中川菜々と優木せつ菜、時々アクセントで俺   作:蒲鉾うどん

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果林さんはだんだん好感度が上がっていくタイプです。最初にポンコツのフルコース食らったら好感度が下の下なのしゃーないよね

ちなみにこの日は金曜日の話です。書き忘れてました。さーせん。


①-2

 気づいたらうつらうつらしていた。それもそのはず、全く釣れる気配がないのだから。 

  

 最初は釣りスポットを独占出来る!とはしゃいでいたが、釣れなければただの公共施設。他に人はいないものの、平日の真昼間ということもあり居心地は良いわけではない。しかし、釣れなくて暇という状況に加えて、程よいお日様の光や心地の良い波の音、それに加えて平日の真昼間からサボっているという背徳感が次第に満足感へと変化し、これらが睡魔に拍車をかけていた。そして知らないうちに意識が飛んでいた。

 

~~~~~

 

「!!!」

 

 ビクッと落下する感覚を感じて目を覚ます。眠りが浅い時に起きる現象。名前は忘れてしまったけど人がせっかく気持ちよく寝ているときに勘弁してほしい。呑気にそんなことを考えながら今の状況を思い出す。・・・そういえば釣りをしに来たんだったんだ。置いた釣り竿を見る。動いた形跡は全くなかった。

 

「(魚がヒットした形跡は無しか。いや、竿が魚に持ってかれなかっただけマシか)」

 

 道具が無事なことに安堵しつつ、いつ頃帰るか考え始めた。・・・ま、これ以上ここにいてもボウズには変わりないだろう、よし、帰って明日に備えよう。そう決めた。

 

 座っていた場所を立ち上がる。めちゃくちゃ体が痛かった。ずっと同じ態勢で座っていたため体が固まっているようだった。そのため軽くストレッチをすることにした。手足をほぐし、上に背伸びする。そこから右に体を一捻り。左に体を一捻り・・・。左に一捻りした時だった、女性が3mくらい左後ろに座っていたことに気付いた。目が合ってクスリと笑う女性。ストレッチしたはずなのにその場にギョッと固まる俺。

 

 それもそのはず、先ほど俺はこの女性に道案内をしたからである。しかもこの女性、虹ヶ咲学園3年生の制服を着ている。そんな格好の女性に虹ヶ咲学園の場所を案内してくれと頼まれ、道を教えた数十分後、今度は俺の後ろにいたのである。これを不審者と言わず何というか。軽くホラーであった。

 

「あ、やっと気が付いた。あなた、白浜祐介くん、よね」

 

 どうやら名前も割れているらしい。本格的に身の危険を感じる。

 

「・・・」

 

「あら、もしかして警戒されてる?」

 

「・・・あんた誰?」

 

「私?私は朝香果林。あなたと同じ学校の3年生よ」

 

「朝香果林・・・?どっかで聞いたことがあるような」

 

「あなたほどではないと思うけど、私もそこそこ有名人だと思うわよ。主に男子からだけど」

 

「調べてみても?」

 

「ふふっ、どーぞ」

 

 にっこりと笑う彼女を警戒しつつ、スマホで調べる。朝香果林・・・あ、インタビューの記事のタイトルが出てきた。何々・・・『今話題沸騰中の現役JK読者モデル!虹ヶ咲学園に通う彼女の素顔に迫る!』・・・

 

「本当に虹ヶ咲の生徒だったのか」

 

「んなっ、私のこと何だと思ってたの?」

 

「コスプレ不審者。3年間も通って学校の場所フツー忘れる?警戒して損したわ。スマホ持ってないの?地図入ってるの知らない?」

 

「うぐっ、・・・あなたって結構いい性格しているのね」

 

「あ、本当に?それはどうもありがとう」

 

「・・・そういうところよ」

 

 皮肉は相手にしないに限る。お互い素性が明らかになったところで、今度はこっちが疑問をぶつける。

 

「というかなんでこんなところにいるの?」

 

「・・・あなたって先輩に敬語使わないの?」

 

「敬う要素どこかあった?」

 

「本当に心外だわ」

 

「そんなことより、何でここにまた帰ってきたの?一回見送らなかったっけ?」

 

「意図して来たわけではないのだけど・・・そうね。強いているなら足が勝手にここへ動いてしまったわ」

 

「つまり迷ったのか。凄まじい方向音痴だ。ちなみにどの辺に住んでるの?」

 

「寮暮らしよ。家を飛び出してきたの」

 

「家出少女?それに寮から学校の道を迷ったって・・・?そんなことある?」

 

「・・・いつもは同じ寮の友達に起こしてもらって一緒に行くのだけど、その子最近部活を始めて今日は朝練があったみたいで」

 

「起こしてもらえなくて寝坊したと」

 

「そうそう」

 

「そっかー。それから?」

 

「起きたら完全に遅刻の時間だったのよ。その時思いついたわ。金曜に数量限定で販売されてるシュークリームを買いにいこうって」

 

 思考の流れ、おかしくない?それから話の流れも怪しくなってきた。寝坊したら普通さっさと学校行かないか?・・・行かないか。だって今日釣りに来てたわ、俺。

 

