「おーい
翌朝。
避難先として使われていた「九重ドーム」の中。
真っ白な天井が太陽の光を幾ばくか透過して白く光り、室内を柔らかく照らしているのを見ていると、私に背後から話し掛けてくる人が居た。クラスメイトの
「悠里。ここに来てたんだ」
「まあな。それよりも結局寮に帰れんかったのな」
「……電車が止まっちゃうとねぇ……仕方ないよねぇ」
そう呆れ顔で言った彼女に、あくまで地震のせいで帰れなかったんだというアピールをしておく。これ以上変な奴と思われるのも不本意なのだ。
それから最近の青島怖いな、とか。民家の被害状況だとか、私に寮からなんか門限破り朝帰りの罰則があるんじゃないかとか気分の沈む話題を二人で淡々と話していると、隣で寝ていたはる子が唐突に起き上がり、深刻そうな顔でこちらを見た。
「罰則ってはる子にもあるのかな……?」
聞いてたんかい。とツッコむ間もなく、向かいに居た悠里が彼女を見て大げさに仰け反った。
「うわ、
「うわって、酷くない~?」
「……ん? 知り合いなの?」
「ユーリンもはる子と同じ部活なんだ~。……だったよね?」
「いや、そこは断言せえや。後ユーリンやめろ」
なるほど、悠里もはる子と同じく
結構喋った気がするけど初めて聞いた。まあまだ一カ月もない付き合いだし当然か。
それからパド部での事を暫く話していると、ふと悠里が私の方を向いた。
「ウチの部活と言えば五花、入部せんの? 経験者みたいやけど」
「ごばちゃんはね~はる子より下手だよ~」
「全く参考にならん情報やな」
……なんだかはる子が失礼な事を言っているが。
まあ実際彼女は、同年代から突出した実力を持っている。なにせ中学の全国大会に二回ほど出て、どっちも良い線を行っていたのだ。ちなみに私は早々に脱落して応援に回っていた。はっはっは……あ、脱線してる。入部するしないの話だったよね。
「入部はしないつもりよ。だって赤い
「……そういう事か。中学のと違って光るもんな」
そう言って腕を組み、うんうんと納得した悠里は直後「ん?」と声を出してはる子の方を見た。
「日里。そういや五花と同中よな?」
「そうだよ~」
「じゃあ
「あー、うん。ごばちゃんがカナちゃんの言ってる人だよ」
ヨダ。
その名前が出た途端、はる子がスンっと真顔になった。
え、何? 怖いんだけど。
「カナちゃん……ああ、そう。
ヨダ。少し前にはる子からも聞いた名前だった。
しかし私には聞き覚えの無い生徒である。ヨダ、カナちゃん、ヨダカナメ……。いや、怖いって。前聞いた時は深入りしなかったけど、いい加減向き合った方がよさそうな気がして来たよ。……それにしても。
「そんな奴居たっけ……?」
「その台詞アイツ聞いたら泣くぞ」
「えっとね~、3年の時転校して来て入部した子居たよね? ほら、ごばちゃんその時もうあんまり部活に来てなかったけど」
「……あ、タイヨウ!?」
「転校」というワードで思い出した。
他校で中学生選抜に出ていた事もあって、かなり乗用機の扱いが上手いタイヨウだ。たまたま居合わせた自己紹介の時に「自分の事は太陽と呼んでくれ」とアホな事を言っていたので、タイヨウとしか認識していなかった。
「というかはる子。中学の頃はタイヨウの事「サンちゃん」って呼んでなかった?」
「本人がやめてくれって言ったから変えたの」
そうか、どうやら無事に黒歴史となったらしい。
「……いいや、それで何でライバル? 私あの子と戦った事無いんだけど。はる子何か聞いてる?」
「ううん、何か怖いから聞いてない」
「怖いって」
いや、その気持ちは痛いほど分かるけども。
それから私達のやりとりを見ていた悠里が「なんかアイツ可哀想に思えて来たわ」とか呟いていたけども、私にどうしろと言うんだ。
そんな時、話題を変えたかったのか、はる子がそう言えば、と私の方を見た
「ごばちゃん、おばさんは?」
「今朝早くに出て行ったよ」
「……ふーん」
四葉さんの事だ。
