「本当に帰って大丈夫なの?打ち上げとかは...?」
「大丈夫です!侑さんが実行委員会の後処理で今日これから忙しいみたいで。それにフェスも延長してしまったから補導される時間も近いんですよね。だから今日は解散して、後日皆で集まってパァーっと豪遊するつもりですから!」
「パァーっと豪遊って...ギャンブルに勝った奴が言うセリフなんだよなぁ」
スクールアイドルフェスティバルを終えた今、俺は菜々と一緒に帰っていた。昼過ぎから降り続いていた雨はフェスの終了時刻まで止むことはなく、危うくライブは大失敗になるところをなんとか学校側から許可が降り、どうにか最低限やりたいことはでき、伝えたいことは伝えられたようだ。
「そういえばなんですけど...なんで果林さんと祐介が一緒にテントに来たんです?」
「あぁ、迷子の先輩を拾ったから総合案内所まで連れてきただけだよ」
「...また迷っていたのですね。一応案内係を3人付けて貰ったのですが...」
「あそこまで行くともう個性だろ。もはやGPSつけるくらいしか方法はないんじゃ無い?本人のプライバシーは無くなるけど」
「うーん、悩みどころですねぇ」
島暮らしだから地図がいらないって言ってたけど、あの感じだと島でも迷子になっていたんじゃないか?頭の中に地図が書けなさそうだし。本人に言ったら怒りそうだけども。
そして話題的に丁度侑さんについて聞けそうなタイミングだったため聞くことにした。
「菜々」
「はい?なんでしょう?」
「侑さんに気持ちを伝えられた?」
「...あれ?なんでそのことを知ってるんです?」
「ん?.....あぁ、そうか。実は果林さんから色々聞いた」
「あ、そうなんですね。侑さんには...はい!伝わってると思います!フェスが終わってドタバタして、直接話は出来てないですけど、多分大丈夫だと思います!」
「それならよかったよ」
俺は夏休みにダラダラ過ごしてたけど、同好会の人達は全力で取り組んできた。炎天下の中必死に練習している姿を見ていたからよく知ってる。
そして、その練習は自分達のためだけではなく、一緒に頑張ってくれてる侑さんのためでもあった、と知ったらより一層応援したくなったし、フェスの成功を心から願った。
今日のあの雨で、一時はどうなるかと思ったけど、どうにか上手くことが運んでくれて本当に良かった。
「ええ、一時はどうなるかと思いましたが。本当に上手くいって良かったです!祐介もありがとうございました!」
「ん?いやいや、頑張ったのはパフォーマンスをした菜々達と裏方で頑張ってた侑さん達だよ。今回俺は関係ないよ」
「そんなことありません。最後のステージが延長で使えるようになった最後の一押しは祐介の存在だって聞いてますよ?」
「......えーっと」
どう答えようか考えた。大したことをやった訳ではないし、恩を売りたくてやったわけでもない。そんな話を拡散されても困るため、しらばっくれることにした。
「....知らないけど?」
「惚けても無駄ですよ?一応生徒会長なので、情報は色々入ってきますから。例えば、ステージの延長を嘆願した学校の有名人がいるとか、理事長は大の高校野球好きとか、他にも色々」
「急に脅してくるじゃん。何か恨まれるような事したっけ?」
珍しく菜々がグイグイ来る。ちょっとビックリしてる。
「いえ?でも、ちゃんと祐介の口から聞きたいんです。今日色々な場所で各々が歌って踊りましたけど、実際、最後の全体曲が1番気持ちが入ってました。もちろんどの曲も本気でやって楽しんでいましたが、最後の曲は同好会初の9人で歌う曲で、それを侑さんのために気持ちを込めて歌うつもりでしたから、気合の入り方がソロ曲とは違いました」
確かに、ソロアイドルとして活動するのがモットー同好会で、初めての9人での曲で、しかも侑さんのために歌うというのなら、そう言うのも無理はないだろう。それほど、この一曲に賭けていたという事だ。
菜々が話を続ける。
「けど、突然の雨でステージが中断されて、今日のスケジュールがどんどん中止になっていって。そして最終ステージの時間になっても雨が止まないってなった時思いました。『あぁ、今日のためにあれだけ準備したのに、無駄だったんだな』って」
あれだけ頑張ってたんだから、無駄なんてことはないのに。でも、あのまま終わったら流石に消化不良か。
話の腰を折らずに、黙って耳を傾ける。
