作って返してあげようかね?)

 

そんなことを考えたりしながらしばらく過ごし、最後にはカフェにもう一度しっかりと礼を言って俺たちは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も数人の担当ウマ娘と遭遇しアドバイスをもらったダイヤだったが、どうも決めきるには至らないらしかった。

するとやや厄介な相手と遭遇。

 

「ようトレーナー! 元気知ってか~? 今日の波はしけちゃいねーよなー?」

 

表れたのはゴールドシップ。トレセン学園一位二位を争うほどの問題児だ。

バレンタインデーには毎年律義に何かしらをくれるのだが、あまりにも常識をぶち破って来るので予想はできない。

今年は一体何を用意してきたのか、期待と不安が入り交じる。

 

「ほれ、トレーナー」

 

「お、なんだ? 虫型のチョコか?」

 

ゴルシが手に持っていたのはどう見ても虫にしか見えない虫だった。そう、虫だったのだ。

あまりにも自然に渡そうとしてくるので思わず乗っかってしまったが、これは間違いなく虫だ。断じてチョコではない。

普通であればここは虫型チョコでドッキリという場面なのだろうが、何とトチ狂ったのかゴルシは本物の虫を持ってきたようだ。

虫独特の臭いとピクピクとしたわずかな動きで完全に分かったが、どうやらゴルシは俺が本物の虫だと見抜くことも計算済みらしい。その上で俺の困った顔を見たいのだろう。意地の悪い笑みを浮かべている。

 

「さあさあトレーナー、あたしからのバレンタインプレゼントだ。遠慮なく食えよ」

 

ニヤニヤと笑いながらそう言うゴルシ。カブトムシやムカデ、イナゴ、図鑑でしか見たことないテイオウムカシヤマなど、バリエーションが豊富だ。

というかテイオウムカシヤンマはオーストラリア辺りに生息しているはずなのだが、どこから持ってきたのだろうか。

 

「んじゃ遠慮なく」

 

なんとなく意地悪に意地悪で対抗したくなった俺は、ひょいとイナゴを掴んで、

 

「あむっ」

 

「?!?!」

 

口の中へとイナゴを放り込んだ。

 

「ちょっ! おまっ! 何くってんだ?!?!?」

 

「ん? なにっへ、おあえのふええんほあぞ?」

 

「ほんとに食うやつがあるか!!!」

 

予想通りゴルシは慌てだした。

俺の口の中では生のイナゴの奇妙すぎる食感と、形容しがたいまずい味が広がっているが、ゴルシに一泡吹かせられるなら安いもんだ。

と思いはしたものの、イナゴの佃煮などよく食べられているから大丈夫だろうとイナゴを選んだが、この感じだと二度と調理前のものを食べたくはない。

 

「んっ…………う゛んっ! あーやっと飲み込めたわ。やっぱり生はまずいな」

 

「お前バカだろ! お前バカだろ!! お前バカだろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「いや、そんな三回も言わんでも。食えって言ったのお前だし」

 

「だからって…………ああもう! 私がわるかったよ! すいませんでした!!!」

 

焦りのせいか普通に謝ってきた。なんだか新鮮で面白い。

 

「いやー硬くてトゲトゲしてるから噛むのも飲むのも一苦労だね」

 

「ほんとに食うなんて…………」

 

俺はごく普通に正直な感想を言ったつもりだったのだが、ゴルシには相当堪えたらしい。小声になり、ぶつぶつと何かしゃべっていた。

 

「なるほど……ゴルシさんは虫チョコと……」

 

そしてダイヤは何やら熱心にメモを取っている。どうやらゴルシの持ってきた虫を虫型のチョコと勘違いしているようだ。

ゴルシと俺のリアクションを見ても疑わないところが若干心配ではあるが、完全にチョコと思っているようならそれはそれで問題ないだろう。

 

「おし、じゃあ次行くか」

 

「はい! ゴルシさん! ありがとうございました!」

 

「お、おう…………」

 

未だ放心中のゴルシにそう言って、俺たちは次なる担当の元へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いたいた。トレーナー!」

 

「お、シチーか」

 

ゴルシのすぐ後に会ったのは、もう一人のゴルシことゴールドシチー。

もっともうちのチームではゴールドシップのことをゴルシ、ゴールドシチーのことはシチーと呼んでいるので、呼び間違えたりはない。

シチーは俺のことを探していたようで、素早く駆け寄ってきた。一緒にいるダイヤのことが気になったようだったので、軽く説明を挟む。

 

「んで、なんかあったの?」

 

「もー、分かってるくせに。はいこれ」

 

俺の茶番を一蹴すると、シチーは綺麗にラッピングされた長方形の箱らしきものを差し出した。

 

「何これ?」

 

「とぼけすぎだって! さっきも他の子からもらってるの見たんだから! わかってるでしょ?」

 

