パルデアにダブルバトルを普及させたい転生新米女教師の奮闘   作:オレモヌシ

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9話:現実には強すぎるポケモンが存在する

 

 

「今日は、天候を変化させる特性についての授業をします。シングルバトルよりフィールドに出ているポケモンが多い以上、天候変化の効果もまた大きくなるために、注意が必要になります」

 

 

「では、まずは天候を変化させる特性について。気にすべきものの種類としてはひでり、あめふらし、ゆきふらし、すなおこしの4つとなります」

 

「他にもすなはき等もありますが……即効性に欠ける以上、その4つ程に強力な特性ではありませんから、今は考慮しません」

 

 

 ポケモン全体のパワーが地球におけるDP時代より遥かに上であるために、即効性に欠ける天候変化はカイオーガのように余程強力なポケモンでも居なければ弱いですから。

 

 

「まずは、それら4つの特性を持つポケモンを出すとどうなるかについて。いつも通り、画面を見てください。──私がコータスとドレディア、クラベル先生がマスカーニャとサーフゴーを繰り出したとします。素早さ順はマスカーニャ、ドレディア、サーフゴー、コータスの順ですね」

 

 

 全員が初登場のポケモンです。

 いつものポケモンの方がわかりやすいでしょうが、たまには新鮮味を与えなくてはなりません。

 

 

「すると、コータスが出て来た途端に、特性ひでりによってフィールドの日差しが強くなりました。そうして、次はマスカーニャが技を繰り出す……前に、特性ようりょくそにてドレディアが一番最初に技を繰り出しました! その技は……おさきにどうぞ。それによって、ドレディアの次に技を出せるようになったコータスによる、ふんか! マスカーニャ、サーフゴーは一掃されてしまいました」

 

 

 画面がコータスの噴火によって地獄絵図と化しています。

 怖がっている生徒が多数居ますね。

 可愛い。

 

 自分も扱うマスカーニャが瞬殺される様を見たアオイさんが悲しそうな顔をしていますね。

 可愛い。

 

 

「これが、いわゆる天候コンボという物です。知らなければパーティが崩壊させられるコンボとなりますが……今回はコンボではなく、天候を変化させる特性の方に着目しましょう」

 

 

「ここまでで疑問に思った方も居るかもしれません。……天候を変える特性を持つポケモンを同時に出したら? と」

 

 

 ゲームにおいては、天候変化の特性を持つポケモンを同時に出した場合、素早さの遅い方の天候になるというルールがありましたが……現実世界においてそうなるわけがありません。

 

 では、どうなるのか? 

 

 

「画面の中において私がバンギラス、クラベル先生がコータスを繰り出しました。……すると……」

 

 

 画面には、砂嵐状態となっているフィールドが映し出されています。

 

 

「……砂嵐になりましたね。その理由は至極簡単な話。──バンギラスがコータスよりも能力値に優れているためです。つまり……身も蓋もない話ですが、強い方のポケモンの特性が反映される事になります」

 

 

 強い方のポケモン。

 それは、今までの授業以上にかなり実戦値寄りな話となり、更にはゲームとは全く異なった話となります。

 例えば──所謂種族値だけでなく、総合的な能力値、コンディション──などに依存する話ですから。

 

 

「パルデアにおいて、天候を変える特性を持つポケモンを基本能力に優れた順に並べていくと……バンギラス、カバルドン、ユキノオー、コータス、ペリッパーとなります」

 

「とはいえ、バンギラス以外の差はそれ程ではありません。鍛え上げ方次第でいくらでも変わりうる程度の差。──まあ、カバルドンと以下のポケモンの間にも結構な差はありますが」

 

 

 ユキノオーが雪を降らせながらカバルドンに対して自慢げな顔をしています。

 頑張りましたね……(ホロリ)

 

 

「ですが……バンギラスをペリッパーが上回るというのは、余程の事がない限り起き得ない程の差があります」

 

 

 ペリッパーが頑張って雨を降らそうとしていますが、バンギラスが嘲笑っています。

 悪い奴! ……でもちょっとかっこいい。

 

 

