今より15年程前の話、この世界の裏舞台にひょっこりと現れたその存在は、自らの事をそう名乗った。
その存在を知った当時の政府は訝しんだ。
その老人が、いくら神が扱うとされている「白」を持っていたとしても、到底信じられる事では無かったからだ。
「神力」というものが確かに存在しているこの世界といえども「神の顕現」というのは、それ程馬鹿げた話である。
またその老人は、「白い神力」を携えている事を除けば余りにも人と変わらない存在であり、証拠として見せて来た「逆睹」の能力である「予測」は、後から幾らでも辻褄合わせの出来る……有り体に言って地味なものであり、それもまた信ぴょう性の薄さに拍車を掛けていた。
当然幾つかの疑問も上がる。
何故自分が神だと思うのか。
何故隠れ住んでいたのか。
何故、今になって接触をしに来たのか。
『
そう言って始まった老人の話は、以下のように続いた。
数年前、原因も分からないままこの世界に放り出された「逆睹」は、ただ自身を閉じ込める牢獄から出られた事に喜んでいた。
しかしその後、妻を名乗る老婆に詰め寄られる。
そこで初めて自分が知らない老人の肉体を乗っ取って存在している事を理解した。慌てて謝罪しようとするも、その様子がおかしい。
徐々に最初の威勢が無くなり息切れし始めたその老婆は。
虫の息で「まるで」「数多の未来にある」「結末を見尽くしてしまった」かのような言葉を喘ぎながら口にして、昏倒。
介抱する間もなく老婆はその場で息を引き取ったのである。
『直感で分かりました。此の身はこの世界に存在してはならない存在なのだと。それだから、今まで誰にも知られない様生きて来たのです。しかし、事情が変わった』
彼は、付き添いで来ていた隣の女性の方に視線を向ける。
偶然か、それとも
彼女は、老婆の墓に謝りに行く為に自分の力を弱めたいと望む老人のために「破邪」持ちや「厄除」持ちが多数在籍する自身の兄が所属していた救助隊の力を借りて、その力を削いだ。
そうして彼の望みが叶い、いよいよ思い残すことが無くなった老人であったが。その時女性の容体が急変した。
『どうやら此の身と繋がっているせいで、彼女に逃げて来た此の身の力が流れてしまったようで、その時は大事にはならなかったのですが……彼女は、此の身としても見過ごせない、大変な物を見てしまったのです。今日はそれをどうか聞いていただきたい』
かくして。
その後女性が語った「滅亡の予言」ともいえるそれを本気にする人間はその場には居なかった。
もし、その言葉を裏付ける証拠があれば、あるいは信じた者も居たのかも知れない。世界の危機なのだと、本物の神が言っているのだと、真剣に受け止める者も居たのかも知れない。
だが。
仮に本当に「神」を名乗るに値する存在だとしても、当然困る。
目の前に居る存在が人類に害を齎す存在である可能性が排除出来ないのだ。
扱い方も分からないし、持ち込んで来た情報が突拍子も無いものであるのも悪い。デマに踊らされたとなれば支持率にも大きく関わるし、公表するなど以ての外。
結果。
当時の政府は、目撃者である神憑きの女性と共に白島まで来た「逆睹の神」に対し、これを老人の妄言だと一蹴。
それだけではなく、そのまま妻殺しの罪に問われた彼は、余生を獄中で過ごす事となったのだった。
老人と共にいた女性である「
その胸に、変える事の決して出来ない絶望を抱えて。
(『もう何も知りたくない』か)
いつか聞いた老人の言葉。
(ならば何故、ああして生きている、平穏に、僕の「何を」犠牲にしたかも省みず)
老人の身体は、明日香が「神降ろし」をした日にこと切れていた。
wwwww wwwwwwm
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「……
「妹さんですか?」
