パルデアにダブルバトルを普及させたい転生新米女教師の奮闘   作:オレモヌシ

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1話:燃えたぎる野望

 

 

「クラベル校長先生〜どうして皆さんダブルバトルをしないんでしょうか〜?」

 

「……少し酔いすぎですよ、エルリナ先生。確かに、パルデアにおけるダブルバトルの普及率の低さは少々問題だと私も認識してはいますが」

 

 

 私こと『エルリナ』は、かつて地球という星のある世界で生まれ、そして不慮の事故を経た先に恵まれた第二の生をここパルデアで送る1人の新人教師であり──20歳を迎えた今校長先生に酔いながらダル絡みをする教師です。

 

 

「面白いのに! 奥深いのに!! ……いえ、確かにメジャーなのはシングルバトルですよ? 客観的に見て少々小難しいのもわかります。チャンピオンテストだってシングルですし。けどけど〜」

 

 

 そう言って嘆き悲しむ私に声をかけてくるのは、この場にいるもう1人の人物であり、1-Aの担任であり、生物学教師でもあるジニア先生。

 

 

「まあまあ、エルリナ先生……少しずつ先生の『ダブルバトル学』を受講する学生も増えてきているじゃないですか」

 

「ジニア先生!! この前、先生の担当するあの生徒会長さん! 私の授業を熱心に受ける彼女! 私になんて言ったと思います!?」

 

 

 そう! 忘れもしないあの悲劇!! 

 一番私の授業を熱心に聞いていた筈のあの子が!! 

 

 

「え、ええ? ネモさんが何か言ったんですか?」

 

「『エルリナ先生、バトルしましょう! シングルバトルで!!』って言ってきたんですよ!! 授業の成果は!? 私に見せないの!!??」

 

「あ、ああ……なるほど」

 

 

 納得いったかのような声を上げるジニア先生。

 それでも私は止まりません。

 いえ、止まるわけにはいかないのです。

 

 

「100歩譲って! 日々の業務とか研究とか理事長の無茶振り他色々に追われながらもバトルをする事はいいですよ!! でも、シングル!? 私、ダブルバトルの教師!!」

 

 

 私の授業に興味があったのではなく、私とバトルしたいだけだったの!? 

 しかもシングル!!?? 

 

 うぅ……所詮私はネモさんにとってただの都合の良い女なのかしら

 と悲しむ可哀想な私に対して、校長先生が

 

 

「まあまあ……ネモさんはチャンピオンになってすぐエルリナ先生に挑み、敗北しましたからね。シングルバトルで。……とにかく、リベンジに燃えているのでしょう」

 

「それはわかりますけど……」

 

 

 実際、もし私がネモさんの立場になったとしたら、毎日のように負けたバトルの復習をして対策を練り、ポケモンを鍛え上げて再戦を心待ちにするでしょうから、彼女が私とバトルしたいという気持ちは凄く良くわかるのですが……

 

 とはいえ、挑むならばせめてダブルバトルにして欲しいと願うのが教師心というものでしょう? 

 

 

「オモダカ理事長も仰られたではありませんか。『パルデア最強のトレーナーであるエルリナ先生がダブルバトルの教鞭を取る事で、更なる革新が起こる事を期待します』……と。私を含め、教師陣は皆先生に期待しているのです。成果を焦ってはいけませんよ」

 

「むう〜」

 

 

 私は頬を膨らませながら不満を示しますが、口ではどうしても校長先生には勝てず、いつもこうやって言いくるめられてしまいます。

 校長先生は口が上手いだけでなく、きちんと他人に寄り添ってくださる方です。そのため、言葉に説得力があるというか、包容力が極めて高いというか、つい甘えて泣き言を愚痴ったりしたくなってしまうというか……

 

 

「とりあえず、今日は遅いですしお開きとしましょうか。──ジニア先生、エルリナ先生。明日は1-Aに転入生も入りますし、これからもお互いに助け合いましょう」

 

「もうそんな時間なのですか〜? はあ……仕方ないか」

 

 

 そう言って、私は渋々帰宅準備を始めます。

 まだまだお酒もお話も物足りませんが……だからといって時は決して待ってはくれませんからね……仕方ない事です。

 

 

それにしても、エルリナ先生って酔うとこうなるんですね、校長先生。普段と変わりすぎてびっくりします

 

そうですね……私も初めて見た時は驚きましたよ

 

でも、凄い美人でバトルは最強で見知らぬポケモンも自在に使いこなし、研究所の助手も務めるほど博識な完璧超人に見えるエルリナ先生にも弱点はあるんだな、と少し親しみが持てますね

 