「ははは、ごめんごめん。ありがとうな」

 

小ボケを続けようとした俺を一括し、やや怒りながらもシチーはプレゼントをくれた。

中身は何だろうと思ったが、ふと俺の知っているものだと気付きシチーに尋ねる。

 

「これこの前の店の?」

 

「え嘘、なんでわかったの?」

 

「あの店のチョコたまに買うんだよ。これトリュフチョコのやつだよね? 8個入ってるやつ」

 

「もしかして他の子と被ってた?」

 

「いや? 最後に買ったのもそうだったからなんとなく」

 

「なんだ~買ったことあったのか……ちょっとショック」

 

「いやいや、俺これめっちゃ好きだからありがたいよ。マジで嬉しい」

 

「ホントに?」

 

「うん。その最後に買ったっていうのも半年以上前だし。久しぶりに食べれるの嬉しいよ」

 

「そっか、よかった」

 

中身は俺の好きな某有名店のトリュフチョコ。俺の『買ったことある』という発言に少しだけ残念そうな表情を見せたが、好物であることを伝えるとすぐに笑顔に戻った。

チラリと横を見ると、またしてもダイヤが細かくメモを取っている。その様子にシチーが声をかける。

 

「何メモってんの?」

 

「参考になることばかりなので、メモを取っています」

 

「参考?」

 

「はい!」

 

「?」

 

シチーはそれ以上突っ込まなかったので、そこで会話は終わってしまった。ダイヤが何を書いているのかは俺からは見えないので、やや気になりはする。

俺の好みであるトリュフチョコのこと、もしくはシチーのチョコを渡す仕草などだろうか。

 

「それじゃ、確かに渡したからね」

 

「今日は撮影だっけ?」

 

「そ、だから放課後になる前に渡せてよかった」

 

「わざわざありがとうな」

 

「気にしないで。その分ホワイトデー期待してるから」

 

「おう、任せとけ」

 

シチーも担当になって最初の年は変に恥ずかしがってツンデレみたいにぶっきらぼうに渡してきたものだが、今となってはそれも懐かしい。

シチーが廊下の角を曲がって見えなくなってから、俺たちは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も更に何人かと遭遇しいろんなものを貰ったが、それでもダイヤは決まらなかったらしい。

俺もどうしたものかと困っていると着信が入ったようで、少し席を外すと言われた。

 

「誰からだろ」

 

少しばかり気になったが、流石に詮索するのも違う。

俺はひとまず戦利品を置くためにも一旦トレーナー室へ戻ることに。

 

「よいしょっと…………いや~結構な量になったな今年も」

 

一口にバレンタインのプレゼントと言っても、それぞれの個性が出る。真面目な話、こういったウマ娘による違いというのは指導の際に役に立つこともある。

あくまで予想にはなるが、プレゼントの傾向から性格を予測して、いざという時に適切な対応が取れるように準備しておく。といったことができなくもない。

そういった意味でも、俺にとってのバレンタインは職業上大事な日であるのだ。

 

「ちゃんと覚えとかないとな~」

 

そんなことを呟きながら整理をしていると、ダイヤがトレーナー室に戻ってきた。

 

「お、戻ってきたのか。どうだ? 何かいい案思いついた?」

 

俺としてはかなり自然な問いかけだったのだが、何故だかダイヤはそれに答えなかった。

数秒経っても返事がないことに違和感を感じてダイヤの方を見てみると、いつの間にか俺の真横まで近付いてきていた。この距離で聞こえなかったなんてことはないだろうし、どうしたのだろうか。

 

「どした? 黙っちゃって」

 

「…………」

 

「おーい」

 

「…………」

 

何度か呼びかけてみるも返事を返してくれない。どうやら聞こえていないわけではないようで、視線は動いている。

 

「?」

 

よくわからずに固まってると、急にダイヤが動いた。

 

「えーい!」

 

「うわっちょっ!!」

 

一瞬何が起きたのか分からなかったが、どうやら俺はダイヤに押し倒されたようだった。近くのソファーに身体を倒され、ダイヤがウマ乗りになってくる。

 

「えーっと……ダイヤ?」

 

驚いて恐る恐るそう声を掛けるが、相変わらず返答はない。

ただよく見ればダイヤの顔は真っ赤で、押し倒したにも関わらず俺から目を逸らしている。

雰囲気的に何を聞いても返答してくれそうになかったので、俺もしばらくの間黙ってしまう。奇妙な沈黙が数分間続いた。

やがて意を決したのか口を開いたダイヤは、とんでもないことを口走った。

 

「私は今日一日トレーナーさんと一緒に過ごして、他の方々のいろんなプレゼントを見て、ずっと考えていました」

 

「お、おう」

 

