パルデアにダブルバトルを普及させたい転生新米女教師の奮闘 作:オレモヌシ
「今日は、パルデア地方におけるダブルバトルにおいて決して避けることの出来ない組み合わせである、シャリタツヘイラッシャの話をしましょう」
そう……決して避けられない組み合わせであり、パルデアダブルの闇とも呼べるこの組み合わせ。
正直言って、私自身も目を逸らしたいです。
ですが……この、所謂『寿司』から目を背けてはパルデアにおけるダブルバトルは成立しない。
だからこそ、断腸の思いにて解説したいと思います。
「これは、シャリタツの特性である『しれいとう』を活かした組み合わせであり、2匹を同時に出す事でシャリタツがヘイラッシャの口内に入り、ヘイラッシャの体力命中回避以外全ての能力を二段階上昇させるものです」
画面上において、ヘイラッシャが口を大きく開けて、中にシャリタツが入っていきました。
「食べた!?」
なんて声が上がっていますが、そうではなくむしろシャリタツがヘイラッシャに指示を出す役割を持ちます。
それを示すため、私はヘイラッシャに再び口を開けさせてシャリタツの無事を証明しました。
そう。
見た目はコミカルで、ほのぼのする話です。
しかし、その能力は……
「元々優秀なポケモンであるヘイラッシャの全ての能力を二段階上昇させる以上、決まった時点で対策無しではまともな勝負が成立しなくなります」
「これを決めた際には交換が出来なくなる、ヘイラッシャが倒れるまでそのヘイラッシャしか技を打てなくなる、倒された場合無防備なシャリタツが飛び出してくるなどのデメリットもありますが……大きすぎるメリットと比較してしまうと微々たるもの」
ヘイラッシャがサザンドラを1撃で倒し、返しのボーマンダによる攻撃にもビクともせず、次の攻撃でボーマンダを粉砕する様子が映し出されます。
残されたニンフィアが恐怖でぷるぷる震えていますね。
可哀想ですが可愛い。
「ヘイラッシャの素早さも上がる以上、身代わりを張る事により状態異常やクリアスモッグ等での対策への解答を持ちます」
身代わりを貼ったヘイラッシャがモロバレルを見下しています。
いえ、映し出されているのは身代わり人形なので、見下しは想像でしかありませんが。
「てんねんの特性により、相手の能力上昇は意味をなさず」
「加えてテラスタルにより、トリックフラワーを始めとした技にも解答があるという……正直な話、パルデア地方のダブルバトルにおいて最強に限りなく近い組み合わせです」
悲しい事に、パルデアダブルにおいてほぼ結論に近いんですよね、この2匹……
具体的には、地球におけるレーティングバトルにて上位10名中6名が使っていたくらいには。
当然、1位の方もシャリタツヘイラッシャ構築でした。
まあ、育て方や取り巻きは人によってかなり異なりはしますが……
「対策として一番手っ取り早いのはくろいきりでしょう。まあ、これはシャリタツヘイラッシャ側が最も警戒する手段でもあるのですが」
くろいきりを持つポケモンを出す事を強制したり、立ち回りで常に意識させないといけない時点で強いんですよね。
くろいきりを覚えるポケモンは基本的な能力が少々低いために、シャリタツを出さずにスペックと立ち回りで有利を取ったりもします。
「よびみずの特性を持つポケモンにフェアリーテラスタルを切り、もう片方もフェアリータイプのポケモンにするという手段もあります。他タイプの技を覚えているだけでプランが崩壊するため確実性は薄いですが」
メジャーな技構築である、水竜身代わり守る、であれば通用するのですが……お願いに近い話です。
「どくびしという手段もあります。これならば、身代わりを張る前に毒を与える事ができますね」
実はこれが私が知る限り一番有効な対策だったりします。
マスカーニャにどくびしを使わせるのがまさかメジャーになるとは……
環境に与える影響の高さは絶大という事です。
「対策はいくつかあるとはいえ、先程から触れていますがシャリタツヘイラッシャ側も、控えのポケモンや持ち物、技などでそれら対策の対策をしてくるという……」
先程言ったように、なんならヘイラッシャ単体が来たりとか、よびみずシャリタツとか居たりとかするので本当に闇の組み合わせです。
明確な1つの解答が存在しない。
だからこそ、寿司コンビはパルデアダブルにおける最強の組み合わせなのです。
「とはいえ、シャリタツヘイラッシャ側も全ての解答を同時に用意する事は不可能であるため、相手がどのような対策をしているのか? といった読み合いが発生します」
後は、パラドックスポケモンが普及するなどして何らかの方法でポケモン全体のパワーが上昇すれば、寿司構築も最強ではなくなりますね。
まあ……それまでどれくらい時間かかるの?