誰しもそういった側面はあるものですよ。とはいえ、エルリナ先生は酔うとあまりにも単純というか、言葉を飾らずに言うとチョロくなってしまうため、私としては少々心配になってしまいますが……

 

 

 

 

 ……とりあえず、切り替え──は無理だけど、明日も授業をするとしますか。

 

 期待されているんですものね、私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 ──コサジの小道灯台にある研究所。

 そこは私の現在の住まいであり、博士の助手を務める私にとっての第二の職場でもあります。

 

 昨日の飲み会から帰宅してすぐに就寝したため、酔いはすでに覚めています。

 

 流石に一応先生ですからね、私。

 二日酔いで生徒に接するわけにはいきません。

 

 そうして朝の支度をし、学校に向かう準備を終えた所……

 

 

『アギャス!』

 

「おや? どうしたのですか?」

 

 

 ボールの中のポケモン……コライドンが、何やらボールを震わせたり鳴き声を上げてきたりしました。

 

 一体どうしたのでしょうか? 

 普段は大人しいこの子が……

 

 !! 

 

 その時、私に天啓が下りました。

 

 そうです。

 

 私がこの世界に転生して既に20年。

 あまりにもやる事が多かったために今まですっかり抜け落ちていましたが、時期的に今は確かにその時のはず。

 

 であるならば……

 

 私は慌てて研究所を飛び出すと、そこには……

 

 

「あ、待ってニャオハ!」

 

「はにゃあ!」

 

 

 そこには可愛らしいニャオハと、それを追いかける1人の学生服を着た少女の姿がありました。

 

『アギャ!』

 

 そして、彼女たちに何やら反応を示すコライドン。

 

 ……なるほど、やはりそうなのですね。

 

 私は少女に話しかける事にしました。

 

 

「初めまして。私はエルリナと申します。貴女は学生さん……いえ、転入生さんでしょうか?」

 

「あ、はい! アオイといいます! 今日からオレンジアカデミーに転入しに来ました!!」

 

 

 元気の良い挨拶。

 良いですね、子供はやはりこうでなくては。

 

 

「ふふ、そうですか。私は学校にて教師を務めていますので、これからどうかよろしくお願いしますね」

 

「先生なんですね! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 そうして私たちが挨拶を交わしていると、ボールが、いえコライドンの震えが私を急かすように激しくなってきました。

 

 はいはい、わかりましたよ。

 

 

「ではアオイさん。唐突で申し訳ありませんが……出てきてください、コライドン」

 

「アギャアス!!」

 

 

 鳴き声と共に飛び出してくるのは、図体に反して甘えん坊なポケモンであるコライドン。

 

 

「わ! おっきなポケモ……きゃあ!」

 

 

 出てくるや否や、コライドンはアオイさんの顔を舐めまわし始めました。

 

 

「ふふ、どうやらコライドンはよほど貴女の事を気に入ったようですね」

 

「え、あ、ちょっ……あははは!」

 

 

 舐めまわされてくすぐったそうに笑うアオイさんに向け、私は続けて

 

 

「転入祝いです。そのコライドン……貴女がお連れになられるとよろしいでしょう」

 

「え!? いいんですか!?」

 

「はい。これもまた縁というものですよ」

 

 

 その子は昔から、私では無い誰かを求めていましたから。

 それはきっと、アオイさんなのでしょう。

 ……そのように、少々重たい話を来たばかりの彼女にいきなり話すわけにはいきません。

 

 アオイさんには、いえアオイさんにもパルデアを十二分に楽しんで頂きたいですから。

 

 時が来たら、またお話ししますよ。

 

 

「ただ……コライドン。お願いがあります」

 

「アギャ?」

 

 

 私はアオイさんに聞かれないよう、コライドンの耳元で

 

 

昔にも話しましたが、私の元を離れる以上は私が良いと言うまではバトルをしないように。また、ライド機能にも制限をしてください

 

「アギャス……」

 

 

 渋々とはいえコライドンが頷くのを確認し、私は耳元から離れます。

 

 

「ふふ、良い子です。──では、アオイさん。コライドンをよろしくお願いしますね」

 

「はい! エルリナ先生、ありがとうございました!!」

 

 

 元気よく御礼の言葉を私に言ってから、アオイさんは去っていきました。

 これから彼女の冒険が始まるのでしょう。

 

 この場にて彼女がバトルする姿は見れずとも、アオイさんは溢れ出んばかりの才覚を感じさせる素晴らしい学生さんでした。

 

 

 

 

 ふ、ふふ……ふふふ……

 

 

 そう、それはまさしく天啓。

 

 

 ……この子をダブルバトルに染め上げてしまえば、一体どれほどの……ふふふふふ。

 

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