平等のお店:再生食堂   作:〇坊主

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純白さん御用達

 

 

  ピルグリム

 

 『巡礼者』という意味を持ち、人類がいないはずの地上で活動を続けるニケの集団の総称。

 そこに属するニケは人類の守護をしているのだが、人類に従うことはなく、独自の観点や考えの元で活動を続けている特異な立場をとっている。

 地上で活動を続けている関係上、戦闘技術もずば抜けていることがわかっており、わかっているだけでもレールガンや刀、鎌やドローンといった通常ではなかなか扱いづらいとされてきた武装を手にしているのも特徴の一つだ。

 

 これは生き残った人類の最後の生命拠点 アークを維持する3大企業のどこにも関わらない関係上、ラプチャーの部品を己に代用したり、継続戦闘の為に弾薬を必要としない技術を求めたからなどと色々な考察をされている。

 

 姿をあまり確認されない存在ではあるものの、ここ最近は前哨基地にて活動を行う指揮官との交流が少しずつ増えている現状があり(なお重要案件の為、秘匿されている)、前哨基地で暮らしていれば数か月に一回程度はお目にかかることができるかもしれない。

 

 なお前哨基地が指揮官の管轄として充てられているものの、3大企業側に所属するニケの中にはピルグリムの痕跡を探し出そうと躍起になっている者達もいるため、多少警戒もされている可能性も否定できないのが現状だった。

 

「材料は持ってきた。今回も頼む」

「了解したわ。何を注文するのかしら?」

「そうだな…ここからこの栗ゴマ団子まで」

「かしこまりました」

 

 誰かが言ったか純白の巡礼者。

 パイオニア部隊の一人であり、地上をメインに活動を常に続ける彼女の名前は スノーホワイト と言う。

 本来であれば男のロマンともいえる武装『セブンスドワーフ』を我が身の一部のように扱う主人公のような存在である。(ミハラと共に作者の好きなニケの一人

 そんな彼女がなぜこのお食事処で頼んだ料理が来るのをワクワクしながら、お通しを口へと運んでいるのか問われればその解答は単純明快。

 地上では食べられない料理をここでは食べられるからであった。

 

 彼女だけでなく、活動を続けるニケ達は人間ではない。

 人間の脳髄以外のすべてを人工物に置き換えた人造人間であり、機動力耐久力戦闘力は人間の比ではない。

 そのため人類最後の希望として活動を行っているのだが…「人間を護るために作ったのだがら人間と同じ食べ物を食べるのはおかしくね?」などと考える者達によってまともな食料が出回っていないのが現状であった。

 勿論3大企業はそのような事を続ければニケ側の精神安定に非常に良くないことが起こると理解しているため、普段の人と同様の食生活をさせているのだが、そうではないところは兵器としての見方が色濃く出ており、戦闘が終わった?なら次の戦闘してね。などと言ったやり取りが平然と行われてしまっているのが現状である。

 

 脳は人間。人工物ではないニケ達にも当然エネルギーが必要になってくるのだが、常に万能蒟蒻食材(パーフェクト)片手に毎食蒟蒻生活は当然飽きる。

 エネルギー云々は確かに大事だが、味覚も当然ある彼女たちにとって食感も大切だ。美味しいものを食べれば機嫌は良くなるし、不満も少なくなるというものなのだ(そうなると普段の食事の不味さに不満を持つようになるかもしれないがここは気にしない方向で行く)

 

「はい、お待ちどうさま。最初は『再生サラダの大盛盛り合わせ』と『ニンニク鶏の親子丼』よ」

「待ちわびた…。いただきます」

 

 そんな彼女に提供されるはボウルに盛られた大量の野菜と親子丼。

 手慣れた手つきで箸を操り、食べ終えるその時まで食事から意識を外さないと言わんばかりに味わって食べるその姿からは、地上でラプチャー絶対殺すウーマンと化している者と同じ存在であることなどわからないだろう。

 