昨日の夜、あれから何故青島に来ていたのか、とあの人に聞いてみると、どうやらお母さんからの要請で私の様子を見る為だけに来ていたらしく、「用事は済んだから」と、迎えの車で慌ただしく早朝に出て行ったのだ。
「叔母さん? 釜伊里にまで来た用事ってそれやったんか?」
悠里の推測は違ったが、それで納得してくれると嬉しいので、私は曖昧に頷いておくことにした。
「あ、これ違うな」
「違わないし!」
wmwmwmwmwmwmwm
mw mwm
wmwmwmwmm wmwm wm
それに伴って発生した大釜山の「青い巨人」騒動。これは事件後、様々なメディアで連日取り上げられる事になった。
「逆賭」の神憑きが言った「滅亡の予言」にある大規模な祟りが始まったのではないか。
地震のせいで密かに地底に存在していたエネルギーが噴出したのではないか。
政府の隠していた実験体が暴走したのではないか。
等、様々な憶測が飛び交い、果てには青特での「洞見の祟り」に関連付ける人まで現れていた。
これに対して五島の研究所は最初「原因を調査中」として、白島から多くの調査員を派遣し大釜山の調査を行っていたのだが、程なくして原因を突き止めたと声明を出した。
その発表は以下の通りである。
・大釜山の地底深くにある「特定の遺物」から、白島にて非公開で研究していた青い神力を発生する金属が多分に検出された。
・大地震に起因した何かしらのショックにより、眠っていた大量の「特定の遺物」から青いエネルギーが溢れ出てしまった可能性が非常に高い
・調査を続けるが、「特定の遺物」は他の遺跡では一切確認されていない。
・山をボロボロにし、青い巨人を消滅させた赤い触手については、引き続き調査中
図書館のパソコンでニュースサイトを漁っていた
現在、このような発表が出され「滅亡の予言」の正体の一端が分かった影響で、各地にある遺跡全てを即刻排除するべきだ、という機運が高まっているらしい。今見てるニュースサイトのコメント欄もその意見で埋め尽くされている。実際「他の遺跡には無い」なんて言われても信用出来るものではないだろう。
日本にある遺跡は小さい物を含めれば数えきれない程にある上に地下に幾らでも存在していると以前聞いた事がある。もしこれら全てを排除したら、日本には「白島」しか残らないんじゃないだろうか。と五花は毛先を弄りながらコメント欄をスクロールしていき、あるコメントを見て顔を顰めた。
「青い巨人から私達を守ってくれた守護神様へ祈りを捧げましょう。私達に出来る事はそれしかありません。共感して頂ける方はこちらのサイトに来てください→https://※※※※」
こんな所にも出張して来るのか、と五花は吐き気を催した。
誘導しているリンク先は、最近発足した妙なカルト宗教の交流サイトである。
今回の事件で不安に思った人が多く入会しているらしく、なんだか自分のしたことが独り歩きして悪さをしているような事態に、五花はうんざりとしてブラウザを閉じた。
最近は事件が立て続けに起こり、危ない事が沢山起こるようになって来た。
「隠匿」にはお世話になったが、彼女的には本当を言えば能力バトルなんて一切したくないし、慣れ始めたとはいえ、常識の通じないファンタジー現象に自分の身を預ける事に少なからずストレスを感じるのだ。
「もうさ、なんかもうアレだ。水族館行こう」
そう言葉に出してから、背袋鯆の居る水族館が青島に無い事に気付いた五花はその場に立ち尽くしたが、まあいいかと普通のイルカを見に図書館を後にするのだった。
前々話で釜伊里町の事を青島の南方と記載していましたが、正確には北方です。
該当箇所を修正しました。
混乱を招きかねない描写ミス等は、今後も後書きに都度記載いたします。また今回からこちらの活動報告に纏めさせて頂きますのでよろしくお願いします。
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