名前は知らなかったが。
私は
数年前に
「ああ、私の妹です」
「……何故、今言うの?」
「その神力を、明日香も持っていたからですよ」
妹。この男の妹。私はその言葉の意味を咀嚼しようと、自分の腕を見る。
赤い神力が不規則に湧き出すその光を。
「浄化」を使おうとすると、点滅の速度が速まっていき、やがて薄くゆらぎ始める。
まるで見えない何かと混ざり合っているような────ともかく自身でも見たことが無い形態。
「貴方には以前言いましたね。『曜引五花』は他者の適性値を上げると」
「そんな事実はないって言いましたよ?」
「───その権能、その身に『神』を騙る化け物が降臨している事の証左に他ならない」
……はあ。対話をする気はない、と。
「
「だから知りませんよ」
「……ふん」
鼻を鳴らした夕森は、私の腕を見続けていて。
……奇妙な膠着状態だけど、身体の調子を確認しておきたい私としては助かるのも事実。
それと、この現象について気味が悪いとまでは思わない。
自分の神力がおかしくなる事自体は初めてでもないからだ。
姪の近くに長く居れば、まあ色々起きる。
祟りの最中に変な出方をしたところで、今更一つ増えた程度。
だから今の問題は、目の前の男が「数ある五花のやらかし」の中のどこまでを知っているのか。
「妹さんの『逆睹』もこうなった事が?」
「……正確には違います。ただ、私は見た事がある。明日香が同じものを持っていた」
「そうですか」
……先程と同じ事を言っている?
夕森の口元が少し動き、笑みを深めた。
「ああ……随分と慎重ですね」
「さっきから訳の分からない事を言ってくれますね」
しかし。
前会った時は、これほど壊れた人間だっただろうか。
そして更に近年「
五花について嗅ぎまわってる連中。
恐らく情報源もここで、夕森はこの組織絡みで今日ここに立っている可能性が高い。
それでなくても。
反応を窺いながら話してくる相手に、こちらから答え合わせをしてやる必要はない。
「まあ、良いでしょう」
夕森が一度息を吐く。
「私はね、『勘が良い』んです」
「はあ」
「昔からそうでした。根拠を説明しろと言われると困るんですが、後になって大体合っている。明日香にも気味悪がられましたよ」
「妹さんにですか」
よりにもよって「逆睹」持ちに気味悪がられるなら、まあ相当だろうね。
「ええ。酷い話でしょう?」
「どうでしょうね」
「……まあ、いい」
少しだけ声が変わった。
「明日香の『神降ろし』は成功していた」
「そうですか」
「信じませんか?」
「だから、何の話をしているのかは知りませんけど───」
「成功したんですよ。あの子はやり遂げた。あの予言も間違っていなかった。大釜山に現れたアレが証明した。なら、明日香はやはり、この世にアレを降ろす事に成功していた」
夕森は私の言葉を遮りさっきまでより饒舌に喋る。
元々様子のおかしい男だったが、一層おかしくなってきた。
────神降ろし。
眉唾物のあの儀式。自分と繋がる神を現世に降ろす目的で、対応する聶獣の一部「猛毒であろう腫瘍」の部分を食したりする気持ちの悪い儀式。効果も一切実証されず、成功もない、ただの自殺。
「嬉しかったなぁ、てっきりアレは無駄に死んだのかと。神を騙る痴呆に殺されたのかと。成功していたんだ、成功していたんですよ。そして」
犯人の自白のように、堰を切ったように言葉が溢れ出ていたのが突如止まり。
「───そして私は見付けた」
夕森がこの光を指差した。
……盲執するように怪しい色を宿した両目が見ているのは、私の腕。この光の起こり。そして、その先の自身の妹。
「
「……それが五花だと?」
「ええ」
即答する夕森。
……つまり、この男は五花の中に確執のあるらしい「逆睹の神」が居る事を半ば確信している。
「姪になにをする気?」
「話が早くて助かります」