 素早く調理を済ませて料理を完成させる店長はいつもの事のように作業を続けているが、彼女に料理を運んでいるミハラからしてみればいつ見ても惚れ惚れするほどの食べっぷりだ。

 あまりにも美味しそうに食べるからちょっとからかいにミハラオススメの特性ソースをスノーホワイトに食べさせたことで、激昂したスノーホワイトとキャットファイトに至りかけたのは今となってはいい思い出である(なお当然ミハラは怒られて土下座させられた)。

 

 提供しながらどんどんお皿から料理が消えていくその様は見ていて飽きないものだ。

 自分が今運んでいる『兵士カエルの唐揚げ』や『のり虫のいそべ揚げ』などもテーブルに置けばすぐに無くなっていく。

 すぐに彼女が頼んだ料理は全て提供し終え、スノーホワイトは人生の幸福を見つけたかのような表情を浮かべながら天井を眺めてリラックスしていた。

 あとはその豪快なたべっぷりを見た店長が彼女へデザートを準備していたのでそれを運べばこの忙しくも楽しいひと時は少しの間収まるのである。

 

 シャキシャキとした新鮮な触感。プルンとまるでゼリーを彷彿とさせるプリップリの身。食欲を湧きたてる黄金に輝く卵と肉の香り。などなど多くの食材を取り扱っているこの食事処ではあるものの、この店員をやっているミハラですらこの食材たちをどこから調達しているのかは知らない。

 わかっているのは店長が数多の食材を調理し、提供する料理はこの荒廃した世界…限られた地下の生命維持拠点でも最高位に位置する価値があることだ。

 

 ホールスタッフとして活動を行っているミハラ。

 厨房で様々な敵(食器汚れ等)と戦い欲求を満たしているユニ。

 そして下準備から調理までをこなす店長。

 

 この3名で切り盛りを始めたのが『お食事処 再生食堂』。

 と言ってもミハラとユニが店員になる前までは一人で切り盛りしていたし、一人で調理から会計まで実施していた。そこにミハラはユニと共に店員として雇ってもらった側なのである。

 それを認めてもらうため、ミハラとユニが所属する3大企業の一角『ミシリスインダストリー』。その最高経営責任者(CEO)シュエンに対してジャーマン・スープレックスをかけて説得をしたことは秘密。それが原因なのか否か、その翌日シュエンが店内でアイスクリームを口に運びながらぐずっていたのは常連客の記憶に新しい。

 たまにもう一角である『テトラライン』のCEOも噂を聞きつけてやってきたり、ヘッドハンティングされたりと騒がしい日々を送ったものであった。

 

「スノーホワイト」

 

 調理に一息ついたのだろう。

 食器の片付けなどを一通り終わらせたのか、店長が厨房から出て彼女に声をかけた。

 それを見てミハラは珍しいと思った。

 店内で食事をする以上、あくまでも店とお客のスタンスを維持し続ける彼がお客に声をかける事はほとんどない。スノーホワイトも何か粗相があったのかと不安な面持ちをしてしまっているのだ。

 

 店長は強面である。

 そしてマッチョである。

 

 この前哨基地にいる指揮官と同じ人間なのであるが、その強面で表情が硬い(実際はそうでないことはミハラは知っている)。筋肉。そして強い。

 特に強いという一点。これはお世辞などではない。

 量産型のニケ程度であれば束になっても敵わないであろうし、非量産型(ネームド)のニケであっても一対一では相応の実力が無ければすぐに制圧される程には実力を有している。というよりも普通にニケなんじゃね?って思うことも多々ある。

 弾丸を掴むのはお手の物。この前なんて地上にふらっと出かけようとしていたところに襲撃をかましてきたラプチャーを殴り壊していた。

 ラプチャーと素手でやりあえる人間なんていない。では実際にソレができてしまう店長は一体なんなのだろう。

 フライパンチとかノッキングとか謎の単語を呟いていたのだが、ミハラではそれ以上の知識を有していなかった。

 おそらく聞けばミハラやユニには教えてくれるのかもしれないが、他の事よりも優先して聞くべきかと言われれば優先度が下がってしまうためこうしてたまに思い出す程度に収まっていた。

