パルデアにダブルバトルを普及させたい転生新米女教師の奮闘 作:オレモヌシ
「今日は、所謂『味方殴り』についての授業をします。これもまた、シングルバトルでは決して起き得ない行動ですね」
シングル勢には信じられないであろう、味方殴りによって生み出されるアドバンテージ……初めて目の当たりにした際のインパクトは絶大な物でしょう。
「やる事は……まあ名前通りですが、味方に向けて攻撃技を打ち込む事です」
「味方に攻撃するの!?」
「何故そんな事を?」
という声が上がっています。
まあ、そうですよね。
至極真っ当な感想だと思います。
「では、画面を見てください。今回私が繰り出すポケモンはイルカマンとグレンアルマ。クラベル先生はボーマンダとガブリアスを繰り出したとします」
イルカマン、グレンアルマ共にいつもとは少々趣の違ったポケモン。
とはいえ、両方ともパルデアダブルにおいては良く目にするポケモンです。特にグレンアルマは。
「今回私はイルカマンにこだわりスカーフ、グレンアルマに弱点保険を持たせています」
「こだわりスカーフによって、行動順はイルカマン、ガブリアス、ボーマンダ、グレンアルマとなります」
スカーフを巻いたイルカマンがやる気を出していますね。
可愛い。
「このままだと、普通に考えたら私のグレンアルマはやられてしまいますね」
「ではここで、私のイルカマンが味方のグレンアルマにクイックターンを打ったとします。そして……交換先としてイエッサンが出てきました」
イルカマンが凄いスピードでボールに戻り、代わりにイエッサンが登場しました。
「すると、まずはイエッサンの特性サイコメーカーにより、フィールドがサイコフィールドになります」
「次にグレンアルマの特性くだけるよろいが発動。グレンアルマの防御が一段階下がり、素早さが二段階上昇します。最後に、弱点保険が発動し、グレンアルマの特攻と攻撃も二段階上昇しました」
画面のグレンアルマが凄い事になっていますね。
相対するガブリアスとボーマンダが恐怖を抱いているのがわかります。
「そして……素早さが上昇した事により、先に技を繰り出せるようになったグレンアルマのワイドフォース! サイコフィールドと弱点保険の強化により、ガブリアスとボーマンダ両方が1撃で倒れました」
グレンアルマが雄叫びを上げています。
有り余るパワーをもっと使わせろ! と言わんばかり。
「どうですか? 味方殴りによって凄まじいアドバンテージが生まれましたね。更に言えば、イルカマンが引っ込んだ事により、次はマイティフォルムで出てくる事も確定しています。……こうなると流石にもう勝ちでしょう」
実はイルカマンはくろいきりを覚えるため、寿司対策の一環としても使えるんですよね。
何より、汎用性がそれなりにあるイルカマンによって寿司側にくろいきりを警戒させられる事が偉大です。
「相手がこれをしてくる事が予想出来ていれば、最初から悪タイプのポケモンを繰り出すなりして対策できるのですが、知らずにこのコンボを決められてしまえば、敗北は確定」
まあ、それに対応したニンフィアグレンアルマで悪テラスタルからのでんこうせっかと普通の攻撃の択掛けというのもあるわけですが……そこまで深い話を今しても仕方がありません。
「シャリタツヘイラッシャ構築と同じく、味方殴りコンボは絶対に覚えておかなければならないという事です」
コノヨザルイッカネズミ、グレンアルマイエッサン、そしてシャリタツヘイラッシャ……この3組は、パルデアダブルにおいて絶対に覚えておかなければならない組み合わせ。
「グレンアルマの他に、コノヨザルイッカネズミ、あるいは滅びの歌を打った際の味方へのとんぼ返りなどもありますが……今それを語るとパンクしてしまうでしょうから、それぞれ後に個別解説回を設けます」
「覚えなければならない事が多くて大変なのはわかります。ですが、それを越えた先にある競技性……それがダブルバトルの魅力であり、皆さんがそれを楽しめるよう、私も力を尽くさせて頂きますので、一緒に頑張りましょうね」
「味方を攻撃して勝ちをほぼ決定させる……ダブルバトルってすっごく奥が深いんだね、ネモ」
「そうだね! 前にエルリナ先生が、ポケモンバトルを競技として楽しむならダブルバトル! って言っていたよ」
「競技性の高さが魅力、かあ。……私、そこまで行けるかなあ?」
「アオイなら大丈夫! 私もいつかエルリナ先生の高みまで絶対登ってみせるから、一緒に頑張ろ!」
「そうだね! 先生も期待してくれているみたいだし、何より私自身も強くなって楽しんでみたい!」
「おはこんハロチャオ〜! 今日のゲストは……?」
「こんにちは、エルリナと申します」
「そう! なんと、パルデア最強トレーナーにして、研究所の助手も務める美人ダブルバトル学教師のエルさんだ〜っ! スペック盛りすぎ〜!!」
「うおおおお」
「先生とナンジャモちゃんがコラボ!? 熱すぎる」
「エレキン:¥5000」
──ハッコウシティにて。
お忘れかもしれませんが、実は私、研究所の助手も務めています。
つまり……時には研究費を確保する為にメディアに露出する必要もあるという事。
そのため、ジムリーダーでもあり有名配信者でもあるナンジャモさんの配信にこうして参加しているというわけです。
理事長から課せられた、ジムリーダーの特訓業務……それをこなしながら研究費稼ぎにも繋がるという、まさしく一イシツブテ二ポッポの行い。
いえ、この機を活用して上手くやればダブルバトル学の宣伝にもなるので、一イシツブテ三ポッポですね。
「ではではエルさん! 今日のお気持ちを〜どうっぞ!」
「そうですね。生徒たちに恥じぬよう、ダブルバトル学教師としてのクールで格好いい所を見せられたらと思います」
「え? エルさんってクールじゃなくてかなりの天然……い、いや! 素敵なコメント、ありがと〜!」
……ほほう?
