4月も下旬。新しいクラスにもようやく慣れた。久しぶりの『先輩』としての立場は中々慣れないものの、新しい環境も結構楽しいものだ。昨年は自分が新入生だったため、新しい学校や部活動といった今までとは違う環境に慣れるので精いっぱいだったが、今回は1年生から2年生になっただけ。多少は環境の変化があり、まだ慣れない部分もあるがトータルで見たら結構楽しんでいた。
そして、最近その楽しいに拍車をかけているものがあった。猫である。それも真っ白の可愛い奴。可愛さに一目ぼれした俺は、暇さえあればそいつに会いに行くようになった。
今日は部活動勧誘以来の練習が休みの日。といっても休みが全然無いというわけではない。練習が休みの日も自主練という形で何かしら野球に関することをやっているため、厳密には久しぶりに体を休める日といったところだろうか。何はともあれ今日は猫を愛でに行くと決めていたのであった。
そんなこんなでわくわくしながら目的地へ向かう。目的地といってもに行くの虹ヶ咲学園の中庭なためすぐなのだが、待ちきれないという思いのせいか、気づいたら廊下を走っていた。走ったらすぐに生徒会長兼腐れ縁の聞きなれた声が聞こえた。
「そこの背の高い学ラン!止まりなさい!!」
「いや、停止のさせ方がお巡りさんなんよ」
思わず飛んでくるボケに突っ込まずにはいられないかったため一時停止。後ろから遅れて追いかけてくる彼女を待った。
「はあ、はあ、・・・ふう。スクールアイドルを始めたので体力もそこそこつき始めたような気がします」
「その割にはバテてない?」
「私にしてはです!体力お化けの貴方と一緒にしないでください!これから伸びるんですから!」
そう言いながら息を整える。確かに回復は早くなってるような気もするような?
「それで!・・・なんでしたっけ。えぇっと・・・」
「普通は校内を走るなって言わない?」
「あ、そうですよ!ということで、はい!」
そういって手の平をこちらに向ける。まるで何かを寄越せと言わんばかりに。
「犬の真似すればいいのか?」
「そんなわけないじゃないですか。罰金ですよ、罰金」
そう言いながらニコニコしている菜々。しかし、やっていることはカツアゲである。こういう時は白を切るに限る。
「いやぁ実は、生憎今日はお金持ってなくてですね」
「そうですか。では、ジャンプしてください」
「・・・菜々、昨日何観た?」
「昨日はそうですね。確か『劇録・警察密着24時!!』です。無免許で逃げるカツアゲ犯を警察が追い掛け回す回ですね」
「・・・なるほど~」
冗談なのか本気なのかたまに分からなくなることがある。多分疲れてるのだろう。
「実際にやってみたくなったの?」
「まあ、はい。こんなこと出来るの祐介くらいしかいないですからね。そしたら珍しく貴方がちょうど走ってたものでつい」
「本当にびっくりした。切符切られるかと思ったよ。冗談は勘弁してほしい」
「あ、罰金は冗談じゃないですよ?」
「マジ?月末は金欠よ?」
「そうですよね。知ってます。でしたら一緒に買い物付き合ってくれませんか?」
「当たり前のようにお財布事情知ってるじゃん。それに・・・本当の目的はこっちか?」
「さあ?」
「・・・アニメイトか?」
「・・・あそこの店、一人で行くの中々勇気がいるもので・・・」
どうやら図星だったようだ。そして駄目ですか?とさっきのまでの強気な態度とうって変わってしおらしい素振りでお願いしてくる。急にそんな態度をされたら断れないじゃないか。緩急上手いな。
「いいよ、いこっか」
「!!流石祐介。最高です!」
そう言って嬉しそうな態度を出す。尻尾が生えてたらきっとぶんぶん回しているような・・・あっ
「ん?どうしました?」
「いや、何で走っていたかを思い出した」
「あ、そういえばそうですね。なんで走ってたのですか?」
「んー、内緒」
「ここにきて内緒って酷くないですか?」
「さっきのお返しだよ」
さっさと白状しないと逮捕しますよー!と怒る彼女を横目に窓の外を見る。そこにはピンクの髪の子と金髪の髪の子が白猫と戯れていた。今日は先約がいたようだ。予約なしの早い者勝ちだけど、次は一番に会えるといいな。そう強く願いながらお店へ向かった。
「そういえば言いそびれてましたけど」
「ん?」
「ここの学校、ほとんどが女子生徒なので走ってきた貴方とぶつかったら怪我しますからね。そこらへんちゃんと考えてくださいね」
「・・・うす」
久しぶりに叱られた。中々心に来るものがあった。