 

「店長…すまない。なにか私は粗相をしてしまっただろうか?であれば謝罪する」

「あー…いやそうじゃないんだ。指揮官からスノーホワイトを見たら渡してくれと言われていたのでね」

 

 そうしておいたのはカロリーバーのような大きさと形状をした物。

 流石に思い当たる節がないのか頭に疑問符を浮かべる彼女へ店長は話を続ける。

 

「指揮官が君と連絡をしていた時に極寒の地や不毛の地で活動を行う事があるため、その活動を続けるための食糧云々のやり取りに関して相談を受けてな。せっかくならと色々試行錯誤をしてできたものなんだ」

「これを私に?」

「あぁ。折角ならレビューをしてほしいと思ってね。ここで食べるのとそういった厳しい環境下で食べるのとでは食事に条件が異なるし、食料品である以上触感や消味期限の確認、味の感想などなどを取り入れたい。なので指揮官の相談の解決方法と兼ねて新商品でも作ってみようかと考えている」

 

 彼女は人類の未開の地を進んでいるとも聞く。

 満足に食事ができない事もあるスノーホワイトにとって、携帯がしやすい非常用食料に関する今回の話は非常にありがたい話であった。

 

「ちなみに先に一つ頂いても?」

「勿論。試作品として色々作ってみたから食べてみるといい」

 

 ちなみにこのやり取りはこの店のメニュー3割を食べきった後の話。

 そのうえで試作バーを美味しそうに食べているのだから、食べたものは一体どこに収まっているのかが気になった次第である。

 

「うん!これは美味い。これはいいバーだ。実に美味しい…前に食べたものよりもずっと美味い!そんな気がする」

「好評そうでなにより。それは味にこだわってみたんだけどそしたら固まりにくくなってしまってね。崩れたりしないかい?」

「…確かに通常よりも崩れやすい。だがこれはこれで咀嚼回数が減るため消費カロリーを抑えれるとは思う…。飲料型にしても良さそうではあるが…」

「そっちは容器の都合厳しくてね…。水筒あたりに注ぎ込むことになってしまうし、そうなると日持ちがしなくなってしまうとあって悩んでいるんだ」

 

 食事に並々ならぬ拘りを持つ店長と食料に並々ならぬ想いを持つスノーホワイトはとても気が合うのだろう。

 偶に指揮官に感謝の意を表している彼女だがあまりの喜びに指揮官が住処としているコマンドセンターへ突撃をかますような珍妙な行動を取ってしまわないか、ミハラは少し心配になった。

 指揮官の周りにはミハラから見ても非常に魅力的な女性達がいる。指揮官のニケを人と同じように大切にし、護る姿勢。それに惚れ込んだ者も多くおり、指揮官に向ける感情が尊敬を通り越して親愛もといそれ以上の想いを抱くようになったニケも多いのを知っている。

 スノーホワイトは義理堅い性格をしているため、突然指揮官をベットに押し倒したり、ストーカーの如き行動力で指揮官の体調行動を全て把握したり、朝チュンを迎えたりすることはないかもしれないが、指揮官の貞操の無事を祈っておくのもいいかもしれない(なおミハラ自身のエピソードもなかなか危ないのは内緒)。

 

(まぁ…たまにはそういうこと(・・・・・・)も有りなのかもしれないわね…)

 

 ミハラとユニ。彼女達が店長と初めての出会いによる第一印象は良くなかったことだろう。

 だがそれも少しずつ改善していっている。それは店長が自分達をこの店に置いてくれている事が何よりの証明になっていた。

 今度はユニと共にしてもらおう。

 そんな事を眼前の二人に悟られないよう、ミハラは感覚のある(・・・・・)愛おしい体を疼かせるのだった。 

 

 

 

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