「何が良いのか、何を贈ったら喜んでもらえるのか、そもそも私は何のためにトレーナーさんにプレゼントをしようとしているのか」

 

「目的……ってこと?」

 

「はい。でもそれはトレーナーさんに言葉ではなく貰ったプレゼントを通して感じて欲しくて」

 

「えーっと……それはどういう…………」

 

「ト……、ト、トレーナーさんにお菓子ではなく『おかし』をプレゼントします!!!」

 

「はいいいいいいいいいいいいいい?!??!?!」

 

あまりにも突拍子もない発言に、俺は脳が爆発するかと思った。理解がなかなか追い付かない。

どう考えてもまともじゃない。恐らく悩みすぎて疲れているのだろう。それがきっと変な方向にはじけてしまったのだ。

ウマ乗りになられているこの状況、明らかに正気ではないダイヤの様子、そして今のセリフを総合して考えた結果、俺の脳内にある一文字が思い浮かんだ。ダイヤの言葉の意味も理解できる。

非常にまずい一文字だ。たぶん間違いない。そして恐らくダイヤ本人は意味こそ分かっているものの理解しきれていないのだろう。あるいは切羽詰まってまともな思考になっていないか。

でなければこんな強硬手段を取ってくることはないはずだ。

 

(なんでえええええええええええええ?! おかしってそういう意味いいいいいいいいいいいいいい?!?!)

 

つまりダイヤの目的というのは、俺への好意だけではなく、そういった先々のことも含めてのアプローチということなのだろうか。

あまりにもいろいろすっ飛ばしすぎていて自分の思考すらよくわからなくなっていく感じだった。

更には依然としてウマ乗りになられ身動きがしづらい状況になって焦り倒していた俺は、とにかく何とかしようと必死だった。

 

「ちょ、ちょっと待て! 誰に吹き込まれた! 一体誰に!」

 

「アタシだぜ~?」

 

一体いつからそこにいたのか、サッと物陰からゴルシが登場する。

先程の電話はゴルシからだったのだろう。変なことを話したに違いない。出なければダイヤはこんなことしない。

そして驚くべきことにゴルシが現れたというのに、ダイヤは気付いていないようだった。俺に視線が固定され、焦点が合っていない。

 

「なっ!? ゴルシ?!」

 

「さっきはよくもやってくたじゃんかよ~トレーナー? ちょっとした仕返しだぜ~?」

 

「おまっ! バカッ! 中等部の純粋な子に何吹き込んでんだ!」

 

「大丈夫だって、詳しいことは教えてねぇからよぉ~。まあもっとも、うちのダイヤお嬢様は勉強熱心だからなぁ、自分で調べて知っちゃってたらアタシは責任取れないぜ~?」

 

「てめぇこの野郎!!!!!」

 

「まあせいぜい事案にならないように気をつけろよ~」

 

「おいいい!!! 待てってコラ! せめて止めてけ!」

 

「んじゃごゆっくり~」

 

「ふざけんなあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、たまたま近くを通りかかり俺の絶叫を聞いたカフェが様子を見に来てくれたため事態は沈静化。

何とか暴走状態になったダイヤを止めることにも成功した。

流石に度が過ぎていたので、ルドルフやエアグルーヴにたづなさんといった面々を含めたトレセン学園でも特に怖い精鋭に集まってもらい、ゴルシをとことん絞ってもらった。

正気に戻ったダイヤは自分のやろうとしていたことをとても恥ずかしがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後、トレーナー室にて。

 

「………………」

 

「………………」

 

(気まずすぎんだろ)

 

ダイヤは弁解を、俺は大人としての対応を求められているのだが、いかんせんダイヤが恥ずかしがりすぎて気まずいことこの上ない。

かれこれ30分はこんな無言状態が続いていた。

俺から切り出すべきか、それとももう少し心の整理が付くのを待ってあげるべきか。そう考えているとダイヤが口を開いた。

 

「先程は……その…………」

 

とても恥ずかしそうな、とてもか細い声。

普段の何事にも自身のあるサトノダイヤモンドからは想像もできないほどに小さい声だった。

 

「ご、ごめんなさい…………」

 

「いやいや、悪いのはゴルシだから。ダイヤは何も悪くないって」

 

「でも…………」

 

とりあえずテンプレのような言葉を返すが、それで納得してくれるはずもない。

ここはトレーナーとして、大人としての本領を発揮すべき時だ。

 

「まあ、ちょっと真面目な話をするとな? やや暴走しちゃったとはいえ、ダイヤが俺に対して好意を向けてくれているんだっていうのは十分すぎるぐらいに伝わったよ」

 

「うぅ…………」

 

「凄い嬉しかったし、正直答えてあげたかったっていう気持ちもあるんだ。勿論今は答えてあげられないし、少なくとも俺がダイヤのトレーナーである間は答えてあげられないんだけどね」

 

