中川菜々と優木せつ菜、時々アクセントで俺   作:蒲鉾うどん

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エマさん回の後の話のつもりです


③-1

 6月も半分が終えた。俺たち野球部は7月から始まる夏の甲子園予選に向けて張り切っていたが、ある事件が起きた。それは・・・

 

『応援歌重複問題』である。

 

 高校野球の公式戦というのは限定的だが、吹奏楽部が応援歌を演奏してくれて試合を盛り上げてくれる。その試合中に演奏する曲というのは毎年、事前に1人1つの応援歌を設定し、場面に合わせて流すことになっている。

 曲を設定と言っても吹奏楽部だって自分たちのコンクールがあるため、野球部側からは曲の指定は出来ない。吹奏楽部側が自分たちに負荷がかかりすぎないラインで曲をリストアップし、野球部側がその中から選ぶ、という流れが毎年の恒例であった。そしてリストアップされた曲も基本的には毎年同じであった。

 それでも毎年野球部のために演奏してくれる吹奏楽部には感謝しきれない。わざわざ時間を取って応援してくれる人や吹奏楽部がチョイスした曲に文句を言う奴なんて俺の周りにはいなかった。そして、毎年のように誰がどの曲を使うか話すのがこの時期の野球部のトレンドだった。

 今年も例年のように吹奏楽部からリストアップされた曲が送られてきた。みんな頭では例年と一緒と分かっているものの、それでも期待を込めながら一覧を読む。そこで冒頭でも挙げたような事件、というか揉め事が起こってしまったのだった。

 結論から言うと今年はスクールアイドル同好会の曲も選択肢に入っていた。そのため醜い争いが生まれてしまった。今人気絶頂期のスクールアイドル。しかも自分の学校の可愛い子が歌っているのだ。思春期男子は単純なため、当然自分の使用曲にしたくて揉めた。中にはこれをキッカケにお近づきになりたいと思うやつもいるだろう。本当に思考が男子高校生である。

 そして変にプライドが高いのも泥沼化させる原因でもあった。そのせいか、お互い誰かと応援歌が重複することを許さなかった。・・・他人事のように言っているが俺も重複は嫌だった。せつ菜の曲は渡すつもりはない。俗に言う厄介オタクというやつだ

 そして、1日では話が纏まらず、議題は次の日に持ち越されることになった。

 

「・・・疲れたぁ」

 

 夏に向けての最後の追い込み練習も疲れるのだが、やっぱり今日の問題も中々ヘビーだった。久しぶりに人の醜い部分を見たような気がする。完全に不毛な争いと言うやつだ。中にはプレゼンするやつも出てきた。みんなガチだ。今なら例年取り合いになるような人気な曲も簡単に自分のものに出来るのだが、ここまで来たからには引くに引けない。さて、どうやって勝ち取るか。そう考えていると後ろから呼び止める声がした。

 

「あれ?ゆーすけくん?」

 

 声の方向を向くとそこにはエマさんと朝香さんがいた。そういえばこの2人仲良しだったな。

 

「あ、お久しぶりです!お疲れ様っす!!」

 

「貴方が運動部の挨拶すると中々面白いわね」

 

「・・・朝香さんには言ってませんよ?」

 

「・・・貴方って本当にいい性格してるわ」

 

「おかげさまで」

 

「ちょっとちょっと!喧嘩は駄目だよぉ〜」

 

 エマさんが仲裁に入る。でもまあ、多分俺と朝香さんの距離感なんてそんなものだろう。朝香さんもニコニコしながらエマさんのお小言を聞いてるし。エマさんを横目に朝香さんが訪ねてくる。

 

「ところで・・・そんな浮かない顔してどうしたのかしら?」

 

「そんな浮かない顔してますか?・・・いやでも大したことではないので大丈夫です」

 

「うーん、でも、あんまり抱え込むと良くないよ?私たちでよければ相談に乗るよ?ねっ果林ちゃん!」

 

「ええそうね。可愛い『後輩』のためだもの」

 

 おっと、今の朝香さんの発言には先輩にはちゃんと敬意を払えって言ってるようにしか聞こえなかったぞ?俺が捻くれてるだけか?

 でも2人とも心配してくれているのも事実なようだ。ちょっと1人では抱えきれなさそうだし、話を聞いてもらうか。

 

「えっと、じゃあ、お言葉に甘えて。お願いします」

 

「うん!任せて!」

 

「でも話が長くなるかもしれないので何処か座れるところがいいんですけど・・・」

 

「あら、じゃあ私が美味しいご飯屋連れて行ってあげるわ。白浜くんと前約束したしね」

 

「あ、忘れてなかったんですね。意外です」

 

「・・・やっぱ白浜くんが生意気だから辞めようかしら。美味しいお寿司屋をご馳走してあげようと思ったのだけど」

 

「冗談ですって果林先輩!やだなぁ、僕と果林先輩の仲じゃないですか!ささ、早く行きましょ?あ、鞄持ちますよ?」

 

「ふふっそう?じゃあお願いしようかしら?エマも持って貰えば?」

 

「えっ!?それ私も行って大丈夫?」

 

「もちろんよ。お代は全部私が出すから心配しなくていいわよ?それにエマが居ないと嫌だわ。ね?祐介くん?」

 

「もちろんですとも。ささ、鞄持たせて貰いますね」

 

「なんていうか・・・これがジャパニーズ体育会系?」

 

 なんだかあらぬ誤解を持たせたが、そのうち解消すればいい。まずは寿司だ寿司。

 

「今日のコンディション的にホオジロザメ一匹分食いますよ俺?」

 

「ええ構わないわ。思う存分食べて頂戴ね。エマも値段気にしないで食べてね?スクールアイドルのきっかけをくれたお礼も込めてるんだから」

 

「・・・うん!じゃあ私もいっぱい食べるね!ありがとう!果林ちゃん!」

 

 こうして夜の街に消えていく3人。この後何もなかったわけがなく・・・(普通に寿司食って話して帰りました。後半へ続く)

 

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