「祐ちゃんボード、『にっこりん!』」
「・・・最近祐介が授業中スケッチブックに色々書いてるという話を多方面から聞くのですが・・・都度フォローする私のこと考えたことあります?」
「最近大会前で休みが無くてつい・・・ごめん」
昼休みにスクールアイドル同好会の部室に呼ばれた。2人で話したい、とのことだった。俺にとって同好会は、知っている人より知らない人のが多いため、基本的に行きたくない場所なのだが、今日は2人きりらしいので了承した。せっかくだから作った自作スケッチブックを持ち、部室へ行った。そして今に至る。
「ちなみに今日呼ばれた件はこのスケッチブックについてでしょうか?」
「ええ、そうですね。一体どういう状況なのか聞こうと思い、最初はその辺で聞こうとしていたのですが・・・もしかしたら、万が一深刻なことだったら申し訳ないので、他の人に来ないよう根回ししてから部室に来てもらいました。けど・・・」
「いやほんと、お手数おかけしました」
「全くです!スケッチブックに何か書くだけなら何も言いませんが、時と場合を考えてください!本当にもう!頑張ってフォローしていた私が馬鹿じゃないですか!」
「ちなみにどんなフォローを?」
「確か・・・『彼、最近筆を持って色々描けるようになって嬉しいんだと思います。そっとしてあげておいてください』って」
「本当にフォローする気あった?今まで生きていた中で一番の無礼なんだが?とりあえず腹切って詫びろ??」
どおりで最近温かい目で見られると思ったらそういうこと?俺は動物園のチンパンジーか。
「というか先生たち、あの生徒会長の中川菜々がまさか冗談を言うはずがないと思って真に受けている、みたいなことない?大丈夫?」
「たまに私に経過報告してくる方もいますよ?」
「明日から授業真面目に受けまーす」
どうやら先生たちは飼育員も兼ねているようだ。これだと通知表に何書かれるかわかったもんじゃないぞ。
「・・・ところで、そのスケッチブックの似顔絵、璃奈さんのですよね?どうして璃奈さんの真似を?」
「ファンになっちゃった」
「いやそれは見たら分かるんですけど」
「ファンになっちゃった。祐ちゃんボード、『ワクワク!』」
「やかましいですよ。少しは反省してください。」
そんなこと言ったって好きは隠せないものだ。ようやく菜々の忍耐力の凄さを理解したような気がする。
「練習が珍しく早く終わって、ちょっと買い物ついでに街をブラブラしようと思ったらさ、スクールアイドル同好会の子がこれからライブするって聞いたんだよね。せっかくだし行こうと思って、そしたら・・・」
「ドはまりしました?」
「ドはまりしちゃった。特にあの『璃奈ちゃんボード』がイカしてる。嘘か真か分からないけど風のうわさで、自分の表情をうまく表現できない璃奈さんが、諦めずに頑張ってどうにか表現しようとしたって逸話もある。最後までどうにかしようと自分なりに試行錯誤してるのがすごくいい。グッと来た。推しが出来た」
「完全に口調がオタクなんですよね」
「菜々も好きなアニメを話すときこんな感じだよ」
「・・・もしかして祐介の中のオタク像って私・・・?ということは今の祐介は鏡写しの私ってこと・・・!?・・・少しは自重しなければ」
「好きなことを話している菜々の表情結構好きだからそのままでいてね」
「貴方ってそういうところありますよね」
とまあ話しをしたついでに璃奈さんのことを教えて貰った。うーん、尊い。
「野球部辞めてスクールアイドル同好会の追っかけになろうかな」
「そこはせめてマネージャーとかではないのですか?」
「知らない人が作った輪の中に入るのって怖くないか?」
「変なところで現実的なんですね、貴方」
「実際怖くない?」
「・・・その輪を一回壊すところまで行きましたからね、私」
「あぁー」
トラウマを呼び起こしてしまったようだ。大変申し訳ない。もしかしたら今日は菜々に頭を下げ続ける日なのかもしれない。
「まあまあそれはさておき」
「切り替え早いのは良いことだ」
「璃奈さんに会ってみます?」
「そんな、恐れ多いですって。璃奈さんに会うだなんて」
「完全に言動がオタクのそれなんですよね。私ってそんなですか?・・・本当は?」
「めちゃくちゃ会って感想を言いたいです」
「よし、じゃあ呼んでみましょう!璃奈さんもファンが出来て喜んでくれると思いますよ?」
「本当に・・・?」
そうして菜々が携帯を取り出し、文字を打ち込む。・・・すぐに返信が来たようだ。
「あ、今日は難しいみたいですね」
「ほっとしたような、残念なような」
「また会う機会なんていくらでもありますよ。一応祐介が会いたがったと伝えておきますね」
「初対面の子にそんなの伝えてどうすんだ。璃奈さんに気を遣わせてしまうだろう」
「璃奈さん貴方のこと知ってますよ?春の野球の試合観てたって言ってましたし、猫を可愛がってるのも知ってますよ?」
「璃奈さんに認知されてんの?めちゃくちゃ嬉しいんだけど」
「あ、ついでに祐介が書いたスケッチブックの絵を写真に撮って送りましょう!ほら、スケッチブックを持ってそこに立って!」
「なんだか恐れ多いんだけど・・・どの絵にすればいいと思う?」
「意外とノリノリじゃないですか。・・・そうですねぇ、これとかはどうですか?」
「お、これは数学の時間に『新しい公式が思いついたんです!』ってゴリ押して描いたときの奴だぞ」
「・・・貴方も大概じゃありませんか。じゃあ撮りますよ。ハイチーズ」
こうして撮った写真を璃奈さんに送った。それからしばらくしてスマホの通知音が聞こえる。
「あ、返信来ましたね。それからしばらくえーっと・・・ふふふっ」
「どうしたのそんな笑って」
「ふふっほら、見てください」
「どらどら・・・何これ可愛いんだけど。いつもこんな感じの子なの?」
「茶目っ気はありますけど、いつもはこんな感じじゃないですよ?」
「家宝にするから写真送っておいて」
「了解です!」
そうして昼休みが終わりに近づいたため、解散した俺たち。なんだか今日は気分が良い。はんぺんと遊ぶときにでも会えるといいな。そんなことを考えながら久しぶりに授業を真面目に受けた。
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『璃奈さん!、今、お時間ありますか?』
『ごめんなさい。今クラスのお友達とご飯食べてる。何かあったの?』
『いえ、璃奈さんに会いたがっている人がいたので。でも大丈夫です!お友達の方を優先してくださいね!』
『うん、わかった。その人にごめんねって言っておいてほしい』
『分かりました!・・・あ、最後にこれだけ見て欲しいです!』
『?』
『祐ちゃんボード『応援!!!』』
『・・・すっごく嬉しい!』
『璃奈ちゃんボード『感謝感激!』』