中川菜々と優木せつ菜、時々アクセントで俺   作:蒲鉾うどん

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よろしくお願いします!


3月


 

3月も中盤に差し掛かろうとしている頃。来年度から高校2年生になる俺、白浜祐介(しらはま ゆうすけ)と幼馴染で同級生の中川菜々は一緒にファミレスに来てた。彼女は生徒会長として、俺は野球部として忙しい日々を送っているのだが、今日はたまたま休みが重なったため一緒に出掛けていた。

 

「そういえばさ、俺と菜々って知り合ってどのくらいになったんだ?」

 

「ええっと、幼稚園からの付き合いなので多分13年くらいかと...急にどうしたんですか?」

 

「んー?まあそこまで深くは考えてないかな、ただ単純な興味。そういれば付き合い長いなーって思って」

 

「...嘘、緊張してますよね?」

 

「…やっぱり隠し事は分かっちゃう?」

 

「ええ、普段だと絶対に言わないので。何年の付き合いと思ってるんですか?」

 

「おそらく13年ほど、アニメだと600話分くらいかと」

 

「そう考えると...結構長い付き合いですね、私たち」

 

「そうだなぁ」

 

 そういって昔のことを思い返す。別に卒業するとか、どこかへ引っ越す、というのでもないのに。でもまあ、長い付き合いなのだから、偶には振り返ってもバチは当たらないだろう。

 

「昔からの付き合いといっても小学校では一回離れ離れになりましたけどね」

 

「お互いの家は道路を挟んでるってだけで数十秒で行き来できる距離なのに、丁度その道路が学区を決める線だったとは笑っちゃうよね」

 

「笑い事ではありません!おかげで私、最初は友達いなかったんですからね!」

 

「あーなんかそれ、母さんから聞いたことある。幼稚園の同学年はほぼみんな俺と一緒の学校に行ったからね。おかげで友達には不自由しなかったよ」

 

「くっ、こっちはどれだけ苦労したと...!」

 

「あ、でも家の前の道路のことなんだけど、交通事故は見たことないのは良いことなんだけどね。犬の糞を踏む人とか、間違えて犬を蹴っ飛ばして追い掛け回されたとか、道路工事中の看板に突っ込んでいったりとか・・・結構アグレッシブな人をよく見かけるんだよね。もしかして、菜々の力…?」

 

「んな!?そんなわけ・・・。...ふっふっふ、よくぞ気が付きましたね。あれは私、せつ菜のマジカルパワーなのです!」

 

「なんだと!?あの大魔導士せつ菜がついに動き出したってことか!これはやばい!?」

 

「今更気づいても遅いです!すべてを灰にしてくれましょう!せつ菜☆スカーレットストーム!!!」

 

「や、やめてくれー!!!」

 

 

・・・閑話休題・・・

 

 

「...コホン、ええっと、一体何の話をしていましたっけ?」

 

「菜々の部屋が汚くてどうしようもないねって話」

 

「嘘をつかないでください!」

 

「まあまあまあ」

 

 そう言ってぷりぷりと怒るがなんだかんだでノリが良い菜々。緊張、というかソワソワしている俺に多分気を使ってくれてると思うけど、素直にその優しさが嬉しかった。そうしながらダラダラと話していたが、キリがいいところで彼女が今日の本題を切り出した。

 

「...いよいよ来週ですね。全国大会。やはり今までとは違いますか?」

 

「まあね、やっぱ甲子園は別格だと思うよ」

 

「来週のは『春のセンバツ』?と呼ぶみたいですけど、祐介は何かに選ばれたんですか?」

 

「えっとねー、普通、スポーツの全国大会って、各県で何試合も勝ち抜いてきた強いチームが出れるじゃん?けど春のセンバツはちょっと違くてさ。実は半年前の秋にも公式戦があったんだけど、その成績を基に偉い人が出場校を決めるんだ。だからまあスマブラみたいなもんだ」

 

「スマブラってそんな適当な...、でも虹ヶ咲も選ばれたということは強いのでは?」

 

「まあ弱くはないけど全国レベルって感じじゃないよ。俺たちは21世紀枠で選ばれた」

 

「21世紀枠...?」

 

 彼女は何だそれ?という顔をしている。そりゃそうだよなぁ。普通全国大会は勝ったチームが出るもんだ。

 

「そう、基本的にセンバツは秋の大会で勝った強いところが選ばれるんだけど、その他にも出れる方法がある。それが21世紀枠。これは野球の強さだけではなくて、文武両道だったり、地域に貢献しているとかそういう野球以外の部分を見て決められる。あんま詳しい基準は分からないけど、要は俺たちは完全な実力だけで選ばれたってわけじゃないというわけ」

 

「別にそんな卑下しなくとも...」

 

「ああごめん、別に卑下してるわけじゃないんだ。ただ、実力で選ばれた高校と21世紀枠で選ばれた高校を比べるとやっぱり力の差っていうのがあるわけで。だからそいつらに勝つのは中々難しいし、なんならフルボッコにされることだってある。それ考えるとなー...」

 

「怖いんですか?」

 

「...今日の菜々、結構厳しいね。まあ、うん。結構怖いかな。来週投げるの俺だし。考える時間が変にあるから嫌な想像がいくらでも出来ちゃう。ちょっとナイーブになってるね」

 

「そうですか」

 

 そこからしばらくお互い口を開かなかった。別にこんな暗い話をしたいわけじゃなかったのに、俺がいらんこと言ったから変な空気にさせてしまった。...話題を変えよう、そう思ったとき、菜々の口が開いた。

 

「羨ましいですね」

 

「え、俺の性格が?もしかして馬鹿にされてる?」

 

「あ、いや、そうではなくて、...本気になれることがあっていいなーって思ってしまって」

 

「本気?」

 

「ええ、だって最初から適当にやっていたら、全国なんていけないですし、そもそも負けたら嫌だな、なんて考えないでしょう?」

 

「それは、まあ、そうかも」

 

「それと、貴方は一つ勘違いしています」

 

「勘違い?」

 

「そうです、勘違いです。例え相手が強くて手も足も出なくても、最後まで諦めずに頑張ったのならそれはカッコいいことだと思いますよ。それも他ならぬ貴方がやったというのなら、多分感動して泣いてしまうと思います。それに...」

 

「それに?」

 

「始まったのなら貫くのみ、ですよ!」

 

「!!...それ、アニメのセリフ?」

 

「いえ、私が考えました。...変でした?」

 

「...いや全然。むしろ吹っ切れた。そっか、そうだよな。あとはもうやるだけだもんな...よし!」

 

 そう言って俺は勢いよく立ち上がる。それにびっくりした菜々は一瞬かわいい声を出したが、すぐに平静を取り繕った

 

「どうしたのですか?」

 

「ちょっと居ても立っても居られなったから練習してくる!お金は置いておくから!」

 

「えっちょっと!しかもこれ私の分も入ってるじゃないですか!」

 

「元気貰ったから奢る!会計だけよろしく!じゃ、また今度ね!」

 

 こうして俺は走ってグラウンドに向かった。今まで鬱々としていたのが噓のようだ。さあ、来週が楽しみだ。

 

 

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