中川菜々と優木せつ菜、時々アクセントで俺   作:蒲鉾うどん

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タイトル忘れはひどい


①-2

「それで、何しているんだ。な・・・せつ菜」

 

 一瞬キリっと睨まれたがどうにか有耶無耶に。一回どっかで予定合わせてせつ菜モードの時にせつ菜と呼ぶ練習しとくべきだったと思ったが時すでに遅し。言い間違えないようにだけ気を付けよう。そう心に誓う。

 

「歌の練習で屋上に来たんです。そしたら貴方が寝ていて」

 

「ほうほう」

 

「でも貴方以外は誰もいなかったんで強行しました」

 

「俺が寝ているんだったら普通どっか場所移さない?」

 

「貴方ならどうせ起きないでしょうし、もし起こしても問題ないでしょう?」

 

「舐められてるのか喧嘩売られているのか。どのみち腸が煮えくり返りそうだよ」

 

 この野郎と心の中で悪態をつく。こっちは弱み握ってんだぞ、の顔をしてみるが全然伝わらない。今度練習しとこ。そう思っていると、エマさんが尋ねてきた。

 

「二人って仲が良いんだね。昔からのお友達なの?」

 

 どちらが話すかアイコンタクトを交わした。一瞬しか見ることが出来なかったが、せつ菜の目線が『私に任せてください!』と訴えかけているように見えた。よし、フォローは任せろ!そう思い、せつ菜の言葉を待った・・・が、彼女は一向に答える気配はなかった。話す内容を考えている様子はなく、どちらかと言えば俺が話すのを待っているような・・・結局時間だけが過ぎ、エマさんの問いに答えることは出来なかった。13年の付き合いでもアイコンタクトの意思疎通は無理だったようだ。

 

「そ・・・そこまで仲良くはなかったのかな・・・あはは」

 

 そう言ってエマさんは俺たちに気を遣ってくれた。流石にこのままだと申し訳なさが勝つため話題を変えることにした。

 

「まあ、ぼちぼちって感じです。エマさんと・・・彼方さんはなんでこんなところに?」

 

「せつ菜ちゃんを探しに来て、そしたら、屋上で楽しそうに歌ってたから私も一緒に歌ってたんだ。迷惑・・・だった?」

 

「うーん、寝てたのでその辺は分かりませんでしたよ?あんま気を悪くしないでください」

 

「そう?そう言ってもらえると助かるな!ありがとう、白浜祐介くん♪」

 

 感謝されるようなことはしてないと思うんだけどな。それから俺、フルネームで自己紹介したっけ?

 

「あ、なんでって顔してるね。それはね、君が有名人だからだよ~」

 

 有名人?そういえばさっきせつ菜にも言われたような気がする。なんか目立つようなことしたっけ。そう思ってると次はせつ菜が話し始めた。

 

「はあ、またなんでって顔してますね。寝ぼけているのですか?貴方、この前の大会で全国デビューしたじゃないですか」

 

「ああ、甲子園か。そんな有名になったの?俺」

 

「自覚ないのですか・・・。私のクラスでは新入生歓迎の話と貴方たち野球部のことで話が盛り上がってましたよ」

 

「あ、それ私のクラスでも」

 

「彼方ちゃんのクラスもだよ~」

 

いつの間にやら起きて話を聞いてた彼方さん。と思いきやすぐに入眠する。器用だな。・・・そんなことより思っていた以上に有名人になってたらしい。サインでも考えておくか。

 

「あまり浮かれないでくださいね。怪我しても知りませんから」

 

「辛辣だなぁ・・・そういえば、3年生のお二人とせつ菜はどういう繋がり?」

 

「?スクールアイドルの部員ですよ」

 

 せつ菜が当たり前じゃないですかと言わんばかりの口ぶりで話す

 

「・・・え?二人は3年生なんだよな?今から部活をはじめるってこと?」

 

「そうですよ?」

 

「凄い胆力・・・」

 

 引退とかすぐじゃない?とも思ったが、それは俺が野球部にずっと所属しているせいで3年生は夏に引退するものと思ってるからか。引退の期限を伸ばそうと思えば伸ばせる文化部はいつ引退してもいいのかもしれない。

 