「これにより、様々な戦術がバンギラスを出すだけで対策出来てしまいます」

 

「ドレディアコータスは言うまでもありません。加えてそれより遥かに強力な、グレンアルマイエッサンで高火力をちらつかせながらトリックルームをしてコータスを出すという極めて有用な戦術も、バンギラスを出すだけで割と解決してしまいます」

 

 

 私はグレンアルマイエッサンは、バンギラスによってこの世界ではそこまで支配的な組み合わせにはならないと考えています。

 勿論、極めて強力な事に変わりはありませんが。

 

 

「イルカマンペリッパーに対しては、イルカマンに対してバンギラスは弱いものの、隣のポケモンでイルカマンを牽制してしまえばどうとでもなります」

 

 

 イルカマンがマスカーニャに睨まれています。

 不謹慎かもしれませんが、マッチョが猫に怯えている姿はちょっと面白いですね。

 

 

「つまり……繰り返しにはなりますが天候を活用した沢山の戦術が、バンギラスを入れるだけで対策出来てしまうのです」

 

「そのため、以前私はシャリタツヘイラッシャの組み合わせが最強に限りなく近いと言いましたが、私が単体として最強に近いと考えているポケモンはこのバンギラスとなります」

 

 

 もし地球にこの性能のバンギラスが居た場合、ザシアン枠やガオガエン枠と同様にバンギラス枠が出来ていただろうと思います。

 

 それくらい、強い。

 

 コノヨザルやヘイラッシャがバンギラスに強い性能で良かったと──いえ、寿司はやっぱり駄目です。

 寿司も同じですね。しれいとうを決められてしまえば、やりようはまだあったゲームより更にどうしようもなく強くなりますから。

 

 

「対策としては、バンギラスを弱らせてしまう事ですね。そうすれば、能力値に劣るポケモンでも天候取りに勝つ事ができます」

 

 

 疲れたバンギラスに対してユキノオーが強気に出ています。

 ……小物感……いえ、何でもありません。

 

 

 つまり、雨や晴れや雪を使う場合は常にバンギラスを意識し、どうやって弱らせるかを考えなくてはならない。

 ──その時点でかなり不利だと簡単にわかる話でしょう。

 

 

「勝てるパーティを組みたい場合、自分が雨や晴れなどを使わないならば殆どのケースにおいてバンギラスは入ってくると思います。皆さんも、時間があればプルピケ山道や南6番エリアにてヨーギラス或いはサナギラスを捕まえてみる事をお勧めします」

 

 

 

 ──バンギラスは天候ポケモンの中で際立って高い能力値を持つが故に極めて強力なポケモン。

 それは間違いありません。

 

 

 では逆に、バンギラス以上のスペックを持つポケモンが居たとするならば、どうなるか? 

 

 

 ……彼らに話すのは、まだ早いでしょう。

 

 

 

 

単体として最強に近い、かあ……かなり現実的な話だね、ネモ

 

そうだね。普通こういうときは『好きなポケモンでどうにかなる!』的な事をみんな言うんだけど、エルリナ先生は現実を見てちゃんと言ってくれるから、信用できるんだよ

 

うん。私もそう思う。先生は理想論だけを言う人よりよっぽど私たちの事を考えてくれてるって

 

よし! じゃあ早速私はヨーギラスを捕まえに行くね!

 

私はもう手持ちにサナギラスが居るから……早く進化するといいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土震のヌシこと──ドンファン。

 

 

 あれ? と思うかもしれませんが、ドンファンです。

 イダイナキバでもテツノワダチでもなく、ドンファン。

 

 私のこれまでの活動の成果であり──要するに、今日もバリアは元気に作動しているという話です。

 

 

 そして、ヌシドンファンに関してはそれまでのヌシポケモンとは違い、所謂ギミック攻略といった物がないただのぶつかり合い。

 

 単純な力比べというのは、時にはむしろ一番厄介な物であったりするのですが──

 

 

「マスカーニャ、トリックフラワー!」

 

「ニャオーン!」

 

 

 順調に成長し、そして見事進化を果たしたマスカーニャによるトリックフラワーがヌシドンファンに襲い掛かり──

 