私が問いかけると、何故か夕森は徐に前に行こうとしたので身体をずらして阻む。
「何がですか? 行かせませんよ」
キョトンとした顔をする夕森。
これはいよいよ……警察より精神病院にまず行った方が良さそうだ。
「何故です?」
「その前に、何をする気かって聞いてるんだよ」
夕森は薄気味悪く黙り、自分の顎を撫でつけ。
口を大きく開いた。
かちかち、かちかちと歯を鳴らす。
「『神降ろし』ですよ」
男は無邪気に笑った。
『アレを、
「何を言うかと思えばまた『神降ろし』か……成功すると思って……いるからこうして来ているんでしょうけど、貴方達が
つまり、彼等は。
「上はあの『逆睹』を確保して別の方法で何やらしようとしていましたが……貴方が予定より早く来てしまったせいで『満曜空』の季節が来る前に祟りが起きてしまいましたし……そうですね、これは私の独断、という所でしょうか。得られる成果が同じならば文句は言われないでしょう」
「……その成果って言うのは、聞くまでもないね。貴方達、
「おや、ご存じで?」
「勧誘されましたからね。よっぽど人手不足なんでしょう……さて」
今やるべき事は大体分かった。
「貴方はもう私の姪に会えない」
「それは困りましたね。どちらに御用でしょう? 今までの傾向からして、故郷であるこの村を放ってはおけない筈ですが……」
「────そうでなく」
次に男が何かを言おうとしたのを見て私はそう言うと、前に踏み込み姿勢を低くし、「浄化」を薄らと纏う。
こちらを見ていた周囲の人間の気配が近くなって来た、銃でも神通力でも何が出て来るかわからない。
「何故なら、ここで貴方はとっても痛い思いをしてぶっ倒れるからです」
「小海さん。私はあなたと争いに来た訳ではないんです」
そう言った直後夕森が一歩踏み出した。
それに合わせて私も一歩、位置を変える。
「奇遇ですね、私もです」
「なら退いていただけませんか?」
「厄除」持ちに触られるのは不味い。
今の私にどれだけの余力があるのか分からない以上、一度崩されると戻せないかもしれない。
「五花を追わないなら」
「それは出来ない」
だから近付けなければいい。
距離を取る為私が後方に飛ぶと、夕森が地面を蹴った。
速い。
「じゃあっ無理ですね!」
「最後にもう一度だけ聞きます」
訓練を積んだ救助隊として考えても、ここまでで上澄みの身体能力と分かる。
私が身体を動かす前に、男の手がこちらへ伸びる。
「どうぞ?」
「退いてください」
私はその手ごと夕森を押し流した。
「お断りします」
「っ!」
身体が斜め後ろへ流れる。
夕森は二歩、三歩と踏ん張り、転ばずに止まった。
「私の『浄化』知ってますよね?」
「ええ。ですが、まさか本来のスペックのままとは……少し目論見が外れましたか」
本来のスペックね……。
実際の所、この暴走気味な「浄化」の制御に結構苦戦しているのだが。
また来る。
今度は先程より低く、こちらの腕を狙わず胴へ。
同じように押し流す。
夕森の身体が横へ逸れ、そのまま地面を滑った。
……「厄除」とはあまり戦ったことが無いけれど。
普通ならもっと飛んでいる所をあれくらいで済むなんて、流石に神通力への耐性は高い。
夕森は身体を起こすと、服に付いた土を軽く払った。
「聞いていた『浄化』よりも遥かに範囲も威力も……ああ……厄介ですね」
「諦めます?」
「まさか」
そして三度目。同じように突っ込んでくる。
……流石に単純すぎる。本人の頭が興奮であまり回っていないのかそれとも────と。
押し流す。そうして距離を開けると同時に。
飛来したいくつもの小さな堅い物が私の周囲で軌道を変え地面に突き刺さった。
狙撃ね。
敵の行動がパターン化している所の油断を狙う。単純な事だけど合図のような物もなかったし、かなり連携が取れていると見た方が良い。