「いつも起こしに来てくれる友達は、外国から一人で日本に留学しに来てる凄い子でね。その子がTVでそのシュークリームの特集を観ながら食べてみたいなぁって言ってたの思い出したから今日早速買いに行ったというわけ」

 

「なるほどね。シュークリームを買いにいつもと違う道を通ったから学校への行き方も寮への帰り方も分からなくなってしまったと。ふむふむ。なるほど」

 

「分かってくれたかしら?」

 

 説明を終えてどや顔を披露する彼女。・・・顔やスタイルはいいと思うけどなぁ。中身はこんなかぁ。友達思いなのは良いことだけどなぁ・・・

 

「何か失礼なこと考えてない?」

 

「いやいや滅相もない」

 

「本当?・・・それで、」

 

 恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに朝香果林はこちらを見てくる。

 

「もしよかったらなのだけれど、学校まで案内してくれないかしら?」

 

 朝香果林が困っているのは分かった。だからといって今日せっかくサボった学校に行くのは普通に嫌である。どうにか俺が動かなくてもどうにかなる方法は無いかと考えた。・・・思いつかない。

 

 それに加えて今までの話を思い返しているうちにある可能性に気づいてしまった。そしてこのことを聞いてしまったら最後、世の中せっま!とツッコミを入られずにはいられないだろう。それでも聞くことにした。若さゆえの勢いってやつで。

 

「一つ、確認したいことがあるんだけど」

 

「いいわよ。なんでも聞いて頂戴」

 

「あんたの友達ってもしかして、スイスから来てる?」

 

「・・・!ええ、そうよ。スイスからの留学生よ」

 

「部活は歌って踊ることが多い?」

 

「そうね。歌って踊ってみんなを笑顔にする部活よ」

 

「名前は『エ』か始まって」

 

「『マ』で終わるわ」

 

 世の中せっま!そしてエマさんが話していたお寝坊さんってあなたのことだったのか。おそらく向こうも同じ思っているだろう。まさかマンモス校である虹ヶ咲学園の、しかも今知り合った他学年の先輩と共通の知り合いがいるだなんて夢にも思わなかった。

 エマさんはせつ菜の部活の仲間だし、エマさんには一回悪いことしてしまったから、その借りを返すことにした。

 

「・・・今私服なんで学校には行けないですけど、朝香さんの寮までなら地図を見ながら送ってもいいですよ?」

 

「本当!?寮までで構わないわ!ありがとう!」

 

 満面の笑みでそう答える。クール系だと思ってたけどこんな表情もするんだなぁとと思った。その流れで釣りの道具を片付け、朝香さんの寮へ向かった。道中、エマさんとの慣れ初めや、朝香さんの島で暮らしていたときのことなどを話してくれた。色々なこと話していたら寮の前に到着した。

 

「今日は本当にありがとうね」

 

「いえ、エマさんによろしく言っておいてください」

 

「分かったわ。あ、それから」

 

「?」

 

「今日あなたを頼った理由はね、エマから聞いていたのよ。白浜祐介くんって子は優しくていい子だよって。あの子が誰かの話を話すのってあんまり無いから印象的で。それで今日、最初道を聞いたときは分からなかったけど、後々ネットで調べたら白浜くんだって気づいた。それで気になったの。エマがあれだけ褒める子ってどんな子なのかなって」

 

「え、じゃあ方向音痴はわざとだったんですか?」

 

「・・・そうよ?」

 

 一瞬間があった。方向音痴のところは絶対嘘だ。朝香さんが話を続ける。

 

「コホン、それであなたはエマの言った通り優しくていい子だったわ。多少ひねくれているし、心の中では何を思っているのか分からないけれど、それでもちゃんとここまで送ってくれた。・・・今日は貴方を頼ってよかったわ。今度ちゃんとお礼するわね。本当に助かった。ありがとう」

 

 そう言ってぺこりとお辞儀する。もう最初の変人でポンコツという印象はほとんどなくなった。

 

「俺も・・・美人な先輩と知り合えてラッキーでした。・・・今度ご飯奢ってください。それでチャラってことで」

 

「!!・・・ふふっいいわよ。今度一緒にご飯行きましょうね。そろそろ行くわ。じゃ、またね」

 

 そう言って寮の中に入っていく先輩を見送る。完全に姿が見えなくなった後、大きく息を吐いた。

 

「はあーー、柄にもないこと言った。顔あっつ」

 

 そういえば連絡先を聞くのを忘れたが、まあエマさん経由でどうにかなるだろう。それに、明らかに怪しい人だったとはいえ、態度が結構悪かったよな。今度謝ろう。それにしても、

 

「シュークリーム傷んでないのかなぁ?」

 

 そのことで頭がいっぱいであった。保冷剤がたくさん入っていたら大丈夫か。そんなことをのんびり考えながら帰路に就いた。

 

 

 

 

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