「同好会の申請に必要な部員はあと1人?」

 

「ええ、しかも今2人ほど入部してくれそうな1年生もいます」

 

「あ、じゃあ俺の名前貸さなくてじゃん。良かった、変な噂される前で」

 

「まだ分かりませんよ?2人のうち片方の気が変わったらちゃんと貴方の名前借使わせてもらいますよ?」

 

「その2人が入ってくれるのを切に祈っとくよ」

 

俺とせつ菜の会話に疑問に思ったエマさんが尋ねてくる。

 

「名前を貸すって祐介くんもスクールアイドル同好会に入部するの?」

 

「いえ、違います。人数が足りなかった時は俺の名前だけ貸すって話を以前していただけです」

 

「・・・やっぱり仲良しなの?」

 

「いやいや、困ったときは名前を貸す仲ってだけですよ」

 

「それってジャパニーズ都合のいい男の子ってやつ・・・?」

 

「確かに。やば、せつ菜に使い捨てられる」

 

「そんなことするわけないじゃないですかっ!」

 

 そんなこんなで3人で話しこむ。そして、キリのいいとこでエマさんが彼方さんを起こした。どうやら彼女たちはこれから用があるらしい。彼方さんを引っ張りながらエマさんが屋上を後にして、ここには俺とせつ菜の二人になった。

 

「はあ、もう菜々でいい?」

 

「ええ、結構ハラハラしましたね」

 

「ほんとにそう。一回エマさんに感じ悪いときあったけどあれは反省だな」

 

「そうですね、エマさんに悪いことをしてしまいました」

 

「あの時何考えてた?」

 

「・・・貴方とのことについて何を話すかを考えていたのですが・・・何話してもボロが出てしまいそうだったので祐介がうまく話してくれないかなーと思っていました」

 

「それは・・・俺と一緒かも」

 

 どうしても俺とせつ菜じゃなくて、俺と中川菜々との関わり話しそうなのはなんとなく分かる。そもそもせつ菜と俺が、誰かとバッティングすることも想定もしてなかったし、しかもエマさんめちゃくちゃ話しやすかったから余計なことも話してしまいそうだった。それにしても態度はあんま良くなかった。

 

「なんかお詫びに和菓子でも渡しておこうか。割り勘ね」

 

「ええ、そうしましょう」

 

 夕暮れ空を背景に二人で反省会。なんだかんだで『優木せつ菜』と話すのはあの日、菜々の決意を聞いてから初めてだったものだから、ボロが出ないか気が気じゃなかった。

 

「それにしても、優木せつ菜と話すのは結構疲れたよ」

 

「・・・本当に申し訳ございません。・・・優木せつ菜の時は距離を置いたほうが置きましょうか・・・?」

 

「いや、あの二人に知られちゃったんだからそんなことしたら逆に怪しまれると思うよ?」

 

「それも・・・そうですね、では、その辺の設定は追々考えましょう」

 

「そうだなぁ」

 

「あ、例えばこういうのはどう・・・クシュン」

 

「大丈夫?」

 

「ええ大丈夫です。流石に肌寒くなってきましたね」

 

「学ラン着とく?」

 

「・・・いいんですか?一回着てみたかったんですよね。でも祐介が寒くなるのでは?」

 

「インナーとトレーナー着てるから全然余裕」

 

 日中は暖かかったが、流石にまだ4月の頭。暗くなるとまだまだ肌寒い。このまま屋上に居ても風邪をひいてしまうかもしれないし、さっさと帰ることにした。とりあえずお腹空いたから帰ったら飯食べよう

 

「あ、祐介のお母さんは今日私のお母さんと遊び行ってるので夜ご飯はフリーですよ」

 

「エスパー?」

 

「ふふふ、さあ?どうですかね。祐介は顔に書いてありますからね」

 

「・・・作るのは面倒だからどこかで弁当買って家で食べよう。うちでいい?」

 

「はい、構いませんよ。何食べましょうか」

 

 こうして二人で帰路に就く。無事、スクールアイドル同好会は設立できそうでよかった。ちなみに声をかけた新入生の男子は大体ワンダーフォーゲル部に流れていった。おのれワンダーフォーゲル部、許すまじ

 

 

 

 

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