まあ、「厄除」持ちが触れられれば向こうの方が有利になるとしても、触れなければ関係ない。
だからこのまま近付けなければいい。
「……」
左腕の神力が一際弾けて一瞬消える。
その時。
次に右の死角から新手が来るのが見えた。
理由は分からない。
だから左手を右へ振り、広範囲に押し流しを撒く。
「!」
直後、飛び出して来た男が跳ね飛ばされて家屋の壁に衝突した。
「……ああ」
それを見た夕森が手を止め、笑みを更に深める。
味方がやられてなにが面白いのか。
「やはり『逆睹』だ」
「へえ?」
「今の、私が動く前に分かったでしょう?」
「さあ」
適当に相槌を打って飛来して来た鉛玉を逸らす。
「隠す必要はありませんよ。『浄化』は確かに強力な神通力だ。物理的にも強く、神力耐性も私の『厄除』とほぼ同等。だけどね、そんな神通力でも『未来を分かっていたように立ち回る』事なんて出来ない」
「……」
黙っていると、次の予備動作が見えた。
今度は正面。
来る。
その前に流す、それと同時に。
「っ……!」
夕森がこちらの動きに気付き顔を庇った。
私は指先を少し曲げる。
制御の方向性を変えてやると「押流」の流れが変わる。
服の肩口が裂け、その下に細い赤い線が走った。
「『逆鱗』ってやつです」
押し流すだけじゃなく、流れを絞れば削れる。
大体加減も分かって来たからやれる殺傷力の高い技。神力への耐性が高い「厄除」相手だからこの程度で済んでいるが、それでも無傷ではない。
「これ以上やるなら、もう少し痛くしますよ」
「ああ、怖いですね」
「そう思うなら諦めて下さい」
「それは出来ません」
面倒だ。
夕森は先程とは別種の笑みを見せる。
余裕があるようにも見える。
「小海四葉さん、一つ訂正します」
「何です?」
「貴方を相手にするつもりはありませんでしたが」
後ろで音。
「相手にしないと通していただけないようなので、戦わせて頂きます」
振り返る必要が無いので振り返らない。
出て来るのは一人。
いや、二人。
もう一つ、四つ、建物の屋根、壁の裏。
これで少なくとも八人。これで全部かな。
ダウンした敵も合わせて10人ほど。
「随分連れて来たんですね?」
「みんな、貴方の姪に用がある方達です」
「気持ち悪いんだよ」
夕森の正面から目を離さないまま、少しだけ立つ位置を変える。
背後に建物。
右に湖。
左に細い道。
後ろを取られ続けるよりはマシ。
頭上から狙おうとしてる奴が一人いる。
「小海四葉」
その頭上から知らない老人の声。
どいつもこいつもフルネームで呼んでくる。組織内で流行ってんのな!
「抵抗しなければ危害は加えない」
「ええっ、さっきこの人から似たような事を聞きましたよ」
そう返すと屋根の上からは沈黙。
聞いたことのある声……誰だ?
「もう少し打ち合わせして来た方がいいんじゃないですかぁ?」
「私はそんな言い方してませんよ」
続けて言うと夕森が口を挟み距離を詰めてきた。
「似たようなものでしょう? ねえ?」
「ははは、は! 面白い!」
話を聞かないとばかりに大口を開けて駆け出して来る、っと。
────左右同時。
神通力のなにかがまとめて飛んで来る。
分からないので両手でまとめて押し流し、軌道を変える。
「そもそも、こんな事しておいて、今更『危害は加えない』、ですって!?」
「これも防ぎ、ますかぁっ!」
直後に夕森。
押し流す。
ついでに左から一人。
一際強く、太い導線を作って持ち上げて、そちらも流す。
「おあっ!?」
背後の屋根の上に投げつける。
また何か来る、流す。
……まいったなぁ、私絶好調かもしれない。赤いと危険な分出力も上がっているとは聞いた事があるけれど。それのせいかな、ねえ五花。
そんな事を考えていると、今度は流した物が途中で破裂した。
「……っ」
身体の表面を何かが叩く。
少し痛い。口径の大きい物を持って来たな?