そしてそれは対策ではないのでは?という話ではありますが。
「このように、知識が無ければスタートラインにすら立てない組み合わせというものがダブルバトルには存在しています」
「ですが、知った上での対策の読み合い……それこそがダブルの醍醐味とも言えるため、皆さんも是非勉強に励み、ダブルの深みを知りましょう!」
「ダブルバトルには対策しないと話が始まらない組み合わせがある、かあ……凄いね、ネモ」
「前にエルリナ先生があの2匹を使ってハッサク先生を……ぶるぶる」
「震えてるよ!? 大丈夫!?」
「あの時、あまりにも圧倒的過ぎて学校の伝説になってるんだ……」
「あ、あはは……とりあえず頑張って対策しなきゃね……」
大空のヌシことオトシドリ。
近づくと岩を転がして妨害してくるため、一般人には危険度が高すぎるために通行規制と看板による警告がされているヌシポケモンです。
授業においても、このヌシにはある程度以上強いポケモン無しに近付いてはいけないと教えています。
──とはいえ、私やコライドンを持つアオイさんからすれば、他のヌシと比較して大した障害というわけではなく。
「コジオ、いわおとし!」
「てだすけ」
例によってイッカネズミのてだすけによって強化されたアオイさんのコジオのいわおとしが炸裂し──
「ド……リ……」
オトシドリは戦う力を失いました。
「では、捕獲しますね」
「はい。お願いします」
そしてリピートボールにて捕獲。
ヌシポケモン戦はまだ2回目とはいえ、流石のアオイさんの状況対応能力といった所でしょう。
「ご協力頂きありがとうございます。もうすっかり慣れたものですね、アオイさん」
「先生のサポートのおかげです! 前回も今回も凄く戦いやすかったので!」
「ふふふ。楽しんで頂けているようで何よりです。オレンジアカデミー生徒による宝探しはそうでなくては、ね」
よしよし。
アオイさんも徐々にダブルの魅力を味わって来ているようで何よりです。
そうして、雑談しながら洞窟内へと入り……
「あれは、にがスパイスですね。文献に記載されている通りです」
「よかった! 先生が作ってくださるサンドイッチはとても美味しいですからね! 楽しみにしていました!!」
「お、おお……」
「? どうしました?」
「い、いえ。何でもないですよ? ──では、サンドイッチを作るので少々お待ちください──ぐすん」
いけません。
大人になって涙腺が脆くなってしまったのかもしれな……ぐすっ
しかし、アオイさんにとって私はクールで格好良いダブルバトルの先生。
涙など見せるわけにはいかないのです。
そうして私は誤魔化すようにサンドイッチ作りに取り掛かり、すぐに完成させました。
そしてアオイさんは。
「コライドン、出ておいで」
「アギャ!」
前回同様、コライドンは待ってましたと聞こえるが如き速度でサンドイッチに食い付き、一瞬で飲み込んでしまいました。
「ふふっ。もう少し味わってもいいのに。──私もいただきます」
「どうぞ。ご賞味あれ」
そうしてコライドンがサンドイッチを食べ、アオイさんも食べ始めたのを見てから、私は彼女の方を向き。
「今回は少し、コライドンについてのお話しをしましょうか」
「え? あ、はい」
食べるのを中断するアオイさん。
私の話に集中しようとしてくださるのは嬉しいですが、楽しい食事を邪魔する意図があるわけではありません。
ですので。
「食べながらで大丈夫ですよ。──そのコライドン、まあ見ればわかる事ですが……普通のポケモンではありません」
「あはは……それはそうですよね」
「アギャ?」
呑気な声を上げるコライドンを眺めながら。
「ふふ。その辺にコライドンが沢山居たりなどしたら大変な事になりますからね。それはともかく──エリアゼロ。パルデアの大穴に、コライドンと似たルーツのポケモンが多数存在しています」
「エリアゼロ……危険な場所なんですよね。後、エルリナ先生の研究所もあるとか?」
「私の。という訳ではありませんが、概ねその理解で大丈夫です」
アオイさんは歴史の授業もきちんと聞いているようですね。
本当に、真面目で素晴らしい学生さんです。
そんなアオイさんに対して。
「全ての秘伝スパイスを集め、その後チャンピオンになってください。そうすれば、私がアオイさんをエリアゼロに引率しますよ。──その時はネモさんも連れて行く事になると思います」
「ネモも一緒にですか? いえ、嫌な訳ではなくむしろ嬉しいですが……」
「以前からネモさんはエリアゼロに興味を抱き、私に連れていくよう頼んで来ていましたからね。当時は今より遥かに忙し過ぎたために、手が空いたらと言いましたが──これぞまさしく運命といった所でしょう」
いやまあ、今言ったようにネモさんを未だ連れて行っていない理由はただ単に忙しかったというだけなのですが……物は言いようという奴です。
「とはいえ、やはり強制ではありません。──私に限らず、アオイさんの素晴らしい才能に期待をする方は多いでしょう。これからも、私たちは貴女にいくつかの道を示すと思います。ですが、何をするのかは貴女自身が決めるべきなのです」
「先生……」
「何かあれば、私たち大人を頼ってください。甘えてください。教師とは、そのために居るのですから」
「……はい! ありがとうございます!!」
ああ。
これ、凄い先生っぽい……!
私は内心でかなり俗な感動に満ちながら、アオイさんと素晴らしい一時を過ごしました。
赤評価やった!と思いきや評価1喰らってオレンジ化して悲しいので、高評価頂けると嬉しくなってやる気に繋がるので是非お願いします(懇願)