「ステージが終わる時間になったら丁度雨が止んでより一層悔しくて、やり場のない怒りが込み上げてきた時、吉報が届きました。ステージ延長の許可が下りた、と。その時は嬉しくて何も疑問に思わなかったですけど、後々誰が延長の申請をしに行ったのかと疑問に思いました。そもそも予定していたフェスの終了時刻は各方面、最大限譲歩してあの時間になったのに、どうして延長できたのかって。とりあえずうちの副会長に話を聞いたら、申し訳なさそうに教えてくれました。『白浜さんが理事長に直談判していたみたいです。本人は誰にも言わないでくれって言ってましたけど、流石に会長には話さないといけないと思い話しました。他言無用でお願いしますね』って」
「よりにもよって話して欲しくない人に話しちゃったのかぁ」
「ええ、そうみたいですね。私にとっては聞けて良かったですけど。...祐介、話してくださいよ。多分、想像通りだとは思いますけど、ここまで知ったので、祐介の口から経緯を聞いて、ちゃんとお礼が言いたいんです。...駄目ですか?」
「......別に大したことをした訳じゃないし、恩を売りたくてやったわけじゃないんだけどなぁ」
「貴方にその気がなくても、今日の私達の恩人は貴方っていう事実は変わりません。それに、今日の恩人が何をしたのかを、人伝で聞いたことだけで消化したくないんです。ちゃんと聞いて、ちゃんとお礼がしたいです」
「.....そういうもん?」
「はい!」
ニッコニコの笑顔の彼女を見たら、なんだかどうでも良くなってきた。これ以上は誰にも話さないようにと釘を刺して今日のことを簡単に話すことにした。
「果林さんから、今日の最後の曲のことを聞いて、素直に応援したいと思ってさ。でも、天気予報的には怪しかったから、お願いするだけしてみようかなって思って。理事長室行った」
「......凄い行動力ですね」
「まあね。そんで、理事長室に行ったわけだけど、理事長ってかなりの高校野球ファンだったらしくてさ。1時間くらい話に付き合わされた」
「へぇ〜噂は本当だったんですね」
「『ガチ』だったぞ。それに自分の学校が甲子園に出たのがよっぽど嬉しかったみたいでさ。現地で甲子園を見るために自分のスケジュールをどうやってやり繰りしたかとか、俺たちが一回戦勝った時の事とか、事細か話してさ。野球部が甲子園行ったのは半年前だっていうのに。よっぽど嬉しかったみたい」
「あの理事長が意外ですね」
「それは俺も思った。そんで話の区切りがいいところで、頼んでみた。ステージの時間延長してくれないかって。そしたら二つ返事でオッケーしてくれた」
「え、二つ返事だったんですか?」
「そう。流石に拍子抜けしたけど、これだけ色々なところを巻き込んで開催したんだから、協力出来ることはやるべきって考えてたみたいでさ。雨が止まなかったら、片付けとかを考えて1時間くらいは延長するつもりだったみたい。だから、俺はただ理事長と野球の話をしただけ。本当になんもやってない。噂を流すなら理事長のことを広めてやってくれ」
「そうだったんですね」
マジであの理事長いい人だったなぁって思う。今度もう一回理事長室行こっと
お互い無言の時間が出来たが、程なくしてから菜々が話し始めた。
「それでも」
「うん」
「祐介が私達のために行動してくれたっていう事実は変わりません。誰に言われてやったわけでもない、祐介の意思で理事長にお願いしに行った事実が私はとても嬉しいです。祐介、ありがとうございました!」
「....そう言われると、何も言い返せないなぁ。どういたしまして」
なんとなく、俺がやらなくても良かったんじゃないかと思ったが、菜々の言葉で元気が出た。やっぱりいつも助けられてるなぁ。そうこうしているうちに菜々の家の前に着いた。
「じゃあ今日はこれでお疲れ様」
「ええ、祐介も。お疲れ様でした」
「おやすみなさい。ゆっくり休みなよ?」
「はい!祐介もおやすみなさい」
こうして家に着いて、流石に疲れた俺は、部屋でゆっくりしていたところ、一件のメッセージが来た。
「なんだ....菜々から。えーっとなになに...?」
『同好会の中でステージが延長したのは祐介が理事長を脅したからって噂が広まってるんですけど...どうしますか?」
スクショ付きの画像も一緒に送られてきた。なんだか、.....もうどうでもいいか。菜々にメッセージを送る
『知らね』
こうして俺はスマホをそっぽに投げ、寝ることにした。明日以降どうなるかわからないけど、どうにかなるでしょ。学校が始まる時、有名人という名称がどう変わるのか楽しみだね。じゃあ、おやすみ。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
多分まだ続けますが、いかんせん時間が無くなってしまったので、かなり不定期になってしまうので、一旦完結という形を取らせていただきます。
更新してたら読んでいただけたら幸いです。では