「そう……ですよね…………」

 

「でも俺はね、別に恥ずかしがるような事でもないと思ってるんだ。汚い話かもしれないけど、大人になったらそういう関係ができることもある。好きっていう感情を最大限に表すためにそういう手段を取ることもある」

 

生物の根本的な部分である以上、いつかは向き合うことになる。子供に触れて欲しくないのは、子供では解決できない問題に発展する可能性が高いから。

しかしいずれは絶対に知らなければならないことでもある。

 

「今は恥ずかしいって思っていい。やっちゃいけないって感じることも間違ってない。でも、なんていうのかな…………良くないことだとは思わないで欲しいかな。俺の立場上決して肯定はできないんだけど、そこまで悲観する必要もないというか、いずれは誰しもが通る道というか、とにかく、変に気負いすぎないで欲しいんだ」

 

「で、でも…………」

 

「俺はダイヤに対してこれからも今まで通り変わらず接するし、俺に対してもそうして欲しい。俺は気にしないし、態度を変えることもないよ。もし少し変わった関係を望むのであれば、それは大人になるまで我慢して欲しいかな」

 

余計なことも言っているかもしれない。だがトレーナーという枠組みから多少外れることになったとしても、俺の言うべきことはしっかりと言うつもりだ。

それがトレーナー、ひいては指導者としての役目だと思っているから。

 

「まあ羞恥心っていうのは結構強烈だから、そう簡単に今まで通りに戻ったりはできないかもしれないけどさ。少なくとも俺はこの先どれだけ恥ずかしいことをしても、ダイヤのことを変な目で見たりとか、軽蔑したりとか、マイナスに捉えたりはしないよ。ダイヤが俺の担当として、チームメンバーとしていてくれるなら、俺は全力でダイヤのことをサポートするからさ」

 

「トレーナーさん…………」

 

「それだけ。あとお菓子に関しては何でも大丈夫」

 

「え?」

 

「もう十分すぎるぐらいにダイヤの想いは受け取ったからね。ものは俺の好みとか、周りの子があげてるからとかじゃなくて、ダイヤがこれだって思うものが一番嬉しいよ」

 

「そう……ですか? 本当に……そうですか?」

 

「勿論。むしろ俺のために色々と考えてくれてありがとな」

 

「っ!」

 

俺の言葉にダイヤは顔を覆ってしまった。

照れているのだろう。手の隙間から見える顔は真っ赤だ。

 

「んじゃ、今日はもう帰りなね。時間も遅いし、寮長心配しちゃうからさ」

 

「はい! わかりました!」

 

「もし何かくれるならいつでも待ってるよ。バレンタインデーじゃなくてもね」

 

「はい!」

 

最後に嬉しそうに返事を返してくれたダイヤはそのままトレーナー室を後にした。

チラリと見えた表情は、嬉しそうな恥ずかしそうな、女の子特有の可愛い顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後、俺の自宅に一件の大荷物が届いた。

板状のそれは一見すると木材のようであったが、木材にしては薄すぎる。しかも梱包を貫通するほどの甘いにおいを漂わせていた。

開けずとも受け取った時点でなんとなく中身が分かってはいたが、俺は開封して確認した。

 

「はははっ、やっぱりサトノのお嬢様はスケールが違うねぇ…………」

 

中身は予想通り特注の巨大板チョコ。しかもこのサイズは一般客が注文できる上限を超えている。

差出人はもちろんサトノダイヤモンド。中にはメッセージカードも同封されていた。

 

トレーナーさんへ

 

少し遅れましたがハッピーバレンタインです! トレーナーさん!

あれから私なりにいろいろ考えてみました。

トレーナーさんは何でも喜んでくれそうでしたし、普通のものでいいかなとも思いました

けど、せっかくならトレーナーさんに喜んでもらいたかったのと、私の恥ずかしいことを消し飛ばせるぐらいインパクトのあるものが良いと思ったんです!

ですので、特注で作ってもらいました。この大きさは、私の想いの大きさです!

 

サトノダイヤモンド

 

「全く……一人でこの量食いきれねぇっての…………」

 

ため息をつきながら俺はそういった。

しかし自然と俺の口角は上がってしまう。

 

「しばらくはチョコ尽くしかな?」

 

これだけのチョコをどうしようかと困りながらも、俺は自然と笑みをこぼしていた。

担当ウマ娘にこれだけ思ってもらえるとは、なんとトレーナー冥利に尽きることだろうか。

とりあえずと思い、角の辺りを少し折り取って食べてみることにした。

 

パキッ

 

心地よい音と共に、チョコが一かけら折れる。

そしてそのまま口の中へとその破片を放り込んだ。

 

「ふふっ、やっぱり甘いな……」

 

そんな当たり前のことを言いながら、俺は口の中に広がる甘みをいつまでも感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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