そんな事を言ってしまいますか?
そうですかそうですか。
「じゃあ、いっちゃうよ〜! タイカイデン、ムウマージ!」
「お願いします、サザンドラ──パチリス」
「え? パチリスって……」
小さな声で、思わずといった驚きを示すナンジャモさん。
ふふ、そうです。
パチリス。
つまり……特性『蓄電』。
そしてこのゆびとまれ。
電気技を吸い取り、自身の体力を回復する特性と技の組み合わせであり、ダブルバトルにおいて電気タイプジムリーダーであるナンジャモさんの天敵とも呼べるポケモンです。
「エ、エルさん、容赦ない! これも教師の愛の鞭という事か〜!」
「ふふふ。先生とは時に厳しいものなのです。──サザンドラ、テラスタルしてきあいだめ」
「ま、まずい! タイカイデン、おいかぜ! ムウマージは……ボクたちもテラスタル……いや、パチリス……でも、しないとやられちゃうからやっぱりテラスタルしてマジカルフレイム!」
「パチリス、このゆびとまれ」
ナンジャモさんが葛藤の末にムウマージにテラスタルを切る事にしたようです。
彼女のムウマージは電気テラスタル。
そして私のサザンドラは……
「サザン、ドーラァ!」
銀色に輝くサザンドラ。
つまりは鋼テラスタルですね。
それを知るナンジャモさんはムウマージにマジカルフレイムを指示しますが、それはパチリスに吸われます。
……目まぐるしく状況が動くダブルバトルにおいて、ゆっくり相手を見てから技を指示するなんて不可能。
所謂『躱せ!』などもっての外です。そんな事を指示する暇があれば技の指示をすべきですから。
そして、ナンジャモさんはテラスタルを切る判断に迷っていました。
それにより、この場合において最もパチリスに対して有効となるシャドーボールの指示が出来なかったのは仕方のない事。
まあ、私のサザンドラが鋼テラスタルだと記憶している事は見事と褒められる事ではありますが。
そして、その間に私のサザンドラは無傷できあいだめ成功。
「やばっ! けどおいかぜでこっちが速いから……タイカイデン、サザンドラに暴風! ムウマージはシャドーボール!」
「パチリス、このゆびとまれ。サザンドラはムウマージにりゅうせいぐん」
暴風はパチリスには効果いまひとつ。
しかし、タイカイデンの特性ふうりょくでんき──風技に反応してじゅうでんをする特性──を活かすためのおいかぜは見事でしたが、パチリスに電気技を撃つわけにはいかないために、彼女は暴風を打ちました。
この世界においては、広範囲攻撃である放電もゲームと違って2匹が近くに居さえすれば普通にこのゆびとまれに吸い寄せられますしね。
これが地震などであれば、無論このゆびとまれを貫通します。
この辺りが、この場がゲームではなく現実世界になった事による変化という物です。
そして、ムウマージはシャドーボール。
しかし
「リス!」
その両方をパチリスは受け止めます。
耐久に特化した育て方をしているパチリスはレベル……いえ、能力差も相まって見事に耐えてくれました。
そして……
「ドラァ!」
キラン……ドドドドド!
「マ、マァー!!?」
サザンドラのりゅうせいぐんが急所に当たり、ムウマージは1撃で倒れました。
「エルさん、これってもしかして……」
「はい。サザンドラにはピントレンズを持たせているため、きあいだめと合わせて確定急所となります。では再び、このゆびとまれとりゅうせいぐん」
「も〜!! こうなったらもうどうしようもないでしょ!! でも一応暴風!」
負けを確信しながらも、戦うポケモンの為に最後まで指示を出す。
やはりナンジャモさんもジムリーダーですね。
とはいえ……
「サザン……ドーラァ!」
ドドドドド!
「デ……ン……」
りゅうせいぐんが急所に当たる事で、デメリットの特攻ダウンを踏み倒し、タイカイデンも1撃で倒れました。
そして……
「勝利したのは、エルさんでした〜! う〜ん、やっぱりエルさんは強い!」
「ナンジャモさんも、かなりダブルバトルの腕前を上げましたね。……特性を活かすタイカイデンのおいかぜ。そして私のサザンドラが鋼テラスタルだと記憶し、安易にマジカルシャインを打たなかった」
過去のナンジャモさんはこういった行動をしては来ませんでした。
ですので。
「天敵であるパチリスにも一定の適応を見せてくださいましたね。……まあ即座に対応仕切れはしなかったとはいえ、見事です。理事長にも、素晴らしかったと報告しますね」
実際、ナンジャモさんの成長には目を見張るものがあります。
やはり、若いトレーナーがダブルバトルを知り、強くなっていくというのは素晴らしい……
「お、おお〜! エルさんにすっごく褒められちゃった! みんなもボクを褒めて褒めて〜!」
「ナンジャモちゃん凄い!」
「先生めちゃくちゃ強かった!」
「2人ともかわいい!」
──このようにして、私は定期的にジムリーダーや四天王の訓練をしています。
味方殴りコンボなどをしてしまったらワンサイドになってしまうので、訓練の際にはこうして相手の対応を見る事が出来るような戦い方をします。
え? ハッサク先生に対して寿司使った?
ハッサク先生は年長者ですから。
それはそうと。
仕事は完璧にこなせましたね。
動画の見栄え的にもばっちりでしょう。
私は内心ルンルン気分で帰路に就きました。
皆さま暖かくて大変嬉しいです。
本当にありがとうございます!