けれど、その程度。
今の私ならまだ耐えられる。
「本当に祟られてるんですか、あなた」
「祟られてますよ、お陰様で」
「それ、やはりただの『浄化』ではありませんね。随分元気で、本当に困ってしまいます」
「これでもヘトヘトなんですよぉ?」
嘘ではない。
さっきから身体は重いし、頭も少しぼんやりする。
体内の回路を酷使し過ぎたかもしれない。鼻血も出て来た。
だから長引くのは困る。
そして、目の前の夕森もそれを言わずとも分かっている。
「さあもう一度!」
左から男。
正面から「厄除」の夕森。
頭上から何か。
それらを広範囲の出力で以て全部流す。
「がっ、ぁ!!」
「……!」
三方向。
まとめて押し流したせいで、少し眩暈がしたが、何とか乗り切った。
こうなると負けは無い。袖で鼻を拭って、あえて口に出す。
「残り3人かな?」
三人とも動かない。私を囲んでいた連中の大半は既に倒れ、夕森も肩から血を流している。このまま続けたところで結果は変わらないと思うけど、諦めるつもりもないらしい。
「はてさて、本当に3人ですかね?」
「確かに、そうかも知れません。外れてたら困っちゃうなぁ」
「はぁ……ええ、ええ、そうですか。正直、ここまでとは思いませんでした」
そう言ってから夕森は裂けた肩口を一度見てから、首元へ手を伸ばした。
灰色の服の襟へ指を差し込み、そこから細い鎖と、金属で覆われた小さな飾りを引っ張り出す。
親指で留め具らしき箇所を押すと、乾いた音を立てて覆いが左右へ開き。
中に収められていたのは、光を殆ど返さない黒い石。
「
彼に対応する神通力の……いや、そうか。最近話題の「黒い石」。ということは青島の巨人騒ぎもこいつらが絡んでいる。
私の呟きに夕森は否定も肯定もせず、剥き出しになった石を掌の中へ握り込んだ。
「精神汚染がありますので、この後の為にも、あまり使いたくはなかったのですが」
どういう意味か聞き返す前に、男の神力が膨れ上がった。
先程まで身体の内側へ収まっていたものが、無理矢理押し広げられていく。空気が鳴り、夕森の周囲にあった砂や小石が細かく震え始める。
そうして夕森は、掌の中に石を握ったまま、こちらを真っ直ぐ見ていた。先程まで浮かべていた笑みは消え、その両目の奥だけに黒いものが滲んでいる。
「では、続けましょうか」
夕森がゆっくりと目を閉じ。
光が、何かを象る。
「『厄除の神』。他の神力に干渉する『龍神』の一角。多くの適合者を持ち、多くの人々を守って来たその
膨れ上がった神力が周囲へ広がるのではなく、今度は彼の足元へ集まり始めた。逃げようとしたのか、残っていた二人が僅かに後退する。
「【
こぼれ、広がるのは「厄除の神」を象徴する数多の円鱗。
私は反射的に「浄化」を前に放出した。
mmmmm mmmmmmmmmmmm
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww w
w
wwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「明日香」
「兄ぃ」
その日、僕は。
「なんだ」
「……みんな死ぬよ」
「この国なくなる」
後に「滅亡の予言」と呼ばれる事になるものを、夕森明日香が初めて口にしたのはその日だった。
インターネットの一部を沸かす程度の波紋。結局、その予言を本気で受け取る者は殆ど現れず。
デマ。
またか。
詐欺師。
「逆睹」でも無理。
飽きた。
今度はそれっぽく脚色してきたな(笑)
巨人って安直すぎ。
いくら儲かったの?
そろそろ本の出版くる?
ほら嘘。
自殺したらしいよ
マジ(笑)?
デマ。
結局何もなかったデマ。
デマ。
デマ。
デマ。
デマ。
明日香の不毛な活動は、すればするだけ彼女の精神をすり減らしているように見えた。僕の物だったのに、神を名乗るアレによって壊された。
皆のオモチャ扱いだった。
なんなんだ? 妹はお前らの所有物なのか?
こんな奴等の為に明日香が足掻いているのはおかしい。それなら僕の物であるはずだ。
信用できる恋人も出来て、これから家庭を築いて。そうだ、そうだよ。妹はそうして幸せになって「僕を満足させる」為だけに居たのに。
『君の妹の死は無駄じゃない』
だから、その声のする方について行った訳だ。
全部、意味のあることである筈だ。全部、僕の為の事であるはずだ。
あれは全部、僕の物だ。