 

「ド……ン……」

 

 

 ドンファンは戦う力を失いました。

 

 そして──

 

 

「あれは、すぱスパイスですね。──これで秘伝スパイス捜索及びヌシポケモン調査も残す所あと1つ。流石です、アオイさん」

 

「先生のおかげです。授業を聞いて、こうして一緒に戦う度に沢山の学びがあって……そのたびに私は強くなっているって思います」

 

「……ふふ。そうですか。本当に──嬉しい言葉です」

 

 

 そのようにしてサンドイッチを作りながら雑談していると、アオイさんが何やらもじもじしているのが見て取れます。

 ああ、本当に可愛いですね。

 

 

 それはさておき。

 彼女がこうなっている理由はまあ、流石にわかりきった話。

 前回話した、私は居るステージが違うという話についての詳細。

 

 

「ふふ。気になりますよね。──いいでしょう。ただ、ここから先はパルデアで知る人は数える程度という情報となります。他言無用でお願いしますね」

 

「え、ええっ!? そういう話なんですか?」

 

「はい。噂程度であれば、耳にした方はいるでしょうが……詳細を知る者はごく僅かとなります」

 

「(ゴクリ)」

 

 

 緊張した様子の可愛らしいアオイさんに微笑んでから、私は話し始めます。

 

 

「ワールドチャンピオンシップ。通称WCS。……世界最強のポケモントレーナーを決定する、大衆には秘された大会があります」

 

「世界最強のトレーナー……」

 

 

 WCS。

 一部の人間にのみ知らされる世界最強のトレーナー決定戦。

 

 天変地異を引き起こすポケモンなどによる、大衆に見せるわけにはいかないバトルが繰り広げられるため、参加どころか観戦する事にすら厳しい条件が求められる世紀末大会の事です。

 

 

「そして、肝心のルールですが……それはダブルバトルにて行われます」

 

「え? それって……」

 

 

 私はアオイさんの眼を真っ直ぐ見てから頷いて

 

 

「WCS。つまり世界戦はダブルバトルにて行われる以上、パルデアのみならず、世界に羽ばたく為にはダブルバトルへの高い理解度が必須となります」

 

「世界……それで理事長が、先生はステージが違うって……」

 

「そのため私は以前、現状のパルデアにおいては誰も私の相手にならない……などといった発言をしたのです。世界を知らず、更にはダブルバトルについての理解度に差がある以上はどうしてもそうなってしまう。それは、今のアオイさんならばわかる話なのでは?」

 

「……そうですね。授業を聞いていて、ダブルバトルへの理解の差は覆せない実力差を生む物だと私も思います」

 

 

 アオイさんもまた、私の授業について来てくださっている真面目な学生さん。

 実戦派などと称する者による単なる根性論だけではどうにもならない戦術というものを彼女は既に理解してくれています。

 

 そうしてアオイさんは少し考えに耽った後に

 

 

「あの、気になったんですが……どうしてみんなには内緒で世界大会を開いているんですか? それが伝わっていれば、もっと……」

 

「仰る通り、WCSが一般人の知る物となれば、確かにもっとダブルバトルは普及するでしょうね。ですが……」

 

 

 私は眼を閉じてあの光景を思い出しながら。

 

 

「大衆に見せるべきではないポケモン、そしてそのポケモンたちによる戦いが繰り広げられますから」

 

「ええっ? 見せるべきではないって……」

 

 

 宇宙人や異世界の存在、はたまた神様が出てくる……なんていうのは、まだアオイさんに言うべきではないですね。

 そのため、

 

 

「ふふ、アオイさんの身近にもいるではありませんか」

 

「あ! そっか。コライドンもそうなんだ……!」

 

「アギャ?」

 

 

 呑気な声を上げるコライドンを見つめるアオイさん。

 

 

「……本来この話は、アオイさんがチャンピオンになってからする予定でした。今はまだ、皮算用でしかありませんからね。とはいえ……理事長が近い話題を出したみたいですし、何より」

 

 

 

「恐らく、このパルデアにおいて最もアオイさんに期待しているのは、私でしょうから」

 

 

 

 

 

 

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